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暗殺宗徒。

 俺は一人で本島に戻ろうとする警備隊長を呼び止めた。


「…隊長さん、一人では危険かと思われます。俺も着いて行ってよろしいですか?」


 突然、呼び止められて付いて行くという俺の言葉に眉を(しか)める隊長。


「…お客人、今は一刻を争うの事態なのです。しかも客人を危険にさらすわけには…」


 隊長の言葉を警備兵が止める。


「隊長、この客人のお連れの方が我々を助けて下さったのです!!隊長が強いのは良く良く知っておりますが、今は救援を断る状況ではないかと思います!!」


 その言葉に、隊長がすぐに決断する。


「…解かった。お客人、申し訳ないが…救援をお願いしたい!!」


 俺はその言葉に頷くとクレアとリーちゃんを呼んで、隊長に提言する。

 

「他の島はうちの連れに任せて貰っても良いですか?」

「…ああ、そうして頂けるとありがたい!!」


 俺はクレアに話す。


「クレア、酒呑んでる最中で悪いが緊急事態だ。ここから本島まで、順番に周って黒装束を片っ端から倒していってくれ!!」

「うむ。さっきのでは物足りなかったところです。わらわに任せて下され!!」


 不敵な笑いを浮かべ、両手の指関節を、ケン〇ロウのように鳴らすクレア。ちょっと心配になった俺は一応、釘を刺して置いた。


「…施設とか…島を壊すなよ?」

「フフフ、解っております!!」


 俺の注意に、笑うクレア。…オイ、ホントに大丈夫だろうな…?


 次に俺はリーちゃんに頼む。


「隊長と俺を本島の神殿前まで転移させて欲しいんだ」

「はいはーい」

「…んじゃ、神殿前で落ち合おう。クレア、油断するなよ…?」

「…フッ、解っておりますとも…」


 クレアに黒装束の退治を頼んだ後、俺は隊長と共にリーちゃんに転移して貰った。



 転移で神殿に着いた瞬間、想像していた通りの事態になっていた。

やっぱりね。神殿の入り口は警備が手薄になったせいか警備兵が二人倒れていた。


 他で暴れて、そっちに警備を集中させて、神殿の警備が手薄になった所を別のヤツが時間差で襲撃…と言った所か…。


 バリー達長は意識のある警備兵を抱き上げて状況を確認する。


「どうなってる?何があった…?」

「…隊長…は、早く中へ…巫女様が…」


 警備兵の言葉に、俺は急いで神殿内に入った。神殿内は大きな柱が両側にずらりと並び、その最奥の中央に神社?が祀られていた。


 そこで目にしたのは、般若面を被った黒装束が、巫女らしき女性を襲っている瞬間だった。

 マズイッ!!二人の距離約五メートルと言った所か…。般若面は、巫女の心臓目掛けて刀を刺突させようと突進していた。

 

 …間に合うか…?いや、俺なら間に合う!!

ここからの距離はざっと三十メートル。神速が届くギリギリだ。しかしギリギリだから神速は使わない。

 俺にはコレがある!!


 俺がファントムランナーを発動させようとした瞬間、神殿内に入って来た隊長が膝を付いて地面に左手を当てる。


 『ガーディアンウォール!!』


 隊長が叫んだその瞬間、巫女と般若の間に突如として岩の壁が出現した。

突然の壁の出現に般若の脚が止まる。


 すかさず、隊長が拳銃を右手に構えると、般若に向けて連射で弾丸を撃ち込んだ。

俺はそのレトロなデザインの拳銃に一瞬、目を奪われる。

 

 あれはッ!!あの銃は…ライヒヴァインかッ!!カッコエェ…!!


 …いや、ちょっと待て。

この距離であんなレトロと言うかクラシックな拳銃で弾丸届くか…?


 そんな事を考えながら龍眼でよく見ていると、シリンダーの部分が鈍く光っていた。どうやら射出される弾丸に、エネルギーを纏せているようだ。魔法か?スキルなのか、何らかの効果を付与させているのか…。


 あっ、やべぇっ!!ボケっと見てる場合じゃなかった。俺はすぐに『ファントムランナー』を発動させる。

 弾丸が般若面に接近した瞬間、


 キィィンッ!!キィンッ!!キィンッ!!


 と、高い金属音と共に、般若面が全弾、刀で弾丸を弾いた。

良く刀で弾丸を弾いたな…。コイツ…五〇門かよ…相当な剣技だぞ、アレ…。

 しかし弾丸が弾かれたと思った瞬間―。


「ベイカー流銃砲道二式!!散弾ッッ!!」


 隊長の言葉と共に弾かれた弾丸が突然、般若面の前で弾け飛ぶ。


「…グッ…!!…」


 流石に五〇門ばりの剣技を持った般若もこれは避けられなかった。完全に巫女から意識が逸れて動きが止まる。 


 俺は般若の動きが止まったそのタイミングで、ヤツの側面に到達。俺の突然の接近に即反応した般若面が、刀をこっちに横薙ぎに振って来た。


 俺はすぐに神速に切り換えて、再び般若面の側面を取り、タガースキル『ストームラッシュ』を打ち込む。


 またもやすぐに反応して、刀をこっちに向けようとしてきたがこっちの方が速い!!横薙ぎされる前に、俺はタガーの連撃を喰らわせる。


 …はずだった…。


 タガーの切っ先が般若面の脇腹を突く寸前、突如として違和感に襲われた。

突然、俺の動きが急激に鈍くなったかの様に、般若の身体にタガーを突き刺す事が出来なかった。


 …何だ?何が起こった…?急に俺の動きが鈍ったのか…?


 スローモーションの様な動きで、般若面のカラダが後退していく。…コイツ、タガーが刺さる瞬間に身体を後退させやがったか…?

 

 しかし、普通あの体勢から後退できるか?そしてさっき感じた違和感。

これは多分、スキルだな。

 隊長の弾丸を弾いたのもおそらくコレだろう…。


≪なんか強そうね。アンソニーのスピードにすぐ反応したし…≫


 リーちゃんは、離れた所から俺と般若面の攻防を見ていた。


≪…うん、コイツは確実に強いね。それより、リーちゃん隙を見て…≫


 俺はひそひそで密かにリーちゃんにある事を頼んだ。

俺と般若面が対峙している間に、バリー隊長が巫女の前に立つ。


「…巫女様、無事で何よりです!!」

「隊長、この状況は…」

「セイ様、詳しくは後で話します。まずは避難しましょう…。…済まぬ、お客人。この場を任せてもよろしいか…?」

「えぇ、今のうちに早く非難を…」


 そう言いかけた俺の前から、一瞬にして般若面が消える。そして次の瞬間にはバリー隊長と巫女の前に現れ、刀を振りかぶっていた。


 一瞬、反応が遅れてしまったが、すぐに俺は神速でその間に割って入る。

これ以上、好きにはさせない。

 俺はタガー二刀流で般若面にストームラッシュを仕掛けた。


 俺のラッシュを刀で捌いていた般若面が次の瞬間、再び消える。俺は龍眼で視ていた。

二回も同じ事が出来ると思うなよ!!


 転移のように見えるが、忍者の空蝉の術みたいな感じだ。一種の高速移動スキルのようだ。


 俺も神速で同時に動く。そして般若面の前に出た。刀をタガーで弾く。

その一瞬で、俺の後ろにいた巫女と隊長は消えていた。


「…貴様は何者か…?なぜ邪魔をする…二人をどこへやった…?」

「教える訳ないだろ…まぁ、教えてもアンタには追い付けんけどな…」


 俺は事前に、二人を安全な場所へ転移する様にひそひそでリーちゃんに頼んでおいた。

コイツはもう二人を狙えない。


 ついでに俺は、二人が転移した瞬間を見計らって『真獄』も発動させた。

コイツは、まず俺を殺さないとこの真獄から出られない。

 まぁ、俺を殺して出たとしても二人がどこにいるかは解からんだろうけど…。


 般若面と俺の間に沈黙が走る。

そして次の瞬間―。

 急速接近で般若面の刀とタガーで打ち合う。高い金属音と共に火花が散った。



 その頃、クレアは順調に黒装束を叩きのめし、六の島まで来ていた。

六の島に入ってすぐに、建物の上から最後の黒装束が飛び降り、襲い掛かって来る。


 既にその存在に気付いていたクレアは攻撃を避けるまでもなく、後ろ廻し蹴りで攻撃する。

クレアの攻撃を避けた黒装束は、両手に湾曲した鎌を持ち、顔に能面を付けていた。


 一緒に吞んでいたギャラリーと警備兵達は、黒装束を叩きのめすクレアに付いて来ていた。

 ギャラリーや警備兵達が見守る中、能面とクレアも一瞬にして接近し、お互いの武器で打ち合いを始めた。



 真獄の中で、俺はどんどん神速のスピードを上げて、力押しで圧力を掛けていく。

般若面の刀を力任せに打ち上げ、その脇腹を狙い、プラチナタガーを突き立てる。

 

 しかしその瞬間、またもや急速に俺の身体が鈍くなった。

またか…何だ?


 龍眼で視ていると、般若の身体がゆっくりと後退している。

般若は後退しつつ、刀を横薙ぎに振ってきた。


 五秒ほどだろうか?般若のスキルの能力が切れる。瞬間、刀の切っ先が俺の拳を横に斬った。


 …くっ、斬られたか…なんだ?何が起こってる…?


 そのタイミングでようやく、ヤツのスキルを視る事が出来た。


 『空間膨縮』、『鬼人化』、『空蝉』、『隠密』の四つだ。


 『空間膨縮』は一定範囲の空間を伸縮させる事が出来るスキルの様だ。これは赤色スキル。

『鬼人化』全てのステータスを爆上げする。黄色スキル。『空蝉』は一瞬で巫女と隊長に接近した、あの高速移動スキルの事だな。これは青色だ。


 そして『隠密』。これは黒装束全員が持ってる緑色スキルだったな。

 

 傷は浅かったが斬られた拳から血が流れる。

 さっきの突風撃の時と言い今回と言い、あれはヤツの空間膨縮スキルだろう。

膨縮の『膨』の方だな…。


 攻撃の当たる寸前を見極めて、スキルを発動し空間を膨張で伸ばしているという事か…。

しかし待て…。『膨』の方は見たが『縮』は…このスキルは思ったよりヤバいかもしれん!!


 そんな事を考えていた瞬間、ヤツが刺突の型で刀を構え、突如突進して来た。

ヤツの刀の切っ先が、俺の心臓を狙っている。

 

 マズイッ!!

そう思った瞬間、俺の勘が当たった…。


「…くっっ!!…くそッ…」


 俺の目の前まで来た般若面は、刺突の構えのまま突進、空間膨縮の『縮』

を発動させたようだ…。

 避け切れず、ヤツの刀の先が俺の右肩を貫いていた。


 …くっ…クソッ、マジで痛ぇ…。


 俺は仕事で二回ほど柳刃で指を切った事があるが、あの焼けるような痛みよりも更に、比にならない程に痛い。

 

「…貴様、何者だ…攻撃をずらしたな…?」


 般若はそう言いながら俺の肩から刀を引き抜く。俺の右肩から血が流れた。クソッ…しかしさっきのはマジでヤバかった…。

 

 俺はヤツのスキル発動の一瞬前に、危険を感じて神速を発動していた。


 しかし、ヤツの空間膨縮の『縮』の空間を一気に削り取って縮める様なスキルが、まさかの一瞬前に発動していた俺の神速に干渉するとは…。

 

 範囲に入っていたからか…。


 ヤツのスキルの影響を受けたものの、何とか俺の身体が少しづつ動いていた為に、何とか心臓を貫かれる事は免れた…。だがコイツはかなり危険だな…。


「…聞いている。貴様…何者だ…?」


 コイツ、それしか言うセリフねーのかよ…。…くそッ、どうするかな…。

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