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継ぎ接ぎ怪物くん。

 俺は真獄を解除して、皆の方の戦闘が終わっているかどうか確認する為に立ち上がる。ついでに気絶したままの乙女ちゃんを回復して貰おうと俺は振り返った。


「アンソニーっ!!あぶないでしゅっ!!」


 瞬間、シーちゃんの叫ぶ声に反応した俺は、巨大な五枚の鎌が俺の顔のすぐ横まで来ている事に気が付いた。


「…ぉっ!?ぅうおおォォォッ?!」


 俺は慌てて首を竦めてしゃがんだ。何だ?何で同じ場所で戦闘になっている?しゃがんだまま見上げると、目の前に奇妙なモンスターが巨大な五枚刃の鎌を振り回していた。

 

 俺を目掛けて、そのまま上から五枚の巨大鎌を振り下ろす。慌てて飛び退くものの、追撃が早い。

咄嗟にサンダーパインドをセットし発動した。


 瞬間にバックステップで退避する。

 

 ちょっと待て、さっきまでここは真獄があったんだ。ティーちゃん達とはひそひそで会話は出来なかった。他の誰かがこの場所で戦っているという事はないはず…。


 少なくとも分断される前までは、かなりみんなとは離れていた。そして今の今まで、俺と乙女ちゃんがここで戦ってたんだけど…。


「主ッッ!!」


 クレアの呼び掛けで俺は、はっと我に返る。サンダーバインドで足止めしたはずのモンスターが、何事も無かったかのように襲い掛かって来た。

 

 考えるのは後だ。奇妙な合成モンスターの脚が、今にも俺の顔面を蹴り上げそうだ。


「うおぉっ!!」


 俺は慌てて仰け反り、バク転で退避した。何だあれは?デカい鳥の脚か?何なんだコイツは…。


 …あっ!!やべぇ…乙女ちゃん置き去りにしちゃった…。


 しかし、幸いな事に動かないヤツには反応しなかった。乙女ちゃんの方を見向きもせず、再び俺に襲い掛かってくる。


「うおおおぃっ!!何がどうなってんだよぉっ…!!」


 ベアの腕の先、掌の指先爪部分に、リッパーマンティスの鎌が五枚付いていた。正に切り裂く為の爪をベアの指先に付けた巨大ベアクローといった感じだ。

 

 タガーでは受け切れそうにないな。なんかヤバそうだ…。


 俺は合体モンスターの攻撃を神速で躱し、距離を取った。そこへ俺と入れ替わりに、ロメリックが飛び出してくる。


 しかし、超高速の槍の連撃が、合体モンスターの巨大ベアクローの乱撃で弾かれた。ロメリックが力負けしている…。

 

 もう技がどうとかのレベルじゃない。高速退避をしたロメリックの後ろから、光の弾丸が飛んでくる。


「いくでしゅよぉっ!!マドオォォォッッ、キィィィーック!!」


 シーちゃんの高速弾丸ドロップキックが、合体モンスターの胸に突き刺さる。かなりの衝撃で、モンスターを後退させたものの、倒すまでには至らなかった。

 

 俺はその瞬間を龍眼で見ていた。シーちゃんの攻撃は何かの衝撃吸収によって勢いを削がれていた。これは…衝撃吸収と言い、俺のサンダーバインドでの足止め効果を無視した事と言い…どこかであったような覚えが…。 


 懐に入った対象を捕らえようと、胸の両脇に無数に伸びたセンチピードの鋭い脚がシーちゃんを襲う。慌てて、合体モンスターを蹴ったシーちゃんは空中を回転しつつ退避した。


 コイツは…普通のキメラモンスターではなく、奇妙な合体モンスターだった。


 頭はデカい(くちばし)の付いたデスオウル(フクロウ)の頭、胴はコング、背中にはハーピーと思われる翼、腕はマッドグリズリー。

 そのマッドグリズリーの掌の先、爪の部分に、両手で十枚のリッパーマンティスの鎌が装着されていた。


 胸の部分には接近してくるものを捕らえる為の、センチピードの脚が両側から無数に生えている。

脚はジェットフラミンゴ、尻尾はアナコンダ?の様に太い蛇だった…。


 …何じゃこりゃ…。


 いきなりで驚いたが、周りを確認するとみんなは無事なようだ。


 その間に、怪物の後ろに周り込んでいたクレアが、強烈なハイキックで合体モンスターを蹴って吹っ飛ばした。

 クレアのパワーの強さが解かる一撃だ。


 蹴られた合体モンスターは錐揉みしながら土埃を上げ地面を転がっていく。暫く動かなかったので、倒したか?と、思ったが怪物はゆっくりと立ち上がった…。


 モンスターには傷一つ、付いていない…。


「…マジかよ…あの蹴り喰らって無傷で立ち上がんのか…」


 呆気に取られて、思わず声が漏れてしまった。呆然とする俺の横に来たティーちゃんがひそひそで話してきた。


≪アンソニーよ、いきなり消えて心配じゃったが…相手はやっつけたんか?≫

≪あぁ、こっちは終わったんだけど…何なの、コイツ?戦闘力と防御力が尋常じゃないけど…。

ていうか、姿形も普通じゃないけど…≫

≪…後はそいつだけなんじゃが…≫


 言われてみれば、乙女ちゃんと共に俺達を襲ったとみられるフードのヤツらは、既にあちこちに倒れていた。


≪アイツ、異常でしゅ。パンチしてもキックしても効かんでしゅ≫

≪あぁ、さっき見てた。衝撃を吸収するエネルギー波?が見えたけど…≫


「ホワイトさんッ!!ご無事でしたか…」

「…ぁ、あぁ、何とか倒せたよ。で、相手があそこに倒れてる子なんだけど…」

「なんじゃ?小娘の様じゃが…」

「今は気絶してるんだ。クレアがあのヘンテコモンスターを引き付けてる間にこっちに連れてきてくれる?ロメリックとシーちゃんで介抱して上げてて…」


 俺がそう言うと、二人とも素早く動いてくれた。


「ティーちゃん、アイツの鑑定はしてるの?」

「うむ、余りに動きが早いでのぅ。中々、鑑定させてもらえんかったんじゃが…。さっきクレア姉様が蹴っ飛ばした時に一瞬、動きが止まったからの…やっと鑑定が出来たんじゃ…」

「…ふむふむ、で鑑定結果はどう?」

「…うぅむ、また『マジックキャンセル』が付いておるのぅ…」

「…またか…」


 サンダーバインドの効果が消されたのはこのスキルのせいだな…。


「しかも今回は…さっきのシーの攻撃と言い、クレア姉さまの攻撃と言い全く効かなかった理由がハッキリした…。…『物理攻撃無効化』も付いておる…これは難儀なヤツじゃ…」

「…うはっ!!マジか!!」

「今回ばかりは、アンソニーの闘気トルネードアローでも効かんじゃろう…」


 ティーちゃんの言葉にどうするかを考えながら、クレアが戦っている合体モンスターを観察する。リーちゃんはキメラモンスターと言っていたが、俺個人の感想だと継ぎ接ぎの怪物くんに見える…。

 

 まぁ、どっちにしても合成なんだけどね…。 


 異常な程のスピードとパワーを兼ね備え、マジックキャンセルと物理攻撃無効化を持ち、各モンスターの良いとこ取りみたいなモンスター。

 ある意味、こいつは現時点でこの世界では完璧なモンスターの様に見える。


 俺は、考えていた。殴る蹴る、刀剣で切る、鈍器で殴りつける、レイピア、槍で突く、などの物理攻撃は効かない。魔法効果も一切効かない。


 一見、弱点は無いように見える。


 しかしどんなヤツにも、攻略法はある。俺は別の攻撃方法を模索した。そしてある方法を思いついた。と言うか思い出した。


 作戦を実行に移す前に俺は一つ、確認して置きたい事があった。


「ティーちゃん、さっき俺が消えたって言ったよね?」

「うむ、そうじゃな。突然消えてのぅ…」


 次に俺はリーちゃんに質問する。


「りーちゃ…あれっ?リーちゃんどこ行った…?」


 探しているとティーちゃんが自分のポケットを両手で指差した。リーちゃんはティーちゃんのポケットの中で、うとうとしていた…。いつも思うけど、良くこういう状況で眠れるよね、君…。


「リーちゃん、起きてーっ!!」


 俺の声に、涎を垂らしそうになっていたリーちゃんが、ハッと起きる。まだ寝ぼけ眼のリーちゃんに、聞いた。


「さっき俺が分断された場所に来たよね…?」

「…うん?なぁに?」


 リーちゃんは眠いのか頻りに目を擦っている。


「アレって物質透過で来たの?」

「…ううん、違う…。…亜空間転移だけど…それが何…?」


 亜空間転移か…。


 つまりあの真獄ドーム、ドームと言うか球状なんだけど、その場所ごと別空間に移動するスキルという事かな…。改めてスキルの説明欄を読んでみる。


 …やはりそのようだ。だから戻った時に、偶然だったけど戦闘場所が被っちゃったのね。


「ティーちゃんは俺が気絶させちゃった乙女ちゃんを二人と一緒に診ててくれる?」

「…アレはどうするんじゃ…?」

「アレは俺とクレアで、解体してくるわ…」

「解体ってどうやるつもりなんじゃ?」

「そうでしゅ、攻撃出来んのに解体は無理でしゅ」


 いつの間にか、シーちゃんが前線に戻ってきてた。後ろをチラッと見ると。ロメリックが介抱している。ティーちゃんとシーちゃんは俺の言っている事が良く解らないようだ。


「…まぁ、待ってて。あの子の介抱お願いね、すぐ戻るから…」


 そう言って俺は戦っているクレアに神速で接近する。


「…クレア。まだ本気出してないよな?」

「あぁ、わらわが本気で戦ったらこの辺りは生物が生きておれぬ荒廃の地になりますぞ?」

「うん、良いね。今回は本気出してもらうよ。…ただ擬人化のままで頼む」

「…えぇ、それは良いのですがどうするのです…?」


 戦うクレアに神速で接近したまま、俺は作戦を伝えた。

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