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レベルアップ。

 乙女ちゃんは後頭部に手をやると目を隠している布を解いた。


 まさか!!マー〇ルのあの人みたいに目から強力なビームとか出さないよなw?


 目隠しを取った乙女ちゃんの顔はゾッとする程、すんごい形相だった…。


 やはり見た感じはかなり若い。素は美人な子だと思う。しかし、見開いた目は血走り、歯ぎしりも凄かった…。


 取り敢えず目から強烈なビームとか出なくて良かったw


 様子を見ていると、どんどん顔が変わってきている。


 俺はここを動かなくても、もう勝てる確信を持っていたので、この怒り狂った乙女ちゃんというか聖女の力を見せて貰う事にした。


 真獄の反響効果は音波感知センサーを最大出力で放出する事で掻き乱し、軽減させている。

だから俺的には結構余裕だった。


「…おっ、乙女ちゃん凄い顔だねぇ…。ゴミの様なおっさんに追い詰められたのがそんなに悔しいの?なんか凄い歯ぎしりしちゃってるけどw顔がヤバいんじゃないw?」

「…うるせぇんだよッッ!!このゴミクソがァッッ…!!」


 完全に口調も変わり、顔も別人になっていた。結構、余裕を噛ましてた俺もちょっと焦った。何だ?完全に別人だぞアレ…。どんどん表情…というか顔自体が変わっていってる…。


 元々、二人いたのかな?…いや、違うな。装備や法衣は変わっていない。ただ顔と口調、そしてカラダ付きが少し変わっている程度だ。


 レーダーマップで確認したが一人だけだ…。 


 これって『ダブルフェイス』っていうスキルなのかな…二重人格ってやつ?初めて見たけど、別の意味でスゲーコワいな…。


「…オイッ!!コラァッ、ゴミィッ!!これからテメェを嬲り殺しにしてやるからよォッッ…!!」

「…ふーん、あっそう…。じゃ、やって見せて。まぁ多分、無理だと思うけど…」

「…さっきからゴチャゴチャうるせぇんだよッ!!そんなに喰らいたきゃ、喰らわせてやるよォッッッ!!」

 

 そして鬼のような形相に変わった乙女…いやなんかもう皺だらけの老婆だな…鬼婆が枯れ木の様な腕を天に突き出す。


「イヒヒヒヒィッ!!…どうら、喰らってみろォォッ…!!」


 叫んだ鬼婆は、どこから出したんだか突然、短剣で自らの腕を刺した。


「ウオォォッ!!こっ、これはっ…!!」


 思わず声を上げてしまった。俺の腕から、いきなり血が噴き出した。鬼婆が刺した場所と同じだ。



 …ああ、こういうヤツね…。



 自傷する事で範囲内の対象を傷付けて、じわじわ甚振るわけか…。

ちょっと違うけど漫画で近いのいたな。自殺を図る事で範囲内の対象も殺す、みたいなヤツ。


 でもこのスキル、相手を殺そうと思ったら自分の心臓刺すとか頸動脈切るとかしないとダメなんじゃ…。その後どうやって自分をリカバリーするんだろうw?


「アヒャヒャヒャヒャッッ!!」


 狂乱しながら、鬼婆は自らの身体を傷付けていく。うん、結構痛い。血も噴き出してる。身体も重くて動かない。

 

 …だから何w?


 状況的には全くヤバいと思えない。俺はがっくり来た。なんか拍子抜けしたわ…。人格入れ替えてまでやるから、もっと凄いというかえげつないのが来ると思ってたんだけど…。

やっぱり俺の勝ちは確定だな。


「ヒャッヒャッヒャッヒャッッ!!ァハッ!!ハッヒャアァッッッ…!!どうだいッ!!怖いかッ、恐ろしくて小便ちびるだろうがアァァァッッッッ!!」

「…あの、えーっと…お婆さん、で良いのかな…?…もう良いんで。うん、良く解りましたんでもう結構です…」

「アアッッ?何がもう結構なんだよォォッッ!!もっと恐怖に怯えて小便とビチクソ漏らせやァァッ!!」

「…全然、期待外れのゴミスキルだったから見て損しました。もうこれで終わりで良いです」

「アアッ、そうかいッッ!!じゃあ、ゴミクソは死…」


 鬼婆の言葉はそこで止まった。


「…ええ、終わりにさせてもらいますよ…」


 俺は、頭の上に展開したアイテムボックスに手を伸ばす。そこから龍神弓を取り出した。


「最初は結構凄かったのに、終わりがしょぼくてとても残念です…」


 鬼婆は自傷行為を止めて、血走った眼を見開いていた。


「…お、お前…、あ、あ、アーチャーだったのか…?」

「はい、正解!!…では、さようなら…!!」


 俺は龍神弓の弦を引き絞るとスキル狂襲乱射をセット。今まで狂喜乱舞して自傷行為をしていた鬼婆が、正に鬼気迫る形相で、突進してきた。


「…このクソガキャアァァッッ…殺してやるゥゥッ!!」


 俺は鬼婆に向けて狂襲乱射をマシンガンの様に打ち込んでいく。

この攻撃で鬼婆を倒すのが目的ではない。

 

 どっちにしても接近して貰わないと困るからだ。俺からは動けないからね。


 老婆の癖に、乱射を避けながら高速で接近してきやがった。都市伝説の高速道路追い掛けて来るババァかよ…。矢筒の中の矢がどんどん減っていくが、俺は気にしなかった。


 俺が全ての矢弾を打ち終わった後、鬼の形相の婆が目の前まで来ていた。そして躍り掛かって短剣を振り翳す。


「殺してやるッッ!!」


 そういう狂気を孕んだ目で、嬉々として短剣を俺の心臓を目掛けて突き出してきた。


 …コイツ、アホだ…。


 瞬間、俺は鬼婆の手首を掴む。

突進してきた勢いを利用して、手首を掴んだまま鬼婆を蹴り上げ、そのまま後ろの地面に思いっきり叩きつけた。


「グハッッ…!!」

「…では、もう一丁っ!!」


 俺は左手で鬼婆の手首を掴み直し右手で法衣を掴むと、今度は鬼婆を後ろから担ぎ上げるようにして前に叩き付ける。


「グギャァ…ァ、ァァ…」


 遠距離でこそ効果を発揮する一連の攻撃を、最後の最後で無駄にしたなコイツ。ていうか、この『ダブルフェイス』ってスキル…いらないでしょw?このスキルが全てを台無しにしてると言っても過言じゃないw

 

 まぁ、途中まで動けなくても弓攻撃があるのを忘れてた俺が偉そうに言う事じゃないけどw


 わざわざ狂襲乱射で攻撃したのは、接近させてスキルを抽出しないとここから永遠に動けないし、真獄からも出られないからだ。

 

 まぁ、攻撃しなくても飛び掛かっては来たかもしれんけど…。念の為ってやつですな。何もしないと訝しんで近づいて来ないかもだからね…。


 俺は、地面の上で気絶した鬼婆の首を掴む。

『ダブルフェイス』と『惨苦の十字架』というスキルが見えた。


 乙女ちゃんのスキルとは別枠なのか…。さっきまでの自傷行為で範囲内の相手を傷付けていたのは『惨苦の十字架』だったようだ…。


 まずは『惨苦の十字架』を抽出、続いて『ダブルフェイス』を抽出した。同時に突然、俺の全身が光る。


「うぉっ、何じゃこりゃ…」


≪スキル泥棒がレベルアップしました。新たに、複合するスキルの分解が可能になります≫


 頭の中で、固有スキルのレベルアップのインフォが流れる。このスキルってレベルアップするのか…。


『ダブルフェイス』を抜き取ったので、鬼婆の人格から元の乙女ちゃんの人格に戻っていた。


 続けて『懺悔の十字架』を抽出。俺の身体が軽くなり、動く事が出来るようになった。

更に『茨の道』を抜き取る。


 最後に『炎刑十字葬』と『真獄』だ。この二つは確か赤色だったな…。

天獄を籠手から出して翳すと、あっさりと二つのスキルを抜き取る事が出来た。


 真獄は使えそうなので、自分のスキル欄に移動させようとしたが動かなかった。

何で…?バニッシュの時はすんなり移動できたんだけど…。


 考えていると突然、インフォメーションが流れた。


≪真獄に付随する、反響増悪を取り外しますか?≫


 俺がYESを選択すると、天獄の中でスキル欄が開いた。まずは反響憎悪…それを切り離せって事か…?


≪真獄から反響憎悪を分解します。3、2、1…。スキルの分解に成功しました。真獄の移動が可能になります≫


 どうやら複合するスキルはそのままでは移動出来ないようだ。


 『スキル泥棒』がレベルアップした事によって複合しているスキルツリーを開いて分解し、自分のスキル欄へと移動する事ができるみたいだ。


 スキル欄を開いて見ると『スキル泥棒+1』となっていた。



 俺は乙女ちゃんから抜き取ったスキルを整理していく。

『茨の道』これはいらない。『懺悔の十字架』これもいらない。


 しかしこの『懺悔十字架スキル』、その場から動けなくなっただけで両手両足は動いたから助かったけど、磔状態だったらヤバかったな…。

 

 『惨苦の十字架』と『ダブルフェイス』もいらない。いらないスキルは全部削除しといた。

 

 『炎刑十字葬』はそのまま天獄に放り込んでおいた。正直扱いが良く解からんし…。『真獄』だけ俺のスキル枠に残しておいた。


 しかし、このスキル名を見ていると、やっぱり癒しの聖女っていう方じゃないな…。

 オル〇アンの方をモデルにしてるのかな…?それにしても途中からのあのガラの悪さは『聖女』と呼んでいいのかどうなんだか…。


 俺個人としては、聖女っていうとア〇アのアリ〇アさんみたいなイメージなんだけど…。


 しかし、真獄を抜き取ったものの、スキル自体が解除されていない。俺は一瞬、焦ったが、よく見ると発動したまま抜き取っていたので、そのままだったようだ。

 

 真獄をオフにすると無事スキルが解除され、ドームというか真球が消えた。さて、皆の方はどうなってるかな…。


 まぁ、クレアがいるから速攻で終わってると思うが…。

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