表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/209

怪しいヤツら。

 俺が男達を観察をしていると、問答無用で襲い掛かってきた。正面に槍、その右に戦斧。左側にナイフのヤツと右側面には剣のヤツが俺の後ろに周り込もうとしていた。


 槍のヤツが突進と共に連続刺突攻撃を繰り出してくる。それを全て左のタガーでいなし、隙を見て右手で槍を掴む。


 俺はそのまま、槍のヤツを引っ張り込む。引っ張り込んだ槍のヤツを勢いそのままに、後ろから袈裟切りで襲い掛かってきた剣のヤツにぶつける。


「…グワァッ!!」


 いきなり目の前に現れた槍のヤツをぶつけられて、剣のヤツは共に折り重なって倒れた。


 続いて左側から、俺の脇腹を狙ってくるナイフのヤツの突きを全てタガーで弾いた。


 槍のヤツの時と同じ要領で、突き込んできたナイフのヤツの手首を掴むと、タガーを持ったままの左拳でリバーブロー。


「…グフッ!!」


 手首を掴んだまま、左手でベルトを掴む。俺はナイフのヤツを振り回す様に遠心力で戦斧のヤツに思いっきり投げつけてやった。


「グワッ!!」


 人間をぶつけられて折り重なるナイフと戦斧。

 

 体勢を立て直した、槍のヤツが俺の正面から突いてくる。それをジャンプで避けて、槍の柄を思いっきり上から両脚で踏みつけた。


 槍を握ったまま体勢を崩した槍のヤツを右足のサッカーボールキックで蹴り上げると、上段の構えで切り込んでくる剣のヤツの手首を無刀取りの要領で掴み、全力で手首を握り潰す。


「…ゥギャァッ!!」


 キン〇マンに出てくる超人みたいな叫び声を上げて、剣のヤツが武器を取り落した。すぐにヤツの首を掴んで振り回し、接近して俺を刺そうとしていたナイフのヤツに投げ付けた。


 そこに、俺の身体を真っ二つにしようと戦斧を持った男が、横薙ぎで得物を振り回す。ジャンプで避けつつ、得物を振り抜いて背後が見える戦斧のヤツに俺は回転しつつ、勢いを付けて上段後ろ廻し蹴りを喰らわせた。


「…中々、動きの速い野郎だな…」


 少し離れた距離から戦闘の様子を見ていたチンピラフードの呟きが聞こえた。


「残念だけど、お前らの攻撃なんか俺には当たらんよ?」


 三度、槍のヤツが俺に襲い掛かってくる。


 その連続攻撃を全てバックステップで避けつつ、後ろからナイフで突き込んできたヤツの腕を掴み、サンダークラップ。


 バチッッ!!と明滅する激しい光と共に、電撃で動きが鈍ったナイフのヤツを、そのまま前進して来た槍のヤツにぶつける。

 

 何度も、人間をぶつけられて、ヤツらは折り重なって倒れていた。


 ナイフと槍のヤツは軽装、剣と戦斧は全身鎧だが、この国の装備とは違うものだ。

やっぱりコイツら、工作い…


「…ぐッ…!!」


 俺は突然、背後に激しい痛みを感じて振り返った。背後から、俺の方にチンピラフードが右手を翳していた。


「…ククッ、完全に喰らったな!!」

「…くそっ、痛ってぇな…」


 何だ?今、何をされた…?様子見していたチンピラフードが攻撃してきたのは解かったが…。暗器か…?

 

 再びヤツが何かを飛ばしてくるのが見えた。俺はそれを龍眼で確認する。


 かなり速いな…。これは何だ?…妙に光ってて…液体か…?俺は横に避けつつ、飛ばされてきた物を、龍眼で観察する。かなりの高圧縮で打ち出された液体のようだ…。


 しかも緑と黒が混ざったような色の液体。俺が避けた先を見ると、森の草がただれた様に溶けていた。これは…酸か?いや違うな…。草はただれて溶けているが気化しているような状態ではない。


 しかし観察している余裕がなくなってきた。全身に痺れが出て、結構な痛みが全身を奔る。更にヤツを見ると再度、液体攻撃を射出していた。


 …クソッ、何だコレ?魔法か…?


「…ククッ、何か分からなくて戸惑っているみたいだな!!」


 液体を飛ばすチンピラの攻撃と連動して、剣、ナイフ、戦斧、槍が復活して俺に襲い掛かってきた。


 本気でやらんとマズイな…。身体の中に、高圧縮で打ち出された液体を打ち込まれている。動きを弱らせる麻痺毒か…。猛毒耐性とウィルス耐性はあるから何とかなるだろう。しかし麻痺耐性は持っていない。とにかく時間を掛けるとこっちがやられるかもしれん。


 俺はすぐに『神速』を発動した。


 まずはナイフのヤツの頭を背後から掴むと、思いっ切り地面に叩き付ける。気絶したのを確認して、次は剣のヤツだ。剣を振りかぶってきていたが、前面に闘気を展開、そのままファントムランナーで全力タックルして吹っ飛ばす。


 吹っ飛んで行った先でそのまま上から首を掴み、コイツも後頭部を地面に叩き付ける。剣のヤツも気絶させた。


 よし、次は戦斧のヤツ…と思っていたら、そこにクレアが立っていた。


「…主、楽しい事を独り占めするなど良くないですぞ?わらわも参加させて頂きますッ!!」

「クレアか、ちょうど良いトコに来た。助かっ…」


 と、言おうとした俺の目の前で、クレアを背後から襲う戦斧。


「ウオォォッ!!女ァッ!!退けェッ!!殺すぞォォッ!!」

「…フゥッ、やれやれだな、人間。誰に向かってモノを言っておるか解っておらんようだな…」


 怒声と共に、背後から襲う戦斧の横薙ぎの一撃を避けもせず、振り向きざまにスタンスを広げて膝を曲げて腰を落とし、一瞬で裏拳を放った。


「…かはッッ…」


 戦斧は脇腹を砕かれて、身体をくの字に曲げる。そのままクレアは左のひざ蹴りで戦斧を起こすと右掌でヘルムを掴んで一気に地面に叩き付けた。


 なんつースピードとパワーだよ…。戦斧は何も出来ずに一瞬にして戦闘不能になった…。戦斧の金属の鎧の脇腹の部分が、完全に打ち砕かれて壊れている…。


 …うわっ、容赦ねぇ…。


 あと残ってるのは槍と…と思ってたら槍のヤツも既にクレアがハイキックで無力化していた…。

槍のヤツは吹っ飛んで森の奥の木にぶつかって、ずり落ちていた。

 

 最後は液体飛ばすチンピラだけか…と、確認したらクレアの背後からヤツが右手を翳していた。


「…マズイッ!!クレアッ、避けろッッ!!」


 クレアはヤツを振り返りもせず余裕の表情だ。


「オラァッ!!オマエら完全に喰らったな!!二人とも、もう動けなくなるぜェッ!!」


 得意絶頂でフードを外し叫ぶ、チンピラくん。如何にも現代日本のチンピラといった感じのヤツだ。短髪でロッド〇ンみたいに色々なカラーリングをしている。そして耳にピアス。

 

 そんなヤツに、クレアは振り返りもせず静かに話す。


「…ふむ、こんなものか…。これがお前のスキルか…?」


 クレアは溜息を吐きながら、肩を竦める。


「…主、こんなヤツは観察などせずとも、先手で容赦なく粉砕すればよいのです…。主は相手を観察し過ぎです。この調子では、この世界での名声は一向に上がりませんぞ…?」

「…いやいやいや、俺はクレアと違ってガチガチ近接職じゃねーから!!いきなり粉砕したら、スキル抜けねーだろ…。しかも名声とかいらねーし」


 普通に話をする俺達を見て、驚愕の顔を見せるチンピラくん。


「…オイッ!!ちょっと待て、お前らッ!!…何で普通に動いて喋ってんだよッッ!!」


 チンピラくんには俺達二人が普通に動いて会話している事が信じられないようだ。


「…猛毒だぞ…?神経麻痺起こして血反吐噴き出して死ぬ、毒の中でも凶悪なヤツなのに…クソッ、何で…効いてないッ…」


 得意絶頂で勝ちを確信していたヤツは、油断してこっちに接近していた。ヤツがスキル泥棒のサーチの範囲に自ら入ってくれたので、既に俺にはコイツのスキルが見えていた。


『ベノムショット』神経麻痺を起こす猛毒を高圧縮かつ、高速で飛ばす。という説明文が見えたが、喰らった後の観察時になんとなく察しは付いていた。


 クレアは最初から全身に闘気を張り巡らせているので、全然喰らってない。ヤツのベノムショットが、ヒットする瞬間に闘気アーマーによって弾かれるのを見たからな…。


 俺は一回喰らったが、後は全て避けている。毒に関しては耐性があるので影響はなかった。痛みも痺れも残っているが動けない程ではないので問題ない。耐性と振り切れステータスのお陰だな…。


 何かどんどん人間離れしてるような気がする…。


 そしてロメリック、ティーちゃん、シーちゃんの三人も戻ってきた。戦闘が始まった直後に、リーちゃんが三人に知らせに行ってくれたからね。

 

 攻撃に夢中になっていたコイツは、ティーちゃん達三人が戻ってきていた事に気付いていなかった。完全に形勢逆転だな。

 

「…て、テメェら…に、人間か…?何で…俺の毒が効いていない…?…そんな…まさか…」


 恐怖なのか、じりじりと後ずさりを始める毒液チンピラくん。


「お前のスキルは確認させてもらった。さっき高速で飛ばしていたのは『ベノムショット』だろ?神経麻痺毒を飛ばすスキルね。…で、水質汚染の原因は…やはりお前か。『プル―ジョンアーム』ウイルスや細菌を増殖させて汚染させるスキル…。…それとウイルス、細菌、猛毒の諸々の耐性が付いてる訳ね…」


 毒手的なヤツか?そんなキャラ、漫画で何人かいたなw


「…!!…テメェッ!!どうして俺のスキルが分かったッ…!!」

「…これからお前にさよならをするから、最後に教えておいてあげよう。俺には他人のスキルが視えるんだよ…そしてェェッ…!!俺達にあったのが運の尽きだったな!!お前のスキルは俺が回収させて貰う。今日からお前はただの人間デス!!バイバイ…」


 俺がヤツに神速で接近し、いつものキメセリフを言って首を掴み上げようとした瞬間―。その横から一瞬にして飛び出したクレアが、先にヤツの首を掴み上げる。

 

 …え?アレw?


「…オォォォ…!!…ウラァッ!!ウラウラァッ!!ウーラウラウラァァッ、ウラァァァッ…!!」


 クレアの拳が、百〇拳のように、もしくは流〇拳のように、そして更にしつこい様だがオラ〇ララッシュのように無数に繰り出される。


「ウラウラウラアァァッッ…!!」

「…ぐッ…ゲフッ!!…ゴフッ…グゥッッ、ガハァッッ…!!」


 クレアの拳打のラッシュで、チンピラが吹っ飛ぶ。ヤツの顔が、漫画のように血だらけでボコボコになっていた。


 …俺が最後の締めをやろうとしたんだけど…。…ま、まぁ仕方ない…今のうちにスキルを抽出するか…。


 俺はスキルを抽出しながら、考えていた…。俺も今度、最後のラッシュやってみようかな…。クレアのラッシュ攻撃を受けて顔面ボコボコになっていた毒液くんの首を俺が掴む。


 クレアが強烈なラッシュを喰らわせたので毒液くんは全く動く気配がない。気絶していたのでサンダークラップを喰らわせる必要がなかった。


 麻痺のせいでちょっと身体が痺れていたが、身体の痛みもほぼなくなっていた。


 しかし、盗賊の類より強い相手になってくると籠手のスキルは効きが格段に下がってくる…。一度、ナイフのヤツに喰らわせたが、動きが弱っただけで気絶まで行かなかったからな…。もうちょっと出力を上げてもいいかもしれんな…。


 籠手のスキルは一定以上の威力は出ないので最大で放って耐えうる者が現れた時は通用しなくなる。まぁ、その点は後で考えるか…。


 そろそろスキルの抽出が終わりそうだ。後、四秒ほどか…。その間に、東の方から別の光点が接近しているのを確認した。


「…みんな、東から別のヤツらが来る。五人だ、戦闘準備しといて…」

「うむ」

「分かりました」

「う~、気合が入るでしゅね!!」

「シーよ、わらわも負けんぞ!!」


 俺達を迂回するように森の南側を移動している。相手にもレーダーマップを持ってるヤツがいるのか…。どうやら俺達の背後に周ろうとしているようだ。

 

「皆、気を付けて、後ろに周り込んで…」


 俺が、言い終わる前に突然、辺りが急にサッと暗くなった。何だ…?俺は毒液くんから手を離し、周りを確認する。皆がいない…。


 …俺が周り込んでる光点に気を取られている間に分断されてしまったようだ。


 周りは黒いドーム状の大きな空間で覆われていた…。『密談』で外にいるであろうティーちゃん達に連絡をしてみる。


≪ティーちゃん、シーちゃん聞こえる…?リーちゃん…≫


 しかし返答はなかった…。ダメか、完全に遮断されている。どうやら俺だけここに囚われてしまったようだ…。


 …このドームは何だ?ドームの端まで行って触ってみる。バチッと電流が弾けた。このドーム全体に電流が走っているのか…?…電流爆破デスマッチかよw?


 そんな事を考えつつ観察していたら、後ろに気配を感じて俺は振り返った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ