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新装備、お披露目。

 サネルの爆縮に巻き込まれた俺の頭は、ド〇フの爆発コントの様にチリチリになっていた。

 

 マジで闘気を全身に張り巡らせる訓練しないとな…本気出すか。俺は、爆縮後のチリチリ頭を何とかするべく、必死に手で髪をすいてみた。


 元通りとはいかなかったが、なんとか見れるまでに戻った。顔のすすも、いつも常備している布の端切れで拭き拭きした。


 装備の方はどうするかな~…。焼け焦げ防具だとちょっと恥ずかしいのでどうするか考えていると、ふと思い出した。

 

 そう言えば以前、世界樹でインナーと一緒に装備を仕立てて貰ってたな…。


「…リーちゃん、ちょっとしたお願いがあるんだけど…」

「ん?なぁに?」


 俺はリーちゃんに頼んで、その装備が完成しているかどうかの確認と、完成していればここに持って来てくれるように頼んでみた。


「前さ、世界じ…」


 と、言おうとして、慌ててひそひそに切り替えた。ロメリックには、世界樹の事は言えないからな…。


≪前さ、世界樹の洋服屋で仕立てて貰ってる装備があったでしょ?完成してたらそれを持って来て欲しいんだけど…≫

≪いいけど、出来てなかったらどうするの?≫

≪その時は今のままで我慢します…≫

≪ほいほーい。じゃ、確認してくるね…≫


 俺はリーちゃんに纏まったお金を渡して、世界樹へ飛んでもらった。待っている間に、ティーちゃんが俺がずっと手に掴んでいたモノに気付く。


「アンソニーよ、さっきから手に持っているそれは何じゃ?」

「ん?あぁ、これね。皆に聞こうと思って持ったまま忘れてたよ」


 俺は、まるで風船を持つかのように掴んでいたそれを皆に見せる。


「さっき、クレアが掴み上げてくれる寸前に、サネルの身体から出て来たコレをギリギリ掴んで持って来たんだ。恐らくこれが、サネルのスキル『バニッシュ』だと思う。…咄嗟に掴んで持って来たんだけどさ…」

「…ふむ、それでアンソニーの中に取り込めたんかの?」

「それがここに戻ってくるまでに試したんだけどやっぱり駄目だった。赤色の危険なスキルだからかな?」


 その会話を聞いていた、シーちゃんが指摘する。


「危険なスキルなんでしゅよね?それなら『天獄』で吸い込めばいいんじゃないでしゅか?」

「…あっ、確かにそうだな。シーちゃんありがと。試してみるよ」


 そう言えばそうだった。神様から借りてた『天獄』を忘れてたわ…。俺は右腕の籠手から、天獄がセットされているスロットを出す。


 俺は左手にタマシイを持ち替えると、右腕の天獄をスキルに近づける。すると掃除機がゴミを吸い込む様に、あっさりと天獄がスキルを取り込んだ。


『天獄』でバニッシュを吸い込んだ後、天獄のウィンドウが開いた。その下を見ると、移動、削除の項目がある。


 危険な赤色スキルの回収には天獄が必須であるという事だな。天獄で吸い取り、移動するか削除するかを選択出来るようだ。


 試しに、『バニッシュ』を自分のスキルウィンドウに移動させてみる。左手で天獄ウィンドウのバニッシュを掴んで、動かしてみると自分のスキル欄の方に移動出来た。


 特に危険だからと言って俺が使用出来ない訳ではなさそうだ…。しかしこのまま持ってても何か怖いので、天獄に戻して置いた。


「やっぱり天獄じゃないとダメだったみたい。今度から危険そうなスキルは天獄で吸い取るよ」

「うむ、取り敢えずは良かったのぅ」

「シーのおかげでしゅ」

「うんうん、ありがとうね」


 俺はしゃがんで、ドヤ顔のシーちゃんの頭をナデナデしてあげた。

 

「…ホワイトさん、それは…」

「…さっき話した、トテモ偉い人が俺に持って行けって渡してくれたものなんだ。スキルがどうしても抜けない時はこれを使え、ってね…」

「そうですか…。かなり貴重で高価な物の様な気が…」

「…そうだね。メッチャ偉い人が貸してくれたものだからねぇ」

「…この世界の中でも相当偉い方なんですか?」

「そうだね…帝国の皇帝よりも教皇よりも…だね」


 断定する俺の言葉に、ロメリックは驚き、息を呑む。


「…それ程の方…ですか…」


 そう呟くと、ロメリックは沈黙し何か考え始めた。そのタイミングで、ようやくリーちゃんが戻ってきた。


「ただいま~、ちゃんと出来てたよぉ~」


 そう言いながら、小さな鞄の中から、新しい装備一式を出してくれた。


「おぉっ!!良いねェ…このブラックが!!ちょっと着替えて来るから待ってて…」


 俺は急いで森の中の茂みへと入って行く。作って貰っていたのはブラックのシンプルデザインのハイネックなミリタリーライダースとデニム素材のカーゴパンツだ。

 

 そくささと着替えてから、皆にお披露目するべく、俺は森の中から颯爽と出た。


 爆縮によって装備がコゲコゲになってしまった為、リーちゃんに頼んで世界樹の店で制作注文していた

装備一式を持って来て貰った。


 俺はすぐに近くの茂みに入り、着替える。


「…どう?これ、カッコいいかな…?」


 俺が聞いているのに、みんなだんまりのままだ…。暫くしてようやくティーちゃんが口を開いた。


「…アンソニーよ、上下とも黒っぽいのは…趣味が悪くないかのぅ…」

「靴だけ赤くて、なんか凄く悪い人に見えましゅ…」

「もう少し、色遣いに気を使った方がいいと思うけど…そのセンスはないね~」

「…ホワイトさん、その装備は何と言うか…その…ギャングの暗部の様ですね…」



 ……………。



 …俺のファッションセンス全否定された…。しかし約一名だけ、大絶賛するヤツがいた…。


「さすがですぞ!!それでこそ我が主!!全身を黒で纏めるとは。漆黒の美を装備に取り入れるそのセンス、わらわは感服致しましたぞッ!!主の肌の白さを引き立たせ、同時に強さをも表現しつつも…」


 なんか言い回しが凄くアレなんだけど…もうこれ以上、何も言わないでいて欲しい…。ここまで言われると逆に皮肉にしか聞こえない…。


 他の皆は、クレアの大絶賛に苦笑いしてるし…。


 恥ずかしくなってきたが元の装備が直るまでは、これで我慢するか…。


 俺は普段、こんな格好でカワ〇キのアメリカンクルーザー乗ってるんだけど…。ここまで客観的に否定されると心が…。


 ファッション全否定でタマシイが抜けそうになっている俺の前で、クレアが構わず大絶賛の言葉を嵐のようにぶつけてくる…。

俺はタマシイが昇天しかけていた…。


 暫くしてから、ようやくタマシイが戻って来た俺に、ロメリックが話す。


「ホワイトさん達のこの世界での活動の目的を教えて頂きましたので、今回の水質汚染調査が終わりましても、ブレーリンギルドとしては引き続き支援を継続させて頂きますよ」

「ありがとう、助かるよ」


 その後、今回の盗賊に偽装した工作員の件と、気絶したままの抜け殻ナシゴレンを回収してもらう為に、ロメリックが伝書をスラスラと書く。


 口笛を吹くと、傍の森に待機していたと思われる鳩が飛んできた。ロメリックの肩に留まる。鳩の首に付けられている筒に伝書を丸めて入れていく。蓋をしてから、ブレーリンに向けて鳩を飛ばしていた。


 そして、もう一通の伝書を書くと、先程とは違う口笛で鳩を呼ぶ。同じ様に伝書を鳩の首の筒に入れると別の場所へも鳩を飛ばしていた。



 俺達は砂の王国からの工作員であるサネルとナシゴリくんを倒し、無事スキルの回収も完了した。危険な赤色スキルは、天獄で吸い取ってから移動、削除及び使用が可能になるという事も解かった。

 

 しかし、新装備お披露目会は大惨敗で心が折れかけたが、何とか持ち直した。


 ロメリックが鳩を飛ばした後、気絶したままのナシゴリと工作員達を近くの木に纏めて縛り付けておく。すぐにブレーリンから、身柄拘束の為の衛兵達が来るそうだ。


 そして俺達は再び、シャリノアに向けて歩き始めた。

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