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頭ぶつけて異世界とかwおっさんがちびっこ妖精達と冒険してたら最凶ファミリーが出来ました。リミットレスのおっさんと最凶ファミリーが異世界を席巻する。  作者: 駄犬X
キメラモンスター編

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砂漠の暗殺者。

「…いやね。ここで争うのは賢明じゃないと思うんですよ、この俺は…」


 女は無言のままだ。人の話聞いてんのかな?


「もうマヌケくんは必要ないでしょう?だったらアンタが退いて、俺が言った事を王様に伝えてくれればいい。ただ、俺が言いたいのはですね、圧力があったとしても近い国でおかしなマネはするな。という事です。正面切って戦争になるとお互い困った事になるでしょ?漁夫の利を狙うヤツもいますよ?…お分かり頂けましたかね?」


 その言葉にしばらく沈黙していた女が、フッ、と鼻で笑う。


「知ったような口を利くヤツだな…」

「知ったような、かどうかは知らんけど、俺は道理を説いているだけですよ?筋は間違っちゃぁいないでしょう?」

「…フンッ!!工作をしているかどうかなど、お前達を全員この場で殺せば問題ないだろう?この王国の者達も気付く事などない」

「…そうかな?そこのロメリックは王にも知られている王国の元Sランクだよ?そんな人物が調査に同行中、調査依頼を受けた者達と共に消えたら…当然、調査は入ると思うけど?そうなると、工作どころか潜伏すら難しくなるんじゃないかな~…」

「…何を言おうがお前の口車に乗る程、わたしは愚かではない!!お前達を消せば済む事だ」


 このやり取りで、砂の王国が教皇領や帝国と関わっているのは確定だな。しかし、凄い自信だな。俺は思わず笑ってしまった。


「フフッ…そうですか。…解りました、せっかく人が逃げろと忠告してやっているのに聞いて頂けないとはね…」


 全然、逃がす気はないけど。まぁ大抵人間ってのは逃げろって言われると逃げないんだよなw

でも逃げるなって言うと、逃げちゃうんだよねw


「仕方ない。ゴミとゴキブリは早めに処理しないと増えてめんどくさいからな。叩き潰されても、文句言うなよ?」

「フッ、叩き潰されて転がるのはお前達の方だ…」

「そうかな~?それは無理だと思うよ?…ついでだからもう一つ、やる気になってるから忠告しとくよ。まぁ、アンタが倒せるのは良くて俺だけかな?だから、俺を先に狙った方がいい。なんせ俺はただのおっさんだからね。他の三人を見た目で判断してると、痛い目見るのはアンタの方ですよ?」

 

 俺の言葉と同時に女が動いた。



 女の名前は、サネル・アン・ジーナ。二十九歳。砂の王国に生まれる。幼い頃、両親と死に別れて以降は孤児院で育った。


 十三歳の頃、両親の死について聞かされる。王国同士の紛争に出陣していた両親は、この国の能力者に敗北し、自爆。

 復讐の為に軍に所属し何でもやった結果、特殊工作部隊に入隊する事となった。


 『バニッシュ』スキル発動後、亜空間に入り、移動する事が出来る能力。赤色スキル。※※※※によって与えられたスキル。


 『シャドウキラー』対象の影を攻撃する事で、動きを止めて攻撃する。主に暗殺で使用する能力。黄色スキル。


 俺は、この情報を戦闘前にティーちゃんから貰っていた。問題は初めての赤色スキル『バニッシュ』だ。何者かによって与えられた能力か…。誰に与えられたかは伏字になって見えなかった…。


 このスキルは極めて危険だと思う。

 

 なぜシルフィアがこの女を認識出来なかったのか、俺のレーダーマップにも掛からず、龍眼でも視えなかったのか。このスキルの説明文で解かった。


 亜空間に入るからその存在が消滅するのか。俺達のいるこの空間には存在しない事になる。だから認識出来ないんだ…。


 ただ、このスキルはかなり危険だが、恐らく俺以外の三人には通用しないだろう。客観的に見てこの四人の中で、コイツと闘って苦戦するのは俺だけだ。戦闘経験値が他の三人に比べて極度に少ないからね。


 確かにステータスは振り切れてるから高い。そしてスキルを抽出している。

しかし状況に応じて、スキルを使い分けが出来るか、と言われたらかなり難しい。


 かなり危険だが、コイツと闘えば戦闘経験は積めるかもしれない。そう思って俺はコイツに忠告して、しかもこっちに来るように散々煽ってやったんだが…。

 こういう、人の言う事聞かんヤツいるよね。


 サネルが最初に狙ったのは、ティーちゃんだった…。恐らく、ティーちゃんが精霊魔法を使って森の中のヤツらを殲滅しているのを見ていたんだろう。


 しかし、この女にとって選択した相手としては、最悪だ。まぁ、『普通は』援護職から潰すのがセオリーだからな…。しかしだからこそ、敢えて忠告してやったんだよね…。

 

 …うちのちびっこ二人は、普通じゃないんだよ…。


 存在を消し、一瞬にしてティーちゃんの背後に現れたサネル。背後からティーちゃんの細い首を狙い、シャムシールで横一文字に切り付けた瞬間―。



「…ッッ!!…グゥゥッ…アアァァァァァーッッッ!!」


 サネルが、天を仰いで絶叫する。ティーちゃんの背後でサネルが、ガックリと膝を付いた。サネルの右腕の手首から先が無くなっていた…。


 消し飛ばされた手首から、鮮血が噴き出している。ティーちゃんが静かに振り返る。


「…人間よ、短絡的じゃのう…。お前は、わたしを先に狙うと思うておったんじゃ。魔導師や回復師、援護する者を先に狙うのがセオリーじゃからの。…しかし女よ、甘いのぅ。チョコレートより甘いわ…。世の援護職がどうかは知らんが、接近戦を想定してないとでも思うたか、この戯けが…。しかも毒付きか…やはり人間は短絡的じゃ…」


 ティーちゃんの周りには、球状に旋回する無数のミニカマイタチが飛んでいた。既に精霊魔法を発動させ、防御態勢を取っていたようだ。これなら接近されても、攻撃は出来ないだろう。無理に攻撃すると、目の前のサネルの様になる。


 俺は他の二人も見た…。


 ロメリックは槍を回転させ特殊な空間を作り、その中にいた。これだと亜空間から出た瞬間に察知できる。ロメリックのスピードなら、容易に反撃出来るだろう。


 シーちゃんはカラダにプロテクトを纏い、四方八方に小さな透明の球体を衛星の様に飛ばしていた…。無属性魔法の何かなんだろうけど…初めて見る魔法だ。推測だけど、感知する魔法なのかな…。


 …戦闘が始まっても防御態勢取ってないの俺だけだった…。いやまぁ、俺はそういうスキル持ってないからね…。負け惜しみじゃないよw?


 サネルの無くなった右腕から、流れ出る血が止まらず地面を赤黒く染めていく。俺は静かに、サネルに近づいた。


「だから言っただろ?痛い目見るって…」


 俺が首を掴もうとした瞬間、サネルは俯き、痛みに耐えながら、左手でシャムシールを持って俺を切り付ける。


 しかしその動きには全くキレがなかった。だから簡単に腕を掴む事が出来た。サネルが取り落し、左手で掴んだシャムシールはティーちゃんのミニカマイタチでボロボロだった…。


 精霊魔法の威力の程が分かる。ティーちゃんは精霊を呼び出していなくても、ある程度の精霊魔法は使えるって言ってた。

 

 それでこの威力か…。いや、手加減してる方かもな…。


 俺はそのまま、サネルの首を掴む。暴れられても困るので、動きを弱らせる為に、最大出力サンダークラップを喰らわせた。

 

 気絶したのか、サネルが項垂れる。よし、危険な赤色スキルの回収をしますか。



 うんとこしょ、どっこいしょ。それでもスキルは抜けません。俺はティーちゃんに『ひそひそ』で聞いてみました。


≪…バニッシュだけ抜けないんだけど…赤色のスキルだからかな?コレどう言う事だろ?≫


 ティーちゃんは、


≪ううむ…≫

 

 と唸って考えに耽ったままだ。シーちゃんを見るが、


≪わからんでしゅ。自分で何とかするでしゅよ≫


 って言われるし…。リーちゃんは、口から涎垂らして寝てるし…。


 俺は焦っていた。ロメリックは、俺がサネルの首を掴んだまま、焦った表情をしているのを見て心配している。仕方ない、まずは『シャドウキラー』から抽出するか…。


≪シャドウキラー、青色スキル抽出開始します…≫

≪…3、2、1…≫


 無事、シャドウキラーの方は抜き取る事が出来た。問題はバニッシュだ。さっきから抽出しようとしても、激しくガタガタ揺れるだけで抽出に入らない。


 どうしてだ…?何度試しても、


≪抽出できません、リトライしますか?≫


 そうインフォが流れるだけだ。どうするか…。俺が悩んでいるとサネルの首が少し、動いた気がした。


 ―カチッ!!―


 …んっ?カチッ?サネルの首辺りから変な音が聞こえた。何かのスイッチが入ったような音。その瞬間、俺は危険を感じた。


 こういう時にこういう音がするのは絶対ヤバい!!サネルを龍眼で視ると、胸辺りの内側から熱を持ったエネルギーが生成されていた。


 これは…自爆か!!コイツッ!!自爆する気だ!!いや、暗殺者とはいえ今は気絶しているんだ。自爆という選択は出来ないはずだ。

 

 クソッ…まだバニッシュの抜き取りが…。しかし、そんな事を考えている心の余裕はなくなった。


「…ホワイトさん、どうしかしましたか…?」


 俺の考え込む様な真剣な表情に、ロメリックが何がどうしたのか聞いてくる。ティーちゃんとシーちゃんの二人も、俺がサネルを見たまま動かないので(いぶか)しんでいた。


「…どうしたんじゃ?何かあったんかの?」

「何か言わんと解からんでしゅ…」


 俺はみんなの疑問には答えず、サネルの体内に生成されているエネルギーが範囲内の全てを、ゆっくりと引き込んでいくのを確認した。

 

 これはッ!!爆発じゃない…爆縮だッ!!マズイッ…俺達を巻き込んで、コイツも口封じで殺す、という事かッ!?


 実際は数秒だったと思う。しかし、俺には全てがスローモーションで進行しているように見えた。


 俺は一瞬、三人を見る。ロメリックも、ティーちゃんも俺を見て何があったのか聞きたいようだ。シーちゃんは俺が掴んでいるサネルを見て顔を曇らせていた。


 ダメだ…。このままだと全員巻き込まれる事になる!!躊躇している暇はない!!俺は瞬間、サネルから手を離すと、膝を付いて地面に右手を当てた。


 間に合ってくれッッ!!『旋風陣!!』

 

 目の前の、サネルの肉体を中心にスローモーションのように、爆縮が着々と進行していく。俺は、この女の最後の自爆攻撃?の範囲から、三人を弾き飛ばす為に、旋風陣を発動した。


 一気に旋回する暴風が三人を爆縮範囲外に弾き飛ばす。


 サネルを中心とした全周囲から爆縮が完成しつつある。俺は三人が爆縮範囲外に弾かれたのを確認して、覚悟を決めた。


 …いきなりだけど…ここで終わりか…。地球で失踪とか神隠しだとかで騒がれそうだな…。それより心配なのはパソコンのエロ動画だ。アレ、どうしよ…。


 背後から、爆縮のエネルギーに巻き込まれつつあった俺の脳内に突然、あの先生の言葉が響いた。


 『あきらめたら、そこで試合〇了だよ…』と。


 その時、一瞬だが、何故かクレアを思い出した。…ああ、闘気、闘気だ。闘気をッ…!!しかし俺は、ある失敗をした事に気が付き、何とか必死に逃れようと上空を見上げた。


 その時、上空で何かが光ったように見えた…。



「…くっ、ホワイトさんッ…これはッ!!」

「…あ、アンソニーよっ、いきなり何をするんじゃ!!」


 三人は突然、旋風陣で弾かれた事に困惑する。


「…シーのプロテクト…間に合った…でしゅか…?」


 戸惑う三人は目の前の事態に驚いた。


「…こ、これはっ…爆縮じゃ!!…アンソニーよ…わたしらを助ける為に…」

「…あねさま、大丈夫でしゅ!!ギリギリでシーがプロテクトの範囲を伸ばしたんでしゅっ!!絶対…絶対、大丈夫でしゅっ…」


 ロメリックは言葉が出なかった。範囲内の爆縮が終わり、範囲が解除される。 内側へと引き込む、破壊の粉塵が晴れていく。


 そこには、人間の形をしたものは一切、残っていなかった…。

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