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はじめはスライムからお願いします。

 レッドスネークを弓で倒そうとした矢先にティーちゃんからダメ出しされてしまった。仕方ないので俺は腰に下げているタガーを抜く。 

 

 レッドスネークが俺に気付いて襲い掛かって来た。俺は慌てて高速移動スキル『瞬速』を使って逃げる。俺はまだ『スキル泥棒』の説明を確認をしていない。


 必死にスネークから逃げ回りつつ、説明文を読む。


 『スキル泥棒』スキル発動後、一定時間対象に接近する事で相手のスキルとスキル情報が見える。

対象の首を掴むと、スキルを抜き取る事が出来る。対象のレベルとスキルのレベルによって、スキル抽出時間は変わる。プラチナカラースキル。


 …首を掴んで抽出する、か。…蛇の首って何処だよw?しかも掴まないとダメなのかよ!!うへぇ、一気にテンションが下がってきた…。


 しかし、接近しないとスキル泥棒は使えない。俺は妖精の工房区で買っておいたプラチナタガー二本を忍者の様に、柄の方を上にして持つ。まずは『瞬速』でスネークの動きを観察するか。

 

 俺は風の精霊の守護が付いているので、移動とスキルの発動が速い。


 スネークもそのデカい身体に似合わず、動きが早かった。ウネウネ動くカラダを見ていたら気持ち悪くなってくる…。接近しようと試みるものの、デカいわ気持ち悪いわコワいわで近づきたくない…。


 油断するとすぐに大きな口を開けて嚙み付いてくる。しかも喉奥から緑の液体を噴き出しやがった…。俺はそれを間一髪で避ける。逃げ回っているとティーちゃんからまたダメ出しされた。


「…アンソニーよっ、逃げるだけじゃ訓練にならんじゃろっ!!ほれっ、思い切って接近するんじゃっ!!」


 しかし逃げ回っていた俺の身体が突然、光を放つ。そして脳内にインフォメーションが流れた。


≪瞬速がランクアップしました。『神速』に移行します≫


 俺が使っていた高速移動スキル『瞬速』が『神速』にランクアップしたようだ…。俺は少し強くなった気がして、ランクアップした神速を使って思い切ってレッドスネークに接近してみた。


 ―ブンッッッ!!


 瞬間、俺の身体が瞬間移動のようにブレて残像を残しつつ、一気に間合いを詰めた。しかし、思い切って神速を使ったせいか、いきなりレッドスネークの蛇腹に頭から突っ込んでしまった。


 …ドゴォォッッ!!と激しい音ともにレッドスネークが派手に吹っ飛んでいく…。


「…イッテェェェッ…!!」


 俺は余りの痛みで頭を抱えて(うずくま)った。体長五メートル以上はある巨大蛇に頭から突っ込んでるんだ。痛いはずだよ…。 


 痛いのもあったが、蛇腹の(ぬめ)っとした感触が俺の頭に残っていてかなりキモチワルかった。


 頭突きを喰らったスネークは吹っ飛んだまま、全く様子が無い…。俺はへっぴり腰で恐る恐る近づいてみる。確認するとレッドスネークの蛇腹が破裂していた…。


 しかしまだ死んでいなかったのか微妙に動いている。


「…アンソニーよ、いきなり何をやっとるんじゃ(笑)?」

「凄いでしゅ、いきなり頭突きから行くとは思い切ったでしゅね(笑)?」

「…タガー構えてるのに、頭突きって…レッドスネークも意表突かれてたよ(笑)?」


 皆に突っ込まれてしまったが、違います…。これはちょっとした事故です…。こりゃ、自分のステータスが振り切れているのを忘れると戦闘訓練にならんな…。


 『スキル泥棒』を発動させていたので一定時間の接近でレッドスネークのスキルが視えた。『毒霧(どくきり)』『毒針(どくばり)』『蛇咬(スネークバイト)』の三つで、スキルカラーは全て緑色だ。


 時間としては一分程接近していればいいみたいだ…。一分って結構長いな…。


 スネークの持っているスキルの説明文も読めた。『毒霧』は、頬の内側にある毒袋から神経麻痺毒を噴射するようだ。プロレスラーのアレみたいなヤツだな。『毒針』は、相手に針を刺し、神経麻痺毒を注入する。となっている。多分、どちらも相手を動けない様にする為だろう。咬んでから毒流し込むんじゃないんだな…。『蛇咬』は、その字の如く、大きな牙と強力な顎の咬合力で対象を噛み砕くようだ。


「アンソニーよ、スネークのスキルの抽出を試すんじゃ!!」


 ティーちゃんに言われて、俺は闘気で手をイメージする。こんなデカい蛇、瀕死だったとしても直に触りたくないからねw


 俺の右腕から、スタ〇ドのようなプラチナに輝く闘気ハンドが出て来る。俺は闘気ハンドを使ってスネークの首を掴んだ。脳内でインフォが流れる。


≪盗み取るスキルを選んで下さい≫


 …盗み取るって…。突っ込みたいとこだけど…まぁ、いいか…。『毒霧』と『毒針』は使えそうにないので『蛇咬(スネークバイト)』を選択した。


 再びインフォが流れた。


≪スキル『蛇咬(スネークバイト)』抽出を開始します。所要時間七秒…≫


 カウントと共に、スネークのスキルが段々と薄くなっていくのが見えた。そして俺の右腕に、光と共にスキルが流れ込んでくる。


≪スキル抽出完了しました≫

 

 何とか手順は分かった。そして俺は初めて取得したスキルを試してみる事にした。



蛇咬(スネークバイト)ォッ!!」


 …………。


 何も起きない。確かにスキルは点灯してるんだが…。俺は掌を見る。こういうスキルって、掌でガッって掴んで握力で破壊するのをイメージしてたんだけど…。


蛇咬(スネークバイト)ォォッ!!」


 二回目。俺はスキル名を大きな声で叫んでみたがやっぱり何も起きなかった。俺は三体に聞いてみる。


「…コレ、どうやったら発動すんのかな?」

「嚙み付く技なんじゃから、アンソニーが嚙み付かないと多分ダメじゃろ?」

「歯を使ってかぶりつくんでしゅよ!!」

「そうよね、『蛇が咬む』だから、アンソニーが歯で咬み付く技でしょ?」


 確かにスキル名はそうだけど…。


 俺は少し顎を少し動かしてみた。すると突然、顎がボワッと光り始めた。そして急に、顎が大きく開いた。


「…アッ、アガガガガガッ、アガァッ!!アッ、ァッ、顎がァァァッ…!!…ぁっ、顎ォッ!!…アガガガ、ァガァッ…ぃっ、痛ぃっ痛ぃっ痛ぃ!!…キャンセルッ!!」


 俺は慌ててスキルをキャンセルする。光が収まり、ようやく顎が元に戻った。どうやら三体の言った通り、これは俺が対象に直接、咬み付くヤツだな…。


 顎を擦りつつ、三体を見ると転げ回ってケラケラ笑っていた。


「な、なんでしゅかっ、急にアガガガガッって(笑)!!」

「あ、アンソニーよ、何で急にどうしたんじゃ(笑)!!」

「顎ガクガクさせて、アガガッって、アハハッ(笑)!!」


 …このスキルはダメだな。使うと人間終わりそうだ…。まぁ、それ以前にスネークほど顎が拡がらないしな…。顎が外れるかと思ったわ…。


 …初めて盗んだスキルは使えないヤツでした。削除があったのですぐに消しといた。俺がスキルを削除している間、何とか笑いが落ち着いた三体が解体を始めた。


 シーちゃんがナイフを使って、動かなくなったスネークを手際良く解体していく。


「おっ、なんか凄いね」


 しかし、この後の二体の言葉に衝撃を受けた。


「この蛇肉が美味しいんでしゅよ?」

「そうじゃの、中々の美味なんじゃ」


 …そ、そうなんだ…しかし現物見ちゃうとなー…。


 更にリーちゃんから衝撃の発言が飛び出した。


「今夜の夕食は蛇肉の塩焼きに決定ですね!!」


 …マジかよ…。俺は無理ですからね…。



 『毒霧』と『毒針』は使用後なので、シーちゃんが土に埋めていた。シーちゃんは蛇皮と蛇肉、牙に分けて鞄に入れる。


 しかし初めての戦闘はきつかったな~。…いや、戦闘後の方だな…。まだ顎関節が痛い…。そんな事を考えつつ一旦、世界樹に戻ろうとした俺をティーちゃんが呼び止める。


「アンソニーよ、どこいくんじゃ?」

「え?ちょっと休憩だけど…?」


 そう言うとティーちゃんが呆れた顔を見せる。


「はぁ?何言っとるんじゃ、すぐに次の戦闘にいくんじゃ!!」

「…えっ、まだやるの…?」


 驚く俺に、三体がジト目を向けてきた。


「まだ朝でしゅよ?今日は昼まで戦闘訓練するんでしゅ!!」

「そうじゃ、まだ一体だけじゃろ!!しかも頭突きで倒しただけじゃ。それじゃ訓練にならんじゃろ?」


 …はぁ、この子達、意外とスパルタだな。なんかめんどくせぇ…。溜息を漏らす俺に、ティーちゃんが注意する。


「アンソニーよ、考えとることは全部筒抜けじゃからの。…ほれっ!!すぐ次に行くんじゃ!!」


 そうだ。ティーちゃんは心が読めるんだったな…。そして俺は二体に手を掴まれて引き摺られて行った。こんなに小さいのに二人とも凄い力だ。


 そんな俺をリーちゃんが笑って見てた…。


 次に引き摺られて行った先に、リッパーマンティスがいた。巨大カマキリは体高二メートル、全長三メートル程で、軽く俺の身長を超えている…。


 前脚の鎌もデカい。あれじゃデスサイズだよ…。


「ほれっ、アンソニーよ。早くやっつけるんじゃ。次の獲物がどんどん待っておるからの」


 …早くやれって言うけど、心の準備ってモンがあるのよw


 心の中で呟きつつ、巨大カマキリをどう攻略するか考えた。鎌の前に出るのは危険だな。まずは側面か後方に周り込むか…。


 考えていたら、マンティスがいきなりこっちに飛んできた。そうですよ!!カマキリ飛ぶんですよ!!


 間合いを一気に詰められ、俺は慌てて神速で退避する。しかし大きり割に動きが早く、すぐに反転して接近して来た。そして前脚のデカい鎌を高速でビュンビュン振り回してくる。


 俺はバックステップで避けつつ、タガーの刃で鎌を受け流す。しかし、速いだけでなく力もかなりのものだった。油断するとこっちのタガーが簡単に弾かれる。こんな所で死にたくないので俺はタガーを使って全力で受け流していく。


 高速で襲い掛かって来る鎌と、俺のプラチナタガー二刀が激しく音を立ててぶつかり合う。思いっ切りタガーを振り抜いた瞬間、マンティスの鎌が真っ二つに斬れた。


 ついでに残った鎌の方も狙い、プラチナタガーを全力で振り抜く。ハムをスライスするが如く、マンティスの鎌を切り落とした。


 油断せず、俺はすぐに距離を取る。その一瞬で俺はタガーを入れ替えた。先手を取られて動揺したが、俺は神速でマンティスの後ろに周り込んだ。


俺はプラチナタガーから『腐蝕のタガー』と『気脈逆流タガー』に持ち替えた。効果を確かめる為だ。

マンティスは再生能力?が高く、鎌が既に再生されていた…。


 …マジかよ…。


 次の瞬間にはビュンビュンと俺の首を目掛けて鎌が来る。コイツ、どうするかな?先に脚を狙って動きを止めるか。俺はすぐに神速で側面に接近し、マンティスが反転してくる前に攻撃する。接近と退避を繰り返し、マンティスの中脚と後ろ脚の節に『気脈逆流タガー』を突き刺していく。


 このタガーは気脈の流れを止めて、小爆発させる短剣だ。ただし、切り付けても効果がなく、刺突しないと特殊効果の気脈逆流を起こせない。勿論、普通に切る事は出来る。


 突き立てた瞬間、ボゴオォッ!!と、マンティスの脚が激しい音と共に爆発する。脚四本が爆散し、根元から千切れ飛んだ。


「ギィィイィィィーッ!!」


 激しく咆哮するマンティスは首を傾けて、赤く目を光らせて怒りを見せる。しかし、前足で身体を支えていたマンティスは、自慢の鎌を使えなくなっていた。


 すぐに俺はマンティスの後ろに回り込んで、頭と胴が繋がった部分を掴んだ。マンティスは藻掻いていたが、もう攻撃される心配はない。暫くするとスキルが視えた。


 『リッパースラッシュ』と『音波感知センサー』の二つだ。リッパースラッシュは高速鎌連撃の事だろう。音波感知センサーは音波で色々感知するスキルらしい。


 リッパースラッシュは使える気がしない。俺が使ってもグルグル駄々っ子パンチやって、両肩を壊す予感しかなかった…。レッドスネークの時のアゴ事件の教訓を生かし、リッパースラッシュは放っておく事にした。


 俺は音波感知センサーだけ抽出する。


 この後、マンティスに止めを刺す。『腐蝕のタガー』をマンティスの首にスッと刺した。腐蝕のタガーは遅効性で刺した部分から腐蝕効果が拡がる。このタガーも普通に切る事が出来るが、刺突攻撃でないと効果が出ない。


 数十秒後、藻掻いていたマンティスの首が腐り、頭がボトッと落ちた…。その後、ちびっこ達にせっ突かれながら、俺は次々とモンスター達と闘わされる事になった…。

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