シーちゃんの絵日記 。
番外編です。繋ぎで、思い付きで書いてみましたwおっさんが仕事に行っている間の、地球の家での妖精達のお話です。
俺が地球に戻って仕事をしている間、三体も家に滞在している事が多い。その間に、三体が何をしているのか、俺は全然知らない。
ある休みの日に押し入れの中から、シーちゃんが懐かしい物を引っぱり出してきた。その昔、若かりし頃の俺は、イラストレーターを目指して都会に出ていた。
その頃に使っていた画材だ。懐かしい。
ゲームをしている俺の所に、ケント紙や、ミューズ紙、スケッチブックやリングノートと一緒に、クレヨン、パステル、色鉛筆などのお絵描きセットを持ったシーちゃんが来る。
「これ使っても良いでしゅか?」
そう聞かれて、もう俺は使わないから良いよ、と言って使わせてあげる事にした。最初はベッドの上に寝転んで、海獣を描いていた。
「シーちゃんは海獣、好きだねぇ」
確かベルファの本屋で、一冊づつ本を買って上げた時に、『世界の海獣図鑑』という本を持って来たな。ちなみにその時、ティーちゃんは『錬金術への考察と実戦』という小難しそうな本を持って来てたんだった…。
「シーは海獣、見た事ないんでしゅ。いつか見てみたいんでしゅよ」
そう言ったシーちゃんの言葉に、俺は心の中で言葉を付け加えた。
(そして闘ってみたいんでしょw?)
色んな海獣を描いていたシーちゃんだったが、しばらくしてから、その日あった事を絵日記にして見せてくれるようになった。
俺が、仕事に出ている日は、帰ってからすぐに見れる様にと思ったのか、玄関の下駄箱の上にいつもポンッと置いてあった。
今日も帰ってきてから手洗いうがいをした後に、シーちゃんの絵日記に目を通す。さて、今日はどんな事をして過ごしてたのかな…。
◇
最近ではかなり魔力フィールドが安定してきたようで家の庭だけでなく、近所まで出ていけるようになったみたいだ。
ティーちゃん達は、庭に出て草をむしったり、虫を観察してみたり、お花にお水を上げたりしているみたい。なんかほのぼのしてて可愛いな。
近所の猫と遊んだり、イタチ、狸なんかとも遊んでるみたいだ。
ここらは元々、山の上の人家の少ない地域だ。しかしここ最近、お庭で色々しているみたいだから、近所のじいちゃんばあちゃんの目に留まったようだ。
最初は、うちのばあちゃんと親しかった、同年代の通称『トメ婆』がうちの子らを見て、声を掛けてくれたらしい。
トメ婆は、俺がここに引っ越して来て以来、色々と食べ物や野菜やら果物をくれる婆ちゃんだ。
御年九十六歳。腰は曲がっているものの、未だに毎日畑仕事を熟し、元気に近所の皆さんと集まってはお茶会を開いたりしている。
そんなトメ婆が、朝早く畑仕事に出てからの帰りに、俺以外は誰もいないはずのうちの庭で、ちびっこが草むしりをしたり、お花に水を上げたりしているのを見て入ってきた。
「…おやおや、あき(本名)のとこの子かいな?結婚しとるいう話は聞いた事がないがのぅ。ちゃんと子供はおったんか?」
にこにこと話しながら、入ってくるトメ婆を二人が見上げる。
「ばぁちゃん、トメさんじゃろ?アンソニーから聞いておるよ」
「いつも野菜くれるばぁちゃんでしゅね?」
「そうじゃそうじゃ、そのトメじゃ。…しかし、あきはこんな小さな子をほったらかしにして仕事行っとるのか?」
「大丈夫でしゅ、ご飯とおやつ、飲み物はちゃんと用意して行ってるでしゅ」
「…そうか。しかしのぅ、こんな小さな子を置いて行くのは感心せんのぅ…」
「ばぁちゃん、そんなに気にせんでもいいんじゃ。やる事はいっぱいあるからのぅ。むしろここにお邪魔しとるから、草むしり位はせんといかんのじゃ」
「ほぅほぅ、出来た子らじゃな。どれ、婆も手伝ってやろう」
そして二人と婆には見えない妖精一体で、庭の草むしりを始めた。
◇
昼前になり、草むしりを終えたようだ。
「婆はそろそろ帰るでな」
「うむ。じゃあ、婆ちゃんまたの」
「またでしゅ。ばいばい」
「次はお菓子でも持って来てやるでな」
帰っていくトメ婆を見送ってから、家に入る三体。今日はお昼に、昨日のポテトサラダの残りと、今朝焼いておいた目玉焼き。そしてレタスを用意していた。三体ともイタリアンドレッシングが好きなのでそれも付けている。
手際良く、三人でお昼の準備をしていく。
シーちゃんが、台を持って炊飯器の所へ行く。三人分のご飯をお茶碗に盛った後、ティーちゃんがそれを受け取り、台に乗ってテーブルの上に置いていく。リーちゃんの茶碗は、子供のオモチャのミニサイズのヤツだ。
ポテトサラダとレタス、ドレッシングと目玉焼きはラップを掛けて、朝出る前に俺が既にテーブルの上に置いて行ってる。
自分達用の椅子をよいこらしょと持って来た二体は、椅子によじ登って座る。飲み物はリーちゃんがそれぞれ、用意した。
小さな手を合わせて、「頂きます」をしてから、箸を持ってもぐもぐ食べ始めた。当初はフォークとナイフで食べていたが、最近では箸もちゃんと使えるようになっている。
「新鮮な野菜にこのドレッシングが良いのぅ」
「この目玉焼きというのも美味しいでしゅ」
「うむ。そうじゃの。塩加減が絶妙じゃな、これを世界樹の料理屋でも作らせるかのぅ」
「ティーさま、向こうの世界の人間達も、この目玉焼きというのを作っているみたいですよ?」
「ほぅ、そうなのか。この前食べた卵焼きと言い、世界樹でも取り入れるとしようかの」
そんな事を話しながら、三体は元気よくもぐもぐ食べる。お昼を食べ終わった後、三体は協力して流しで食器を洗い、乾燥機に入れる。
帰ってきてから洗い物するからそのままで良いよといつも言っているのだが、ちゃんと洗って片付けている。その後しばらく、お茶を呑みながら三人は食後のお菓子を食べて、まったりと過ごしていた。
その後は、いつもの自分達の時間を過ごしていたようだ。ティーちゃんは読書、シーちゃんは絵日記を描いていた。
そしてリーちゃんは…涎垂らしてお昼寝してたようだ…。




