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特殊甲殻の謎。

 クレアが酔い潰れてしまったので、センチピードの突然変異と特殊甲殻について俺達はクレアを除く四人で話す事にした。


 今回の件に関しては、おかしな点がいくつかある。そもそも、突然変異種だとしてこんな短期間では、あんなデカい個体は出てこないそうだ。


 センチピードに限って言うなら、成体になっても精々、十メートル位。

そして変異種が現れたとしても、大きくて十五メートルから二十メートル程度らしい。


 それでもデカいが、そう考えると今回の突然変異種のセンチピードは五十メートル級で、破格のデカさだ。カイザーの名を冠していたのも頷ける。


 一番気になったのは、あの『特殊甲殻』だ。異常に硬い上に、魔法効果を無効化してしまう。あんなモノがそうそう簡単に能力者ではなく、モンスターに付くのか?


 この事について、ティーちゃんは思う所があって、アイちゃんから甲殻の一部を貰ったみたいだ。ティーちゃんが小さな掌に欠片を載せて俺に見せる。


「アンソニーよ、この欠片から何か認識できるかのぅ?」

 

 俺はなんとなく、ティーちゃんの考えを読んだ。だれかが人為的にこの甲殻にスキルを付与した、と考えているのだろう。


 俺は『スキル泥棒』を発動させて右手を翳す。…うーん…中々、スキル名が見えないし出てこない…。


「…もう少し頑張るんじゃ…」


 そう言われて続けて右手を翳す。ぼんやりとだが、文字が浮かんできた。


「…何か…文字かな、見えてきた…」


 俺は集中力を持続する。スキル名らしき文字と、その説明文が見えたが全てぼんやりとぼやけていてはっきりとは見えない。その事を話すと、シーちゃんとリーちゃんが見解を述べる。


「…うーん、欠片だから見えないんでしゅかねぇ…」

「ぼんやりでも、スキル泥棒で何かが見えたという事は、やっぱりこの甲殻は人為的なモノを感じますね…」


 あの戦闘の時、シルフィアの助言でティーちゃんが甲殻自体を鑑定すると説明文が付いていた。

確か『突然変異時に獲得した特殊甲殻』魔力、魔法効果、武器に付随する効果を無効化する』だったかな…?


 もし、この鑑定結果とは別の情報が、俺のスキル泥棒で出てくるとしたら、何者があのマジックキャンセル効果スキルを付与したのか判るかもしれない。


 しかし、最高レベルと言って良い程の、(ティーちゃん本人が言ってる)鑑定レベルで、見えない情報なんてあるのかな…?鑑定での情報を攪乱して誤魔化す様な、何らかの方法があるのか…。


 ティーちゃんはまだこの甲殻には見えていない情報がある、と考えているようだ。この読みは正しいかもしれない。この特殊甲殻は、人為的にスキルを付与し創り出したと見ていいだろう…。

 

 どこの誰が、どういう意図を持ってこんな事を…。この王国で混乱を起こして得するヤツは誰か…。


 俺はなんとなくだが、察しが付いた。神様との会話で出てきた、『神の使途』なる存在だ。そしてエレボロス教と繋がっているイシュニア帝国…。


 色々考えていたら、頭が痛くなってきた…。気付いたら俺は、一口もお酒を飲めていない。依頼を受けようとして禅爺と闘い、めんどくさいから逃げ出して、センチピードを撃破した後に、クレアに絡まれて、アイちゃんを追いかけて説教して戻ってきたら、また酔っ払いクレアに絡まれて、俺のビールは飲まれるし…。


 今は、突然変異種の問題で頭が痛い…。


 …全く。なんて日だ!!


 そんなフレーズあったな…。叫びたい所だったが、周りに人がいるから止めといた…。



 取り敢えず一旦、世界樹に戻ろうという事になった。俺は泥酔して寝てしまったクレアをおんぶする。俺の背中に、クレアの柔らか爆乳が触れる。


 …むにゅっ。柔らかい感触でちょっと下半身がヤバい…。俺は必死に無心を貫く。


 村を出てから、人目のない所まで歩いていく。皆で森に入った後、リーちゃんの転移で全員、世界樹へと戻った。

 

 続けて俺は、そのまま転移室からリーちゃんに頼んで超長距離転移で地球に帰して貰った。次の日、地球で仕事だからね…。


 センチピードを倒した翌日。俺は地球での仕事を終わらせて帰宅した。


 軽く何か食べて、お酒を呑んで向こうの世界へと思ってたら三体が待ち構えていて、すぐに転移させられてしまった…。

 

 …また、お酒を呑みそびれた…。


 今度からこっちの世界のサワー缶持って行こうかな…。チョコも大丈夫、歯磨きセットも大丈夫だから、お酒くらいだったら全宇宙ナントカ協定には引っ掛らない気がする…。


 まぁ、それは今度確認するとして…。今回はまず、ベルファに行って禅爺に謝りに行くんだったな。


 しかし、お酒を呑めずに地球に戻り、朝早く起きて仕事に行って帰ってきたら、またお酒を呑めずに、こっちの世界に戻されてしまった…。


 こっちも時間は大体、夕方に差し掛かる頃だ。


 俺はかなり疲れていたので、世界樹で一泊して翌朝、向かう事にした。世界樹で何か食べて、この前から吞めてなかったのでお酒も呑みたい、という気持ちもあった。


 俺の転移後、ティーちゃんとシーちゃん、リーちゃんも転移で戻ってきた。三体に、もう夕方になりそうだし、ベルファに行くのは明日にしようと提案する。特に反対意見も無かったので、商業区の料理屋に行く事にした。


 世界樹の中の、いつもの料理屋でそれぞれ好きな料理を注文する。俺は猪肉の煮込みと、前から気になってた花蜜酒を注文した。


 三体は、大好物の蛇肉サイコロステーキと、紅茶、ホットミルク、お茶と、それぞれいつものドリンクを注文した。


 早速、届けられたサイコロステーキを三人で分けて食べている。俺が注文した猪肉の煮込みもすぐに来た。みんなで食べながら、アイちゃんの動向について聞いてみた。


 アイちゃんについては地球へ戻る前に、ティーちゃんに妖精を見張りに付けるように頼んでおいた。妖精からの報告を、ティーちゃんが話してくれる。


 どうやら、アイちゃんはきちんとベルファに行ったようだ。禅爺に、街中での魔工機での暴走と、許可証投げ返しの件を謝罪してから、王都のギルド本部に戻ったらしい。


 まずはその報告を聞いて安心した。ベルファに行ってるかどうか心配だったからな…。次は俺が謝りに行かないと…。


 しっかりと煮込まれていた猪肉は口の中で溶けて行くように柔らかく、美味しい。花蜜酒は、ほんのり花の香りがした。花の蜜が混ぜられているそうだが、甘過ぎなくて良い。カクテルみたいな感じだ。


 口当たりも良く、かなり飲みやすい。しかし実際飲んでいると回るのが早く、アルコール度数が高そうだ。


(…こりゃ、調子に乗って飲み過ぎるとヤバそうだな…)


 しかも明日、謝罪しに行くのに、べろんべろんに酔っぱらって行ったら謝罪どころか、激怒されそうだ…。他にも他種族のお酒、火竜酒がメニューに載っていて気になったが、今回は花蜜酒三杯だけにしといた…。


「そう言えば、クレアの姿が見えないけど…。どこ行ったの?ていうか二日酔いで、まだ寝てんのか…?」


 俺の疑問にリーちゃんが答えてくれた。


「クレアなら今朝、普通に起きてちょっと運動してくるって、森に行ったキリだけど…」


 …オイオイ、あれだけ酔ってたのに朝、普通に起きれるのか…。しかも、朝から運動してくるって…。…血圧上がるぞ…。


「姉さまは気まぐれじゃからのぅ、趣味の古代遺跡巡りでもしとるんじゃないかの」

「…ふーん、古代遺跡ねぇ…。この世界の古代遺跡か…いいな、俺もそう言うの好きだから機会があったら見に行きたいね…」


 そんな事を考えていると、ふと疑問が浮かんだ。


「…ところでクレアって、どこに住んでるの?里から飛び出したって言ってたけど…?」

「…ああ、姉さまは修行ついでに放浪してるんでしゅ。この星のあちこちにいって、喧嘩売ってるんでしゅ!!」


 そう言って、シーちゃんがケラケラ笑う。


「…修行って…そもそも龍に勝てる相手なんかいるのか?しかも放浪って…」


 …見た目と違って、生活が結構ワイルドだな…。食事を終えた俺達は上階に戻る。俺は客間へ、三体はそれぞれの部屋に戻った。


 さて、明日は朝一でベルファに行かないとだ。俺は、歯磨きをした後、すぐに客間のベッドに潜り込んだ。



 翌日、俺はいつも通り、目覚まし無しで起きた。毎日の習慣というものは凄いもので、午前四の刻になると目が覚める。


 妖精にいたずらされてるかな、と思って顔をぬぐってみたらやっぱり落書きされてた…。布の端切れで顔を綺麗に拭いておいた。


 しかし、起きたものの、出発の午前七の刻まではまだ時間があるので、取り敢えずまた寝た…。


 午前六の刻半に、二度寝した俺を起こしに、三体が来た。ティーちゃんとシーちゃんがベッドの上で寝ている俺に、どーんっと飛び乗ってきた。


「そろそろ起きるんじゃっ。もうすぐ出かける時間じゃからの!!」

「…ぁ、あぁ…。…起きる…起きるよ…」

「顔にラクガキされてるでしゅよ、うししっ…」


 リーちゃんにミラーの魔法で顔を映してもらう。綺麗に拭ったはずなのに、またいたずらされてた…。


 取り敢えず顔を洗ってから、少しストレッチ。それから、世界樹の中で食事をして歯磨きをして、トイレを済ませてから、ベルファに向かって出発した。


 出発した、といっても(ほとん)ど歩いていない。世界樹を出てすぐに、リーちゃんに転移しても貰う。ベルファの近くまで一気にショートカットした。

 

 いい旅夢気分的な感じは全然ない。今度、時間がある時にでも、ゆっくり歩いて旅気分してみよう…。

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