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迷子。

 ブレーリンでの訓練の様子を見に行った俺はエイム、エミルから訓練の進捗を聞いていた。


「エミルの動きですがかなり早くなっています。攻撃の手数も良いかと思います。後は必殺のスキル、高威力の攻撃が会得出来れば上々でしょう」

「…そうか。体力的にはどうだ?」


 一番の懸念は本人も自覚しているであろうスタミナだ。


「こればかりは一朝一夕ではどうにもなりません。日々の地道な筋力アップと柔軟性を培っていくしかないかと思いますよ」


 一旦、水を飲んで一息付いたエミルはその事について話す。


「…少しづつ確実に、かな。身体づくり、肉体改造はすぐには無理って分かってるからね」

「ふむ。今更のアドバイスかもだけど毎日の食事にタンパク質、鉄分、カルシウムを積極的に取り入れた方が良いな。後はエネルギーの元になる糖質も必要かな…」


 それから、と言いつつ話を続ける。


「…重要なのが訓練前のストレッチだな。いきなり動くとグキッとかあるからね。後は無理せず、確実な休息も身体には必要だからな?特に筋肉は…」


 話をしようとした俺を見て笑うエミル。


「その辺りはエイムさんに聞いてるから大丈夫(笑)!!無理して動けなくなると余計に時間が掛かるからね(笑)」

「…あ、そうすか…」


 …自分で解かっているようで何よりだ。何が一番重要かって訓練後の休息が一番、大事だ。体力づくりには休息は欠かせないからな。 


 スキルの強化も大事だがまずは体力だからな。持ち前の執念、努力を知っているだけに無理しないか心配だったがきちんとエイムの指導に従って訓練している様で安心した。


 エミルはこの世界での適性が高い。そのうち体力もぐんぐん伸びるだろう。そうなれば新たな一歩を踏み出せるはずだ。


 ついでに『魔障気』の事もエミルに教えてやって欲しいとエイムに頼んでおいた。


「…魔障気って何…?」


 エミルに聞かれたのでついでにアイちゃんにも説明をしておく。


「魔障気ってのは主に魔族が使うスキルや魔法の力を底上げする能力なんだ。もう少し詳しく話すと魔素やスキル素粒子に含まれる『障気』つまり障りを呼び込む事でスキルの威力を上げる事が出来る…」


 魔障気を獲得出来ればスキルの底上げも出来るしダンジョンに入った時にも役立つだろう。

 

 戦闘訓練について話した後、フラムと未依里を遊ばせている間に(何故かチャビーも一緒に遊んでいたが…)俺はエイムに徒弟で来てくれる孤児の子供達の事と世話係で若いシスター、捻くれ坊やのリックについて話した。


「そうですか。徒弟については大丈夫そうですね。後は料理人や庭師の方、使用人ですね」

「そうだな。使用人は一人、応募があったから近日中に面接してみるよ。料理は今の所みんなで手分けしてやってる。警備はしばらく融真達とジョニー達に任せれば良いだろう…」


 リックについてはもう既に館で預かっているが近いうちに他の子達もシスターと一緒に来るので一度、挨拶に戻って来てくれと伝えた。


「解りました。日程的にはいつ頃になりそうですか?」

「東鳳の事もあるからその後に受け入れしようかと思ってる。日程が決まったらまた来るよ」


 エイムと徒弟の子供達と使用人の事について話しているとふと、ギルドに入ってくるランディを見た。


「…アレw?なんでアイツが…?」


 俺はエイムと視線を合わせる。


「フィンさん達はランディさんが先に出て迷子になってると言ってましたが」

「あぁ、確かにそんな事言ってたな。…で、王都で迷子になってここまで来たのかw?」

「どうでしょう(笑)?何か理由があってPTとは別行動をしているのかもしれません」


 俺達の後ろからランディを見たアイちゃんが顔をしかめた。


「…なんであの人がここにいるのよ?」

「アイ、あの人強そうだけど知ってるの?」

「うん、確かに強いけど人間がなってないのよ。うるさいし、いつも上から目線で話してくるし、えらそうだし、ホントイヤな人よ…」


 アイちゃんの説明は的確だw


 ランディについてそれ以上の表現はないだろう。まさにアイちゃんが言った通りのヤツだからなwしばらく皆でランディの話しをしていると訓練所にランディを連れたロメリックが来た。



「…おや、ホワイトさん来てたんですね」

「あぁ、皆の訓練の状況を確認に来たんだよ。所で…」


 俺が何か言う前に、俺に気付いたランディが近付いてくる。


「…アッ!?オイッ!!テメェッがなんでここに居るんだよッ!?」

「そりゃ、こっちのセリフだ。お前こそなんでココにいるんだよ?」


 相変わらずうるさい声だ。少し声の音量下げろと言いたいがこういうヤツには普通に注意しても聞かない。言うだけ無駄だ。


「俺はテメェの家を見に行ったらいきなりスラティゴに飛ばされたんだよッ!?」


 …飛ばされたw?あぁ、なんとなく話が解かってきた…w


 俺の後ろではエミルとアイちゃんがひそひそ話している。


「ホント、アイが言ってたそのまんまの人ね…」

「でしょ?耳がキーンってなるのよ…」


 ランディの大きな声に憂子と未依里、フラムが驚いたのでチャビーが自分の後ろに隠れさせる。


「お前、相変わらずうるせぇヤツだな。なんでお前がいきなり飛ばされたのか解ったわ!!」

「なんだとテメェッ!!」


 応酬をする俺とランディの間に入るロメリック。


「まぁまぁ、落ち着いて下さいランディさん。女性も小さい子供さんもいますので…」


 ロメリックがランディを宥めているがコイツがそうそう落ち着く訳がない。めんどくさいから気絶させるか…。そう思っていると俺の後ろからエイムが仕込み針を飛ばしてランディを速攻で気絶させた…。


 俺は振り返ってエイムを見て親指を立ててニヤッと笑った。


「よくやった、エイム。こうでもしないとコイツは喚き続けるからな…」

「この方がこの調子だと話が全く進みませんからね。気絶させてその間に王都に戻すのが一番だと思います」

「あぁ、その通りだwコイツと話してると問答ばかりで肝心な話が全く出来ないからなw」


 俺達の後ろではエミルがアイちゃんに改めてランディについて聞いている。

 

「…やっと静かになったわね。アイ、この人、ホントに強いの(笑)?」


 エミルの問いに、アイちゃんはしかめっ面のまま説明した。


「この人は王都ギルド所属のSランクハンターでPTのリーダーやってる人なんだけどね…強いのは確かに強いのよ。闘ってるの見たことあるからね。ただこの人、人間的にコレだから…」


 アイちゃんの説明にロメリックが補足を付け加える。


「先の帝国との防衛戦で北部戦線の帝国軍を撤退させたのはこの方とPTの皆さんなんですよ。実力は確かですよ…確かに人間的にはアレですが…(笑)」


 説明しつつ、苦笑いのロメリック。


 アイちゃんとロメリックの説明に納得はしたものの、エイムによって簡単に気絶させられた男を見てエミルは肩を竦めていた。


「コイツは俺が王都に連れて帰るよ。ここにいても訓練の邪魔にしかならないだろうし…」

「そうですね。スラティゴまで飛ばされた事情も大体解かりましたし、連れて帰って差し上げた方がい良いでしょう」


 しかし、ランディを連れて戻る事にしたが問題がある。またうちに押し掛けて来る可能性は大だ。


「…問題はコイツを王都に連れて帰ったらまたうちに来そうだって事だな。そうなったら、ティーちゃん達にまた飛ばされるだろうなw?」


 ティーちゃん、シーちゃん、フィーちゃんの三人ならランディ一人を飛ばすことくらい簡単だろう。連れて戻った後の事が簡単に想像出来た。


「そうですね。この方の性格だとまた同じことをするでしょうね(笑)」


 エイムも半笑いだw


 どうするか真剣に考えていた俺はふっと思い付いた。


 そうだ!!妖精達に頼んでコイツが来た時に館に近付けないように敷地の周りに見えない迷宮でも作って貰うかw!!


 『妖精の森』のアレだ。人間が容易に奥に入って来れないように妖精や精霊達が、侵入者の感覚を狂わせて追い出すヤツだ!!


「良い方法を思い付いたから取り敢えずコイツは連れて帰るわ」


 俺は話しつつ、アイテムボックスから肉の塊を取り出してエイムに預ける。五キロの牛肉、それと豚肉と鶏肉が二キロ程あればアイちゃん、エミル、未依里、憂子、チャビー、エイム、それからロメリックで食べても足りるだろう。


「最上級の牛肉と豚肉、それから鶏肉だ。ここにいる皆で食べてくれ」

「解りました。それではお肉はギルド宿舎の冷蔵庫に保管しておきます」


 俺はフラムを呼ぶ。


「フラム、そろそろうちに戻るぞ?」

「あーぅ(はーぃ)!!」


 フラムを抱っこすると俺はエイムに引き続き訓練と肉の事を任せた後、騒がせた事をロメリックに謝ってからランディを掴んで王都に転移で戻った。



 戻った後、まずは気絶したランディをギルドの入り口に置いた。ここに置いておけば誰かしらが気付くだろうw


 そのまま転移で館の玄関ホールに戻った。厨房の方が何やら騒がしい。どうやら皆、訓練を終えて夕食の準備に掛かっているようだ。


「ただいま、今、戻ったよ」


 俺とフラムが厨房に入ると皆で野の皮剥きやらカット、材料を入れて煮込んでいた。ご飯もちゃんと人数分炊いている。


 既にクレアもセーナさんも戻って夕食の準備をしていた。フィーちゃんは今日も夕食を食べて魔界へ帰るとの事なので料理の手伝いをしていた。


 時々クレアと一緒につまみ食いしてたけどw


 俺達もすぐに夕食づくりの手伝いをする。皆が作っているのとは別に、肉を仕込んでいく。準備をしながらティーちゃん達にランディの事を聞いた。


「たまたまなんだけどエミルの訓練を見に行ってたらブレーリンギルドにランディが現れてさー…」


 俺の話にティーちゃんとシーちゃん、フィーちゃんが顔を見合わせてニヤッ笑う。三人曰く、やはり突然うちに押し掛けて来て門を開けろとうるさい上に偉そうだったそうだ…。


 うるさいので問答無用でクライに頼んでスラティゴまで飛ばして貰ったらしい。と言う事はあの時は何とかブレーリンまでは戻って来てたって事か。


「ランディのヤツ、ホント俺の予想を裏切らないヤツだよw」


 ちびっこ三人とジョニー、キース達はランディを良く知っているだけに俺の言葉を聞いてゲラゲラ笑っていた。



 夕食の後、片付けを終わらせてから執務室に戻り、ティーちゃん、シーちゃん、リーちゃんとフィーちゃんに今後のランディ対策を相談する。


「このまま放っておくとまた押し掛けて来てこの前と同じ事をすると思うんだよ、それで俺が考えたんだけど…」


 俺はブレーリンで考えた館の敷地の外に妖精達に頼んで見えない迷宮を作って貰い、どう頑張ってもアイツだけはうちに近付けないようにしたらどうか?と相談した。


 俺の提案を聞いた妖精族と魔皇が集まってごにょごにょ話し合いを始めた。

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