プラズマと攻撃の最適化。
俺は皆と昼食を摂りながらスキルに付いて気付いた事を話した。
「午前中にあちこち周ってる時にスキルに付いてふと気付いたんだけど…」
そう言いつつ、俺は融真とジョニーを見る。
「融真とジョニーのスキルってかなり強力だけどそのままだと戦闘出来る状況が限定されるよね?その事なんだよ…もし、スキルを成長させる事が出来るなら意識して範囲も変化させる事が出来るんじゃないかって思ったんだ」
「ふむ、それは面白い見解でな?確かにスキル素粒子に働きかけてスキルを強化出来るなら形状変化も出来る可能性はあるのぅ」
フィーちゃんもその可能性について肯定的な様だ。
「…ダンナ、言いたい事は解かる。しかし具体的にどうやるんだよ?」
ジョニーに聞かれたので俺の考える所を話した。
「今度から魔障気訓練のあとで良いからスキル素粒子を呼び込む集中訓練の時に少しづつ段階的に自分の力を開放する様にイメージしたら良いんじゃないかな~…」
「段階的にイメージを変える…か…」
俺の言葉に、融真もジョニーも考え込む。どうも俺の言ってる事が伝わってないな。俺はもう少し具体的に説明する。
「例えば融真の場合を考えると、範囲内に一気に灼熱が拡がっていくだろ?アレをもっと小さく自分のカラダの周りに纏う感じが第一段階、第二段階からは状況に応じて前後左右上下、放射状、最終的にいつもの全力解放って感じで取り敢えずやってみてくれ。それが出来れば戦闘の状況を選ぶ事なく闘えるし…」
「…解かった。取り敢えず午後から少しづつやってみるよ」
融真のスキルイメージに続いてジョニーのスキルに付いてもイメージの仕方を伝える。
「ジョニーのスキルは放出する血液の量を意識して変える感じで。少しづつ段階的に放出量を増やしていけば良いんじゃないかな…」
説明しつつ、注意点についても話す。
「少しづつだと威力が極端に下がると思う。それで戦闘に負けたら訓練の意味がない。だからそのごく小範囲の時にスキル素粒子を強く呼び込めば威力は上がっていくと思う」
ジョニーも何とかイメージ出来たようだ。
「それも一緒にわっちが見てやるでな?それでおんしは午後から何をするんかの?」
フィーちゃんに聞かれた俺はクレアが新しく体得したスキルの強化訓練をする事を話した。
「このままだとクレアを連れて黒龍の里にはまだ行けないからね。自分のスキル訓練も兼ねて少々暴れても良い所に行ってくるよ」
「うむ。わらわももっと強くならねばならんからな…」
そんなクレアの言葉にドン引きする融真達三人とジョニー、キース達。それ以上強くなってどうするんだと言いたげな表情だ。
「先に言っておくがシニスターはダメじゃからの?おんしらが暴れたら星がめちゃめちゃになるでな?」
フィーちゃんは俺達がシニスターで訓練するのではないかと心配していたようだ。
「大丈夫、訓練できる別の星を探すよw」
俺の答えに安心したフィーちゃんは再び、お昼のオムライスをもしゃもしゃと食べていた。
「それからリックの事なんだが…」
自分の名前が出て来たのでビクッと反応するリック。
「しばらくは皆に見てて欲しいんだ。少し戦闘の仕方を教えても良い。勿論、徒弟としての仕事が優先だから他の子供達が来るまででいいんだ…」
「それは良いんだが俺達は基本格闘の基礎が出来てないからな…」
ジョニーがそう言うと融真達三人もうんうんと頷く。その隣でキースがオムライスを食べながら提案してくれた。
「基本格闘ならアマナが教えてやれば良いと思うけど?」
キースの言葉に皆がアマナを見る。アマナは僧兵なので基本的な格闘を履修しているそうだ。
「えぇ、別にそれくらいなら良いですよ?ただその力を悪い事に使わないように約束して欲しいんですけど…」
その言葉に俺はリックを見る。
「どうだ?約束出来るなら他の子供達が来るまで一緒に訓練出来るぞ?」
俺の問いにリックは、緊張気味のまま頷く。取り敢えず午後からの各人の予定も決まったので俺達は昼食を食べた後、皆で後片づけをした。
再び訓練の為に庭に出て行く皆を見送った後、シーナさんにお昼寝を始めたフラムをティーちゃんとシーちゃんの二人と一緒に預ける事にした。
シーナさんはこの館に来てから薬の効果もありかなり回復していた。今では普通に起きて食事の準備や館の中の掃除などをしてくれている。
お母さんにティーちゃんシーちゃんと共にフラムを預けた俺は、クレアとスキル訓練に向かう為に玄関ホールに出た。
「リーちゃん、ここらの惑星で環境的にシニスターに近い星を探して欲しいんだけど…ある?」
黒龍の里でのクローナ達との戦闘を想定しての訓練なので、龍が住む高山を想定し、魔素が強く重力の強い空気の薄い星。
ついでに生命体が存在せず、俺達が少々暴れても大丈夫な星だ。
しばらく確認していたリーちゃんが当たりを付けてくれた。この星系内にあるそうだ。しかし、より恒星に近い為に結構な暑さらしい。
取り敢えず条件を満たしているので熱いのは我慢する事にした。
リーちゃんに、フラムがお昼寝から起きたら知らせてくれるように言った後、俺はクレアと共にリーちゃんが探してくれた星に向かった。
転移に当たり、長距離潜行転移スキルを発現させる為に俺は『神幻門』と『虚』を併用して転移した。
◇
荒野の殺伐とした星。それでいて恒星が近い為、熱い上に周囲が赤い。雰囲気としては地獄に近い。そして確かに魔素は濃く、空気がかなり薄かった。
更に重力はシニスターより更に二、三倍は強い。訓練には持って来いの星だ。
俺は自身の潜行転移スキルの訓練を、そしてクレアはプラズマ強化と攻撃の見切り、最適化、スキル素粒子を呼び込む為の訓練を始める。
「とにかく俺がスキルで攻撃していくからそれを本気で打ち消してくれ。対クローナ想定だから手加減なしでいくからな?」
「解っておりますとも。本気で掛かって来てくだされ!!」
その言葉と同時に俺は転移でクレアから距離を取ると、龍神弓を取り出してエネルギー弾を連射する。
俺が距離を取ったので接近しようとしたクレアはいきなりのエネルギー弾に足が止まった。
クレアは慌てて『ダークプラズマ』で対抗する。その間に俺は再び転移でクレアの背後に周ると膝を付いて右手で地面に触れる。
エネルギー弾をプラズマで消していたクレアは、背後からの俺の範囲攻撃に気付いて跳躍して退避する。
辺り一帯に『サンダーチェインズ』が炸裂する。俺はすぐに上に逃げたクレアに再びエネルギー弾を連射すした。
下からの攻撃に一瞬、反応が遅れたクレアはエネルギー弾を腕に纏っている闘気で弾いていく。その時には俺は跳躍してクレアの背後にいた。
全力で『ストームラッシュ』を仕掛ける。それを裏拳と共にプラズマを発生させて対抗するクレア。空中でストームラッシュと『殲滅拳打』がぶつかり合う。
俺のストームラッシュと殲滅拳打がぶつかり合う中、お互いのスキルが最適化を図っていく。『イミテーションミラー』と『黒怨眼』がお互いの動きを計算してより動きをソリッドにしていく。
お互いタガースキルと拳打で応酬しながら着地。俺はすぐに転移で距離を取った後、弓攻撃に切り替えてクレアを狙って『強襲乱射』を放つ。
クレアはそれを避ける事無く、両腕にプラズマを発生させて強襲乱射をゴリ押しで消しつつ高速で接近して来た。
そして俺の目の前まで来たクレアは殲滅拳打で俺に襲い掛かる。しかしその時には俺は地面に『パラライズボルト』を設定して虚で消えていた。
瞬間、殲滅拳打を放つクレアにパラライズボルトが炸裂する。俺は転移でクレアの背後に周った。ストームラッシュを仕掛けようとした瞬間、俺の身体が光を放った。
≪長距離潜行上位転移航行スキル『ハイディングゲート』獲得しました≫
…おっ、出来た!!リーちゃんの言った通りだな!!
そんな事を考えていたのがまずかった。パラライズボルトで一瞬、動きの止まっていたクレアだったが、スキル獲得に浮かれていた俺の思考も止まっていた。瞬間、振り返ったクレアが殲滅拳打を放つ。
…やべっ!!
俺はすぐに転移で逃げるものの、すぐにクレアが追尾して来る。俺はすぐに『神速四段』でクレアの背後に周りストームラッシュを仕掛けた。
再び、ストームラッシュと殲滅拳打の打ち合いになった。
再びの打ち合いとなったが何故か、徐々に俺の方が押され始めた。俺はすぐに『龍眼』でクレアを見て鳥肌が立った。
◇
全く同じ条件ではないがストームラッシュとイミテーションミラーを使う俺と、殲滅拳打と黒怨眼を使うクレアに差はないと思っていたが…。
俺はそれを見た瞬間、驚愕した。
さすが戦闘狂…いや戦闘センスの塊だなw戦闘中にプラズマを出して相手のスキルを消すのではなく身体全体にプラズマを纏って攻撃していた。
戦闘における思考が俺と段違いだ。プラズマを纏い攻撃をして相手のスキルの力を削ぎながら自身の攻撃も通していく。更にそれを持続させる事によって徐々にではあるがプラズマを強化していた。
クレアは俺には出来ない離れ業をやってのけやがったw
しかも黒怨眼も同時に発動し続けてこっちの攻撃を観察している。そりゃこっちが押されるはずだな…。
そう思いつつも、俺は俺のスキルを更に強化する為に『ヴァイオレットプラズマ』を両手から出してストームラッシュを持続させる。クレアのダークプラズマはまだ発現したばかりだ。
徐々に押し戻し始めたと思ったその矢先に、クレアの全身が光を放った。その瞬間、恐ろしい事に俺の出しているヴァイオレットプラズマがクレアのダークプラズマに吸収され始めたのだ。
まずいと思った俺はすぐに転移で距離を取ると龍神弓のエネルギーショットで攻撃をする。しかしクレアはたったままで俺のエネルギー弾を吸収してしまった…。
…コイツ、戦闘中のスキルの成長率が凄まじいな…。さすが上位種族だけはある…。
俺はそこで一旦、訓練を止める。
「…ん?何故止めるのですか?面白くなってきたところですぞ…?」
「いや、プラズマ訓練はここまででもう十分だろう。と言うかこれ以上やってももう意味がないからな…」
俺の言葉にクレアは不満のようだがこれ以上やっても俺のプラズマを超えてしまった以上、もう経験値にはならない気がする。
なんせこっちのエネルギーを打ち消すどころか吸収するんだもんな…。これ以上、俺の上をいかれるのも癪だしw
その時、タイミング良くリーちゃんが現れた。
「フラムがお昼寝から起きたよー。アンソニー探してるから早く戻った方がいいよ?」
「…解かった。俺はすぐ戻るけど、クレアはどうする?」
「わらわはもう少し、訓練して行きます。個々のスキルの底上げもやらねばなりませんからな…」
クレアは続けてスキル素粒子を呼び込む集中訓練をするようだ。クレアの事はリーちゃんに任せて俺はすぐに館に戻った。
クレアは龍戯を発動してスキル素粒子を呼び込む様に集中する。この星の魔素が集まり徐々にクレアのスキルに呼応していく。
俺はそれを転移中の空間から、リーちゃんと見ていた。
「…アイツと訓練してると自信失くすわwすぐに俺の上を行くしw」
「まぁ、そこは龍種だからね~。それより早く戻って上げてよ?またフラムがあちこち飛んでも困るからね…」
「確かにwじゃ、戻るよ。クレアの事頼む…」
「はいはーい、後は任せてー」
俺はすぐに転移を再発動させて館に戻った。
その直後、無人の星で訓練を続けるクレアの前に妙なヤツらが現れた。




