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来客。

 ヒスイ城の天守閣でキヒダの人相を確認した後、城から出ようとした俺はキヒダから半透明の人間が抜け出たのを視た。


 そいつは坊主頭の切れ長の鋭い目付きの男で真直ぐ俺に近付いてくる。俺が慌ててスキルを『バニッシュ』に切り換えた所でそいつは背後に立っていた。


「…死ね…」


 そいつはいきなり俺を背後からバタフライナイフで刺した。


 …どうなってる!?どうして『ゾーン・エクストリーム』が発動しない!?いや、それよりコイツはどうやって亜空間に侵入してきた!?


 疑問だらけの俺だったがこの半透明人間も驚いたようだ。俺が振り返ると能面のような無表情の男の目尻がピクっと動いていた。


 後ろから刺した男のナイフは俺の闘気によって切っ先以上、貫く事は出来なかった。俺は振り返りざま右のタガーでナイフを弾くと、左のタガーで男を斬り付ける。


 しかしヤツの身体が透明なせいなのか確かに斬ったはずのタガーがスカされて斬れなかった。俺は目の前の半透明の男のスキルを視て納得した。


『ゴーストダイバー』幽体(アストラル体)で人、人形、動物に取り付く事が出来る能力。幽体で武器を持つ事が可能。しかし持った武器で攻撃でするか、憑りついて自傷させての攻撃しか出来ない。赤色スキル。


 …ふむ。コイツはアストラル体なわけね。だからこっちの攻撃がスカったのか…。


 俺はここでふと、リベルトの言葉を思い出した。


 キヒダは二重人格だと言う噂話だ。コイツが憑りついてキヒダを動かしてるならその話も頷けるな…。考えている間にも男はナイフからアーミーナイフに持ち替えて俺を攻撃する。


 刺突、斬撃全ての攻撃を弾く。アーミーナイフを使っているが軍人的な動きではない。素人レベルの動きでとにかくナイフをブン回して攻撃してくる。


 あの漫画の喧嘩殺法的な動きだな…。


 憑りつく能力でアルギスや『神の使徒』幹部を思い出したがヤツらが憑りつくのは『天使』だ。しかしコイツはキヒダに憑りついている。


 …神の使徒に関係する者ではないのか…?


 考えつつ、透明くんの攻撃を全てタガーで弾き返す。


「アンタは神の使徒のヤツか?それともレバロニアの能力者か…?」

「…なんだそれは。知らんな…?」


 そう言いつつ今度はドスに持ち替えた透明くんが両手でドスを持って突進してくる。


「…そんな攻撃で俺にダメージ入ると思って…」


 その時、突然男は分身して八方から俺をドスで刺す。驚いた俺はすぐに膝を付いて放射状に『サンダーチェインズ』を発動した。


 瞬間、本体の男を残して分身が消える。


 男は身体に電撃を浴びて怯んだのか後ろに下がって膝を付くと消えてしまった…。俺はすぐにレーダーマップを開いて確認する。


 この亜空間内には光点はなく完全に透明男は消えたようだ。


 しかし亜空間内ではゾーン・エクストリームは発動しないようだ…。時間の流れ的なものが関係してるのか…?


 俺はバニッシュを解除してヒスイ城の天守閣に戻る。


 キヒダは相変わらず鼻の下を伸ばして酒を飲み、裸のオンナ達と戯れていた。キヒダの様子を確認したが、さっきまでいた透明のヤツは視えなかった。


 電撃を喰らってどこか別の場所に退避したのか…?亜空間内に入って来れたのを考えるとバニッシュと似たようなスキルを持っているのかもしれない。


 しかし、さっきのヤツも問題だかこの下の階と天守閣で焚いているこの『御香』も問題だな…。精神に作用するのか?幻覚作用があるのか?頭がくらくらする。


 俺は警戒しつつ、すぐにヒスイ城から転移で外に出た。


 妖精達に呼び掛けてリベルトがどこにいるか確認した後、合流した。ヒスイ城の城下街から出てヤマタ側へと戻る。


 俺は今しがた、ヒスイ城の天守閣であった事を話す。


「…キヒダはそいつに操られている可能性が高い。神の使徒のヤツ、あとレバロニアの能力者かとも思ったけど本人はどっちも知らないようだったな…」

「では単独でキヒダを操り、その者がこの争いを起こしたと…?」

「個人的にはそう考えてる。目的は解からんけどね。どっちにしろ気を付けた方がいいと思う」


 俺の言葉にリベルトが頷く。米や酒の相場変動に付いて後を任せた俺は、一度館に戻った。



 一時間ほど前、館ではフィーちゃんと共に魔障気訓練をする融真、キャサリン、クライ三人が門を挟んで一人の男と問答していた。


 館の門の前に来ていたのはSランクPTでSランクハンターのランディ・ストラットだ。そのランディが門を開けろとうるさく言っていた。


「…だから身元が解かるまで開けられないって言ってるだろ!!」

「俺はSランクハンターのランディだ!!ホワイトとエイムとは面識があるから大丈夫なんだよ!!」

「いやいやいや、いきなり押し掛けて来て知り合いだから開けろってないっしょ!?」


 その後ろに妖精から連絡を受けたティーアとシーアが現れた。


「なんかアイツ偉そうでな?おんしらは知っておるんかの?」


 ランディをチラッと見た二人は顔をしかめた。


「…いや、知らんヤツじゃな」

「そーでしゅね、みた事ないヤツでしゅ」


 それを聞いたキャサリンが得意気に言い放つ。


「ほらッ!!やっぱねー!!そんな事だろうと思ったよ!!ダンナが有名だからって知り合いヅラして来るヤツねー!!」

「いやいや、そこのちび二人に聞けば判るって…!!」


 しかし、その物言いにイラッと来たティーアがクライに指示を出す。


「そいつは全く知らんヤツじゃ!!どこか適当な所にテレポートで飛ばして良いからの」

「解りました。取り敢えずスラティゴ辺りに飛ばします」


 そう言うとクライがランディに手を翳す。その瞬間、何かを叫んでいたランディは消えてしまった。


「…やっとうるさいヤツがおらんなったでな(笑)?」

「アイツは偉そうなうえにうるさいんじゃ、消えて清々したのぅ(笑)」

「この前シーに敗けたくせに忘れとるし偉そうだから消えて当然でしゅ(笑)」


 そう言って笑うティーアとシーア、フィーアの三人のちびっこを見た融真達三人は苦笑いしていた。

再び魔障気訓練を再開した三人だったが、またもや門の向こうにPTらしき男女が現れた。


「…何だ、またか…」


 魔障気訓練を中断した融真が対応する。


「アンタらは何の用なんだ?ダンナと知り合いなのか?」

「…いや、顔見知り程度なんだがホワイトが貰った『家』を見に来ただけなんだ…」


 そう答えたのは霍延(かくえん)だ。


「…しかし…デカいな…家というより館とか屋敷って感じだな…」


 フィンは敷地の広さと丘の上のデカい館に驚いていた。


「ここって確か…元公爵の館じゃなかったかしら…」

「あぁ、確かにそうだね」


 カシスとシグルスは元々の持ち主を知っていた。


「…そりゃデカい訳だよ…」


 元の家主が公爵と聞いて、フィンも霍延もその規模に納得していた。四人が話しているとその後ろから更に五人、現れた。


 現れたのはジョニーとキースPTだ。


「何だ?お前らもダンナの家、見に来たのか?」

「あぁ、褒章で家貰うって聞いたからな。まぁ家のレベル超してるけどな…」


 フィンに言われたジョニーが館を見上げる。


「…あぁ、確かに『家』じゃないな(笑)」

「さすが、先の防衛戦で最高殊勲なだけはあるな…」


 キース達もまた敷地と館の規模に驚いている。そんなPT達の後ろから仕事から帰宅したセーナが声を掛ける。


「あの皆さん、ここで何してらっしゃるんですか?入らないんです?」

「あ、王立図書館の司書さんか。いや、身元が分からないとダメらしくて…」


 答えたのはシグルスだ。セーナが門を開けて入りつつ、買い出しした荷物を融真達三人に渡す。普通に門を開けて貰って入っていくセーナに驚いたのはキースPTのアマナだ。


「あれっ?セーナ先輩じゃないですか!!どうしてここにっ!?」

「ぁ、アマナちゃん、お久しぶりね。母さんの病気療養で今はここに住ませせてもらってるのよ」


 話す二人に驚くキース。


「アマナ、お前司書さんと知り合いか?」

「うん、魔法学院にいた時の先輩だからね。と言う事でわたしは入れるよね」


 そう言いつつ僧兵装備のアマナも門から敷地に入る。それを見たフィーアが声を上げた。


「ん?わっち、その五人は知っとるでな?シニスターで一度会っておるからの」


 そう言われたジョニー、キース、レイザ、ルドルフもアマナに続いて屋敷内に入る。その時、フィン達四人の後ろからウィルザーが現れた。


「…何だ?お前達。見てるだけで入らないのか?」

「…あぁ、ウィルザー卿か。いや、勝手に入ると良くないと思って…」


 フィンが答えているとウィルザーが門を開ける。


「そこの四人は大丈夫じゃ、入って良いからの」


 ティーアにそう言われたフィン、霍延、シグルス、カシスの四人はウィルザーに続いてようやく敷地内に入った。そこで全員が自己紹介を始めた。



 先に帰ったクレア、フラム、エイムに続いて時間差で俺も館に戻った。館の厨房ではセーナさんが帰宅して夕食の準備に取り掛かっていた。何故かキースPTのアマナもいる。


 話を聞くと今、皆下に集まって挨拶しているという。


 東鳳に行く前にフィーちゃんがいるから今日は焼肉にしますとセーナさんに伝えてあるので買い出しの野菜をアマナと一緒にカットしていた。


「ちょっと下に行って挨拶してきます」


 そう言って俺は館から出て下に降りていく。降りている途中で挨拶を終えたクレアがフィーちゃんを抱っこしてレイザと一緒に上がって来ていた。


「主、わらわ達も肉のカットを手伝いますぞ!!」


 クレアに元気良くそう言われたが、既に世界樹でカットして貰った各種肉を大量に買っている。と言う事で俺はクレア達に別の指示を出した。


「今日は外で焼肉にするから野菜のカットとテーブルと椅子の準備をしててくれ…」


 そう言うとクレアのテンションが明らかに下がった。しかしクレアの狙いは解っているので準備をよろしくと念を押した。


 …クレアに肉のカットなんかさせる訳ない!!しかもフィーちゃんもいるのだ。蜥蜴人のレイザは良いとしてこの二人は絶対に試食と称してつまみ食いするからだw


 俺が下まで降りるとフラムが駆けて来る。


「あぅぁーっ!!(パパーッ)!!」


 足元まで来たフラムを抱っこしながら皆に挨拶をする。うちのメンツの他にはウィルザー、ジョニーとキースPT。そしてフィン達四人も来ていた。


「…ランディは来てないのか?」


 俺が聞くとフィンが答える。


「…商業ギルドで場所を確認していないのにアイツは先に飛び出してな…」


 どうやらうちの館を見に来たらしいがランディは場所を確認せずに四人より先に飛び出したらしい…。


「…どこかで迷子になってるんじゃないかな…」


 そう言いつつ苦笑いのシグルス。続いて俺は融真に魔障気訓練の進捗を聞いた。


「…いや、どう頑張っても出来ないんだよ…」


 俺は意気消沈の融真に、魔障気で気付いた事があると話すと、早速ジョニー達が食い付いて来た。


「ダンナ、さっきから気になってたんだが魔障気って何だ?」

「…そうだな。魔障気の事もだけどスキルの強化についても話す事がある。取り敢えず上で夕食にするからその時に話すよ」


 そう言いつつ俺達は館のある丘の上に歩いて上がった。

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