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レバロニア海洋王国。

 ブチ切れたゲインに対抗したクレアが、ドラゴンブレス『黒閃咆』を放ってその上半身を消し飛ばした。更にその向こう側、北の山に大きなトンネルまで作ってしまった…。


 クレアへの説教を後回しにして、俺はすぐに振り返って蟲テイマーを確認する。ドラゴンブレスを見た蟲テイマーは既に姿を消していた。


 俺は急いで転移スキルの残滓を確認後『神幻門』で追跡した。残滓を辿ってフラムと共に光の中を抜けて行く。


 見えた!!もう既に本国に戻っていたようだ。これは王宮の中か?さてどうするか…。


 俺は光の中で止まる。転移中に止まるとどうなるか解らなかったがいきなり出て行くのもまずい気がする。すぐそこに王宮が見えるので出ようと思えばいつでも出られるだろう。


 ここは一旦、考える事にした。


 転移中、止まってみたが特におかしなことはなく俺の周りを光の線が無数に流れているだけだ。ここは…次元の狭間かな?


 まぁ、それは今は良い。出て行くかどうかを考えよう。


 このまま蟲テイマーを追ってレバロニア王宮に入り、東鳳に介入しない様に釘を刺しておくか?もしくは一度、太蘇に戻って皆と合流して先に能力者を消すか…。


 しかし太蘇に戻って能力者を消してもまた送り込んでくるだろう。ここは一度、ご挨拶をしておいた方がいいだろう。


 方針が決まったので俺は一気に光の中から出た。膝を付いて報告をしている蟲くんの隣に、同じ様に膝を付いて現れた。


「よう!!蟲くん!!久しぶりっ!!」


 俺が肩を叩くと蟲テイマーは飛び上がる程に驚いたw


「…おっ、お前ッ、どうやってここまでッ…!?」

「あ、びっくりしたw?いや~すまんね。俺、チョイと高度な転移スキル持ってるんだよね~w」


 そう言いつつ、蟲テイマーに『パラライズボルト』を流す。少し強めに発動したのですぐに気絶した。


 俺が正面に向き直ると、王様びっくりだw


「…きっ、貴様は何者かッ!!者共、そやつを捕らえよッ!!」


 王の言葉と同時に、両横に並んでいた槍兵が一斉に俺に向かって槍を向けて来た。しかし俺の範囲に入っていた兵士全員が動きを止めた。


「…こっ、これはッ!?どういう事じゃッ!?」

「はい、残念でしたw俺を捕まえようとしても、殺そうとしても無駄なんでw」


 改めて俺は挨拶をした。


「こんにちは、レバロニア王。わたしはエニルディン王国のフリーSランクハンターでアンソニー・ホワイトと申します。以後、お見知り置きを…」

「…エニルディンのハンターが何用か?突然、王宮に侵入したこの無礼、どう申し開きするつもりなのだ…?」


 挨拶の間にも、次々と兵士が集まっては俺を攻撃しようとしてその動きを止める。最後に騎士団まで出てきたが、俺の周りで一般兵がことごとく動きを止めてしまっているので手の出しようがなかった。


「このままだと少し話しにくいので前のヤツだけでも退かせて貰います」


 俺はそう言って前に殺到していた兵士を両脇に寄せてスペースを空ける。うん、これで話しやすくなったw


「改めて、突然の来訪、しかも一気に王宮まで来まして大変、失礼致しました。当方は先程名乗った通りのものです。そしてわたしが後ろにおんぶしているのが娘のフラムです」

「…そちはなぜ子供を連れておるのだ?危険だろう?」

「ご心配なく、この子はわたしと同じスキルを使う事が出来ます。つまり攻撃しても無駄なんですよw」


 俺の答えに顔をしかめるレバロニア王。


「…して、そちは何用があって来たのだ?場合によってはエニルディンに抗議させてもらうぞ?」

「えぇ、是非どうぞ。抗議して頂いても構いませんよ?では何故、わたしがここまで来たのかをお話ししましょう」


 そう言いつつ咳ばらいを一つすると話を始めた。


 

 その頃、士武馬の西の浜でゲインの下半身だけになった死体を探っているクレアの下に、エイムがブースターを使って飛んで来た。


「…む?エイムか。何故主の下を離れておるのだ?主とフラムが危険であろう?」

「奥様、リベルトさんが離反工作中、ホワイトさんとわたしは工作の下準備の後、備戎陣営で今後の作戦などを話していた所、能力者の存在に気付いたのです。その後、備戎陣営が攻撃を受けたのでわたしは備戎の防衛を、ホワイトさんは、交渉中に行方不明になったリベルトさんの救援に向かわれたのです」


 エイムの説明を聞いたクレアはうぅむ、と唸る。


「そうだったのか、すまなかったな。しかしリベルトは大丈夫なのか?」

「それについて報告があります。ホワイトさんが救援に来た所で、リベルトさんが能力者を一人倒して元の場所に戻ったようです。そしてホワイトさんは備戎の救援の為にリベルトさんを戻し、ご自身はやる事があると言って太守屋敷に残ったそうです。恐らく太守ヨウカ様を説得する為だと思われますが…」

「…ふむ、そうか…。説得する為にそこに残ったが何らかのトラブルで戦闘に発展しここにいた、と言う事か…」


 エイムは続けて自身が備戎防衛で一人、能力者を抹殺した事も報告した。


「よくやった。能力者三人は抹殺したと言う事だな」

「はい、所でホワイトさんはどちらに行かれましたか?」

「恐らく逃げた蟲使いを追ってどこかに転移したと思うのだが…どこに行ったかは解からぬ…」

「…ふむ。その話を聞いた所ですと太守屋敷に戻ってはいないかと思います。能力者を追って直接、レバロニアに乗り込んだ可能性が高いでしょう」

「そうか。さっきのヤツらはレバロニアのヤツらか。ここから近いな…。主の確認ついでに援護してくるか…」


 そう呟くクレアに待ったを掛けるエイム。


「奥様、お待ちください。まだこの太蘇に能力者が潜んでいる可能性は充分あります。確認と報告は妖精さんにお任せして能力者の襲撃に備えましょう。備戎陣営だけでなく屋又陣営も襲撃される可能性は高いですからね」


 エイムの言葉に考えるクレア。


「…ふむ。最もだな。では能力者を三人抹殺した事と主の状況の確認の為に妖精族に行って貰うか…」


 そう言うと、クレアは連絡の為に待機していた妖精リーアを呼び出す。そして主の状況の確認と能力者を三人、排除した事を知らせる為に連絡に飛んで貰った。



 俺は、何故ここに来たかの話を始めた。


「わたしは所属はエニルディン王国ですがある方から依頼がありまして現在、東鳳で活動しています。勿論、『無償』です。簡潔に申し上げますと、東鳳の正常化に関与しておりまして、今回、そちらのハンターの方とかち合いましてね。ゲイン殿とここで気絶している蟲の…人と戦闘になったのですよ…」

「…そうか。それは残念な事だ。して何故そのような事になったのか?」


 俺は一呼吸、置いてから話を続けた。


「わたし共は先程も申し上げました通り、東鳳の正常化に(くみ)しております。それはキヒダ政権を倒し、新たに正統後継者であるアマル殿に王として立ってもらう為です。ここまで話せばもうお分かりですよね?」


 レバロニア王は難しい顔をしたまま無言だ。


「このままですとそちらの能力者と再びかち合います。そうなりますとこちらとしても…」


 ここまで話した俺の耳元に突然、リーちゃんが現れた。どうやらクレアが戦況を確認後、俺への連絡で寄越したようだ。


 フラムが、突然現れたリーちゃんを見てキャッキャッと喜ぶ。


≪大丈夫そうね?とりあえずクレアからの報告ね。リベルト、エイム、クレアが能力者を三人、排除したみたいよ?≫

≪…解かった、と言う事はエイムが備戎防衛に成功したって事だな…≫

≪…うん。早く戻って合流した方が良いよ。またクレアが勝手に暴れ出すからね?≫

≪…あぁ、解ったよ…≫


 それだけ言うと、リーちゃんはすぐに戻ってしまった。それを見て残念そうなフラム。


 俺はすぐに話を続けた。


「…そうなりますとこちらとしても全力で対抗せざるを得ません。既にこちら側がそちらの能力者を三人抹殺し、排除しています。これ以上は死体を増やすだけかと思いますが…」

「…ふむ。そちの言う事は解かった。しかしこちらの事情もあるのだ。その話を聞いて、はいそうですか。とは行かんのだよ?」

「それは利益の為でしょう?利用しやすいキヒダを動かし、東鳳を統一させて植民地化、そこから利益を吸い上げる。そう言う事ですよね?」


 俺がハッキリ言うとその瞬間、レバロニア王の顔付が険しくなった。


「そこの者、口に気を付けなされッ!!そのような発言は控えて頂きたいッ!!」


 王の隣に立っていた宰相らしき爺さんが吠える。


「いや、別に隠さなくてもいいんですよ?大体分かりますからね。わたしは別の星からの召喚者ですが、わたしのいた星でも同じ様な事例は幾つもありますよ。しかもそちらは海洋権を独占してますよね?他国を植民地化して利益を吸い上げようなんて欲張りが過ぎるんじゃないですかねw?」


 怯まない俺の発言に、王の顔が更に険しくなり、周りも殺気立ってきた。


「皆の者ッ!!そこの者を殺せッ!!殺した者には褒章を与えるッ!!」


 王が立ち上がり叫んだその時、俺はゾーン・エクストリームで動きの止まっていた兵士を闘気ハンドの裏拳を右側に薙ぎる。


 瞬間、兵士数十人が王宮の壁に激突した。その一撃で怯んだレバロニア王と宰相、騎士団、警備兵達に聞こえる様に声を上げた。


「では、交渉決裂と言う事で!!俺を殺す?出来るもんならやって見せてもらおうか!!俺は警告したからなッ!!」


 そして背後から襲い来る騎士数十人を旋風掌で吹っ飛ばし左で止まっていた槍兵を闘気ハンドで纏めて吹っ飛ばす。


 前から来る魔法兵の氷結弾は龍神弓で全て撃ち落とした。


「これで終わりじゃないよなッ!?能力者も全員、全力で掛かって来いッ!!」


 俺の挑発で、レーダーマップに強く赤い光点が俺とフラムを囲むように現れた。いるわいるわ、一般兵や能力なし騎士団じゃダメだとようやく気付いたようだ。


 槍兵、警備兵、騎士団がゆっくりと下がっていく。それじゃ、おもしろい能力があったら貰って行きますかw


 瞬間、飛んで来た空気弾の塊を避けると手を翳していたヤツに接近、首を掴んで一気にスキルを抜き取るとそのまま壁に激突させる、飛んで来た光線を神速で避けて本体のローブの後ろから首を掴むんでスキル抽出。コイツは地面に叩き付けて気絶させる。


 倒れていたヤツの影を起こして襲撃してくるヤツにはヴァイオレットプラズマで無効化し、前から使用者の首を掴んでスキル抜き取りブン回して謁見の間から放り出した。俺の周りに無数の異空間の穴を出現させて無数の剣、ダガー、棘付き鉄球で攻撃するヤツは待ってやる必要がないので攻撃される前に闘気ハンドで殴ってそのままスキルを貰う。


 続けて眼からビーム攻撃のヤツは素早く避けて当て身で気絶させてスキルを…アレッ、何か変な感覚が…。


 調子良く能力者を倒し、スキルを抜き取って周っていた俺は突然、不思議な感覚を感じた。全てがスローモーションの様にゆっくり動き、周りを見ると残っている能力者の身体にスキルが光って見えた。


 …何だ?これはっ…!!闘気ハンドが勝手に動いて片っ端からスキルを掴んでは能力者の身体の中からスキルを引き剥がしていく。


 気が付くと、俺は倒れた能力者の中に立っていた。

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