表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/210

能力者。

 ゲンゲンの六色魔,念道(ろくしきまねんどう)、『白色鎌鼬(はくしょくかまいたち)』によって脚を狙われたリベルトは、鎌鼬が接触する瞬間を狙って魔法を巧妙に無効化した。


 離反工作に当たり、事前に渡されたスキルは『物理攻撃無効化』『マジックキャンセル』『すり抜け』の三つだ。いずれも危険に遭遇した場合に逃げる為のスキルである。


 リベルトは『マジックキャンセル』『すり抜け』を使い、ゲンゲンからの魔法攻撃を巧妙に弱め、気付かれない様に致命傷を避けて、魔法攻撃を喰らったように見せた。


 リベルトが片膝を付いて項垂れる。魔法無効化がギリギリだったせいか少し脚を切られ、血が流れていた。


「…くッ…」

「…何故かは解らぬが魔念道の威力を弱めているのか?しかしそれだけダメージを喰らっておればもう動けまい。では喋って貰おうか…」


 そう言いつつ、ゲンゲンは腰に下げていたシャムシールを抜いて、膝を付くリベルトに近づく。


「…まずお前の目的を話して貰おうか…」


 そう言いつつ、リベルトの前に立ったゲンゲンがシャムシールを振りかぶるとリベルトの肩を狙って振り下ろす。


 その瞬間、エネルギー波がその刃をガリガリと止めた。物理攻撃無効化に驚くゲンゲンの前でゆっくりと顔を上げるリベルト。


「…わたしは攻撃スキルを持っていない。しかしわたしは元軍人。最低限の装備は持ってるんですよ…」


 そう言うと、リベルトは持っていた拳銃をゲンゲンに突き付けた。


「…お前ッ!?動けるのかッ!?騙したなッ!?」

「…油断しましたね?わたしの勝ちです…」


 リベルトが引き金を引くと同時に、乾いた大きな音が響く。眉間を撃ち抜かれたゲンゲンがシャムシールを落として倒れた。


 その瞬間、停止されていた転移スキルが解除され、元の太守屋敷へと戻った。



「リベルト!!大丈夫かッ!?何があった…!?」

「思わぬ形で能力者と戦闘になりまして…」


 リベルトの説明に、俺は倒れた緑肌のフードを被った老人を見る。リベルトは単独で、何とか能力者を倒したようだ。


 俺は傷だらけで膝を付いたままのリベルトに、スキル『超速細胞再生』を渡す。リベルトの全身の傷が、スキルによって即時に再生した。


「おぃあうー、あぃぉうぅ?(おじさんー、だいじょうぶ?) 」

「えぇ、お嬢様、もう大丈夫ですよ」


 そう言って笑い掛けながら、フラムの頭を撫でるリベルト。


「…これはッ!?一体どうなっているッ!?まさか…ゲンゲン殿は死んでいるのか…!?」


 緑肌の一つ目の老人の死体を見た男達に動揺が走る。この隙に俺はリベルトに備戎(ビジュウ)陣営に戻る様に話した。


「リベルト、備戎陣営が攻撃されてるんだ。すぐにエイムと合流して撃退してくれ!!」

「…解りました。ホワイトさんはどうするのです?」

「俺はまだここでやる事がある。リベルト、よくやってくれた。これで能力者を一人、排除出来た。後は備戎の支援を頼む」

「解りました。充分、お気を付けください」


 そう言うとリベルトはすぐに備戎陣営へと転移した。


 俺とリベルトの話を聞いたヨウカが、眉を(ひそ)めて振り返ると、男達に問い(ただ)す。


「お主ら、どういう事だ!?わたしは攻撃指示など出した覚えはないぞッ!?」


 …さすが、若くして太守になっただけはあるな…。迫力が凄いわ…。  


 ヨウカの剣幕にたじろぐ男達。


「…そっ、それはゲイン殿が…」


 その時、襖の奥からもう一人、男が姿を現した。


「…俺が攻撃命令を出した。チンタラやってるからいつまで経っても統一出来ないんだよ」


 ゲインの言葉に、ヨウカは毅然とした態度で言い返す。


「ゲイン殿、東鳳に干渉するのは止めて頂きたい。あなた方はあくまでも我々の支援であってレバロニアに軍事権を委譲はしていませぬ。以降、勝手な真似は慎んで貰いたい」


 ゲインと呼ばれた男はヨウカの抗議に無言で肩を竦める。そのやり取りの間に俺は『スキル泥棒』でゲインのスキルを視た。


『リーサルファイアーム』拳銃からライフル、マシンガン、重火器を具現化し操る能力。それぞれ呼び出す兵器によって範囲が限定される。か…。


 …恐らくコイツがビショウの父親を暗殺したヤツだな。どうやら話の流れからするともう既にレバロニアが東鳳に入り込み、干渉を始めているようだ…。


 このゲインという男はレバロニアから派遣された能力者なんだろう。


「…ヨウカ、アンタには悪いがもう既に兵士を連れたビヴァクが備戎を攻撃している。もう戦闘は止まらんよ…」

「…チッ、勝手な真似を!!この事はレバロニア王宮に正式に抗議させて頂く!!」

「…どうぞ、好きにすれば良い。お前ら小さな島国のヤツらが何を言おうが結果は変わらんさ…」


 そう言いつつ、ゲインは俺を見る。


「エニルディン王国の者だったな。話を聞いたからにはお前には消えて貰う」


 そう言い放ったゲインが、俺に向かって腕を伸ばして来た。


「いや、この舞台から消えるのはお前の方だよ、ゲインくん…」


 俺は言い放った後、『神速』でゲインに接近すると、伸ばした右腕を取って捻る。そのまま右脚で外に足払いを掛けて仰向けに倒した後、腕を取ったまま、ゲインの肩を脚で踏み付けた。


「…残念でした。お前、今俺を攻撃しようとしただろ?もうお前の能力は視えてるんだよ!!」


 俺はフラムを左腕で抱っこしたまま、ゲインの腕を捻り上げる。


「…ぐぁぁァァッ!!このッ…エニルディンのハンター如きが俺達に勝てると思うなよッ!!」

「いやいやいやwアンタもう既に負けそうですけどw?ここからどう挽回すんのよw?」


 ゲインを小馬鹿にしつつ、俺は足でグリグリ踏み付ける。


「…この野郎ッ!!調子に乗りやがってッ…!!」

「オイッ!!お前らッ!!どっちも部外者だろうがッ!!この太守屋敷で暴れるのは止めろッ!!そんなに暴れたければ士武馬の山岳地帯の向こう側に行ってやれッ!!」

「…それはおもしろそうだ。わたしも参加させて貰いましょうか…」


 激昂するヨウカの後ろから、新たに一人の男が現れた。俺は、すぐに新たに現れた小汚いボロフードに身を包んだ猫背の瘦せぎすで不気味な男を視る。


 ゲインが逃げないように脚で踏み付けたまま、その男のスキルを視た。


『インセクターコースティブ』蟲と契約し使役する事が出来る。契約の際、エネルギーの媒介となる装飾品が必要。呼んだ蟲を魔力で強化し、攻撃させる。


 …ふむ。蟲使いの男ね…。


 蟲マスター…いや、蟲テイマーか?しかし蟲か…。


 俺は思わず鳥肌が経った。子供の頃ならいざ知らず、大人になってからは蟲と関わる事などほとんどない。要は気持ち悪いから関わりたくないって事ですw


 昆虫好きの皆さん、ごめんなさいw


 取り敢えずコイツら連れてヨウカが指定した場所に転移するか。東鳳の地理情報はリーちゃんから既に貰っているのでヨウカの言った場所がすぐに分かった。


「…いつまで俺を踏み付けてるつもりだ?お前、どうやら死にたいらしいなッ!?」

「まぁ待てよ。ここで暴れたらそこのヨウカの姐さんに怒られちゃうだろうw?せっかくステージ用意して貰ったんだからそこに行ってやろうぜ」


 俺はすぐにゲインと蟲使いを『マルチプルゲート』でマークすると、有無を言わさず二人を連れて『神幻門』で指定された場所へ転移した。



 その頃、ビヴァクの頭上からマイクロミサイルを撃ち込んだエイムに、下からの無数の火炎弾が飛んで来ていた。


 ブースターで宙に浮いたままのエイムは、襲い来る火炎弾をプラズマで打ち消した。そしてビヴァクが転移した瞬間を狙って麻痺針を指の先から撃ち込んだ。


 それを土の壁で防いだビヴァクは、既にスタックしていた魔法を一気に発動させた。


 滞空しているエイムを串刺しにしようと巨大な土の槍が剣山の様に襲い掛かる。更にブースターで上空に退避したエイムに雷撃が降ってくる。


「…ふむ。逃げ場を失くす作戦ですか…」


 呟いたエイムの前後左右から直径五メートルを超える岩が襲い掛かり、一気に炸裂した。


 下からの土の剣山、上からの雷撃、そして前後左右から巨大な岩が衝突し、濛々(もうもう)と土埃が上がる中、激しい光が明滅する。


 幻術で姿を隠していたビヴァクが油断なく、敵の死を確認する為に上空に音を反響させて確認する。しばらくの後、魔法が炸裂した場所から、土煙が風に流されて晴れた上空には誰もいなかった。


 その瞬間、顔色を変えるビヴァク。死体が落下してくる音も気配もない。敵の残骸が何一つ、認知出来なかったのだ。


 焦って周囲を探るビヴァクは、背後からの突然の声に驚愕した。


「…ビヴァク、あなたは凄い。しかし一つだけ、あなた自身が気付いていなかった事があります。常に周囲を探る為に出している音、それが敗因です…」


 その瞬間、ビヴァクは振り返る間もなく、エイムの仕込み剣によって一瞬で首を飛ばされた。


「あなたが出しているその反響音は普通の人間には聞こえない。しかし、わたしのレーダーは反応していた…。そしてこの戦場で転移出来るのはあなただけではないのですよ…」


 その言葉の直後、首の無くなったビヴァクの身体が、ドサリと倒れた。



 ゲインと蟲テイマーを連れて転移した場所は沿岸都市、士武馬から西にある山岳地帯を超えた先だった。


 何もない平野と、浜辺がある。確かにここなら少々暴れても大丈夫だろう。そんな事を考えていると、踏み付けていたゲインが突然スキルを発動した。


 「いい加減その足をどけろッ!!『ランドマインッ(地雷)』!!」


 ゲインが叫んだ直後、俺は慌てて神速で退避した。ゲインは俺に踏まれていた肩の部分を地雷に変化させると、一帯を巻き込んで爆発させた。


 近距離過ぎると『ゾーン・エクストリーム』が発動するか解らないので一応、退避したが…。…ー身体の一部を兵器化する能力か。この能力、面白いんだが自分自身は爆発に巻き込まれないのかなw?


 しかしそんな心配などする必要もなく、ゲインは無傷で立っていた。


「おお~、凄い曲芸だなw?いや、爆発イリュージョンかw?」

「言ってろッ!ガキと一緒にあの世に送ってやるッ!!」


 直後にゲインが右腕から拳銃を出して、俺に向けて数回、引き金を引いた。


「『リーサルバレット(死を招く弾丸)ッ』!!」


 瞬間、撃ち出された弾丸が五発、消えた。


 …消えた様に見えたが俺には『龍眼』で視えていた。ゲインのスキルワードの直後に、弾丸のスピードが一気に上がったのだ。


「おぉ~言うだけあるな!!」


 一気に加速した弾丸が『ゾーン・エクストリーム』に突っ込んできたのだ。突っ込んでは来たのだが俺のスキルの影響で、弾丸のスピードは一気に減速した。


 当然、撃ち込んだゲインの動きも止まる。さて、一気にカタを付けてやるか…。動こうとした俺は、フラムにあぅあぅ言われて足元を見た。


「…ん?どうしたフラム?した?いっぱいいる?」


 そう言われて足元を見ると…無数の蟲でいっぱいだった…。


 ムカデ、ヤスデ(ムカデのそっくりさん)、蜘蛛、ウデムシ(ゲジゲジそっくりでよりキモチワルイ)、毛虫、シミ、ハリガネムシ、ゴキブリ…。


「…ぎゃああああッ!!なんじゃこりゃあぁぁぁぁッ!!」


 俺は慌てて神速でその場から退避する。しかし蟲達は俺の動きに合わせてブワァァァッと移動して来た。更に背後から不気味な羽音が聞こえて来る。


 …俺は恐る恐る振り返った…。


 また大量の様々な種類の蜂が、接近していた。


「…うわぁ、イヤ過ぎる…。昆虫で精神的に追い詰めて来るヤツか…?」


 抱っこしているフラムもブルブルっと身震いしている。蟲に気を取られているその隙を狙って俺のスキル範囲から出ていたゲインが攻撃を仕掛けてきた。


 さっき弾丸を止められたのを見て、弾丸の種類を変えてきた様だ。これなんて言うんだったか…。特殊な弾丸で分厚いガラス割るヤツだったはず…。


 俺は反射的に神速で避ける。


「…どっちを先にやるか…どうするかな~、イヤ過ぎるけど先に蟲キ〇グをやっちまうか…」


 俺が二人と対峙して、ブツブツ言っていると突然、俺達の周辺がサッと影で暗くなった。新手の敵か?俺は慌てて上空を見上げる。


 ゲインと蟲テイマーも驚いて上を見上げていた。上空で黒く大きな翼を持った巨大生物が悠々と飛んでいた。

 AI画像生成でキャライメージを作ってみたんですが…中々、巧く行かないもんですw

納得はしてないけどまずは『クレア』イメージ作ってみましたw

 エピソード14の途中に入れてます。もっとイメージに近いモノが出来たら差し替えますw

 エピソード84と100にフラムイメージ入れています。こちらもよりイメージが高い者が出来れば差し替えますw


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ