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割り切れなくても良いじゃない、人間〇もの。

 俺達は東鳳に出掛ける為の準備を終えて、館の玄関ホールに集まっていた。まずはパラゴニアに向かいアマルと合流する予定だ。


 しかし、パラゴニアへと出発しようかというタイミングで突然、フィーちゃんが現れた。


「わっち、今日も来たでな?」

「…ぁ、あぁ、いらっしゃい。今日はどうしたの?」


 聞くと、フィーちゃんが俺達を見上げる。


「…ん?おんしら、揃ってこれからどこか行くんか?」

「ちょっと用事があってね。まずはこれからパラゴニアに向かう所なんだよ…」

「そうか、気を付けて行ってくるでな?お土産頼む。その前にちと頼みがあるんじゃが…」

「…頼みって何w?」


 俺が聞くと館の部屋を貸してくれとの事だった。


「あぁ、上階なら住む人が決まってないからどこでも好きな部屋を使って良いよ?」

「う~ん、わっち、地下の方が良いんじゃ。秘密基地って感じがして良いじゃろ?どうかの?」

「あぁ、地下も好きな所、使ってくれて良いよ。一応、地下一階の部屋の一角はティーちゃんとシーちゃんがそれぞれ使うから相談してどこの部屋にするか決めて…」


 ついでに地下二階は幽霊のアーキンド一家が住んでいる事も伝えた。


「なんじゃ?もう先客がおったんか?」

「俺達、すぐに出かけるけどティーちゃんとシーちゃんは留守番してるから一緒に地下を周って見て…」


 俺達が話していると、少しの時間差で融真、キャサリン、クライが現れた。


「…あれっ?何で三人がこっちに来てる?スラティゴの防衛はどうした…?」


 俺が聞くと、フィーちゃんと三人が答えてくれた。どうやらクレアが三人に『ヤバい』スキルを伝授しようとしていたようだ。


「…クローナ様からの伝言もあったでな?ついでに伝えて来たんじゃ…」


 …クローナ…?…あぁ、クレアのお母さんね…。


「しばらくはわっちが三人に『魔障気』を教えるからの。三人にも部屋を用意してやって欲しいんじゃ…」

「ああ、それなら上階の好きな部屋、使ってくれ。…所でクレアはどうしたんだ?一緒に来なかったのか?」

「…まだ防衛の交代要員が来てないんだ。恐らく交代するハンターが到着すればこっちに来ると思うけど…」


 なにやら言いにくそうに融真が話す。


「…何だ?クレアのヤツ、まだスネ〇のままなのか?」

「…それもあるけどね~。奥様の中でまだ決断が出来てないんじゃね?」


 キャサリンとクライが、龍族の『掟』と『試練』について話してくれた。どうやら他種族との結婚は掟により禁止されているようだ。それを覆すには龍族に伝わる試練を乗り越えなければならないという事らしい。


「そこでまずおんしが『神気』を発現せねばならん。でじゃな、その『神気』をクレアに教えてやって欲しいでな?でなければクレアは試練にすら挑めんのじゃ…」


 どうやら現時点でのクレアの力では龍王、龍神、龍妃には勝つどころか対等ですらないらしい。それ程までに実力差があり過ぎるようだ…。


 …で、俺がクレアに何を教えるんだw?『神気』って何だよw? 


「…うーん、別にこのまま偽装結婚で良いと思うけど?里には結婚しないって言っとけば良いんじゃないかなw?そこにわざわざ踏み込んで話を複雑にするのもどうかと思うし…」

「…おんし、そう言う訳にはいかんでな?龍妃クローナ様は厳しいんじゃ。嘘でも付こうものなら存在そのものを消されかねんでな?」


 …あぁ、確かにそうだな。この前のあのキレっぷりは半端じゃなかったもんな…。禅爺が止めてなきゃ俺、死んでたかもしれん…。


「まぁ、その事はクレアが決断してからどうするか考えるよ。その『神気』とやらもどうやったら発現するか解かんないし…」


 俺は続けて妖精達にティーちゃんとシーちゃんを呼んで貰うと、妖刀を預ける。


「アーキンドさんとこの娘さんが椿姫と仲良しだから刀は置いて行くよ」


 そう言いつつ、密談に切り替えた。


≪俺の留守中に鬼哭が悪さしない様に監視してて欲しいんだ。何かしたら速攻で叩きのめしていいからw≫

≪解かった。任せるんじゃ≫

≪よーく見とくでしゅ≫


 更に続けて融真達三人にも留守中の対応を頼んでおいた。


「…ティーちゃんとシーちゃんが知ってる人は用件を聞いといてくれ。知らないヤツは追い返していい」

「あぁ、任せてくれ。ところでメシはどうすればいいんだ?」

「まだ料理人を雇ってないんだ。子供達を連れて外食に行ってくれるか?」


 そう言って俺が纏まった金を融真に渡しているとフィーちゃんが話に入って来た。


「食事はわっちが魔界からシェフを呼ぶでな?そこは心配せんでもいいからの…」


 という事で後を任せた俺達はアマルと合流する為に、まずパラゴニアに向かった。パラゴニアに到着した俺達はまず、巫女様とバリー隊長に挨拶をしてから、源さんの店でアマル達と合流する。


「事前に話は通してあります。しかし未だ、半信半疑の様です。まずは屋又(ヤマタ)備戎(ビジュウ)の各代表に会い、アマル殿が東鳳に戻る事を証明しましょう」


 リベルトの言葉に俺とアマルが頷く。


「リベルト殿、ホワイト殿、何卒よろしくお願いします」


 今回は挨拶と連携の確認だけなので最低人数で行くと説明する。護衛対象が増えると護り切れない可能性もあるからだ。お供の面々には留守をしてくれるように頼んだ。


 まずは屋又(ヤマタ)の陣営に向かい、次に備戎(ビジュウ)を周る予定だ。俺、フラム、リベルト、アマルとその護衛にエイムで東鳳に向かう。


 アマル達に小さな子供を連れて行くのは如何なものか?と突っ込まれたがフラムが能力を持っている事、置いて行っても付いてくる事を話して押し切ったw


 まずはリベルトから転移して俺達が今から向かう事を伝えて貰う。いきなり皆で転移すると驚くからね。


 その後、俺が全員を『マルチプルゲート』でロック。『神幻門』で屋又陣営へと飛んだ。



 屋又は山が連なる地形で山間部に街があるといった感じだ。西洋のような城壁に囲まれた城塞都市ではなく、砦は壁で仕切られているが、その周辺に街が拡がっていた。


 現在、砦には太蘇(タイソ)からの代官が常駐しているので屋又の代表は山の中に潜伏してゲリラ戦で抗戦しているらしい。


 俺達は山の中の簡素な砦に転移した。


「…おおッ!!よく生きて戻って来られた。アマル殿!!待っておりましたぞ!!」


 屋又の代表、屋薙(ヤナギ)は上座から降りてアマルを迎える。長い白髪と額に鉢金を付けた壮年の穏やかな相貌の男だ。


「ヤナギ殿、ご苦労をお掛けした。これからはこのアマルが前線に立ちます故…今までの事は許して頂きたい…」


 ヤナギが首を横に振る。


「…いや、生きて戻ってくれればそれで良いのです。共に太蘇いや、キヒダを打倒しましょう!!」


 二人の再会の挨拶の後、リベルトが俺を紹介してくれた。


「こちらはわたしの雇い主で、共に支援に参りましたエニルディン王国のハンターのホワイトさんです…」

「こんにちは。エニルディン王国から派遣されたハンターのアンソニー・ホワイトです。で、この子は娘のフラムです。話は聞いていますよ。東鳳が一刻も早く正常な状態に戻る様に尽力しますよ…」


 俺の自己紹介に頷きつつも、フラムを見たヤナギが顔を曇らせた。


「…支援ありがたい。それは良いのですが何故、戦場にお子様を連れて来たのですか?」

「この子はわたしのスキルをほぼ網羅している能力持ちの子なんですよ。東鳳を見た事がないので連れて来たんです。勿論、作戦決行日には家で留守番させます。挨拶回りと工作の時だけですのでご心配なく…」


 俺の言い訳、と言うか説明に難しい顔をしながらも、フラムが愛嬌を振りまくので何とか了承してくれたw


 続いて簡単に作戦の説明をして連携などを確認した俺達は次に備戎の陣営に飛んだ。


 備戎は平野部が多く所々に小高い山や丘があちこちに点在し、その下にかなりの規模の地下洞窟があるそうだ。屋又と同じく、備戎の砦にも太蘇からの代官がいるので、備戎の主力は地下洞窟に潜伏してゲリラで抗戦中という事だ。


 陣を張っている洞窟に転移した所、十代後半?と思われる若者が大騒ぎしていた。先行して転移していたリベルトが転移して来た俺とアマルに、慌てて下る様にいう。


「…しばらくお待ち下さい。今、少し立て込んでおりまして…」

「何だ?話は付いてたんじゃないのか?」


 リベルトに問い掛けつつ、騒いでいる若者を見る。その刀を抜いた若者を、周りの男達が必死に止めていた。


「…お前らッ、止めるなッ!!父の仇なんだ!!アマル、殺してやるッ!!」


 …何だアイツは…アブねーヤツだな…。


 俺はこの前の怨霊事件の事を思い出した。刀抜いてるだけでも危険なヤツに見えるのに、自分が刀を振り回していたのを思い出すと完全に危険人物だよな…。


 そりゃ逮捕もされるわww


 そんな俺の前で、すぐにエイムが若者に接近するとその手首を掴み上げて刀を取り上げる。リベルトに話を聞くと、どうやらその若者は備戎の前代表、備慧(ビケイ)の息子らしい。


 備戎の前代表ビケイは太蘇との抗戦で戦死したそうだ。そのビケイの戦死を息子、備尚(ビショウ)は逃げて潜伏していたアマルのせいだと喚き散らしていた。


 リベルトの働き掛けにより、太蘇とキヒダ打倒の為に一度はアマルが東鳳に戻り指揮をとる事を渋々承諾したが、この段になってやはり許せん!!という事になったらしい…。


「…くそッ、話せッ!!貴様らは何者だッ!!」


 俺は自己紹介をしつつ、エイムに腕を取られて拘束されて喚くビショウに、アマルと共に近づく。


「…俺はエニルディン王国のハンター、アンソニー・ホワイトだ。で、ビショウくん、キミを拘束しているのがうちの護衛なんだが今はアマルさんの護衛をやって貰ってる。キミのお父さんの事は大変残念に思うが…」


 そこまで言った俺を制して、アマルが前に出る。


「ビショウ、わたしもあの時はああするしかなかった…。逃げて潜伏し隠れなければ殺されていたのだ…」

「ならどうして少しでも早く戻ってこなかったんだ!!アンタがもっと早く戻ってれば父上は死なずにっ…」


 突然、リベルトがビショウに平手打ちを喰らわせる。


「この段になってそのような甘い事を言うようでは今後、部族の長など到底務まりませんよ。過ぎた事は忘れろとは言わない。しかし今は大義の為に抑えてくれとこの前わたしが言ったはず…。それが出来ぬなら君にはこの作戦から外れて貰う。不穏因子になりかねないのでね…」


 平手打ちを喰らい、項垂れて涙を流すビショウ。そんなビショウに俺も俺なりの言葉を掛けた。


「…オヤジの事はもう忘れろ。そうすればお前は強くなる…」

≪…あッ!!それラー〇ンマンのパクリ!!≫

≪…なんだよ。リーちゃんいたのかよ!!まだ話の続きがあるんだよっ!!≫

「…って言いたいとこなんだけどな。そのお父さんを失くした気持ちもキツイと思うが今は東鳳全体の事を考えてくれ。今回はこれで引き揚げる。キミの気持ちが落ち着いたらまた作戦と連携について話しに来るよ…」


 それだけ伝えて俺達は備戎陣営から離れた。


 その後、太蘇占領下にある天登(アマト)の領内に入り、ゲリラ抗戦を続ける天登の残党にアマル復活を伝え、作戦と連携などを話した。


 

 その頃、ティーアとシーアはそれぞれ、地下一階の部屋を錬金研究部屋と、薬草保管庫にするべく、妖精達に指示を出して設備を運び込んでいた。その時、地下二階から悲鳴か聞こえた。


 すぐに部屋から飛び出した二体は視線を合わせるとニヤッと笑う。そしてすぐに地下二階のアーキンド一家の部屋の前に転移した。


 見ると鬼哭が刀から飛び出して、アーキンド一家の魂を喰らってやろうと部屋に飛び込もうとした所、トラップに掛かり悲鳴を上げたようだ。


「…うぅぅッ、ち、力が抜けて動けぬ…なんじゃ、この魔法陣は…」

「ふふふ、アンソニーの言った通りじゃな!!」 

「やっぱり出て来たでしゅね!!」


 鬼哭が現れた二人を見て泣き喚く。


「なんじゃ!!このチビ共ッ!!お前らから喰らってやろうか!!」

「動けんくせに偉そうじゃのぅ…」

「どっちが強いか思い知らせてやるでしゅ」


 そう言うとシーアが無属性魔法『アトラクト』を使い、再び力を失って小さくなった鬼哭を誘引してガシッと捕まえると、鬼哭に無属性魔法『ウィーケンド』(弱体化)を掛けた。


 更に力を失い小さくなった鬼哭は、泣き喚きながら刀へと戻って行った。その直後、一体の妖精が現れた。


 フィーアが二人を呼んでいるというので、ティーアはすぐに刀に結界を張るとシーアと共に門内の広場へと転移した。

 いつもアクセス、ありがとうございます。術後のお腹の痛みもほぼなくなり、普通に動けることに幸せを感じる今日この頃w


 皆さんは鼠経ヘルニアにならないように気を付けて下されw


 強い咳、激しいくしゃみ、勢い良く鼻をかむ、重いモノを持つ、この辺りでひょっこり飛び出すようです。四十代以降の方は要注意ですぞw

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