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幽霊一家の移転先。

 俺達は問題の土地の近くにあったカフェのオープンテラスにいた。いきなり手錠を掛けられた俺を見た若頭とその護衛が慌てて事情を説明して何とか開放された。


 俺をいきなり逮捕したのは王都警備隊のラルズ・レバートという隊長だ。


 今日は非番でたまたま傍を通りかかった所、ギャングのシマで俺が刀を振り回していたのを見たようだ。


 隊長には怨霊の姿形は見えず俺が一人、刀をブン回している様に見えたらしい…。


「…いくら下町のギャングのエリアだとしても、今後は白昼に刀を振り回すのは止めて下さいよ(笑)?」


 ラルズ隊長はチラッと子供達を見て続ける。


「事情があったとはいえ、あの様な振る舞いはお子様達の教育にも良くありませんからね…」

「…えぇ。今後、気を付けます…」


 その後、遅ればせながらお互い自己紹介を交わす。


「おおっ、アナタが最近、王都で噂になってるホワイトさんでしたか。お会い出来て光栄ですよ!!」


 ラルズ隊長の言葉に若頭と護衛が視線を合わせる。


「…ホワイトって言ってたからまさかとは思ってたが…。隊長、その人は王都防衛で帝国の将軍を追い返した人と同一人物か?」

「あぁ、そうだよ?色白、年齢不詳。見た事のない装備に三本の特殊タガーを装備している子供連れのハンター。カイザーセンチピード、キメラモンスター、更に直近だと巨大ガーゴイルを倒した人だよ」


 ラルズ隊長の説明に、今更ながら顔を引き攣らせてドン引きする若頭と護衛だった。


 その後、改めて現場に戻り、商人一家にどこか別の場所に移動して貰えるように説得する。しかし商人一家にはこの場所以外、行く宛がないようだ。俺は考えた末に、ふと思いついた。


 うちの館の地下に移動して貰うか!!


 地下だから騒がしくないし、幽霊にとっては良い環境なんじゃないかと思った。俺はすぐに家の館の地下はどうかと勧める。


≪暗くて陽は差し込まないし、騒がしくないし、環境としてはかなり良いと思うけど…どう?≫


 商人夫妻と話している間、娘の方は椿姫と幽霊同士仲良くなり離れた所で話していた。


≪…本当に貴族の館に住まわせて貰っても良いのですか…?≫


 商人夫妻の言葉に俺は頷く。


≪あぁ、遠慮しなくていいよ。その館は貰ったものだからね。ただ注意点が一つある…≫

≪…注意点とは…何でしょう?≫


 商人の妻に問われて答える。


≪まだ館を貰ったばかりだから後々、警備員や料理人を雇うつもりなんだ。それで館に来る人間を脅かす様な事はしないで欲しい≫


 俺の注意点に、夫妻が頷いた。


≪後、何か希望があれば聞くよ?≫

≪そこにいる娘さんの霊とうちの子を時々、会わせても良いでしょうか…?同年代の霊がいないと娘が寂しいかと思いまして…≫

≪…あぁ、椿姫の事か。本人が良ければ全然良いよ?≫


 俺は商人の娘と話す椿姫をチラッと見る。会話が聞こえたのか俺の視線に、椿姫が頷いた。楽しそうに話していたから大丈夫だろう。


 と、いう事で商人一家の説得も終わり、それを見届けたラルズ隊長と若頭、護衛と別れた俺達は、商人一家の霊を連れて一度、館に戻る事にした。

 

 うちの館は地下二階まであり、そこから外へと脱出出来る様に避難通路まであった。


 商人一家の霊には最下層の地下二階の隅っこの部屋に住んでもらう事にした。父親がバイア・アーキンド、母親がセール、娘がリースというそうだ。


 アーキンド一家を部屋へ案内して、いるものがあったら言ってくれと聞くと、もう幽霊だから特に必要なモノはないです、と言われた。


 そりゃそうですわなw


 地下二階の隅の部屋に住んでもらう事にしたが、特に他の入居者はいないのでそこのフロアは自由に使って良いよと伝えておいた。


 時間的に昼になっていたので上に戻る。まだ料理人を雇っていないのでお昼を食べに料理屋に行く事にした。


 お昼を食べてしばらくまったりした後、午後からもボランティア巡りをする。明日から一旦、ボランティアを止めて本格的に東鳳で活動するつもりだ。


 その辺りはウィルザーに話して、王都ギルド本部のマスター、ウィットさんに伝えて貰う様になっている。


 俺は館に戻ると、二階の奥にある公爵執務室を綺麗にして、リベルトが用意してくれた東鳳に関する資料に目を通した。



 翌日。東鳳に向かう為に一旦、リベルトに戻って来るように伝えて貰う。リベルトには妖精達が見えないので事前に合図を決めて置いた。


 目の前で妖精が放つ小さな光が三回、点滅したら戻ってくれの合図だ。


 リベルトが戻ってくる間に、東鳳の全ての情報を貰う為に、フラムにリーちゃんの記憶を読んで貰う事にした。


 リベルトの情報とは別に、妖精達の情報も確認したいからだ。妖精は人が入り込めない所に簡単に入って行くからねw


 リーちゃんはフラムにベアーハグされたくないので、記憶を読ませる事をかなり渋っていたが、俺がしっかり抱っこしてるから大丈夫だと言って何とか承諾して貰った。


 リーちゃんは記憶の中から、東鳳に関する全ての情報をピックアップする。準備が出来た所で、俺がフラムを抱っこした。


「フラム、今からリーちゃんの記憶を読んでくれるか?」

「あーぅ(は~い)」

「リーちゃんをギュってしたらダメだからなw?」

「うぅー(うん)」


 俺がフラムに言い聞かせたのを確認した後、リーちゃんがフラムに恐る恐る近づく。フラムの小さな手がリーちゃんをぺちっとする。


 その瞬間、選別された東鳳の記憶情報がフラムに流れた。全ての記憶を読んだフラムが、今度は俺の頬をぺちっとした。


「…これは…最近の情報も入ってるのか…凄いな…」

「妖精は基本、世界のどこにでもおるからのぅ。現在も東鳳で活動中の情報も集まって随時、更新されるんじゃ」


 ティーちゃんの説明を聞いている間に、リーちゃんが転移で俺達から距離を取る。それを見たフラムが目を大きくしてキラキラさせた。


 フラムがもぞもぞと動くので下ろしてやると、いきなり転移を使ってリーちゃんに急接近した。


「…ん?何、フラム…?」

「あぅぉ(だっこ)」


 二人の目が合う。一瞬の沈黙の跡、にこにこ笑うフラムがリーちゃんを両手で抱っこしようとした。

瞬間、それを察知したリーちゃんが転移でフラムから距離を取った。


「…うぉっ!!危なっ!!…油断するとすぐ…」


 そう言いかけたリーちゃんにフラムが再び、転移で接近した。


「ぎゃーっ、フラム!!何で追っかけて来るのよォォッ!!」

「あぅぉ~(だっこ~) 」


 必死に転移で逃げるリーちゃんと、にこにこ笑いながら転移で追い掛けるフラム。いきなり、転移での追いかけっこが始まったw


「二人とも館の敷地内から出ないでよw?」


 そう言いおいて俺はフラムが流してくれた東鳳に関する記憶情報を確認していく。


「そんな事言ってないで早くフラムを止めれーッ!!」


 リーちゃんの叫ぶ声が聞こえたが、俺は情報を確認する事を優先した。リーちゃんが本気なら次元の狭間に隠れる事も出来るし、違う次元帯へも転移出来る事を知ってるからね。


 フラムとしてはリーちゃんを抱っこしたいのもあるけど、遊んでるのもあるんだと思う。


 地球の家で、ティーちゃんとシーちゃんのお昼寝中に、たまに二人でプリン食べたり、リーちゃんが冷蔵庫から引っぱり出して来たチョコを一緒に食べたりしてるからね。


 だから全然大丈夫だと思いますw


 東鳳の情報に目を通す俺の足元で、ティーちゃんとシーちゃんが二人の転移追いかけっこを見て笑い転げていた。


 そうこうしている内にリベルトが戻ってきた。


「こちらの準備は出来ました。まずはアマル殿と共に東鳳に入り、部族連合に挨拶をして周りましょう」


 リベルトが各部族の長に話を付けてきたようだ。しかし、屋又と備戎の長は未だアマルが本当に戻ってくるのか半信半疑らしい。


 今回は東鳳での挨拶回りと状況をこの目で確認するだけなのでティーちゃんとシーちゃんには館で留守番して貰う事にした。


 警備員の代りに敷地内を確認して周っていたエイムが戻ってくる。


「エイム、そろそろ東鳳に向かおう。準備は大丈夫か?」

「えぇ、転移システムの解析は終わっています。今、敷地内を転移で周って実験も終わりました。わたしも問題なく、転移が可能です」


 その言葉に俺は頷く。さて、後はフラムを連れて行くかどうか、だが…。


 転移追いかけっこを終えたフラムは、遊んで貰って満足したのか執務室のソファに座って、幸せターンをかりかりと食べていた。


 その横で、リーちゃんも疲れた顔をしつつも、フラムに貰った幸せターンを齧っていた。


 …ほらね。大丈夫だったでしょw?


 そんな事を考えているとリーちゃんがお菓子を齧りながら俺を恨めしそうに見ていたw


「…フラム、パパさっきの記憶の場所へ行くけどフラムも行くか?」


 聞くまでもないが一応、聞いといたw


「いぅっ(いくっ)」


 という事で、リベルト、エイム、フラムと共にまずはアマルと合流する為に一度パラゴニアに向かった。



 その頃、スラティゴでは―。


 用意して貰った椅子に両腕を組んでどっかりと腰を下ろした不機嫌そうなクレアがいた。


(…何をやっているのだ。代りのハンターは来るのが遅れているというし、リーのヤツは魔界に向かったっきり戻って来ぬし…。全く、どいつもこいつも…)


 その目の前では、融真、キャサリン、クライの三人が、スキルの威力を上げる為の訓練をしていた。


 大きなロウソクに火を灯し、その炎の大きさや形状を変えるという集中力を高める訓練である。この世界では自らのスキルに集中し、強くイメージをする事により、スキルの威力を上げる事が出来る。


 しかしこの世界の法則など、一部の上位種族しか知りえない情報だった。そんな事は知らず、自らが体得した技術をクレアは三人に教えていた。


(…リーのヤツは一体何をしているのだ!!主の浮気現場を一刻も早く抑えねばならぬというのにッ!!)


 かなり顔が険しくなっていたのであろう。考えるクレアを見たキャサリンが恐る恐る声を掛ける。


「…あの~…奥様~。集中訓練、終わりましたけど~…」


 その言葉に、キャサリンをギロッと睨み付けるクレア。


「ひいぃぃッ、怖いィィィッ!!」


 慌てて融真とクライの後ろに隠れるキャサリン。しばらく険しい顔のままだったクレアが口を開く。


「…そうか、出来たか。では三人それぞれ、集中を維持したままスキルを変化させてみよ…」


 溜息交じりのクレアの言葉に再び、恐る恐る声を掛けるキャサリン。


「…あのぉ~奥様~。そんなにダンナの事が気になるなら会いに行けばいいんじゃね?…ぁ、いや、良いんじゃないですかね~?」


 そんなキャサリンを再びキッと睨むクレア。


「…オイッ、ギャル子よ!!黙って修練に集中しろッ!!」

「…ひいィィィッ、怖えェェッ!!」


 そう言われて慌てて集中訓練からやり直すキャサリン。クレアは言われたくない事を指摘されてイライラを隠せなかった。


 その時突然、クレアの目の前に魔皇フィーアが現れた。

何とか手術も終わり、無事再開出来そうです。次回は予定通り二月十四日から再開します。

今は病院でスマホを使って修正などをしております。

( ̄^ ̄)ゞ

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