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決断。

いつもアクセスありがとうございます。急で告知をしておりませんが、明日忙しくなりそうなので本日、投稿しておきます。よろしくです~。

 俺が手鞠(てまり)寿司を食べながら待っていると、奥座敷の方からウィルザーと源さん、アマルと側近達が出て来た。


 アマルの表情は晴れやかだ。側近達も表情は明るい。ウィルザーは何を話したんだ?しかもそんなに長く話した感じじゃない…。


 俺とリベルトがあれだけ一生懸命起ち上がる様に煽っても渋い顔してたのになぁw?


 俺は食べる手を止めて起ち上がる。


「…これは、ご家族も一緒でしたか…」

「えぇ、うちの子供達と護衛のエイム、それからそこにいるのがわたしと同じく、王国のハンターの(すめらぎ) 逸鉄(いってつ)です」


 それぞれがアマル達と挨拶を交わす。


 俺はウィルザーをチラッと見て、アマルと話す。


「…それで…気持ちは決まりましたか?」


 俺の問いに頷くアマル。ウィルザーは再び席に座り、鮨を食べ始めた。


「余りにも難しく考えすぎていた様です。こういう時は原点に戻るべきですね」


 そして俺に手を差し出す。


「先程のお話し、お受けします。共に東鳳に参り、国と民を救う為に御助力をお願いしたい。リベルト殿にもよろしくお伝え下さい」

「…解りました。東鳳の混乱を鎮めて、アマダ王、太淵と椿姫が成仏出来るように尽力しますよ」


 俺も手を出して強く握手を交わす。これで椿姫の復讐を成功させる為の準備が整ったな…。言い方はアレだがこの正統な王の血統を担ぎ上げて混乱の元凶のキヒダくんとやらを叩きのめしてやるかw


 俺達は後日、話を詰める事にしてその場は一旦、アマル達と別れた。例によって東鳳のクーデターまでアマル達には見張り兼、護衛に妖精達を付けてくれとティーちゃんに頼んでおいた。


 再び席に着いて、手鞠寿司を食べながらウィルザーに何を話したのか聞いた。


「デコピンしてやった!!」

「はっw!?デコピンっ!?」

「難しく考えすぎなんだよ。眉間にしわが寄ってたからな、軽くデコピンしてやったんだよ」

「良く怒られなかったなw?」

「いや、怒りそうではあったぞ(笑)?ただ、その後、難しく考えないで原点を思い出せって言ったんだよ。逃げるとか逃げないとかじゃなくて、自分が何の為に何をしたかったのかをな…」

「何気に良い事言うね~w?」

「だろう(笑)?物事はシンプルに考えた方が良い事もあるんだよ」


 俺達が話しているとリベルトが調査員を伴って戻って来た。


「ホワイトさん、紹介が遅れましたがミネア王国からわたしと共に逃れて来た者達です」


 紹介され、俺は調査員達と挨拶を交わして握手をする。


「これからもよろしく。今回の西大陸南東の件はお手柄だったよ。お陰でヤツらの破壊を止める事が出来た、ありがとう!!」


 続いて、子供達とエイム、ウィルザーと逸鉄を紹介しておく。エニルディン王国の首都に拠点を構える事も伝えておいた。


「今後、連絡や報告は首都エニルドの屋敷の方に来て欲しい」


 話しつつ、今回の件でのボーナスを渡して置いた。この人達も家族がいて養って行かないとだからね。


「暫く家族とゆっくり過ごして、また仕事に行ってくれ。どんな些細な事でも情報があれば知らせて欲しい」


 話をして、調査員達を見送る。その後、東鳳の件での作戦について話す為に、俺達は一度、王都にある屋敷に戻る事にした。



 屋敷に戻ると、作業員がいて屋敷の周りを綺麗にしていた。


「ここを発つ前に業者を呼んでおいたんだよ。屋敷の方も生活出来るようにある程度は準備させておいた」

「あぁ、ありがとう。助かるよ。取り敢えず中に入って話そうか?」


 俺が先に魔界に行っている間に、ウィルザーから館の説明を受けていたエイムが案内をしてくれた。


「左手の部屋が応接室になっています。そこで話をしましょう」


 屋敷に入ってすぐ左側にある応接室に入る。中は縦長の部屋で長ーい長方形のテーブルがあった。逸鉄には暫く仕事をさせるとの事で、ウィルザーが戦闘訓練所に向かわせた。


 …どうやら逸鉄は王国の戦闘訓練所の教官長らしい…。アイツで大丈夫かなw?皆、ヒーロー戦隊みたいにならないだろうなw?


 そんな事を考えながら、俺、リベルト、エイム、ウィルザーが席に着く。ティーちゃん、シーちゃん、フィーちゃん、リーちゃんはフラムを連れて屋敷の中を探索してくると言って屋敷の上階に上がって行った。


 ちなみにこの屋敷には地下室もあり、ティーちゃんが錬金部屋、シーちゃんが薬草保管庫として一室づつ使いたいとの事なので使わせてあげる事にした。


 四人席に着いた所で、リベルトから現在の東鳳についての状況について説明を聞く。


「アマル殿と話をした際にホワイトさんにはお話ししましたが、今の東鳳は一見、平和で安定しているように見えますが水面下ではかなり荒れています。全体的な税率の引き上げ、次々と課税対象を増やし、巧妙に二重課税で庶民からお金を搾り上げています。併せて太蘇から他の部族への差別や抑圧などもありキヒダへの嫌悪感はかなり(くすぶ)っています」


 その説明を聞いた俺は少し考えてから話す。


「まずは太蘇以外の天登(あまと)屋又(やまた)備戎(びじゅう)を味方に取り込む所からかな?」

「そうですね。既に各部族の長には会っておりますので、後はアマル殿を伴って連合するように説得して周るだけです」


 続いて俺とリベルトが考えた作戦の大まかな流れを説明して貰う。


「まずは東鳳の天登、屋又、備戎の三部族を纏めます。部族長と話し合いアマル殿を中心として連携体制を整えましょう。次に近々、キヒダが年一回の部族統一式典を執り行います。式典準備で忙しい前日を狙って作戦を開始します。作戦としてはごく単純です。西にある太蘇領に向かい、北から屋又軍、東から天登軍、南から備戎軍の三方向から攻め込みます。しかし、狙うのはキヒダが居城とするヒスイ城のみです」


 リベルトがざっくりと書いた東鳳の地図を開いて攻め込む各部族のルートを示す。キヒダの居城、ヒスイ城は太蘇の領地でもかなりの東寄りで各部族との領地に接している。


 これには理由があるそうだ。キヒダが部族統一をした時に、他の部族に睨みを効かせる為に、わざわざこんな所に築城したそうだ。


 反乱が起きたら囲まれる事に気付かなかったのかなw?


 しかしリベルトの説明によるとヒスイ城は大きな山を背に築城されており、城に攻め上るまでには曲輪(くるわ)(やぐら)がいくつか設置されているようで、攻城は中々難しそうだ。


「この式典の日に合わせて、太蘇の各地から豪族が軍を率いて集まります。この軍が集結する前に決着を付けなければなりません。これには三部族の連携がかなり重要になってきます」


 リベルトが説明を続ける。


「作戦としては大まかですが、細かすぎると不測の事態に対処出来なくなりますので臨機応変に動けるようにしています」

「太蘇の軍の状況はどうなのだ?兵数、士気、調練度、この辺りも調べているのか?」


 ウィルザーの質問にリベルトが答える。


「はい。既に確認済みです。ヒスイ城のみですと動員出来る守勢の兵数は約五千程です。調練度は高く士気もかなり高いです」

「太蘇の各地にいる豪族の軍はどうだ?」

「三地域にそれぞれ太守がいます。この太守が率いる軍が各三千程ですね」


 次にエイムがリベルトに尋ねた。


「部族連合軍の兵数はどうですか?」

「天登が約四千、屋又が約四千、備戎も四千程です。しかし度重なる単独での反乱に調練度の高い兵士が戦死していたりとかなり厳しい状況です…」

「…という事は部族連合軍は動員兵数が大体一万二千辺りと言った所か…。こりゃ包囲はギリギリだな…」


 俺の言葉にリベルトが頷く。


「太蘇の各地の豪族が集結しますと完全に形成が逆転します。こうなると部族連合軍はかなり厳しい戦いになるでしょう。そうなる前に決着を付けます」


 リベルトの説明に皆頷く。


「そのキヒダと各豪族の離間工作はどうだ?作戦決行までに出来る事はやっておいた方が良いぞ?」


 ウィルザーに言われたリベルトが頷く。


「そちらはわたしがこれから取り掛かる所です。離反させる事が出来ればベストですが、これから始めるのでどう転がるかは解りません」


 俺は頷きつつ、話を戻す。


「取り敢えず事前工作については後から話すとして、部族連合軍でヒスイ城を包囲した後に俺とアマルが乗り込む。不要な犠牲を出したくないから潜入後のアマルの護衛はエイムに頼みたい」

「解りました。護衛はお任せください」

「乗り込んだ後は、城内の兵士は殺さず、無力化に留める。叩きのめすのはキヒダとその側近達だけだ。それからキヒダとの決着は俺が付ける。椿姫からの頼みだからな…」


 その椿姫は刀から出て来て末席に座っていた。


≪皆さん、叔父のアマルの事をよろしく頼みます≫


 席に座って頭を下げる椿姫。各人が椿姫の言葉に頷く。俺とウィルザー、エイムは視えているが、リベルトには視えていない。しかし夢の中で一度、会っているので、その気配は感じているようだ。


「ホワイトさんがキヒダとの決着を付けた後、アマル殿がヒスイ城から声明を発表する手筈にしています。簒奪者キヒダに代わり、正統なる王の血統としてアマル殿を王位に就任させます」


 この後、太蘇側で帰順するものはそのまま受け入れ、それでも反発する者は東鳳から追放処分という形にするようだ。


 リベルトの説明に俺とウィルザーが突っ込む。


「…追放か。それじゃぬるいんじゃないか?また兵士集められて反乱でもされたらめんどくさい気がするけど…」

「そうだな。後に禍根を残すと碌な事にならないからな。思い切って処分した方が良いと思うが…」


 その言葉に、リベルトが苦笑いで答えてくれた。


「…勿論、表向きは、ですよ(笑)。危険因子を野に放っては後に良い事にはなりませんからね。これはアマル殿の判断次第ですが、追放処分の場合、こちらで追跡後に内々で処理しようかと…」


 その説明に俺達は頷く。


「では次に事前工作について出来る事を話し合いましょう。わたしは各豪族に離間工作、出来れば離反させたい所です。そちらはお任せください」


 続いてウィルザーが話す。


「今の東鳳の状況を考えれば流言も有効だろう?そこはうちのエージェントに任せてくれ」


 続いてエイムが提案する。


「事前に敵兵の士気を下げて怠慢にさせる事も有効かと思います。良い酒を準備して城内の兵士に廻るようにしてはどうでしょう?」


 その提案に頷く俺を、三人が見る。俺も何か提案しろって事かw?俺は事前工作という言葉である策を思い出した。


「…あぁ、事前策なら俺も面白いのがあるよ?」


 俺が思い出したのは日本の戦国武将が使ったある事前工作だった。

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