超越。
エイムからの伝言でリーちゃんが来た。
プラズマを上手くカラダに纏い、更に攻撃の時には武器に纏わせる事によってその相手を攻略出来るとの事だ。
エイムからのアドバイスを受けて、俺はプラズマを上手く攻防に使ってみる事にした。
俺はアルムからの攻撃から逃げるのを止める。
プラズマ生成を闘気と共に上手く全身に拡げるイメージ。全身を防御する様に使う。
俺はアルムからのジェットパンチを右掌で受ける。瞬間、アルムから伝導してくる神炎をプラズマが打ち消した。瞬間、脳内にインフォメーションが流れる。
≪プラズマ闘気、獲得しました≫
「…神炎を打ち消すとは…侮れぬヤツよ。アドバイスをしたのは妖精か…?」
「いや、妖精は伝言を持って来てくれただけだよ。うちのファミリーにはアンタらよりも文明の進んだ星の者がいるもんでね」
「そうか。ではこちらも攻撃を変えねばなるまいな」
そう呟いたアルムは天使の力を顕現させる。
「天使パメルシエル顕現せよ!!」
瞬間、アルムの顔が白く無機質になり、赤い炎の刺青ような文様が現れた。
「誅殺せよ!!シルバーライニング!!」
俺は天から降ってくる無数の光の柱を見上げる。天使の持っている魔法は大体同じだな。
俺はシルバーライニングに対抗すべく、『プラズマ生成』と『マジックキャンセル』を同時併用する。
イメージは全身をプラズマと闘気で防御し、そこにマジックキャンセルを流す感じだ。
俺は避ける事無く、敢えてシルバーライニングを一発浴びてみる。瞬間、シルバーライニングは霧散して魔素となり、大気へと還元された。
「…な、なん…だと…!?」
「驚いたw?俺はアルギス戦以降も何人かと闘ってるんでね。あの時とは違うのだよ!!あの時とはっw!!」
無数に降ってくる光の柱に、危険を感じたウィルザーと逸鉄はリーちゃんが皆の所に退避させた。
◇
「…ホワイトのヤツ、さっきまで逃げ回っていたのに突然変わったな?妖精リーア、ヤツに何か教えたのか?」
「ん?わたしじゃないよ?わたしはエイムからの伝言を話しただけよ」
リーアの言葉にウィルザーはエイムを見る。エイムがフッと笑う。
「わたしはホワイトさんが持っている能力を一部、活用するように伝えただけですよ?それをどう使うかはあの方次第です」
「何にせよ、これでホワイトさんはまた一段、全能力が上がりましたね」
リベルトの言葉にティーアとシーア、フィーアが頷く。
「これで増々、人間離れするのぅ」
「もう人間じゃないでしゅ!!もうそこはとっくに超えてるでしゅ!!」
「確かに人間の域は超えておるでな?」
その言葉に頷くエイム。
「神の使徒、幹部の言葉を借りれば人間を超えたという事ですね。まぁ、神の使徒幹部とは全く別の形での超越ですが(笑)」
「これでヤツらとは互角と言った所か?」
ウィルザーの質問に、エイムが首を横に振る。
「わたしに言わせれば神の使徒の幹部が言う人間を『超えた』、は超えたのではなくただ、強力に変化しただけの存在です。超えてはいませんよ(笑)?だから互角ではなく完全に神の使徒、幹部の力を超えたと言って良いでしょう」
その言葉にウィルザーが闘う二人を見る。会話に付いていけない逸鉄だったが、なんとなくその言わんとしている所を感じていた。
「…まだまだ、強い者がいるか。この世界は面白い。あの戦闘が終わったらわたしもホワイトくんにあの特殊な力を教えて貰おうかな!!アッハッハ!!」
笑う逸鉄に、エイムが忠告する。
「…あ、ヘルメットの方。ホワイトさんのあの力はわたしとあの方しか持っていません。だから教えを乞うても体得出来ないかと思います」
「ええええッ!?そんなぁッ!!わたしももっと強くなりたいのに…」
そんな逸鉄にウィルザーが突っ込む。
「もうお前も別の意味で充分、人間離れしてるだろう(笑)?それ以上は止めておけ(笑)!!」
その言葉にがっくりする逸鉄であった。
「確かにアルギスと闘った時とは比べ物にならない程、変わったわね~。あの時は逃げ回ってまぐれで攻撃をヒットさせてたからね…」
「確かに、あの頃とは段違いじゃのぅ」
「もうアンソニーに勝てる相手はいないでしゅ」
「あぅぁ、うぉいー!!(パパ、つよいー!!)」
フラムも小さな両手を上げて笑っていた。
◇
「『シャイニングレーザーァッ!!』」
背中から翼を出したアルムは宙に浮いたまま再び、天使の魔法を行使する。眩い光線が翼の後ろから、俺に向かって無数に飛んできた。
俺は『プラズマ闘気』を維持したまま、プラチナタガーをアイテムボックスから二本取り出して構える。すぐにタガーにプラズマ闘気を纏わせると、襲い来る無数の光線を、全てタガーで斬った。
光線は俺のタガーで斬った瞬間、霧散する。
「…そ、そんな…バカな…。て、天使…の力を…消すなど…」
俺は尚も無数に飛んでくる光線を『ストームライダー』で消滅させつつ高速でアルムに接近する。
「…アンタ、反応遅すぎるよ?」
俺は接近するとすぐに神速で背後に周る。プラズマ闘気ハンドでアルムの頭を掴むと、一気に『反響増悪』を全出力で発動した。
その瞬間、天使の身体から、アルムの本体が激しくガタガタとブレる。
「…グオオォォッ!!りッ、リンクがァッ…切れてしまうゥゥッ!!」
「さぁ、ターバンのオッサン出てこいッ!!」
俺は一気にプラズマ闘気ハンドで、アルムを全力で引っぱり出す。アルムの本体が、ズルっと天使の身体から抜けた。
「…こっ、この旧人類がッ!!このわたしの本体を引き抜いた事を後悔させてやるぞッ!?」
「吠えてろよオッサンッ!!今までお前らに殺された人達の分、上乗せしてあの世に送ってやるよォッ!!」
俺はすぐに掴んでいたアルムの頭に『プラズマバインド』を範囲設定して発動する。
瞬間、俺は宙でプラズマに拘束されて身動きが取れなくなったアルムの本体に攻撃を仕掛けた。
「オオオォォッ!!喰らえッ!!プラズマ闘気版『殲滅拳打!!』」
叫んだ俺はクローナの技をパクリ、アルムをラッシュで殴る。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
「…ガッ、ガフッ…こッ、このッ!!にッ、人間如きがァァッ!!グハッ…」
俺のラッシュの拳打で、半壊したアストラル体のアルムが本性を現す。全身炎となったタイミングでプラズマバインドの効果が切れた。
身を翻して俺から距離を取ったアルムは、全身が火炎体になった。
「ほほぅ、それがアンタの能力、と言うか本性か…面白いねwじゃあ第二ラウンドと行こうかw?」
≪…笑っていられるのも今のうちだ。神炎烈衡弾ッ!!≫
火炎体アルムが叫ぶと、炎になった両腕からまるでガトリング砲の様にバスケットボール大の火炎弾をガンガンぶっ放してくる。
「アンタッ!!それカッコイイな!!そのスキル、俺が貰うよッ!!」
≪…ほざくなッ!!これからお前は神の炎に焼かれて死ぬのだ!!≫
曲線と直線、あらゆる方向から襲い来る火炎弾に、タガー二刀によるストームラッシュで対抗する。
しかし斬撃の瞬間、無数の火炎弾が俺の周辺で爆発を始た。爆発した炎は分裂して俺を囲んだ。
「…これはッ!!…爆裂ファイヤーデスマッチかw!?」
俺は思わず笑ってしまった。炎に囲まれても、だから何なんだよって感じだ。『龍眼』で視ていると、炎の中がスキルの範囲になっているようだ。
≪全て燃やし尽くせッ!!滅却業炎≫
火炎体アルムが叫ぶと、突然炎の範囲内が大爆発を起こす。全周囲の炎から中心にいる俺に向かって唸りを上げて炎が襲い掛かって来る。
それぞれの炎が大きくなり、俺を圧縮して押し潰す感じだ。そしてその大火炎は大きなうねりとなって空高く上っていく。
…何だ、この程度か…。
大火炎の中にいるのでそれはそれはとても暑いし熱い。しかし全てプラズマ闘気を拡げて打ち消しているので俺が直に火炎に巻かれるという事はない。
この火炎は対象の体力を吸い取る能力もあるが、対象に火炎に巻かれると焼き尽くすまで消えないようだ。
「あぅぁーっ!!(パパーっ!!)」
「あwフラム、来ちゃったのかw?」
俺が火炎を観察していると突然、フラムが現れた。
「あぅぁ、ぃあ。ぉあぅぁ~(パパ、いた。よかった~)」
外側から見ると完全に火炎に巻き込まれてるように見えるからな~。俺を心配して来たようだ。
「こらーっ、フラム!!勝手に飛んじゃダメでしょ!!」
フラムを追い掛けて、リーちゃんも来てくれた。
「…フラム。ここは熱いからリーちゃんと一緒に皆の所に戻ってくれるか?パパは大丈夫だから…」
抱っこしていたフラムが俺を見上げる。
「あーぅ(はーい)」
「…リーちゃん、フラムを連れて皆の所へ戻ってくれ」
「はいはーい!!フラム、今度から勝手に飛ばないでよ!?解った?」
「あぅーっ(はいーっ)」
にこにこ笑顔のフラムに、ブツブツ言いながらリーちゃんはフラムを連れて戻った。
さて、俺もここから脱出するかw
俺が『神幻門』で大火炎から脱出しようとした所、火炎体のアルムが炎の壁を抜けて現れた。
「おぅ!!確認ご苦労さん!!残念ですが全然燃えてませーんw」
≪…なんだとッ!!千℃を超える高温だぞッ!?何故生きている!?≫
「そんなの知らんがな~wただ暑いのは暑いからそろそろ出ようかとは思ってたけどなw」
≪こうなったら最後の隠しスキルで葬ってやるしかあるまい!!人間よ!!わたしに本気を出させた事、後悔するが良い!!『インフェルノ…≫
「ぁ、アンタ。今動かない方が良いよw?この全域に範囲トラップ仕掛けたからねw!!」
しかし、怒ってる火炎体アルムには俺の言葉が聞こえなかったようだ。両腕を巨大な火炎の槍の様に伸ばしていたアルムは、俺がセットしていたプラズマバインドに掛かった。
瞬間、プラズマが放出され、アルムを捕らえた。
そして俺は間髪入れず、既に構えていた龍神弓からプラズマを纏わせた闘気ショットを放っていた。
≪…グッ、クッ…そ、そんな…まさか…こんな事が…わたし、は死ぬ…のか…」
俺が放ったプラズマ闘気ショットはあ火炎体アルムの左腕の肘にあった『核』を完全に貫通し、粉砕した。
同時に周囲を覆っていた大火炎が消える。俺はすぐに『神速』でアルムの背後に接近すると首を掴んだ。
念の為にコイツらのスキるがどうなるのか確認する為だ。アルムが持っていたスキルはボロボロと崩れて行く砂の様に消えていく。
スキルが魂の様になってどこかの誰かに還っていく、という事はなかった。俺はアルムの首を掴んだまま、全出力で『プラズマ生成』を発動した。
これで完全消滅出来なければ、『天獄』で捕えるつもりだった。しかし、ここで予想外の事が起きた。




