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神腕の炎。

 超高電圧プラズマによって藻掻き苦しんでいた人型流動体が最後の力をふり絞ってスキルを発動した。流動体の足が光を放ち、エイムの左腕を蹴り抜いて、肘から先を斬って吹っ飛ばした。


「…これは…!!わたしが剣にプラズマを移動させた瞬間を狙いましたか…いや、執念が脚を動かしたのか…。いずれにせよ、最後の最後でわたしを驚かせてくれましたね。その最後の執念に敬意を表しますよ」


 そう言うと、エイムは黒焦げになって死んだ人型流動体の蹴鞠の鳩尾から剣を引き抜く。すぐに右の掌から出力を上げて火炎を放出すると、蹴鞠を完全焼却した。


 そこへ、おやつタイムを終えたティーア、シーア、フィーア、美濃、フェンが戻って来る。


「…ん?何でここにエイムがおるんじゃ?」


 ティーアに問われたエイムが答える。


「お嬢様方、お戻りになられましたか。ホワイトさんはここをわたしに任せて西大陸へ行っておりますよ」

「ここで死んだおばさんの監視はどうしたんでしゅか?」

「それはわたしが引き継いでたった今、処理した所ですよ」


 エイムの言葉を聞いたフィーアが質問する。


「で、おばさんは復活したんか?どう『処理した』んじゃ?」

「復活しましたよ。基本的にあの方たちはスキル体のようでしたので特殊なエネルギーで処理したのですよ」


 エイムを警戒しつつ、その説明に突っかかるフェン。


「…特殊?特殊なエネルギーとはどんなエネルギーなのだ?」

「…ふむ。これは企業秘密の様なものですので…この世界の方にはお話し出来ません」


 その答えに手の爪を伸ばし魔力を込めるフェン。それをフィーアが止める。


「…フェン、その者は怪しい者ではない。ほわいとが家族の護衛として監獄惑星シニスターから連れて来たんじゃ。闘ってはならんでな!?」

「…ほぅ、あの男が?本当にこの者は強いのか…?」


 エイムを品定めする様に見るフェン。そんなフェンに妖精女王の二人がエイムについて説明をする。


「クレア姉さまがエイムの実力を疑っておってのぅ。一度、闘ってみたんじゃが攻撃の動きや体捌きを見て感心しておったんじゃ」

「そーでしゅ、クレア姉さまのスキルを消して見せたんでしゅ」

「…クレア?…千五百年程前に魔界に来て暴れた黒龍の事か…?で、その黒龍のスキルを消したのか?」


 そう言いながらチラッとエイムを見るフェン。


「…そう言われても(にわ)かには信じられぬが…黒龍のスキルを消したのであればその特殊エネルギーの推測も立つ。まぁ、良い。怪しいヤツではない、という事にしておいてやろう…」


 不敵に笑うフェンに目礼で返すエイム。


「それよりおんし、その左腕はどうしたんじゃ?()げておるが大丈夫なんかの?」

「あぁ、これは気になさらないで下さい。わたしは自己修復機能が付いておりますので…」


 そう言いつつ、吹っ飛んだままになっていた腕を拾いに行くエイム。左腕を拾い上げて切断された部分を近づけるとお互いの細胞が動き出し、腕を繋げて修復していく。


「おんしのカラダ、つくづく反則級じゃのう」 

「わたしがいた星は文明の発展度合いで行くとこの星よりかなり先を行ってましたからね。自己修復魔法やスキルは当たり前ですから…」


 そう言いつつ、エイムはものの数秒で左腕を修復した。



「…ところでアンソニーは西大陸に何をしに行ったんでしゅか?」

「西大陸の南東に現れた『神の使徒』の集団を殲滅に、ホワイトさんとリベルトさん、ウィルザーさん、それからヘルメットを被った方で先程、向かわれましたよ?」

「じゃあ、わたしらも行くかの」


 ティーアの言葉でシーアとエイムが西大陸へと向かう事になった。


「…あ、わっちも行くでな?美濃さんや、留守を頼む。夜ご飯は食べて帰るからの…」

「いいや、お嬢様。夜ご飯までには帰りなされ。今夜は煮魚ですぞ。美味しく健康に良いのです。外食ばかりされておりますと身体が丈夫になりませんぞ?」

「…美濃さんや、相手は強敵なんじゃ。すぐには戦闘は終わらんでな?心配せんでもティーとシーのところでちゃんとお魚食べて来るから大丈夫じゃ…」

「またそのような事を言って逃げようとして…」


 美濃がそこまで言うとフェンが口を挟む。


「美濃殿、煮魚は酒飲みには良いですが、転生後の子供は好みませんぞ?我も魚は食べますが煮魚は抵抗がありますからな。もう少し調理方法を考えても良いのでは…?」

「フェンよ、儂の教育に口を出してはいかんぞ?」

「いや、口を出しているのではなく我は調理の方法を色々試してみては?と提案しただけですぞ?」

「…ふむ。スカウトを出しておるが料理人がなかなか集まらんのだ。魔族の料理人は煮魚以外の料理法を知らぬし…」


 二人が真剣に魚の料理方法について話し合っている間に、ティーアとシーア、エイム共々、フィーアも姿を消していた。


「…また逃げたか。お嬢様にも困ったものだ…。魚の日は出掛けると中々戻らぬし…」

「まだ転生して三百年程ですからな。我はあれくらいで良いと思いますぞ?」

「フェン、お主はそう言うが…」


 美濃がそこまで言いかけた時、少し離れた場所から歌が聞こえて来た。


「オラは行っちまっただぁ~♪オラは行っちまっただぁ~?魔界へ行っただぁ~♪魔界は良いトコ一度はおいで♪メシは旨いし~…♪」


 歌と共に、三角帽子と可愛らしい黄色の保育園スモックでゾロゾロと現れる小人達。


「おお、そうだ。忘れておったわ。フェンよ、魔小人(マコビト)族に街の修復を頼んで置いたのだ…」

「…これはありがたい。しかし、美濃殿あの歌は何とかならんのですか…?」


 それとなく歌に苦情を出すフェン。


「…まぁそう言うな。あの歌は召喚者の時雄(ときお)が酒を呑みながら考えてくれた魔界への勧誘の為の変え歌なのだ」

「…それは知っているのですが…アレで人間の生活系能力者が集まるとは思えんのですが…」


 二人の足元から二体の魔小人が声を上げる。


「苦情は美濃さんに言って下さい。だよぅ」

「苦情、言う、こっち違う、時雄に言って下さい。だよぅ」

「おぉっ、これはわざわざマコとミコが自ら来るとは…」


 美濃が魔小人の中から、前へ出て来た二人に声を掛ける。


「壊れ具合を確認に来た。だよぅ」

「そう、壊れたの、見に来た。だよぅ」


 そしてちびっこ二人は突然、腰に小さな手を当てて膝を曲げてポーズをとる。


「わたしはマコ…」

「あたしはミコ…」


 そして元気良く二人は声を上げた。


「「二人は魔王!!だよぅ!!」」


 魔小人族の魔王は双子だった。


 会う度に、毎度の同じセリフに苦笑いの美濃とフェン。


「…マコ、ミコ。その挨拶も何とかならんのか(笑)?」

「なんともなりません。だよぅ」

「何回も言う、覚えて貰う、だいじ。だよぅ」

「…フェンよ。まぁ、良いではないか。ではマコ、ミコ、街の修復を頼むぞ?」

「任せて下さい。だよぅ」

「すぐ直す。だよぅ」

「我らは一度、魔皇城に戻り敵が現れた場合の今後の対策を考えようではないか」

「…そうですな。では一度戻りますか」 


 そう言いつつ、二人は集まって来た魔小人達に後を任せて魔皇城へと戻った。



 俺はアルムの飛んで来た右拳を闘気ハンドで弾く。しかし、弾いた拳が伸びて俺の背後へと迂回して来た。


 瞬間、伸びた腕から神炎が噴き出す。


「うぉっ!!」


 俺はすぐに跳躍で上空に逃げる。しかしアルムは上空にいる俺を向けると、指を五本、弾丸のように飛ばした来た。


「…逃げても無駄だ。この神腕アルムの攻撃からは逃れられぬ!!」


 俺は空中で旋風掌を使い体勢を変えて避けるものの、時間差で飛んで来た二発、左足と左腕に被弾した。


 …コイツっ!!サイボーグかよっ!!


 その瞬間、指が爆発し、神炎が俺の左腕と左足に身体に纏わり付く。急速にエネルギーを吸い取られる感覚に襲われ、俺は急いで着地する。


 そして再び、『ディセーブルスフィア』を発動して何とか神炎を消火したが、間髪入れず、アルムの右手の指が五本、襲い掛かって来た。


 俺はすぐに神速で退避。さっきの妙な感覚が何だったか必死で考える。あの体力を持って行かれるような感覚はどこかであったはずだ。


 俺が考えていると一瞬にしてアルムに接近されてしまった。


「…しまったっ!!」

「『ライトバーンッ!!』」


 俺はすぐにマジックキャンセルで応戦、魔法を完全に打ち消した。すぐに俺はタガーを二本抜くと、目の前のアルムに『ストームラッシュ』を仕掛ける。


 しかし、俺の全ての攻撃を、両拳の乱打で止めるアルム。タガーを持つ俺の拳に当たる瞬間に神炎を放つアルム。


 俺の両腕が、一気に炎に包まれた。


「…クソっ…またかよっ!!」


 俺はすぐに神速で退避、ディセーブルスフィアを使おうとしたが突然、脳内にインフォメーションが流れた。


≪クールタイム中です。暫くしてから再使用して下さい。繰り返します…≫


 …はぁっ!?マジかよっ!!こんな時にッ…。


 残念な事にディセーブルスフィアはクールタイム中で発動出来なかった。その間にも両腕の炎が俺の首まで伸びてくる。


 俺は『プラズマ生成』を思い出して、何とか両腕の神炎を消した。炎を消したのは良いがコイツはかなり厄介だ。


 俺が攻撃を当てるとすぐに炎が纏わり付いて来る。どうするか…。纏わり付いた炎はすぐに俺の体力を吸い取っていくし…。纏わり付く、か…。いつだったかこんな事あったんだよな…。


 …いつだったか…。


 その時、俺は(ようや)く思い出した。ゼルクのオッサンの時だ!!いや、アレは爺さんだったな。まぁどっちでも良いか。とにかく、この炎はゼルクの時の霧の魔障気にかなり近い。


 そう考えている間にもアルムは腕をロケットパンチのように飛ばし、攻撃してくる。


「…ホワイトのヤツ、大丈夫なのか?」


 劣勢の俺を視て心配するウィルザーの隣で、逸鉄が『真眼』を使って炎を視ていた。


「…うーん。あの炎は魔素を含んでいるのかな?いや、少し違うような気がするな…」


 ウィルザーと逸鉄が心配する中、俺はとにかく神速で逃げ回る。神炎が魔障気に近い性質を持っているのが解ったのは良いが…。


 …どうするか…。


 俺が神炎にどう対抗するか考えいていると突然、エイムからの伝言を預かったリーちゃんが現れた。

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