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謎の生物。

 俺と逸鉄が、黒い染みの監視を続けていると、再びリーちゃんが現れた。


≪アンソニー、西大陸の監視妖精から緊急連絡!!リベルトの諜報仲間が『神の使徒』と思われる一団を確認!!ヤツらが都市を破壊してるって!!≫


「…はぁっ!?またかよっ!?」


 俺は驚いて思わず声を上げてしまった。


「んっ?どうした?ホワイトくん?」

「…あ、あぁ、ちょっと込み入った話が来て…」

「…遠隔通信スキルなのか?」

「あぁ、まぁそんな感じだな…」


 …さて、どうするかな…。 

 

 俺が考えていると、続けてリーちゃんが説明してくれた。


 どうやら西大陸の南東でもう一人の神の使徒幹部らしき者が配下を連れて現れたようだ。取り敢えず、まずは諜報員の安全からだな…。


≪…そうだな。諜報員は安全の為にパラゴニアに即時撤収で!!≫

≪解かった。すぐ行ってくるね!!≫

≪ぁ、ちょっと待って。まだ頼みたい事がある…≫


 俺が直接、確認に行きたい所だが今はトラップでプラズマバインドを設定して待ちの状態だ。俺が移動してしまうとスキルが解除されてしまう。


 クレアは今、へそ曲げてる状態だから頼みづらい…。仕方ないな。エイムを呼んで西大陸に飛んでもらうか…。


 俺が無言で考えているので逸鉄が俺を見ている。


「何があった?手伝える事はあるかな?」

「…あぁ、そうだな…。暫く黒い染みを注視してて欲しい…」

「解かった。それくらいならお安い御用だ!!」


 俺は、黒い染みの監視を逸鉄に頼んだ後、リーちゃんに追加で頼み事をする。


≪諜報員をパラゴニアに避難させたら次にエイムに俺の今の状態を話して連れて来てくれ…≫


 俺は併せて、すぐには戻れなくなったという事をウィルザーに伝えて貰う事にした。


 リーちゃんは俺の頼みを復唱して確認した後、すぐに飛んでくれた。



 暫くしてリーちゃんが戻ってきた。


≪リベルトの仲間は避難させたよ~≫


 続いてエイムが転移してくる。その後、何故かウィルザーまで転移して来た。


「…アレ?城を空けたままにして大丈夫なのか?」

「あぁ、大丈夫だ。こういう時の為に影武者がいるんだよ。それより…」


 そう言いつつ、ウィルザーが逸鉄を見る。


「オイッ!!逸鉄!!お前こんな所にいたのかッ!!」

「…んッ?あッ!!ウィルザー卿!!何でここにいるんだ!?」

「それはこっちのセリフなんだよッ!!この野郎ッ!!」


 そう言うとウィルザーは逸鉄にコブラツイストを極める。


「…ギッ、ギブッ、ギブッ!!ギブアップ~…!!」


 …何やってんだコイツら…。


 俺は二人を放っておいてエイムと話す。


「…エイム、悪いんだが今から西大陸に飛んで欲しい。『神の使徒』の者達を確認次第、ザコは殲滅、幹部と思われる者は戦闘不能にして欲しい」

「えぇ、事情は伺っておりますよ。すぐにでも出動出来ますがその前に、その地面の黒い染みを分析してもよろしいですか?」 

「あぁ、頼む」


 ティーちゃんがいなくて鑑定出来ていなかったが、エイムが分析してくれるなら助かる。


 エイムが分析を始めた頃、リベルトも来てくれた。


「話は仲間の諜報員から聞きました。西大陸に飛びますか?」

「…いや、その事なんだが…」


 そう言いつつ、俺は今の状況を説明した。


「…そうですか。エイム殿の分析はどうですか?何か解りましたか?」


 リベルトの言葉に、分析を終えたエイムが戻って来る。


「…幾つか判った事があります。そこの黒い染みは今は微生物の集合体の様ですが地中の魔素を取り込み、成長しています。それからもう一つ、意志を持っているかと思われます。その理由は…」


 エイムがそこまで話したところで、分析中に遊んでいた?二人、ウィルザーと逸鉄も話に加わる。


「…アレが意志を持っているだと?どういう事だ?」


 ウィルザーに問われたエイムが説明を続ける。


「あれ自身が微生物ですが魔素を取り込むと同時に地中にいる他の微生物を選別して食べているようです。恐らく意志があるかと…」


 エイムの分析にリベルトが頷きつつ、自身の見解について話す。


「意志が芽生えているこの黒い染みが神の使徒幹部の残留物である事を念頭に置いて…ですよ?我々の会話も理解している可能性もあると思われますが…」

「…という事は今までの俺達の会話は筒抜けって事か…?」


 俺の言葉にエイムが頷く。


「…その可能性は大きいでしょう。何せ普通の生物とはDNAの配列がかなり異なっています…」

「じゃあ今までわたし達が監視していたのもトラップを仕掛けている事も気付いている、という事かな?」


 逸鉄の言葉に頷くリベルトとエイム。


「そこまで解かったなら…コイツらが復活出来るのは確定だな…」

「…ですね」


 俺の言葉にリベルトも頷く。


 …復活出来ることが確定した、という事はつまり、アルギスも生きているという事だ。


 ヤツは天使の力を失くしているとは言え、神の使徒の幹部だ。アイツは俺の存在を知っている。いつ狙われてもおかしくない…。


 …厄介なヤツらだ。これからは油断出来んな…。



 ヤツらが復活出来るのは確定したがこの状態からどうなるかが全く分からない。


「取り敢えずこの黒い染みはすぐには成体化するかどうかは解かりません。この場はエイム殿に任せて我々は西大陸に飛んだ方が良いかと。アマル殿には既に話を付けておりますので、西大陸の神の使徒を処理後、パラゴニアに参りましょう。エイム殿、お任せしてもよろしいですか?」


 リベルトの頼みに頷くエイム。


「ここはわたしにお任せ下さい。成体化した場合の対処はどうしますか?」


 エイムに問われて俺は暫く考えた後、答える。


「…完全消滅は出来そうか?」

「えぇ、可能です。では成体化した場合は対象を完全消滅させます」


 話が纏まった所で、ウィルザーが聞いて来た。


「ところでここはどこなんだ?」

「うむうむ、わたしもそこが気になっていたのだ。南に真直ぐ泳いできたつもりなんだけど…どこの陸地かな?」


 …えっw?コイツ、マジで泳いで来たのかっ!?この格好でw?


 どうやら逸鉄はひたすら南に泳いでたらここに辿り着いたようだ。


 二人の疑問に、リベルトが答える。


「ここは魔界大陸です。わたしも過去に一度、魔族のスカウトを受けて見学に来た事がありましてね。転移座標の位置で解かるのですが、ここはこの星の南半球にある大陸なのです」

「…ほぅ、この星の南半球に魔界があったのか…この星に魔界が存在するとはな…」


 ウィルザーが感心していると、その隣で逸鉄が歓声を上げた。


「おおおおおッ、ついにッ!!ついにやったぞォッ!!この星の全大陸を(たぶん)制覇だーッ!!」


 そんな逸鉄にヘッドロックを掛けるウィルザー。


「お前ッ!!フラフラしやがってッ!!召集されたらすぐに戻って来い!!お前がいないから帝国のヤツらを追い返す為に緊急でハンターの配置換えしたんだぞッ!!」

「…えッ!?アレッ?召集掛かってたのか?」


 そんな逸鉄を更にヘッドロックで締め上げるウィルザー。


「すっ惚けやがってッ!!『遠隔念波』送ってただろうがッ!!無視しやがって…!!戻ったら働いて貰うからなッ!!」

「…いや、でもまだこの大陸、全部歩いてないし…」


 言い訳する逸鉄に、ウィルザーがヘッドロックから、再びのコブラツイストを極める。


「ギブッ!!ギブギブッ!!ギブアップ~!!」

「まずは王国に戻って真面目に仕事しろッ!!長期で休み取りたいならしっかり働けッ!!」


 …またやってるよ…。 


 そんな二人を見たフラムがケラケラ笑う。


 俺は、逸鉄の仕事にも興味があったが、この二人の関係がどんなものなのかも気になった。


 …まぁ、後で聞いてみるか…。


 今はそれよりも西大陸に現れた敵の掃討からだな。


「エイム、俺は西大陸に行ってくるから後を頼む」

「解りました。お任せ下さい」


 俺がエイムに後を任せて、リベルトと共に西大陸に転移しようとしたその時、ウィルザーが俺達を呼び止める。


「ちょっと待て!!ホワイト!!俺達も行くぞ!!」

 

 ウィルザーが西大陸に付いて来ると言い始めた。


「…えっw?付いて来るって…かなり危険だけど…大丈夫なのか?」

「あぁ、ここに来る前にも言ったが俺は能力者なんだよ。攻撃、防御共にスキルを持ってる。『影』も付いているから心配するな。ザコの掃除くらいは出来るぞ?」


 俺はリベルトを見る。暫く考えたリベルトが頷く。


「…良いかと思います。敵が相当数いるという情報がありますのでこちらの数も多い方が良いかと…」

「解かった。ウィルザー、逸鉄、付いて来てくれ!!」

「…えッ!?わたしも行くのか?」


 逸鉄が驚いた顔でウィルザーを見る。


「当たり前だ!!他に誰がいるんだよッ!!少しは真面目に働け!!」

「…いや~わたしはこの大陸を歩いて周らないと…」

「そんな事は後でも良いだろうがッ!!まずは働けッ!!」


 ウィルザーにどやされて無言になる逸鉄。仕方ないので助け舟を出した。


「…俺が転移スキルを持っているから後でまたここに連れて来るよ。それでどうだ?」


 俺の提案に、逸鉄は暫く考えた後、渋々と言った感じで了承してくれた。


 改めてエイムに後を任せた俺達は、リーちゃんに西大陸南東部へと纏めて転移して貰った。



 皆が転移で西大陸に向かった後、じっと黒い染みを視るエイム。


「もうアナタの脅威になる方はいませんよ?成体化してみてはどうですか?わたし一人なら、アナタが勝つ確率はかなり低いですが…可能性はありますよ?」


 黒い染み相手に、エイムが挑発する。その黒い染みは少し広がったかと思うと、影の様にゆらゆら動く。暫くして、その影が発光しながら、立体になってせり上がって来た。


 まるでコールタールの中から這い出て来るように、黒い人型のそれは深い緑色に変色していく。


≪…キサマは、ナニモノか…?ミドモの、シンのスガタをミタモノ、キエルがヨイ…≫


 蹴鞠の燃え尽きた残留物から出て来た深緑の人型の全身から瞬間、ハリネズミの様に鋭利な棘が全方位に向けて飛び出す。


 その無数の棘がエイムを襲う。しかし電磁シールドを出していたエイムの前で、その棘は砕けて地中に還った。


「…ふむ。中々面白い。『念波』ですか。そしてそれがアナタの本来の姿…。人間に化けて天使に憑りついていた…という事ですか…?」

≪…キサマ…ニンゲンではナイ…ナ?シカシ、ミドモには勝てヌ…≫


 そう言うと深緑の人型は一瞬にして消えると、エイムの背後に立っていた。人型は脚を鞭のように(しな)らせて、エイムの首を刎ねた。

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