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魔界のこのこ〇したんたん。

 

 蹴鞠と逸鉄、お互いが激しく蹴り合う中、エネルギー諸々吸い取られた蹴鞠が競り負けて蹴りを弾かれ、ついに膝を付いた。


 …勝負あったな。これ以上は観戦の意味はないので、さっそく仕事に取り掛かるか。


 俺はすぐに神速で蹴鞠の背後に接近する。すぐに蹴鞠の首を左手で掴むと、右腕から闘気ハンドを出して蹴鞠の頭を掴んだ。


 いきなり現れた俺に驚き、構える逸鉄。


「んっ!?君は何者だッ!?」

「俺は敵じゃない!!エニルディン王国のハンターだ!!」


 俺がそう言うと、逸鉄は監視しているであろうエージェントに話し掛ける。

逸鉄の呼びかけに、すぐに現れたエージェントが答える。


「…ホワイト様、初めまして。エージェント5です。逸鉄様、そちらのホワイト様は確かに、エニルディン王国のハンターです」

「ふむ、そうか。なら仲間だな!!わたしは『正義のお兄さん』だ!!よろしくな!!」

「あぁ、こちらこそよろしく。『逸鉄』くん」

「むッ?いや、わたしはそんな名前ではない!!正義の…」


 あくまでも正義のお兄さんで通そうとしているようだな…でも全部視えちゃってんだよなw


「…あの、ごめんけど俺、アンタのスキル視えてんだよね。で、『皇 逸鉄スペシャル』ってスキル視たからもう本名判ってんだわw」


 俺がそう言った瞬間、溜息を吐いて明らかにテンションが下がる逸鉄。


「ちなみにそこにいるピンクのちびっこが人物鑑定出来るんだよ。だから逸鉄くんの情報、ここにいる皆、全部知ってます…」


 俺の言葉に逸鉄は皆を見る。そして再び深い溜息を吐くと、膝を抱えて(うずくま)り、ブツブツと呟き始めた。


 …コイツ、いじけやがったw!!全く、めんどくせぇヤツだな…。まぁ、良いか。放っておこうwそれより、蹴鞠と決着付けないとな…。


 その蹴鞠は、俺が首を掴み、右腕の闘気ハンドで頭を掴んでいる。逸鉄にドレインされ続けて今はほぼ動けない状態だ。


「…ま、まだ、身共は敗けてはおらぬ…ぞぇ…貴様は…何者じゃ…何をするきかぇ…?」


 息も絶え絶えに話す蹴鞠に、俺は最後の宣告をする。


「俺はアンソニー・ホワイト。この星系を統括する神様からの依頼により、アンタには消えて貰う。…ていうかアンタも気付いてるだろ?」


 俺の言葉に、蹴鞠は自身のスキルが消えていくのを確認したようだ。


「…こっ、これはッ!!きっ、貴様ッ…身共のスキルをッ…!!」

「…アンタがこれ以上悪さ出来ないようにスキルは全部引き抜いた」

「…き、貴様が…か、神に召喚された…男…スキルを失くしても…身共は…ま、敗けぬ…」


 俺達の応酬を見ていたフィーちゃんが不満をあらわに話に割って入る。


「ほわいと、おんし何をしておるんじゃ!!早く天使様からそいつを引き抜かんか!!この街の人狼族が(ことごと)くそいつに殺されておるんじゃ!!同胞を殺された恨み、はらさで置くべきか!!」

「…あぁ、解ってます。先にスキルを抜いておいたんですよ。アルギスの時の失敗をしない様にね?」

「失敗とな?それはどういう事じゃ!?」


 俺はあの時の事と、考えを密談でフィーちゃんに話した。


 あの時、俺は天使カイロシエル様からアルギスの本体を引き抜いた。そのアルギスの本体に、フィーちゃんがトドメを刺した後、ヤツのスキルを抽出に入ったのだが、魔障気の浸食が早過ぎてスキル数個を残したまま、抽出し切れなかった。


 あの時、アルギスが完全に魔障気に吞まれたと思っていたが、残りのスキルの中に復活スキルがないとは言い切れない。そして今、掴んでいる蹴鞠にしろアルギスにしろコイツらは俺と同じく、アストラル体になる事が出来る。


 つまり、俺はアルギスが逃げ切っている可能性を考えた。だからコイツらを倒し、完全消滅をさせるならその順序を考える必要がある。


 まぁ、死んだ後に発動するスキルとかはどうにもならんけどね。


 俺はフィーちゃんと密談しつつ、右腕の籠手を見る。恐らく最後に『コレ』が必要になるだろう…。


≪…ふむ。確かにそうじゃな…。で、もうスキルは全部引き抜いたんか?≫

≪…うん。今からコイツを天使様から引き抜く。その後は好きにして良いよ≫


 密談を終えると、俺は龍眼で天使様の中にいる蹴鞠のアストラル体の頭を右腕の闘気ハンドで掴んだ。俺がチラッとフィーちゃんを見る。


 するとフィーちゃんとフェンの目がギラギラと光っていた…。


 魔界のこのここし〇んたんだな…二人ともコイツをボコる気満々だ…。俺は思いっきり蹴鞠の頭を引っ張り上げた。



「…ぐおォォォッ!!み、身共は…は、離れぬっ…ぞ…」


 …チッ!!コイツ、天使様に貼り付いて中々引き剥がせねぇっ…!!


 弱っているはずなので簡単に引っこ抜けると思っていたが、結構しぶとい。


 …仕方ない『反響増悪』使ってアストラル体を揺さぶってみるか…。


 俺はその時、ふといじけたままの逸鉄を見た。


 …コイツに手伝わせるか。


「…オイっ!!そこの正義のお兄さんっ!!ちょっと手伝ってくれっ!!」


 俺の呼びかけに、座ったままのヘルメットがゆっくりこっちを見る。しかし深ーい溜息を吐いた後、また俯いてブツブツ呟いた。


 …コイツッ!!いい加減、いじけんの止めろよ!!なんか段々イラついて来た…。


 俺はフィーちゃんをチラッと見ると、逸鉄に発破を掛けてくれと密談で頼んだ。


≪わかったでな。任せるんじゃ!!≫


 そう言うと、フィーちゃんはトコトコと逸鉄に近づく。そして思いっ切りその背中をバチーンッ!!と叩いた。


「…イターッ!!なッ、何をするのだ!!ちびっこよ!!」

「おんしっ、正義のお兄さんなんじゃろっ!?だったら誰が何と言おうと『お兄さん』で通せばいいんじゃっ!!一々小さい事で悩んでおると正義のお兄さんの名が泣くでなっ!?」


 ハッとして顔を上げた逸鉄に、エージェント5も声を掛ける。


「…逸鉄様、そちらのお子様の言う通りです。あなたは誰に何と言われようとも『正義のお兄さん』なのです!!この世界中のちびっこ達のヒーローなんですよ!!いつまでもいじけていてはいけません!!」


 二人に発破を掛けられてスッと立ち上がる逸鉄。


「…そうだ…。そうだな!!わたしは世界中のちびっこのヒーロー『正義のお兄さん』なのだッ!!」

「そーでしゅっ!!おじさんは正義の『変な』お兄さんなんでしゅっ!!」


 いつの間にやら傍に来ていたシーちゃんがビシッと逸鉄に喝を入れた。喝を入れたのは良いんだが…。

逸鉄は『おじさん』『変な』というワードが引っ掛ったようだ…。


「…お、おじさん…わ、わたしが…へ、変な…おじさん…」


 立ったまま、再び俯いてブツブツ呟き始めた。


「…シーよ。おんしそれ言うたらダメじゃろ?せっかく発破掛けたのが台無しになるじゃろ!?」

「…ん?なんかおかしい事言ったでしゅか?そのおじさんは正義の変なお兄さんでしゅよ?」


 …まぁ、確かに間違ってはいないんだが…。


 ちびっこ二人のやり取りをエージェント5が苦笑いで見ている。見事にシーちゃんが振り出しに戻したか、と思ったが逸鉄はスッと顔を上げた。


「わたしはお兄さん、わたしは正義のお兄さん、わたしは正義のお兄さんだ。わたしは正義のお兄さん…そうッ!!わたしは正義のお兄さんなのだッ!!」


 …何だコレw?自己暗示か?こんなんでちゃんと暗示掛かってるのかなw?


 なんとか気分を取り戻した逸鉄が、エージェント5に問い掛ける。


「このわたしの力が必要だろう?何をすれば良いのだ?」

「…ホワイト様をお手伝いして下さい。そこにいる蹴鞠のアストラル体の力をを弱めるのです!!」


 エージェントの言葉に頷いた逸鉄は、俺の方へと近づく。


「コイツを弱らせるからここをチョイとチョップしてくれ」

「解かった。この正義のお兄さんが力を貸そう!!」


 …なんか一々言い方がアレなんだが…まぁ良いだろう…。


「トゥッ!!」


 天使様と引き剥がしつつある蹴鞠のアストラル体との境界を軽くチョップする逸鉄。


「…あ、違う。もうちょっと上…あ、いや、そこだ!!いや、微妙に下だな…」

「…かなり難しいな。ホワイトくん、ちょっと手を離してくれるかな?」


 そう言うので俺は蹴鞠の頭を掴んでいる左の闘気ハンドを放す。俺の闘気ハンドを見ていた逸鉄が右腕を握ったり開いたりした後、俺と同じ様に闘気の腕を出した。


 …コイツッ!!俺の闘気ハンドを『視た』だけで真似たのかっ!? 


 そして徐にその闘気ハンドで蹴鞠の頭を掴む逸鉄。


「…ふむ。こうかな?結構難しいな…慣れるのに時間が掛かりそうだな…」


 そう言いつつも逸鉄は闘気ハンドで蹴鞠の頭をクレーンゲームの様に掴む。


「…エネルギーは吸い上げるからその後は、ホワイトくんがやってくれ…」


 頷く俺の前で逸鉄がスキルを発動させる。『オールドレイン』だ。


「…ぐおぉぉッ、人間如きがァッ…!!」


 そう叫ぶ蹴鞠の声の力も、徐々に失われている。俺は手を放した逸鉄に代わって再び蹴鞠の頭を掴んだ。これならいけそうだ。


「…アンタ、覚悟は出来てるだろうな?今、本体を引き摺り出してやるっ!!」


 そう宣告すると俺は思いっきり蹴鞠の頭を掴んで引き上げた。


「…ぐ、ぐぉぉ…み、身共は…はなれ…ぬ…」


 しかし、逸鉄に最後の体力を吸収されたせいか、まるで脱皮するザリガニの様に、天使様からズルリと蹴鞠が抜けた。


「よっしゃっ!!引っこ抜いてやったぜ!!これでアンタは終わりだッ!!」


 俺は闘気ハンドで蹴鞠の頭を掴んだまま、籠手の中にあるスロットからすぐに『天獄』を出した。


 フィーちゃんとフェンには悪いがコイツはこのまま天獄で捕えてやる!!スキルでアストラル体になっている今のコイツなら永遠にこの中に閉じ込める事が出来るはずだ。


 俺が天獄でアストラル体の蹴鞠を今にも吸い込みそうになったその時、背後から凄まじい圧が襲って来た。


 これはッ!?


「ほわいとっ!!おんしの考えてる事はとっくにお見通しじゃっ!!」

「我もとっくに気付いておったわッ!!貴様、魔王をだし抜こうとするとは舐めておるのかァッ!!」


 しまったァァァッ!!この人達、俺の心読めるんだったァーッ!!


 瞬間、俺が掴んでいた蹴鞠を、急接近したフェンが魔力を込めた爪で斬り上げる。


「同胞の無念!!今、我が晴らす!!オオオォッ!!『魔風閃刃葬(まふうせんじんそう)』!!」


 言うが早いか俺の手から離れた蹴鞠に、フェンが跳躍で急速接近する。風の魔力を纏った爪で、四方八方から嵐の様な連続斬撃でフェンが蹴鞠を切り刻んでいく。


「…ぐはッ…み、身共がッ…下等生物などにッ…」

「フンッ!!下等生物だとッ!!その下等生物にお前は敗けるのだッ!!魔族の力、思い知るが良いッ!!」


 ボロボロになって落下していく蹴鞠。


 その下にはフィーちゃんが待っていた。


「…おんし、攻め込んでくる所を間違えたでな?魔族に仇なす者、全て滅びよ!!」


 叫んだフィーちゃんが、必殺の拳を放った。

 最近、エピソード間の話の繋がりを修正しつつ、長い話は分けるようにしているので話数が増えたりしていますが、新しいエピソード投稿は金曜のこの時間になりますのでご了承下さい。

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