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王宮へ行く。

今回で『王都に行く』編は終わりです。次回から『魔界と東鳳と時々、図書館』編を始めます。


 王都中央区のテラスで昼食を摂っていると突然、エイムが立ち上がった。


「どうした?エイム…?」

「何者かが来ます!!」


 その言葉の直後、俺達の前に一人の男が転移で姿を現した。


 20代半ばと思われる、赤みがかった短髪で、鋭い眼付きの色白の男だ。黒い軽装で身を固め、インナーも黒い。一目で一般の王都民とは違うと分かる。


 エイムが瞬時に接近し、その胸元を掴むと男は慌てて弁解を始めた。


「…敵ではありませぬ!!突然現れて申し訳ない。わたしはエージェント11(イレブン)です。ホワイト様が『妖精の森』に出入りを始めた頃から『監視』をしていた王国の『影』です…」

「…あぁ、付かず離れずで俺に付いて来ていたのは君か。エイム、離してやってくれ…」


 エイムは男から手を離し、さがるが警戒は解いていない。


「…で、どうして突然姿を現した?何か緊急の用でもあるのか?」


 男は俺とエイムを見ると話を始めた。


「…明後日、午前九の刻より、この度の戦争での論功行賞が行われます。今回は各地で戦功を立てたホワイト様、ブレーリン防衛をしたエイム様、そしてスラティゴ防衛のクレア様と弟子の方、三名が対象になっております。式典などでは御座いませんので平素の装備でお越し頂いて構いません…」

「あぁ、その事なんだけど、ちょっと事情があってクレアと弟子は参内出来ないんだ。その事を王宮に伝えておいて欲しい…」

「…解りました。必ず、お伝えします。それでは遅れる事なきようお願いいたします」


 深く礼をして、転移で戻ろうとする男を俺が止める。


「ちょっと待ってくれ。少し聞きたい事がある」

「はい?何でしょう?」

「ベルファには帝国軍は現れなかったのか?」


 俺の問いに、男は首を横に振る。


「特殊な力を持った一団が現れましたが、(ことごと)く禅師先生が撃破しまして…」


 …あぁwそういやあそこはあの爺さんがいたなw


「…引き留めて悪かった。明後日、王宮に参内するよ」

「はい。それではごきげんよう」


 そう言うと男は転移で消えた。



 明後日、俺とエイムは二人で王宮へ参内した。普段着良いと言われたが流石に戦闘用装備そのままで行くのもどうかと思ったので、エイムと同じく、白いシャツと下には黒のスラックスという格好だ。


 ティーちゃん、シーちゃん、フラムには一緒に宿屋でお留守番をして貰っている。門衛に挨拶をして王宮の敷地内へと入ると、執事っぽい爺さんがいた。


「ホワイト様とエイム様ですね?わたくしめが案内を仰せつかっております」


 と、言うので執事の爺さんに案内して貰う。


 流石、王宮。デカい。まず正門と壁がぐるりと王宮を囲んでいるが、その外側を幅の大きい堀が囲んでいた。


 皇居みたいな感じだな…。


 案内されて正門から入る。庭園とちょっとした池があり、その真ん中を通路が通っている。馬車でも入れるようにきれいに整備されていた。


 王宮の手前から、駅前ロータリーの様に馬車を周して王宮正面の扉前に付けられるようにしてある。まあ一般的な西洋の王宮といった感じだ。


 俺達が大きな正面扉から王宮内に入ると、大勢の貴族や官僚らしきものがいた。案内の爺さんによると戦争時に補給を担当した小領主なども来ているそうだ。


 案内して貰っていると、人混みの中からめんどくさいヤツが俺達の方へと向かって来た。



「オイッ!!テメェッ!!何で新参者がここに来てんだよッ!!」


 …あぁ、うるせぇヤツだな。またコイツか…。


 俺の前に現れたのはランディだ。


「…お前、威勢だけは一丁前だよな?所で…お前誰だっけw?」

「ウオォォォィッ!!テメェッ!!この前会ったばかりだろうがよォッ!!ランディだよッ、王都所属のSランクハンターのランディ様だッ!!よく覚えとけッ!!」

「覚えとけも何もお前は絡んできただけでちゃんと名乗ってないだろ?聞いてない名前なんか覚えてる訳ない!!」


 俺の返しに、顔を(しか)めてムムムッと唸るランディ。


「パンティくんね。ちゃんと覚えとくよ。改めてよろしく。しかしお前ホントうるせぇよなぁ?」


 俺が名前を間違えると、ランディが顔を真っ赤にして怒り出した。


「テメェェッ!!パンティじゃねぇッ、ランディだッ!!」


 …コイツ、中々面白いヤツだなw


「まぁ、落ち着けよサンディくん。周りが迷惑そうな顔してるだろ?」


 俺の指摘に慌てて周りを見るランディ。その後ろからPTメンバーも現れた。


「おぅ、フィン!!それから霍延(かくえん)とシグルス、カシス一昨日ぶりだな!!」


 俺が元気良くメンバーに挨拶すると、周りを確認していたランディが喰って掛かってきた。


「オイッ!!テメェッ!!何で他のメンツの名前は憶えてんだよッ!!」


 そんなランディを見て俺は、ニヤッと笑った。


「…えw?だって皆、お前より強そうだもんw…(ボソ)」

「…テッ、テメェェッ…!!」


 顔を真っ赤にして怒り狂い、飛び掛かって来そうなランディをシグルスが羽交い絞めにして止める。


「ランディ、王宮だぞ?静かにしろ。それからホワイト、アンタもランディで遊ぶのはそろそろ止めてくれ…」


 フィンに言われて、「ごめんちょー」と言って謝っておいた。


 その後、エイムもいる事に気付いたランディは何とか落ち着きを取り戻す。


「おぅ、エイム!!お前も来てたのかよ!!お前は強いもんな!!呼ばれて当然だよな!!」


 そう言いつつ、ランディは俺を見る。


「それに比べてお前は新参のくせに何してここに来てんだっつーの!!」


 そんなランディの嫌味を無視したまま、俺は爺さんに案内を頼んでサッサとその場を後にした。



 謁見の間で、俺達は綺麗に整列して並ぶ。奥の二段ほど上に玉座があり、その脇に宰相っぽい魔導師のおっさん…いや、おじいちゃん?がいる。


 並ぶ俺達の両側に整列しているのは閣僚である貴族と騎士団達だ。


「…王のお成りである。皆、静粛に!!」


 宰相の爺さんのその言葉で、ざわついていたその場が静かになった。そして奥の袖から、軍の軽装に法衣を纏った三十代前半と見られる男が現れた。


 想像していたより、かなり若い。


 今回の各都市での防衛戦について王自ら講評する。その後、順に戦功とそれに対する褒章を貰っていく。


 ランディのPTも呼ばれ、王の前に出る。戦功の話を聞いていると、どうやらランディ達は北のラチェスタという街の防衛に就いていたようだ。


 兵士を失う事無く、ランディPTのみで帝国北軍を撤退させたらしい。さっきSランクって言ってたから、性格はともかく強い事は確かな様だ。


 そうこうしている内に一番最後、俺達が呼ばれた。まずはエイムからだ。


「ホワイトファミリー所属、エイム・ヒトリゲン。前へ…」


 促されたエイムが前へ出る。


「…ブレーリン防衛、見事であった。帝国の奇襲部隊を殲滅した功で報奨金を与える!!」

「ありがとうございます」


 エイムは恭しく礼をすると報奨金を受け取る。その後、俺が呼ばれた。


「…最後にアンソニー・ホワイト、前へ…」


 俺は前へ出ると一度、片膝を付き礼をする。


「此度の転戦、ご苦労であった。まずはスラティゴで帝国の奇襲部隊を殲滅したお主の夫人に報奨金を授ける…」


 俺は官僚からクレアの代わりに報奨金を受け取る。続けて王から、俺の戦功について話が続いた。


「クロナシェルにてサウスサウザンド撃退、ルアンブールでは帝国南軍を殲滅。そして王都防衛戦では帝国西軍の半数以上を無力化し、敵総大将ハク・タイガを退けたその功績により勲位を授ける!!」


 王の言葉に人々がざわつく。まぁそりゃそうだろう。いくら戦場で活躍したからっていきなり現れた新参に勲位やるとかやり過ぎだろう…。


 後ろからランディの声が聞こえて来る。


「…オイ、フィン。アイツ何者なんだ?あっちこっちで帝国軍潰してタイガの野郎を撤退させたって…ジョニーがやったんじゃなかったのか?」

「…お前、この前ギルマスの部屋でちゃんと話を聞いてなかっただろ?」

「…疲れてたんだよ。しょうがねぇだろ…っと、ちょっと待て!!今、アイツの名前なんていった?エイムはどこに所属って言ってた?」

「…ランディ、後で説明するから今は静かにしてろ…」


 霍延にも言われたランディは仕方なく黙った。しかしその他のざわつきは未だ収まらない。余り注目されてしまうと今後の活動に支障が出かねない…。さて、断わるかw


「大変申し訳ないんですが、それは辞退させて頂きます。わたしにそこまでの器量はありませんので…その代りにお願いしたいことがあるのですが…」


 俺の言葉に更に周囲がざわつく。断わったのに別のお願いしてるからねw


「…良い。今回のお主の功績は大きい。何でも申せ…」

「うちのファミリーは王国の別動隊として所属する、という形にして頂きたいのです。つきましてはこの王都で拠点となる『家』が欲しいのです。それをもって褒章として頂きたいのですが如何でしょう?」


 王は考えるまでもなく俺に答えた。


「…うむ。その話は事前に聞いている。承認しよう。では物件については商業ギルドにて確認するが良い。今回はよくやってくれた。お主がいれば他国もそうそう攻め込んでは来れぬ。今後も王国の為、よろしく頼む…」


 その言葉に、片膝を付いて頭を下げる。そして俺は元いた列に戻っていく。しかし、戻ろうとする俺に後ろから王が声を掛けて来た。


「…ホワイトよ、余の顔を見忘れたか…(笑)?」


 …はw?何をいきなり八代将軍みたいな事言ってんだこの人は…?


 思わず振り返った俺は王の顔をじっと見る…。どこかで見た感じではあるが…。思い出そうとしたその瞬間、俺はゾッとした。


 …コイツはッ!!


 ザンバラ髪を纏め小奇麗な軽装と法衣を纏っていて雰囲気が違うのでいまいちよく解らなかったが、そこにいたのはウィルザーだった。


 …オイオイ!!何が貧乏子爵の三人坊だよッ!!暴れん坊シ〇ーグン…いや暴れん坊キングしてやがったw!!


 しかし俺は極めて平静を装う。


「…えー、どこかでお会いした気はしますが…思い出せないですねw」


 そう言って俺は元の列に戻った。すぐに隣にいたエイムに確認する。


「…エイムはアレがウィルザーって気付いてたか…?」

「そうですね。生体機能が一致しましたのですぐ解りました」

「…あ、あぁ、そうなんだ…」


 最後に、王が今後についての激を飛ばし、今回の防衛戦における論功行賞は終わった。


 その後、宿屋で皆と合流してから俺達は商業ギルドに向かった。


 商業ギルドにて、受付のおばさんに王から褒章として貰った物件があると伝えると、ハイハイと奥へ行き、書類を持ってきてくれた。


 そこには物件の情報と場所が記載されている。


 すぐに俺達は確認の為、指定された場所へ向かった。そして付いた先に待っていた物件を見た俺は驚きで思わず声を上げてしまった。


「…は?な、な、なっ、なんじゃこれはアァァァァ…!!」

まだまだ、暑いですね…。全然サマーがエンドしませんね…。

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