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お悩み解決。

 午後からも基本、この流れで各施設を周って行く。しかし、施設によっては場所が悪く、地区開発の対象にもなっている所もあった。


 つまり地上げのチンピラが良く来る、という事らしい。


 施設の中で、シスターと話していると、タイミング良くと言うかチンピラが現れた。


「オラッ!!ガキどもッ!!そこをどけッ!!」


 おぅおぅ、元気なチンピラだな。五、六人の手に棍棒を持った男達が施設内の椅子を蹴り上げ、威嚇しながら入って来る。


 俺はすぐに、シスターと子供達に奥の部屋にいるように伝える。


「俺が止めてきますので、奥にいて下さい…」


 それだけ伝えると俺は男達の前に歩いていく。


「おゥッ!!なんだテメェはァッ?あッ!?」


 俺は顔を近づけて来たチンピラの顔面を問答無用で思いっ切り殴った。施設内の設備はヤツらが蹴って退かしていたので、チンピラは開けっ放しのドアから一直線に外へ吹っ飛んでいった。


「はい、まずゴミ一匹ね。次は誰が殴られたい?」

「…て、テメェ…何しやがるッ!!」

「何って暴れてるバカを片っ端から消し飛ばしてやろうとしてるんですけどw?」


 答えた瞬間、目の前の男の首を掴んで、パラライズボルトを流す。バチッという音と共に電撃が弾けた。目の前のチンピラ達は只の人間で能力者ではない。だから俺がスキルを見せた瞬間、顔を蒼褪めさせて後退りを始めた。


「…こ、コイツ…能力者か…」

「…オイオイ、逃げるなよw?お前らとちょっと『オハナシ』でもしようかと思ってんだ…」


 しかし、ヤツらは俺が動き出した瞬間、先を争って逃げ始めた。しかし、誰一人としてその場から逃げる事が出来ず電撃でぶっ倒れた。


 俺は最初に殴ったヤツに粘糸を繋げておいた。そこから一直線に俺のいる場所まで粘糸は繋がっている。ドアは一つしかないので当然、ヤツらはその上を通って逃げようとする。そこへパラライズボルトを流したのだ。


 施設の中から外で倒れているヤツまで、気絶したチンピラの列が出来た。



「一体コイツらは何なんじゃ?」

「無駄に偉そうでしゅね~」


 俺はティーちゃんとシーちゃんの疑問に答える。


「あぁ、コイツらは地上げだよ。この辺りを開発するからお前ら早く退けって脅しに来るヤツね。で、大体こういうチンピラが絡んでると代りの土地も出さないで、はした金だけ渡して追い出すんだよ。酷いヤツだと金も寄越さずに追い出そうとしたりするんだ」

「…ふーん。ダメなヤツらなんじゃのぅ…」

「じゃあ、コイツら懲らしめてもいいでしゅね?」

「…あ、まぁ、そうだね。ちょっとコイツらの事務所に『話し合い』に行ってくるよ」


 俺の言葉に、シーちゃんがさっそく突っ込んできた。


「ろくでもないダメ人間何でしゅよね?『話し合い』じゃなくて懲らしめるんじゃないんでしゅか?」

「…あぁ、まずは話し合いをしてみて、ダメだったら全員殴り飛ばすつもりなんだよ…」

「おぉっ、そーでしゅか!!じゃ、シーも一緒に行くでしゅ!!」


 と、言うので施設にはティーちゃんとフラムに残って貰う事にした。


「フラム、パパはちょっとこの変なオジサン達を連れてオハナシしてくるから姉さんと一緒にここの皆を守っててくれるか?」

「あぅっ!!」

「じゃ、ティーちゃん皆をよろしく。何かあったらすぐ戻って来るから…」


 と言いつつ、肝心な事を思い出した。


「…フラム、この寝ている変なオジサンの記憶、読んでくれるか?」


 俺が頼むとフラムはテテテッと走って男の一人にぺちっと手を当てて記憶を読む。すぐに戻ってきたフラムを抱き上げる。フラムは俺の額にぺちっと手を当てると、男から読んだ記憶を俺に流してくれた。


「…ふむふむ。ここからそう遠くはないな…」


 俺は、男の記憶からコイツらの事務所を割り出した。


「…じゃ、行ってくるよ。ティーちゃん、フラム、施設の皆を頼む」

「うむ、気を付けて行ってくるんじゃ」 


 という事で、俺はヤツらを粘糸で繋げると、シーちゃんと一緒にチンピラ共を引き摺って事務所に向かった。



 事務所は、大きな四階建ての建物の二階にあった。俺はすぐにドアを蹴り飛ばす。


「なんだテメェらッ!!どこのカチコミだッ!?」

「カチコミじゃねーよ!!お届け物を引き摺って来ただけだ…」


 そう言うと俺は粘糸で縛り上げた男達を事務所の床に転がした。


「…こッ、これはッ!?テメェッ!!何のつもりだッ!!」


 チンピラが一斉に俺達に襲い掛かって来る。…がすぐに動けなくなった。シーちゃんがこの部屋一帯に『グラビティ』を掛けたのだ。


 椅子に座っているボス以外、全員が膝を付いて俺達を見上げる。


「…クッ…何しやがった…う、動けねぇ…」

「悪いヤツは大人しくしとくんでしゅ!!」


 大人の膝丈ほどしか背丈の無いちびっこに手を翳された男達は指先一つ、動かせなかった。そしてシーちゃんは後ろに周り込んでナイフを出していたチンピラをサマーソルトキックで蹴り上げた。


 蹴られたチンピラは、天井まで吹っ飛んでぶつかって落ちて来る。そして再び、グラビティで床に押さえ付けられた。


 動けないヤツらを前に、話を始める。


「…そこの四区画目の角にある教会と児童施設の事について話に来た。良く聞け。あそこは場所が悪いから出て行っても良い…」


 俺の話にシーちゃんが疑問をぶつける。


「ん?コイツら懲らしめて手を引かせるんじゃないんでしゅか?」

「あぁ、それも考えたんだけどあそこは陽当たりも悪いし治安も良くない。だからあの場所を譲ってやって立ち退き料と代りに良い土地貰おうかと思ったんだよ」

「おぉ!!それは良い考えでしゅ!!」


 俺達が話していると、若頭っぽいヤツが顔を上げて言う。


「…お、お前ら、何者か知らねぇが、勝手な事言うなよ?こっちはビジネスが絡んでんだよ…教会とガキの施設如きにそうそう簡単に更の土地、渡すわけねェだろ…」


 俺は、若頭を無視して椅子に座るボスを見て話す。


「…あぁ、そうか。それならお前ら再起不能にしてこの建物、お前らのか?ここを破壊して更地にしても良いけど?どうする?」

「…若いの、ワシらの世界はそんなに甘っちょろいもんじゃ…」


 そこまで言った瞬間、俺は部屋の壁を闘気ハンドで殴り破壊する。壁に二メートル程の大きな穴が出来た。


「…お前らは『神』を信じマースか?」

「…何言ってる?俺達は神なんかより『金』を信じてるんだよ…」

「そうか。なら今から改心して神に祈るんだな」


 若頭の言葉に、俺はすぐシーちゃんに圧力を強めるように頼んだ。


「あーい、やるでしゅ!!」


 瞬間、チンピラ共の体と共に建物が激しく軋んで音を立てる。


「この子の力があればこのままお前らごとこの建物潰して更地に出来るぞ?よくよく考えろよ?まずは立ち退き料を出せ。その後は施設移転の代替地を寄越せ。それから立ち退きまでの猶予期間だな。どうする?」


 顔を歪めたボスが苦虫を噛み潰した様な顔で声を搾り出す。


「…わ、解かった…金も土地も何とかする…本来はこんなサービス無いんだからな?」


 俺の出した条件を承諾させてから、シーちゃんにグラビティを解除する様に密談で話した。


 チンピラ全員を重力から解放した後、目的を果たした俺とシーちゃんは事務所を後にする。しかし俺達が背を向けるとバカ三人が襲い掛かって来た。


 振り向き付ざまにシーちゃんが廻し蹴りを喰らわせて倒し、首を掴むと俺が開けた壁の大穴からチンピラ一人を放り出した。


 俺もゾーン・エクストリームによって動きの止まった一人に裏拳を喰らわせ、残る一人の頭を掴むと床に叩き付けた。


「お前らバカか?ボス、アンタ、下っ端はよくよく教育しとけよ?」

「…解かった。お前ら、そこの人に手を出すな。解かったかッ!!」

「…へ、へい…」


 そのまま帰ろうとすると、今度は若頭が後ろから声を掛けて来た。


「…ちょっと待ってくれ。アンタ、どこの者だ…?」

「質問に質問で返して悪いが先にお前らの組織の名前を聞いておこうか?」

「…カネコルソファミリーだ…」

「そうか。俺達はホワイトファミリーだ。細かい話を詰めに明日また来る…」


 それだけ話すと、俺とシーちゃんは施設へと戻った。



 施設へ戻ってきた俺はシスターと子供達とおやつを食べながら話した。追い返すより、場所の悪い此処から移転する方向で話を進めて来たと報告する。


 移転に当初は戸惑っていたシスターと子供達だったが、今後の事や、周辺の治安諸々を考えて移転の方が良いと説明すると何とか納得してくれた。


「移転先の土地と新しい教会と施設の建設費、それから立ち退き迄の期間と立ち退き料に関して話を付けた来ました。また明日、細かい話を詰めにヤツらの所へ行って話し合いをしてきます」

「…ありがとうございます。アナタ達に神の祝福がありますように…」


 子供達とおやつを食べてまた来るよと話した後、施設を出ようとした俺達の前に一人の男が慌てた様子で走って来た。 


 男は俺達の前で止まると、暫く呼吸を整えて話しを始めた。


「…ホワイトさんですね?わたしはギルド本部の者です。緊急出動要請が出ています。東門内にて突如、ガーゴイルが出現しました…」


 ギルド職員の話を聞いた俺は、ティーちゃんに密談で確認した。


≪ガーゴイルって…悪魔の一種だっけ…?≫

≪そうじゃな。硬い体皮と、大きな翼と、両手に鋭い爪があるヤツじゃの≫


 …何で悪魔が王都の中に出て来るんだよ…。


「…ガーゴイルか。今、どうなってますか?」


 俺が聞くとギルド職員が状況を教えてくれた。


「…正規軍が対応しましたが歯が立たず、今は騎士団が交戦中です!!」

「能力者は…?」

「今、招集している所であります。正直Aランク以下だと無理かと…」

「…ジョニーは?」

「ジョニーさんのスキルだと広範囲で人や建物を巻き込んでしまうので…」

「…あぁ、そうか。そうだったな。じゃあ俺達が行きますよ。他の能力者で対応出来そうなら俺達は手を出さないけど良いですよね?」


 俺の言葉にギルド職員が顔を曇らせる。


「いえ、速やかに処理出来るなら、ホワイトさんがやって下さい。倒せても周辺施設や王都民に被害が出るのは極力抑えたいのです」

「そうですか。解りました。ではすぐに向かいます」


 俺達はすぐに施設から東門へと転移した。戦争が終わったばかりだと言うのに…いや、だからこそ油断を突いて来たのか?


 現場である東門に到着。少し離れた場所から俺達は様子を窺う。軍が民衆を避難させ、今は騎士団が取り囲でいるが片っ端から吹っ飛ばされてた…。


「…うはっ!!強烈だな…」


 強烈な上にかなりデカい。俺達がガーゴイルを観察しているとジョニーが来た。


「…旦那、アレ、殺れそうか…?」

「…まぁ、出来ると思うけど…しかしメチャクチャデカいな…?」

「あぁ、二十メートルは超えてるよ…ガーゴイルを見るのは初めてだがあんなデカいのか…?」


 そこは俺に聞かれても知らんwしかし、ガーゴイルってこんなにデカいモンなのかな?すぐに鑑定を終えたティーちゃんが答えてくれた。


「…アンソニーよ、アレは変異種じゃ。しかも突発、となっておるの…」


 俺達は顔を見合わせる。こういうの、今まで何度もあったような気がするよなw?能力者らしき者も集まりつつあったが、俺と同じく巨大ガーゴイルを見て戸惑っていた。


「ジョニー、他の能力者はどうだ?アレ、やれそうか?」

「いや、俺も含めて対戦争で集めてる能力者だから範囲とか持ってるヤツが多いんだ。だから街中で暴れるとまずいんだよ…」

「…解かった。俺達がやるよ」


 話しているとキース達も集まって来た。丁度良い、キース達にも手伝って貰うか…。


「みんな聞いてくれ。まず俺とシーちゃんが牽制で入るから騎士団の皆を退避させてくれ。皆を退避させて俺達だけになったらティーちゃんがアイツを氷結させて…」

「…うむ、やってみる」

「…旦那、その後はどうするんだ?」

「後は俺がやる。とにかくこれ以上、被害が出ない様にするよ」


 手順を確認した俺達は、すぐに行動を開始した。さて、ガーゴイル退治やりますか…。

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