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ジョニー・ハートバーン。

「…ボランティア…?ですか!?」

「…えぇ、ボランティアです。いずれも教会に併設されていますが、主に恵まれない子供を保護している孤児院や児童施設を周って頂きます」


 …ふむふむ。戦争で親を亡くしたとか、生まれた直後に捨てられたとか、虐待されてたとか、そう言う子供達を保護してるとこかな…。


「…罰の内容については解りましたが、その孤児院やら施設は王都内に幾つ程あるんでしょうか?」

「ざっと、三十か所程はありますよ。ですから、何日か掛けて周って来てください」


 うはっ、そんなにあるのかw?こりゃ労働鉱山とかの方が単純で良かったかもしれん…。


 マスターウィットが話を続ける。


「…ギルド役員等で色々と罰については考えたのですが…」

 

 どうやら罰について、色々な人が話し合ったがいい案が出て来なかったそうだ。

 

 本来であれば、数カ月無償で依頼を受けるとか、労働鉱山での労働等があるそうだが、どれもあり来たり過ぎて面白くないとの意見が出たらしい…。


 …誰なんだ?罰に面白さを求めようとしているヤツは…。


 そこで俺が子供達を連れているという話から、孤児院や児童施設でボランティアをさせる事に決まったとの事だった。


「期限は特にはありませんが施設などが多いのでボランティアが終わりましたらその都度、証明書を発行して貰って下さい」


 その後、俺は簡単な王都内にある施設の場所を教えて貰った。こういう殺伐とした世界なのでマップ等は余程の事がない限り、出せないそうだ。


 まぁ、そうだろうね。敵国に渡った日にはピンポイントでテロが来る可能性もあるからな…。


 帝国軍撃退の報告と泥酔事件での罰の内容も確認したので、俺は再び皆の所に戻るべくギルドマスターの部屋を後にした。



 俺がマスターの部屋から降りて来ると、すぐに男が声を掛けて来た。


「…おっ、アンタ、さっきは助かったよ、ありがとう。マスターに報告は終わったみたいだな…」


 声を掛けて来たのはジョニーだった。どうやら俺を待っていたようだ。


「あぁ、ジョニーだっけ?報告は終わったよ。まぁ、報告ついでにちょっと別件もあってね…」

「…別件ってなんだ?」

「…ブレーリンで泥酔して魔族相手に暴れちゃったんだよ…」

「…はッ(笑)?魔族と喧嘩でもしたのか(笑)?」

「…まぁ、そんなとこだなw」


 ジョニーは笑いつつ、俺と話したい事があると言う。


「…スキルについてなんだ…。今回、俺はタイガ戦で良いトコがなかったからな…。それでアンタのスキルを見た時に気になった事があって…」


 俺達は話しつつ、ギルドの待合の角に座る。


「…アンタ、いや、旦那はなんか飲むか…?」

「…あぁ、カフェオレで良いよ…」

 

 そう言うと、併設されている料理屋のカウンターで、ジョニーはコーヒーと一緒に、カフェオレを注文して持って来てくれた。


「…旦那のスキルを二回、腕からデカい槍の様な闘気を出しただろ?アレと雷撃を見たんだが、どっちも途中から急に威力というかエネルギーが増幅したのが見えたんだ…」


 ジョニーは一旦、コーヒーを飲んで話を続ける。


「…本来、スキルの威力ってのは決まってる。けど旦那はその常識を覆した…」

「…あぁ、アレね。所でジョニーはトウガって爺さん、知ってるか?」

「…トウガ?帝国の碧星老将の爺さんの事か?それなら知ってるが…トウガがどうかしたのか?」

「ジョニーはあの場所にトウガがいたのが見えた?」


 俺の言葉に、ジョニーが驚く。


「…いや、見えなかった…というか、トウガが戦場に来てたのか?」

「あぁ、来てたんだ。どうもタイガの師匠らしいんだが俺の攻撃を二回とも謎スキルで邪魔してきたんだ。それでスキルごと突き破ってやろうと思って『本気』でスキルを発動させたんだよ。たぶんジョニーが見たのはそれの事だな…」


 俺の説明にジョニーが考え込む。


「さっきも言ったんだが、本来のスキルの威力は本気でも普通の状態でも上限は変わらないんだ…。でも旦那は威力を倍増させた…」


 そう言いつつ、ジョニーは深刻な表情で声を搾り出す。


「…今回、俺は自信を砕かれたんだよ…。誰にも負けない、そう思ってたんだが…実際、闘気を持ってるタイガには敵わなかった…」


 俺はカフェオレを木製ストローでチューチュー飲みつつ、話を聞く。


「…だが旦那はそのタイガの闘気を簡単に突破した。しかもスキルの威力を上げた…。だから俺は教えて欲しいんだ。どうやったら相手のスキルを突破出来る?どうやったらスキルの威力を上げられるんだ?」


 そう聞かれても困るんだが…。俺は考える。


 …この男、アツいね~…。そこら辺り、教えてやりたい所ではあるんだけど、俺の場合はステータスが異常ってのがあるからなぁ…。


 スキルに付いての解説、と言うかそれを教える事が出来るのはクレアかエイムしかいないだろうな…。


 そんな事を考えつつ、ジョニーにスキルについて話を続けようとした時、横から話を聞いていたPTが寄って来た。



 ジョニー・ハートバーン。アメリカ、ニューヨーク出身の二十六歳、召喚者。幼少期からスラムを歩き回り、何故か喧嘩ばかり売られていた。毎回、喧嘩の度に、血塗れになっていたので周囲から血塗れ(ブラッド)・ジョニーと呼ばれるようになる。


 いつの日からか、自分の血を利用して相手の目潰しをしたり意識を逸らせたりして喧嘩していた所、召喚エネルギーに引っ掛り異世界へと飛んだ。


 召喚後、自分の血液を操るスキルを発現した。


 召喚位置がズレて、砂の王国サウスサウザンドに降り立つも自由の無い生活に嫌気がさして砂の王国を脱出した。現在、エニルディン王国に所属するフリーSランクハンター。


 スキル『マリオネスブラッド』赤色スキル。


 …となっている。


 俺は話を聞きながら、戦場でティーちゃんに送って貰っていたジョニーの人物伝に目を通していた。アメリカ人の召喚者なのか…。しかしスラムで喧嘩三昧とはw喧嘩屋かw?


 俺がスキルについてジョニーと話を続けようとした所、近くにいたPTが話に入って来た。


「…突然で申し訳ないんだが面白そうな話だと思ってさ、俺達もその人の話を聞きたいんだが良いかな…?」

「あぁ、キースか。旦那が良ければ話を聞いてても良いけど?」


 キースと呼ばれた軽鎧を纏った金髪ツンツン頭でバンダナの男が俺を見る。


「…あぁ、良いよ。どうぞ…」


 聞かれて困る話でもないのでPT四人に椅子を勧めた。


 ジョニーによるとこのPTは暗器使いのキースがリーダーでマッパーと鑑定、解錠を担当。他三人は剣士盾持ちの犬獣人男と、戦斧持ちの蜥蜴人の女が前衛。ヒーラー兼戦闘要員の僧兵(モンク)の女が後衛と一風変わったPTだ。


 『一風変わった』と言うのは職構成もだが、デミヒューマンが二人いる事だ。今まで何組かのPTを見て来たが人間×デミヒューマンの混成チームはほとんど見た事がない。


 個人的には人間とデミヒューマンだとフィジカルに差があるからお互い組まないんだろうなと勝手に思っていたが…。


 このPTはAランクで時々、依頼でジョニーの手伝いをしたり、手伝って貰ったりする仲の様だ。


 まぁ、それは良いとして俺は話を続ける。


「…えーっとスキルの威力の上げ方について…だっけ…?」

「そう!!それを旦那に聞きたいんだ。気合とか根性論とかじゃなくて理論的にどうすればいいか?って事なんだ…」


 俺はジョニーを含む五人を見る。


「…正直に話すと俺自身、それについては良く解ってないんだ。俺個人は感情の昂りと共に威力が上がるって説明しか出来ない。だから俺が教えてやれる事はないんだが…」


 俺の言葉に、五人とも残念そうな顔を見せる。


「…ただうちのファミリーでそれを説明出来そうなヤツが二人いる。二人とも王国の内陸の都市防衛に付いて貰ってるから今すぐにはダメなんだが、そのうちその二人も王都に来る。その時にでも改めて話をって事で良いかな?」


 俺の言葉に、暗かった五人の顔がみるみる明るくなってくる。


「あぁ、俺はそれで良いよ。今よりもっと強くなれるなら、少しくらい待つよ」


 ジョニーに続いて、キースも頷く。


「俺達もそれで良い。こんなチャンスはめったにないから楽しみだよ」 


 リーダーのキースの言葉に、PTメンバーもうんうんと頷いていた。


「この後、うちのファミリーと合流するけど、皆で夕食行くか?」


 俺の言葉に、ジョニー、キースと他のメンツも行きたいとの事だったので、先程のレストランまで一緒に行く事になった。


 皆と合流した後、お互い挨拶をしてから席に着く。皆で賑やかな夕食の時に、リベルトとジョニーについて話を聞いた。


 どうやらジョニーが砂の王国から脱出する時に、たまたま砂の王国にいたリベルトが脱出の手助けをしたそうだ。


 キースのメンバーには犬獣人や蜥蜴人(リザードマン)がいるのでフラムが怖がるかなと思っていたが特に怖がる事もなく、いつも通り愛嬌を振りまいていた。



 その頃、ブレーリンではギルド宿舎に併設されている料理屋で、食事をしながらロメリック、エミルがスキルについてエイムから説明を聞いていた。


 テンダー卿は襲撃での事後処理があるのですぐに庁舎へと戻った。チャビー、未依里、アイリス、憂子は隣のテーブルで食事をしている。


「この世界ではスキルが成長したり威力が上がる事はまずありえません。何故ホワイトさんはそれが可能なのでしょうか?」


 ロメリックの疑問に、エミルもうんうんと頷く。


「…そうですねぇ。まず初めにスキルの成り立ちから説明させて頂きます。スキルとは個人が、特定の条件下に置いて能力を発現する事を言います。そしてスキルについての理解が根本的に違うとそこが能力の限界になります」

「…スキルに対する理解が違うってどういう事なんですか?」


 エミルの質問に、エイムはうむ、と頷きつつ話を続ける。


「良い質問ですね。これは魔法にも関わる事ですが『発動ワード』の際の意識の在り方でもあります。解りやすく説明しますと…」


 隣のテーブルで話を聞いていたチャビー以外は、話が難し過ぎてちんぷんかんぷんだった…。


「スキルワードをただ発するだけの人と、スキル素粒子に働き掛ける人の違いです。ただそれだけなのですよ。スキルはスキル素粒子エネルギーの集合体からなるものなのです。だから前者と後者ではその後のスキルの成長と威力に違いが生じるのです…」

「…という事は誰しも意識的に理解を変えて行けばスキルは成長し、威力は上がる、という事ですか?」


 ロメリックの見解に頷くエイム


「はい。その通りです。しかしこれはあくまでも理論的には、という事です。個人の能力の限界、スキルの性質によっては一定以上は上がらない場合もあります」


 真剣な表情で話を聞きつつ、うんうんと頷くエミル。チャビーには難しい話ではあったが何となく感覚でそれを感じ取っていた。


「スキルにしろ、魔法にしろ創造性とイメージが重要になります。ただ単に鍛錬を積めば良い、というモノではありません。勿論、闘いにおいては体力、知力、敏捷性、耐久力諸々も必要にはなりますがね…」

「あともう一つ、お聞きしたい事があります。よろしいですか?」


 ロメリックに問われ、頷くエイム。


「…エイムさんは…先の熊獣人との闘いで相手のスキルを無効化していましたよね?アレはどういった原理なのですか?」

「…フフ、そこが気になるとは。よく見ていましたね。しかしアレはわたしとホワイトさんしか使えません。これについては企業秘密としか言えませんね…」

「…そうですか…」


 残念そうなロメリックに、エイムが一言付け加える。


「そう残念がる必要はありませんよ?寧ろアレが使えるのはその存在が人外と言っているようなモノですからね(笑)」


 笑いながら言うエイムに、半笑いで顔を引き攣らせるロメリックとエミル。


「…そ、そうですか…。ではホワイトさんは…『人外』だと…?」

「えぇ、そうですよ?あの方は既に人間を超えています。二人ともあの超高圧のエネルギーを見たでしょう?あんなエネルギー体を出せる『人間』いると思いますか(笑)?」


 エイムにそう言われて、妙に納得するロメリックとエミルだった…。



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