表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/210

それは浪漫というヤツ。

 グレンさん達に誘われてお昼を一緒に食べる事になった。その席で、リベルトの紹介をする。


「リベルトは元軍人で、うちの相談役と情報収集などをして貰っているんですよ」

「先日、ホワイトさんのファミリーに入りましたリベルト・グランテと申します。以後、よろしくお願いします」

「ワシはボルド・ベインじゃ。隣が相棒のフィルだ」

「フィル・ランバートだ。よろしく」

「そこにいる一番うるさいヤツがグレン、隣がエルンとルーシュだ」


 続くボルドさんの紹介に、お互いが挨拶を交わす。いつもなら先陣を切って挨拶をしそうなグレンさんは、フラムが気に入ったのか、ほっぺをツンツンしている。


「ホワイト、お前の子供可愛いな(笑)」


 ほっぺをツンツンするとキャッキャッとフラムが喜ぶので、変顔をして見せたりしていたw


「…ホワイト。お前、前会った時と随分、雰囲気が変わったな…」


 フィルさんの言葉に、隣のボルドさんも頷く。


「目付きも表情も、随分と変わっておるな」

「…まぁ、色々ありましてね…w」

「妖精の森のカイザーセンチピード退治、シャリノアのキメラモンスター、更にスラティゴの狼の事件。いずれもお主が解決したらしいな」


 ボルドさんに聞かれた俺は苦笑いを見せつつ答える。


「行く先行く先、変なヤツばっかりに会うんですよw」

「ホワイト、お前呪われてんじゃねーか(笑)?」


 笑うグレンさんの隣で、フィルさんとボルドさんに話を聞かせてくれと言われたので軽く話をした。


 その間、ルーシュさんはフラムを膝の上に乗せて、両側にティーちゃんとシーちゃんを座らせると、それぞれにご飯を食べさせていた。


「ホワイトさんはこれからどうするんだ?」


 エルンさんに聞かれたので、王都に呼び出されているので、そっちに向かうと話した。


「何で王都に呼び出されたんだ?」


 グレンさんに聞かれたので、泥酔事件の事を簡単に話した。案の定、皆に笑われたw


 お昼の後、(しばら)く抑えでクロナシェルに滞在すると言うグレンさんPTに見送られて俺達は再び王都へ向かった。



 その頃、エニルディン北部では王国軍と同盟国のスパルタ―ク、帝国軍が対峙していた。スパルタ―クはエニルディン王国の北にある小さな鉱山の国である。エニルディン王とスパルタ―ク王が友人である事から同盟を結んでいた。


 今回の防衛戦に対して、スパルタ―クは精鋭二千人を連れて参戦した。


 両軍が見守る中、エニルディン王国本部ギルド所属のSランクハンター、ランディ・ストラット率いるPTが前線に出て暴れていた。


 対する帝国軍は玄星老将クロゥ・ゲンブリッツ麾下(きか)の北軍一師団三万を筆頭星騎将、磨羯(まかつ)のレオル・カプリゴートが率いていた。


 参軍として二人の星騎将である宝瓶(ほうへい)のセリア・アクエル、双魚(そうぎょ)のフィッツ・ビスケスも従軍していた。


 帝国一師団をものともせずランディのPTメンバーが帝国兵を蹂躙していた。


 PTリーダーのランディはバスタードソードを抱え、敵軍の中をランダムで瞬間移動し、突然現れては敵軍を薙いでいく。


 その両隣で、広く左右に展開しているのが体長二メートル越えの剛腕格闘家の男と密集した敵を双剣で瞬殺するアサシンの男だ。


 そこから少し離れた後方には、初撃で仕事を終えた氷結魔導師の男と回復魔導師の女が戦況を眺めていた。


 対する帝国星騎将のレオル達三人も、小高い丘に敷いた本陣から戦況を見ていた。


「全く、どうなってる!?情報と違うぞ!?ラチェスタにいるのはジョニーではなかったのか!?諜報部のヤツらは何をやってたんだ!!」


 怒りを露にするレオル。前回の北部戦線ではジョニー・ハートバーンたった一人に、二個師団が壊滅されられている。だからこそ、今回は対ジョニーとしてこの星騎将三人が軍を率いる事になったのだ。


 しかし対陣してみればジョニーの姿はなく、王国ギルドのSランクハンター、ランディが率いるPTが真っ先に出て来た。


 戦況を眺めていたセリアが言う。


「…対ジョニーで編成されたわたし達ではあのPTとは相性が合いませぬ。ましてや一般兵では全く歯が立ちませんよ。一旦兵を引くべきでは?クロゥ様より預かった兵をこれ以上無駄死にさせるのはどうかと思いますが…?」


 セリアの提言にフィッツが待ったを掛ける。


「今、軍を引いたら相手の思う壺だぞ?ラチェスタの軍と同盟国スパルタ―ク兵が一気に雪崩れ込んでくるだろ?」

「…その通りだ。まだ撤退は出来ない。フィッツ、ここから遠隔鑑定を頼む…」

「…あぁ、もうやってるよ。あのPTは全員能力者だ…。王国はアイツらを前に出して俺達の軍を切り崩し、突撃してくるつもりだろうな…」


 フィッツの言葉に、再びセリアが提言する。


「ではこちらも能力者で対抗しては?召喚能力者をヤツらにぶつけている間に兵を立て直しましょう…」


 無言で暫く考えるレオル。


「…よし。召喚能力者をここへ。ヤツらでダメなら最悪、俺達が出る必要がある。早急に早馬を出し、クロゥ様に伝達だ。情報が謝っている事と王国PTの脅威を伝えろ…。すぐに俺達も戦闘準備だ。二人ともぬかるなよ?」

「あいよ」

「解かっています」


 三人が見下ろす戦場では、エニルディン王国のSランクPTが既に帝国兵の一角を撃破していた。



 エニルディン王国、王都エニルドでは帝国軍の同時侵攻に早急に能力者とPTの配置換えを行った。原因は王国最強能力者と言われている(すめらぎ) 逸鉄(いってつ)の不在である。


 王国のフリーSランクハンターである皇 逸鉄はこの星の南半球の調査に行くと言って出たままだった。


「…逸鉄様は現在、赤道付近の大洋を南に向かって泳いでおります。今すぐに戻ってくるのは困難な状況かと…」


 影からの報告に、王は目を閉じて俯き呟く。


「…全く、アイツは何をやっているのだ…。転移要員はどうした?呼び戻せぬのか…?」

「転移先が大洋上で不明確な上、海の上とあっては転移能力者でも難しいようです…」


 仕方なく、今回王都防衛に就くはずだったランディ・ストラットのPTをラチェスタに送った。代わりにジョニーを王都に呼び戻す。


 国境線に迫っているのが、白星老将ハク・タイガとの情報を得たからだ。ハク・タイガは元々東部戦線で軍を率いて騎馬帝国『憤奴』を恐れさせた男である。


 元々西軍はトウガが率いていたが武力のみの制圧を良しとせず、調略と工作による消極策で二度の敗北を招いたとして皇帝により配置換えをされた。


 エニルディン王国ではその報を受けて、対ジョニーの策を取っていた帝国北軍にランディPTをぶつけて、東部に侵攻して来たハク・タイガにジョニーをぶつける事にした。


 同時に動き出した南部戦線には、移動中のフリーSランクハンターのホワイトを送り込み、その後グレン・ブレイクスPTを王都防衛から移動させた。


 南部戦線は、ホワイトが従魔を呼び出し、早々にサウスサウザンド本陣を壊滅させたとの報が『影』によりもたらされた。


 王が安心したのも束の間、今度は王都南にある街、『ルアンブール』に朱星老将スジャーク麾下の一旅団一万二千人が迫りつつあった。


 そして王都から、移動中のホワイトに再び緊急伝書が送られた。



 俺達は一度、ウェルフォード村に戻り、王都に向かう事にした。しかし戻ってすぐにギルド職員から緊急伝書を渡された。


「…ホワイトさん。再び緊急伝書が届いております…」


 申し訳なさそうに伝書を差し出すギルド職員。俺はそれを受け取ると、開いて緊急伝書に目を通した。


「…またかよ…」


 そう言いかけて、俺は口を(つぐ)んだ。伝書を持って来たギルド職員に申し訳ないからね。


 緊急伝書には、『王都の南、ルアンブールの防衛に就け』と書き記されていた。

俺は皆に伝書の内容を話す。


「…今度は王都南にある街、ルアンブールに帝国軍が迫っているらしい。そこの防衛へ向かってくれって…」


 俺の話にリベルトがすぐに反応した。


「ルアンブールが落ちるとまずいですね。王国は喉元に剣を突き付けられた状態になります。更に西に進軍されるとウェルフォード村とクロナシェルが危険になります…」


 リベルトの話を聞いた俺は待っていたギルド職員にすぐにルアンブールに向かう旨の伝書を王都に返信して貰う。


 という事で、俺達はウェルフォード村から山の南側を通り、ルアンブールへと向かう事になった。


 すぐに転移で向かおうとした俺をティーちゃんが止める。


「ちょっと待つんじゃ。転移で行くよりも面白いモノのがあるんじゃ」

「面白いモノって…何w?」


 そこからティーちゃんは密談に切り替えた。


≪もう完成してるんじゃ。すぐにわたしとアンソニーで世界樹の工房に取りに行くぞ?≫


 そう言われたので、リベルト、シーちゃん、リーちゃんにその場で待って貰い、俺とフラム、ティーちゃんで世界樹へと転移で飛んだ。


 世界樹の中層階にある工房区で完成していたソレを見て俺は驚いた。


「…はっw!?」


 俺の目の前に、巨大な三輪バギーがあった…。


「…ティーちゃんコレ、まさかアレを元にして造ったとか…w?」

「そうじゃ。(いさむ)爺ちゃんに貰った三輪車を元にしておるんじゃ」


 …やっぱりそうか。三輪車を見てこの世界で三輪バギーを造ったのか。大きさとしてはジープとかハマーをもう一回り大きくした感じだ。


 前方に飛び出した、大きなオフロードタイヤ。丸目一灯のライト。運転席はアメリカンバイクのテイストで、両側足元にステップボードが付いており、その後ろ両側にサイドカーが付いていた。


 運転席後ろのタンデムシートは一段高く広い。その両側にもサイドカーが付いており、その両側後ろに大きな二つのオフロードタイヤがあった。


 車体全体は赤のメタリックカラーで黄色の炎のデザインがペイントされていて、全席に雨風避けのアーチ型ウインドシールドが出て来るように設計されていた。


 ちなみに四つのサイドカーは分離可能で、それぞれミニバギーに変形出来るそうだ。


 恐るべし妖精族w


「せっかく造ったんじゃから乗ってみんとダメじゃろ?さ、これを持って皆の所に戻るからの」

「いや、ティーちゃん戻るからのって言われてもコレどうやって運ぶんよw?」

「『神幻門』があるじゃろ?それに触れてさっきの所に戻るんじゃ!!」


 …あぁ、その方法があったなwしかしこの世界でこんなの乗り回して大丈夫かw?全宇宙ナントカ協定には引っ掛らないのかなw?


 バギーを見て目をキラキラせているフラムと共に、俺はバギーに触れて神幻門を発動させた。



「…ホワイトさんッ!!これはッ…!?」


 …うん、そういう反応になるよねw


「…この世界でこんなモノ見る日が来ようとは…。まさか妖精達がコレを造ったのですか(笑)?」

「…その通りですw」


 中々いいリアクションをしてくれるリベルト。そりゃ俺だってさっきこれ見た時そう思ったもんねw


「全てこの世界にある素材で造られておるんじゃ。作りは単純で魔素をエネルギーとして駆動モーターを動かして車軸に伝えるという構造じゃな。魔素を使っておるから完全クリーンエネルギーのエコ三輪バギーじゃ」

「カッコいい仕上がりでしゅ。早く乗って見たいでしゅ!!」

「あぅぁっ、あぅ~っ(はやく、のる~っ)」


 皆に急かされて、俺はすぐに運転席に跨る。フラムは左のサイドカーに乗せて、リベルトには右に乗って貰う。後方両側のサイドカーにティーちゃんとシーちゃんが乗り込んだ。


「これで戦場に行けばインパクトは抜群じゃ!!もう敵はルアンブールに迫っておるからの!!さあ、出発じゃっ!!」


 俺はモーターを始動させると、左のクラッチを少し緩めてアクセルを捻った。瞬間、巨大バギーは一気に加速して土埃を上げながら東へ爆進した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ