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今日から俺…はw?

 俺は攻撃してくるボナシスに対してすぐに体勢を入れ変えると、その手首を殴って弾く。体勢の崩れたボナシスの首を掴むと『サンダークラップ』を発動させた。


 その瞬間、予想外の事が起きた。サンダークラップが暴発したのだ。


 俺が掴んでいたボナシスは、一度も爆発スキルを使う事無く、俺の暴発サンダークラップによって感電し、黒焦げになっていた。


 …いや、コレはもうサンダークラップじゃなくなってる。完全に雷撃の暴走だ…。これも神様の天罰を喰らってしまった副産物…というか影響なのか?神様はこうなる事を知ってたのか…?


 しかしあの時の状況を考えると、そんな感じではなかった…。これはもしかしたら神様もこうなる事を予想してなかったかもしれんな…。俺のアバターが天罰を喰らう事によってパワーアップしていくなんて創った神様本人も想定外だろう…。


 災い転じて福と成す…と言って良いのかどうなのか…。まぁ、この現象については黙っておいた方が良いだろう。この銀河で危険視されるとまたナントカ探検隊…じゃなくて警備隊だったかに目を付けられかねない。


 …取り敢えずボナシスのスキルを抜いておくか。そんな事を考えている俺の前で男達が全員、その場で片膝を付いて頭を下げた。


「我ら一同、これより新たなボスに帰順する!!アンソニー・ホワイト。今日からこのエリアのボスはアンタだ!!」

「………はw?」


 先頭の男が声を上げると、全員が改めて深々と頭を下げた。



「…ボスって…何やるんだ?」


 俺は黒焦げボナシスからスキル『デトネイトスワップ』を抜き取りつつ、男達に聞いた。


「エリアの拡大に各勢力が(しのぎ)を削ってるんだ。その先頭に立って戦ったり、週一の配給の争奪戦でより多くの食料を奪い取って来るとかだな…」

「ふーん」


 俺は話を聞きつつ、スキルの抽出が終わったのでボナシスを放す。その場にドサリと倒れるボナシス。その時、俺の身体が光り、お馴染みのインフォメーションが頭の中で響いた。


≪スキル泥棒がレベルアップしました。新たにスキルを合成する事が可能になります≫


 スキルを確認すると『スキル泥棒+3』となっていた。スキルの分解、スキルの遠隔抽出、そして今度はスキルの合成か…。


 スキル欄を見ていると、サンダークラップとデトネイトスワップが青く点滅していた。これは…この二つが合成可能って事なのか…?


 俺は試しにスキル欄にある『スキル合成』を開く。空欄にサンダークラップとデトネイトスワップを入れて合成ボタンを押した。すると光を放ちつつ、スキル同士が重なり合う。そして一際強く輝いた後、新たなスキルが出来た。


≪スキルの合成に成功。新たに『サンダーライオット』を獲得しました≫


 スキルの合成に成功したのは良いが、合成すると元のスキルは消えるようだ。サンダークラップもデトネイトスワップも無くなっていた…。


 サンダークラップが無いと、スキルを抜くときに気絶させられない。次からは闘い方を変えないとダメか…。そんな事を考えていると、男達がアジトに案内するから来てくれと言った。


「ちょっと待ってくれ…」


 そう言いつつ、俺はフラムを下ろすと龍神弓を出す。


 『闘気版、狂襲乱射』で岩山に穴を空けると、そこに完全に息絶えたボナシスを入れて埋めておいた。そして男達の案内でアジトに行こうとした時、足元に落ちていたネックレスに気が付いた。


「…これは?」

「あぁ、それはボナシス姐さんが転生後にどこぞの大商人の娘を爆殺して手に入れたって言ってたな…」


 …ふむ。これが免罪符になるか分からなかったが、俺はネックレスを拾ってアイテムボックスに放り込んでおいた。


 …しかし何と言うか…アジトだと言う大きな洞窟に来てみたはいいが…。コイツら何も持ってなかった…。雨風は凌げるが焚火の跡と藁が敷いてあるだけ。まさかこれが寝床だとか言わないよな…?


「その奥に姐さんが使ってたスペースがある」


 そう言われて入ったのは小部屋サイズの空間だった。ここだけ毛皮が敷いてあり、その奥には保管庫と思われる大きな木箱があった。俺は迷う事無くそれを開けてみる。中にはかなりの保存食が収納されていた。


 ボナシスのヤツ、一人だけ貯め込んでいたな…。俺はその中身を取り出す。


「これはお前らで分けろ。喧嘩するなよ?全員に行き渡る様にするんだ…」


 俺の言葉に、声を上げて沸く男達。俺はボナシスの小部屋から出ると改めて洞窟の中を見渡す。悪くはないが、とても快適とは言えない場所だ。こんな場所でフラムを生活させるのはちょっと、と言うか全然良くない。


 …さて、どうするか…。俺は考えながら眠そうにしているフラムをじっと見る。そう言えばフラムは起きるのは早いが、朝方に一眠りするんだったな…。


 フラムを見ながら、そんな事を考えていた俺は、ふっとある事に気が付いた。…もしかしてフラムが来てくれたのはラッキーだったかもしれない。俺はフラムのスキル欄を視る。俺は幾つかのスキルを停止させられているがフラムはそうじゃない。


 フラムのスキル欄にある『神幻門』を見て、俺は思わずニヤけてしまった。もしかしたら、いやもしかせんでもこれは快適監獄生活が出来るかもしれんw


 そう思った俺は、まず慎重に考えを巡らせた。


 ここから転移で地球に戻るなら、まずリーちゃんを巻き込むのが最優先だろう。神様やティーちゃん、シーちゃんにバラされても困るからな。


 プリン、チョコフレーク、のり巻き煎餅辺りで釣るか…。という事で俺はリーちゃんに話を持ち掛けた。


「リーちゃん、チョイと相談があるんだけど…」

「…何よ?」


 そう切り出した俺は話を続ける。


「リーちゃんはさぁ、ティーちゃんとシーちゃんがいない間に思う存分、おやつ食べたいって思わない?」

「…そりゃ思いっ切り食べたいわよ。でもここにはおやつなんてある訳ないでしょ?」


 その言葉をうんうんと聞きながら、俺はニヤッと笑う。


「そうなんだよ。ここにはないよね、ここにはね。だからフラムの為にも色々取りに行こうかな~って考えてるんだけど…」

「…は?何言ってんの?神幻門は停止されてるでしょ?どうやって取りに…」


 そう言いかけたリーちゃんはフラムを見て気が付いたようだ。


「…まさか…?」

「そう!!そのまさかだよw!!フラムの『神幻門』を借りようかと思ってるんだ」

「…それやったらまた神様に叱られるんじゃない?」

「そうだね。誰かさんが言わなければね」


 そう言いつつ、俺はリーちゃんを見る。リーちゃんはフラムを見て暫く考えた後、決断したようだ。


「…解った。今回は黙っとくけどフラムの為だからね?」


 そう言いつつ、リーちゃんが上を指差す。


「まずは監視衛星基地の看守さん達も巻き込まないと転移の瞬間に通報されるよ?それから…」


 リーちゃんが続けて注意事項を説明してくれた。


「このシニスターは時間の経過速度が違うから地球に戻ってのんびりしてると時間が経過してすぐバレるからね?まずは看守さん達を取り込む為の賄賂と持って来るものを事前に決めておいた方がいいかな…」


 俺はうんうんと頷きながら、賄賂って言うなよな、そう言うのは『袖の下』って言うんだよ!!と心の中で叫びつつ、何を持って来るか考える。


 俺はまず監視衛星基地の看守さん達に渡す『袖の下』として、家にストックしてあるウィスキーとブランデー、ワインを数本、そしておつまみとして裂きイカ、塩せんべい、サラミ、チータラとバタピー、ついでにPS〇とゲームソフトをリーちゃんに持って来て貰う事にした。



「…おっと、そのボタンは押さないで少し話を来いて欲しいんだ」


 俺は通報ボタンを押そうとしていた看守を止める。そしてリーちゃんに持って来て貰ったウィスキー、ブランデー、ワイン、裂きイカ、塩せんべい、サラミ、チータラ、バタピーを出して戸惑う看守達に渡した。


「これはほんのご挨拶です…」


 そう言いつつ、抱っこしたフラムを見て俺は話を始める。


「まだ小さいんですがこの子は転移スキルを持ってましてね。俺の刑期が終わるまでこの子を家に戻したいんですが、すぐ俺に付いて来ちゃうんです。それで一緒にこの星で刑期が終わるまで過ごす事にしたんですが何分まだまだ小さい子なのでしっかりとしたものを食べさせてやりたいんですよ…」


 そう言いつつ、フラムの頭を撫でてやる。


「…そこでチョイとだけ転移サインを、見落とした…という事にして貰えませんか…?」


 そして懐からPS〇とソフト数本を取り出す。


「何度か家に戻って子供の物などを色々と取ってきたいので…。あ、コレは暇な時に遊んで下さいな…」


 俺はPS〇とソフトを看守の一人に渡す。


「こちらにも色々と持ってまいりますので、チョイとだけ見逃してはいただけませんか?」


 俺の言葉に、看守長が立ち上がる。そして咳払いをした後、他の者達を見回して各人と意志を確認する。


「…解った。俺達もこんな辺境の星の監視任務で退屈なんだ。こういう物を色々と持って来て貰うとありがたい。小さな子供の事もあるから、今回は見なかった事にするよ…」


 そう言いつつ、俺は看守長と握手をする。各人とも挨拶をして俺達はそこから地球に飛んだ。


 リーちゃんによると、そもそもこのシニスターはこの銀河の中でもかなりの辺境にあるらしい。そして監視と言う退屈な業務である。すき好んで赴任してくるヤツはいないそうだ。だから俺達の賄賂…いやサプライズを看守達は喜んでいた。

 

 俺達は何とか、監視衛星の看守達を丸め込む事に成功した。



 俺は、リーちゃんフラムと一緒に地球に戻ると、リストアップした物をどんどんアイテムボックスに放り込んでいく。普段から買い込んでいる食料、おやつなどは時間停止機能の付いているリーちゃんの『妖精の鞄』で運んで貰う。


 俺は主に生活で使う物をアイテムボックスで運ぶ事にした。丈夫で広いレジャーシート、ソファーベッド、折り畳みマットレス、毛布などだ。


 風呂は、ばあちゃんが使っていた釜風呂の釜と底板を持って行く。シニスターは石だけはゴロゴロとそこら中に転がっていたのでそれを組み上げて風呂を作るつもりだ。


 最後に買い込んで冷蔵庫に残っていたビールとサワーも看守に渡す為に、リーちゃんに全部持って行って貰う。どうせ三ヵ月の間は俺は酒禁止されて吞めないからね。


 そして俺達は再び、監視衛星基地へ転移で飛ぶと、ありったけの愛…じゃなくて賄賂…いや、サプライズを置いてシニスターへと戻った。



 一時間程前のシニスター。


 その頃、男達は困惑していた。目の前の新ボスが宙に向かって会話?をしたかと思うと暫くして突然、子供と共に消えたのだ。


 戻ってくるのを待っていたが一向に戻ってくる様子がない。仕方ないのでいつも通り、エリア内の探索に出掛けた。


 男達は配給以外は、エリア内の数少ない食べる事の出来る野草などを集めていた。それとは別に海岸線から釣りをする男達もいた。


 貝類、海藻、運が良いと魚が採れた。そうして今まで食い繋いで来たのだ。重犯罪を犯してきた者達も、流石にこの過酷な環境では苦汁を嘗めた。


 探索して一時間程、漸く洞窟に戻ってきた男達の前に、再びボスと子供が現れた。


「…おぅ、ちょっと家に戻って来たわ」


 そう言う新ボスの前で男達は、驚いて呆然としていた…。

 合成上位スキルは、同時発動で発現したスキルについては元のスキルも残り、スキル合成を使った場合は元のスキルは消える、と言う設定にしています。

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