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それは屁理屈と言うモノ。

 反論を試みた俺の脳天に、再び『神雷』が炸裂した。


「ギャーッスッ!!」


 膝を付いたままの俺の身体に、強烈な雷撃が迸る。俺は膝を付いている事すらきつくなり、両手を付いて項垂れ、意識を必死に繋ぎ止めていた。


 しかし、この時の体験が後に自らの娘の命を救う事になるとは、俺自身思ってもいなかった。


「…ゴッド、余りやり過ぎるとこの者が死んでしまうのでは…?」


 ゼルクの言葉に、神様は無言で首を横に振る。


「こやつのアバターはワシ自らがこの手で創り上げたのじゃ。神の子と言っても良い。ちょっとやそっとの攻撃では死なぬよ…」


 その言葉に、ゼルクは苦笑いを隠せない。しかしその時、俺の身体が数回、光を放つ。そしていつものインフォメーションが流れた。


≪雷撃耐性、獲得しました≫

≪帯電体質、獲得しました≫

≪流電体質、獲得しました≫


「…この状況に於いて尚、スキルを発現させるとは…」


 ゼルクは目の前で、両手を付いて項垂れる俺を見て驚いていた。


「アンソニーよ、これ以上の反論は自らの立場を悪くするだけじゃ。素直に罪を認めて反省するんじゃ」

「そーでしゅ、アンソニーを連れて来たシー達の立場もあるでしゅ。反省するでしゅ!!」

「神様が仲裁してくれなかったら、全宇宙連邦裁判で有罪確定、何年も『時間牢獄』行きだったんだからね。しっかり反省してよ?」


 ティーちゃんとシーちゃん、リーちゃんにそう言われたが、俺は反論どころか声も出せずにいた。


「ではホワイトよ、これで最後じゃ。ワシからの罰を言い渡す。今日を起点に三ヵ月、酒は禁止、そして監獄惑星シニスターへの流罪を申し渡す!!」

「…そ、そんな…ぉ、俺には…地球での、し、仕事が…」


 俺は何とか必死に声を搾り出す。しかし、同時に俺の周りに魔法陣が現れた。魔法陣はグルグルと回転を始める。


「惑星シニスターは時間の流れが速い。向こうの一年はこちらの一日となる。早ければすぐに戻れる。その点は気にするな。そして罰としてミッションを与える事とする…」


 更に、魔法陣の回転が早くなっていく中、神様が続けて判決内容を話す。


「シニスターにいる五人の極悪犯罪人を倒し、そやつらから免罪符となるモノを奪い取ってくるのじゃ!!尚、『神幻門』、『ゾーン・エクストリーム』、『虚』、『イミテーションミラー』は停止とする。良いな?理解したなら即刻、刑を執行する!!」


 神様の言葉と同時に、魔法陣が光を放ち高速回転する。


「それでは健闘を祈る。自分のやった事を充分に反省するのじゃッ!!」


 俺の身体が大きな光に包まれて行く。しかしその瞬間、俺の目の前に光の扉が開いた。そしてその光の中から、フラムが笑顔いっぱいで飛び出してきた。


「あぅぁーっ、あぅあぅーっ!!(パパーっ、きたよーっ!!) 」

「…フラム…危険だ…来たら、ダメだ…」


 しかしフラムは、にこにこ笑顔でガシッと俺にしがみ付いた。


 神様、ティーちゃんやシーちゃん、リーちゃんが驚きで眼を開くその前で、俺とフラムは転移魔方陣で監獄惑星シニスターへと送還された。


 神様は慌てて妖精達を見る。


「妖精達よ、先程の小さい子は…光の扉を開いて飛び出してきたのはホワイトの子供か!?」


 神様の驚きの言葉に、二人が頷く。


「…そうなんじゃ、さっきのはアンソニーの子供でフラムと言うんじゃ…」

「花の精霊フローレンスが、アンソニーの身体の一部を使って生み出したんでしゅ…」

「…なんと…!!」


 神様が驚いたのは、子供がいたという事もそうだが、幼児よりも小さな子が、転移スキルを持ち、天界まで来たという事だ。神様の驚きに、ティーアが答える。

 

「神様の創ったアバターの細胞を使っておるから、その細胞の記憶を読み込んでいるらしいんじゃ。使えるかどうかは別じゃがアンソニーの持つ主要なスキルは、ほぼ網羅していると思う…」

「…そうか。しかしまさかあのような小さな子が天界までの扉を開くとは…。念が強くなければ出来ぬ芸当じゃ…」


 そう言いつつ、神様は考え込んだ後、口を開く。


「妖精リーアよ、万が一を防ぐ為にもホワイト達に付いてやってくれんか?大丈夫だとは思うがシニスターではレーダーマップが使えぬ。ナビゲートも兼ねて案内してやって欲しい…」


 ティーアのポケットの中でうとうとしていたリーアが、神様の言葉にハッと目を覚ました。


「…んー、そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますよ…?」


 眠い目を擦りながら、答えるリーア。


「それでも行ってやってくれんか?あの星は子供にとってはかなりきついかもしれぬからのぅ…」

「…解りました。ではすぐ行ってきます…」

「うむ。頼んだぞ?」


 神様の言葉の後、リーアはすぐに転移でシニスターへと向かった。



 ―その頃。ブレーリン北東部、レクスター大農場。


 フラムが消えて、クレアはまたかと、がっくりしていた。任されたのに、こう何度も消えられては立場が無かった。


「…もしやフラムちゃんは…ホワイトさんの所へ転移で飛んだのですか?」


 ロメリックの言葉にクレアは眉間を押さえつつ、無言で頷いていた。


「…まぁ、主がいればフラムは大丈夫だろう。ティーとシーも同じ場所にいるので危険はない…」


 そう言いつつ、クレアはエミルを見て話をする。


「…取り敢えず、今はエミルの処遇を考えてやって下され。主がこの場にいればそう言うでしょうからな…」


 クレアの言葉に皆が頷き、エミルを見る。


「…解りました。投降します」


 これ以上、この王国に対して敵対的な気持ちはなかったが、シャリノアの件、そして王国のハンター(ホワイト)と戦っているので亡命ではなく、投降する事にした。


 不安そうな憂子の前で、両手を上げるエミル。気絶したままだった末倉はブレーリン警備兵に拘束されて連れて行かれた。


 エミルの投降に、テンダー卿、ロメリックが頷く。


「まずは聴取からになりますが…。エミルのお母さんはどうしますか?一緒に来て貰っても構いませんよ…?」


 テンダー卿の言葉に、不安そうにエミルを見る憂子。ホワイトに見せられた記憶によってある程度、(エミル)が何をしていたか解ったが、この世界の事や今の状況が良く解らず困惑していた。


「…あの、娘は…絵未は何か危険な事を…したのでしょうか…?」


 憂子の不安そうな言葉に、ロメリックが優しく説明する。


「娘さんから少し、お話を聞くだけですよ?仲間の方もギルドにいますので、そちらで話を聞かせて貰う事になります。お母さんも一緒にどうでしょうか?」


 その言葉に、憂子はエミルを見る。


「…母さん、色々話もあるから一緒に来て」


 迷いのない真直ぐなエミルの言葉に、憂子が頷く。そしてテンダー卿、ロメリックと皆がブレーリンに戻ろうとした時、ウィルザーがそれを止める。


「…少し待ってくれ。こちらにいる二人がお母さんに少し話を聞きたいそうなんだ…」


 そう言いつつ、ウィルザーが時空警備隊員二人を連れて来る。皆の表情に、一瞬不安が現れた。


「…そう構えないで頂きたい。我々の身分は事情があって詳しくは話せませんが、お母さんの方に一つだけ、確認を取りたい事があるのです」


 その言葉に、皆の不安な表情が少し和らぐ。


「…なんでしょうか…?」


 憂子に問われて、上司の男が確認を取る。


「あなたがここに連れて来られた時に、あの男に『ここに来る事に同意したか?』という事を確認したいのです」


 憂子はすぐに、あの時の事を思い出す。探偵事務所の者だと名乗った男に娘の話を持ち出された時は、半信半疑だった。しかし、あの男はわたしに娘の記憶を見せてくれた。まだ死んでいない、まだどこかで生きている、という事を。


 そして男は、わたしにどうするかを問い、手を差し伸べた。娘に会いたい一心で、わたしはその手を掴んだのだ。

 憂子は、静かに頷く。


「…はい。確かにどうするかを問われ、同意しました…」

「確かに、間違いはありませんね…?」


 再度の確認に、憂子は強く頷いた。


「…解りました。確認は以上です。長官に報告がありますので、わたし達はこれで失礼します」


 そう言うと、男二人は帽子を取り、軽く礼をしてから転移で消えた。


「足を止めさせて済まなかったな。取り敢えず、皆でブレーリンに戻ろう」


 ウィルザーの言葉に皆、歩きつつ話をする。


「…ホワイトさんはどうしますか?消えたまま行方知れずですが…」


 ブラントの言葉に、ロメリックが答える。


「ホワイトさんは、とても偉い方に呼び出されて強制転移させられたようです。娘さん二人が確認に向かってますので大丈夫かと…」

「…何だ?そのとても偉い方と言うのは…?」


 ウィルザーの疑問に再びロメリックが答えた。


「どうやらホワイトさんへ依頼を出している方の様です。大商人か、もしくは大貴族の方か…」

「…そうか。取り敢えず今回、アイツが騒ぎを起こしたので王都に伝書を飛ばし、本部ギルドからも罰を出して貰うか?」


 笑いながら言うウィルザーに、テンダー卿も同意する。


「…そうですな。王国のハンターたるもの、酒に酔って暴れるなどという行為は恥ずべき事です」

「ではベルファから、一ヵ月の間無給で依頼を受けさせますかな…?」


 禅師が、笑いながら提案をする。


「いやいや、待て。もっと面白い罰を皆で考えるんだ。ありきたりな罰など面白くないからな…」


 ウィルザーの言葉に皆で話をしつつ、和やかな雰囲気でブレーリンへと向かう。そんな中、クレアはテンションが下がったまま、皆の後ろを付いて歩いていた。

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