復讐。
俺はエミルをイジメていたやつらを連れて来る為に、スキル『神幻門』で地球に向かう。
光の中に飛び込んだ俺は、その中を一気に駆け抜けていく。流石に七銀河超えるので少し時間がいるようだ。俺はメ〇リカのプリン〇チャーミングを歌いつつ、気分良くどんどん光の先へと進んでいく。
俺はメタル世代のおっさんなので酔うと頭の中を昔のメタルミュージックが流れてくるのだ。最近ではネットでMVが見れるのでおっさん嬉しい限りですw
リーちゃんの超長距離高位次元転移と俺の神幻門がどう違うのかは解らないが、まぁ要するに地球に転移出来ればどっちでもいいんだよねw
迷わず光を抜けて行くと急に視界が開ける。俺の目の前に、青い星が現れた。
「よっしゃッ、転移成功だ!!」
やはり地球は青かったwと言いたい所だったが、外から見るとぼやけて空気が澱んで見えた。
それは大気のせいだと思う。俺が子供だった時から比べれば空気はかなり濁っているからね。昔は空気が澄んでいて、満天の星空が見えたもんだが…。
俺はそのまま神幻門で地球に突入していく。そして光を抜けた先は、S谷だった。目の前を歩く女が三人。俺はすぐに追い掛け、肩を掴む。
「オイッ、何だよッ?触るんじゃねぇよ、オッサン!!」
口の悪いヤツだな…。エミルの記憶で見た顔と一致した。コイツらだな。まずは一人づつ行くか。
「黙ってろ、ク○○キ。触ってないと転移出来ねぇんだよ。いいからお前、ちょっと来い!!」
「オッサン、触んなって!!ケーサツ呼ぶ…」
瞬間、俺は再び神幻門を発動した。そしてエミルの待つ星へと転移した。俺は急いで光の中を抜けて行く。
早くしないと俺のスキルゲージがどれだけ持つか分からないからな…。まぁ、リーちゃんを連れて来たのは俺のスキルゲージが切れても、リーちゃんがいれば何とかなると思ったからだ。
そして光を抜ける。目の前でシーちゃんが叫んでいるのが見えた。
「…これは!!…戻ってくるでしゅよ!!」
俺は一人の女を連れて戻ってきた。
「エミル、戻って来たぞ!!思いっ切り過去に決着をつけてくれッ!!」
「何言ってんだオッサン!!朝から変なとこ連れてきやがって、って…アレ?」
俺に抗議していた女が、エミルを見て反応した。
「…アレアレ?アンタッ!!もしかして…やっぱり絵未じゃんッ!!コスプレしてるから気付かなかったけど、なんだ、アンタ生きてんじゃん!!」
「…まさか…本当に…つ、連れて来るなんて…り、リオ…」
エミルはチラッとリオという女を見ると、すぐに目を逸らした。顔を蒼褪めさせて俯いている。身体が震えていた。
こりゃ、武者震い…じゃなさそうだな…。
「アンタさぁ、屋上に遺書と上履きあったから飛び降りたと思ってたけど…よく考えたらあの時、アンタのグチャグチャに潰れた死体なかったもんね、キャハハッ…」
リオはエミルに近づくと、その顔を覗き込む。
「…オイッ、絵未ッ、久しぶりなんだからさぁ、なんか言えよ?」
…コイツ、マジでガラの悪い女だな…。エミルに絡むリオを見て、ロメリックが近づいてくる。
「ホワイトさん、この様なやり方はいい方法とは思えません。心の傷というものは消えるまで時間が掛かります。今すぐに中止して下さい!!」
「ロメリックの言う通りじゃ。この方法は荒療治過ぎる。しかも他の星から人を連れて来てはマズイ事になるんじゃ…」
ロメリックに続き、ティーちゃんからもダメ出しされた。そんな二人に俺は反論する。
「そもそもの元凶と直接対峙して乗り越えないとトラウマなんて直らないだろ?ていうかトラウマって直るもんなのかどうか知らんけど…」
俺が反論している前で、リオが周りを見回す。
「…何々?この集まりは?なんかの撮影なの?それともコスプレパーティー?」
そして俺に向き直り声を上げる。
「オイ、オッサン!!早く元に戻せよ?ついでに絵未も連れて行くから!!絵未、アンタもわたしと戻るっしょ?な?」
リオの誘いに、エミルは顔を蒼褪めさせて俯いたまま、身体を震わせていた。
「…オイッ、絵未ッ!!お前いい加減なんか喋れよッ!!」
リオは再び、俯いたエミルを下から覗き込むとその頭を上からはたく。
「オイッ、久しぶりなんだから黙ってねーでなんか言えよな?」
そう言いつつ、無抵抗のエミルの頭を何度も叩く。徐々に叩く力が強くなっていく。それを見てロメリックが動いた。
しかし、ロメリックがリオの腕を掴む前に、俺は神速で接近する。そしてそのままリオにドンッと膝と腰で当たり、突き飛ばした。
「…おっとぉ、こりゃすまんね。ちょっと強く当たり過ぎたかな、アハハッ!!」
それを見たロメリックが驚きつつも、苦い顔で俺に注意する。
「ホワイトさん、相手は女性ですよ?何があっても暴力はいけません」
「いや、これ暴力じゃないからw躾よ、躾w犬、躾けるのと同じなんだよ。ちゃんとダメなものはダメって態度で示さないと!!ちなみにコレ、ブロッキングって言うんだよねw」
俺の言葉に、クレア、ウィルザーを除く皆が顔を顰めた。
「…ホワイト殿、今の貴方は普通の状態ではない。申し訳ないが酒が身体から抜けるまで一時的に拘束させて貰います!!」
そう言って飛び出そうとしたテンダー卿を、ウィルザーが止める。
「…テンダー、やめろ!!ロメリックが待機しているのだ…」
そう言われて渋々下がるテンダー卿。そうこうしていると、リオが立ち上がり俺に近づいてくると胸倉を掴む。
「オイッ、オッサン!!わたしをドツキやがって!!どういうつもりだよッ!?」
「うるせぇなぁ、お前の人間が出来てねぇから躾けてやったんだよ。人の頭叩いてたヤツが、ちょっと自分がやられたからって一々騒ぐなよなぁ?」
「テメェッ!!フザケンナッ!!躾がなってねぇのはどっ…ぐぅッ…」
俺の胸倉を掴み、怒鳴り上げていたリオの言葉が突然、途切れた。怒鳴っていたリオの顔が、俺の目の前から一瞬で消えた。
「ヒュゥッ♪」
俺は思わず口を鳴らした。俺の隣で、血走った目を見開いて、激しく肩で息をするエミルがいた。
リオは、エミルの渾身のストレートをもろに喰らい、錐揉みしながらよろけて倒れた。
「エミル、ナイスストレートだ!!」
そんな俺の言葉も、今のエミルには聞こえていなかった。
「…痛ってぇな、絵未ィッ!!テメェッ…このわたしを殴りやがってッ…!!」
立ち上がり、胸倉を掴もうとしたリオの動きを読んだエミルは、素早く避けて低い体勢からのリバーブローを撃ち込む。
それを喰らったリオは悶絶して膝を付いた。
「うっ、うげぇっ…」
膝を付き、悶絶して立ち上がれないリオに、目を血走らせたエミルが叫ぶ。
「あああぁァァッ!!うるさいッ、うるさいッ、うるさいッ、うるさいッ!!アンタなんてッ、リオッ、アンタなんてこの世界じゃわたしの足元にも及ばないのよッ!!偉そうにしないでよッ!!」
そしてエミルは、そのままリオを押し倒すと、マウントを取る。そして渾身の力で上から拳を振り下した。
俺はすぐにエミルの腕を掴んで止める。
「おっとぉ、エミルちゃんよ。コイツはここまでだ。残りのヤツらを連れて来るからな?力はまだ温存しとけよぉ?」
俺の言葉に、肩で息をしながら力強く答えるエミル。
「…ハァ、ハァ…え、えぇ…は、早く連れてきて…わたしがッ…わたしがみんなぶっ飛ばしてやるからッ!!」
吹っ切れたエミルの前で、俺はリオを掴んで神幻門を発動させ再び地球に向かった。
◇
「…次、お前だ。来いッ!!」
俺はリオをS谷の路上で開放すると、二人目の肩を掴んで連続転移した。
「…くそッ、痛ってぇな…絵未のヤツ…わたしに逆らいやがって…」
路上に座り込んだまま、呟くリオに仲間の女が駆け寄る。その口から血が流れていた。
「リオ、どうした?急に消えたと思ったら…アレッ?今度はミカが消えたッ…!?」
「レナ、なんかおかしいんだ…変なオッサンに肩掴まれて…知らない場所に連れて行かれた…。そこに…絵未がいたんだ…」
「ハァ?絵未って…あぁ、委員長やってて親に虐待されてたヤツな。飛び降りの死体もなくて結局、失踪って事になってたじゃん…」
「…アイツ、わたしを殴りやがって…あっちの世界じゃアイツの方が上だって喚いてやがった…」
「…リオ、あっちの世界って…どこよ?幻覚でも見た?…頭、大丈夫かよ?」
レナの言葉に、その胸倉を掴むリオ。
「幻覚じゃねぇッ!!あれは本物の絵未だったんだよ!!」
「…わ、わかった!!解ったから離せよ!!」
二人が言い合いをしている所に、俺はミカを連れて戻った。
「じゃ、次はお前な?」
ミカを開放した俺は、リオに胸倉を掴まれていた女を連れて更に連続転移を発動する。光の中を、エミルがいる場所へと走り抜ける。
「…三人組はこれで最後だ。お前の渾身の一撃を…」
「レナァァァァァッ!!」
俺が言うまでもなく、エミルは女を見ると叫びながら下からタイ〇ーアッパーカットでレナの顎を撃ち抜いた。
レナは見事に仰け反って吹っ飛ぶ。そのまま後ろに倒れたレナはやられた顎に手を当てて困惑していた。
「…痛ってぇ…いきなり何なんだよッ!!…て、ま、マジか…?マジで絵未…かよ?」
倒れたまま、見上げたレナが見たのは、憤怒の顔で襲い掛かってくるエミルだった。
「…ちょっ、ちょっと待てッ!!いきなり何すんだよッ…!!」
マウントを取り、そのまま上から攻撃をしようとしたエミルを止める。こりゃ時々止めないと感情が振り切れ過ぎて暴走というかバーサーク化するな…。
「…エミル。コイツもここまでだ!!次はボス戦だからな?心の準備…ていうか覚悟決めとけよ?」
「オイィィッ、オッサン!!何、意味不明な事言って…」
そう言い放つと、俺は倒れたまま文句を言うレナを掴んで地球へと転移で飛んだ。
俺はS谷にレナを放り出した後、リオが呼んで待ち構えていたケーサツカンに、ごくろーさんですっ!!と敬礼すると、すぐにその場から転移で消えた。
記憶を探りつつ、義父のいる場所に向かう。
俺が出現した先は、I袋のパチンコ店だった…。何でこんな所に…そう思って探していると、記憶の中で見た顔があった。
…コイツ!!朝からパチンコ打ってやがるw
呑気なもんだ。上下スウェットで口には煙草。休日に来ている、と言う感じか…。ていうかコイツ仕事してんのかw?
俺は記憶の中で見た名前を呼ぶ。
「…末倉 勝悟サンですね?わたしはゼニガメ金融の者なんですが…」
そう言うと男は俺を見るなり、打っていた球をぶちまけて逃げ始めた。
オイオイ、冗談で言ってみたら逃げちゃったよ…。
俺はすぐに台の裏に周り込む。
「…な、何だよッ!!払う金なんかねぇよッ!!」
「まぁ待て。さっきのは冗談だよ。ちょっとお前に用があってな。しかし金がないのに良くパチンコ打ってんな?」
そう言いつつ俺はすぐに接近して肩を掴んだ。
「…クソッ、離せッ!!痛ぇよッ!!テメェッ!!」
「おっと、強く掴み過ぎたか?記憶で見たお前が余りにも最低過ぎたんでな。じゃ、チョイと付き合ってもらうぜ」
「…クソッ、テメェ…何モンだよッ…!?」
叫ぶ末倉の肩を掴んで、俺は神幻門を発動させた。末倉と共に、光の中を瞬間に抜けて行く。前の三人の時もそうだったが転移中はコイツらの時間?は止まっているようだ。
文句もなく、抵抗もしない。まぁ、抵抗されてコイツが転移から外れても、どうなるか知った事じゃないけどw
そんな事を考えていると視界が開けて、エミルが待つ農場へと到着した。




