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二人は仲良し?

 俺とフラムが大きな声で叫んだ直後、家の中からガタガタと音がして、エミル達と共にアイちゃんが現れた。


 特に拘束されている訳でもなく、剣を突き付けられてもいない。普通に三人の後に続いて出て来た。知らないヤツが見たら三人の仲間だと勘違いするかもしれない。


 それ程に、人質っぽくない。


 まぁ、首絞め挙げられて剣とかナイフを突きつけられて出て来られても、それはそれで面倒なんだが…。


 エミルの後ろにいる、太ったネコ目の大男がチャビー。四歳ほどの女の子が未依里って子だな…。


 俺は観察しつつ、話を始めた。


「…よォ、エミル。久しぶりだな?…髪切った?」

「…………」

「…………」

「…………」


 俺の言葉に、エミル達はだんまりだ。


 

 …お前らなんか言えよw?



「…ホワイトさん…何で今この状況で、タ〇さんなの…」


 アイちゃんが律儀に、突っ込みを入れてきたが、俺はそれを無視したまま仕切り直す。


「…俺を呼んでいたらしいから来てやったぞ?で、エミル。それでお前はどうしたいんだ?」

「…知れたこと。アルギス様の仇打ち。それからアンタを殺してスキルを返して貰う…」


 俺はエミルの言葉に、考え込むフリをする。


「…ふむ。命はやれんけど、スキルは返そうと思えば返せる。俺はそういうスキルも持っているからな…」


 つい先日、マッドジジイから手に入れたばかりなのだが、酔っているのもあって如何にも以前から持っていたかの様に言った。


「…ならすぐにでもスキルを返して貰えるかしら?」


 その言葉に、俺は勿体付けるように間を置いてから言い放った。


「…だが断るね!!」

「…そう。じゃあ、まずは人質のアイから死ぬ事になるけど?」

「え?別に良いよ?どうぞ!!」

「…ええぇぇっ!!ちょっ、ホワイトさん、それ酷くないっ?」


 俺はそんなアイちゃんをチラッと見ながら話す。


「朝っぱらから騒ぎに首突っ込んでるヤツなんかどーでもいいわ!!…て、言いたいとこだけど…まぁ、大丈夫だろ。エミルはアイちゃんを殺せない。たぶんな…」


 そう言った後、俺はエミルに注意をした。


「ちなみにだけどアイちゃんはお前より年上だからな!!アイリスさんって呼べよ?」


 俺の言葉に、驚いたようにアイちゃんを振り返るエミル。


「…うそッ?アイが言ってたのってホントの事だったの?」

「だから言ったじゃん。わたしは二十五歳だって…」

「…でも何であいつがアイの年齢知って…」


 そう言いつつ、俺を見るエミル。


「…アンタ、鑑定スキル持ってるのね…?」

「…あぁ、持ってるともさ。アイちゃんの人物鑑定も視えているし…エミル、お前の人物鑑定も視えているんだぜぇ~…」


 得意気に言い放った俺の言葉をアイちゃんが即、否定した。


「…エミル、ホワイトさんが言ってるのアレ、嘘だから。あの人は固有スキルで相手のスキルが視えるだけで、いつも一緒にいるピンク髪のティーちゃんが最高ランクの鑑定持ってるのよ」

「…オイ、アイちゃんよぉ。ネタバラシすんなよなぁ。オメェさんよォォ、一体どっちの味方なんだぃ?」

「…ホワイトさん、なんか今日、キャラがおかしくない?もしかして酔ってんの…?」


 その言葉に俺は思わずイラっとして声を上げた。


「…酔ってるのかだと!!お前らマジで良く聞け!!俺はな、昨日晩餐会で深夜越すまで呑みに付き合わされて(ようや)く宿屋に帰って寝れたと思ったら、お前らが朝っぱらから騒ぎ起こしてるっていうから寝不足で二日酔いなのに仕方なく起きてこんな朝早くにベルファからここまで来たんじゃねぇかよ!!そりゃ、キャラもおかしくなるわ!!」


 続けて俺は怒りをぶちまける。


「しかもお前ら、敵同士なのに何で仲良くしてんだよッ!!人質は人質らしく!!脅す方もちゃんとドス効かせて脅す!!やるんならしっかりやれよ!!お前ら下手な演劇部かよ!!」

「ちょっと、大きな声で怒鳴らないでよ!!小さい子がいるのよ!!びっくりするでしょッ!!」


 未依里がエミルの後ろに隠れる。


「よく言うぜ。その小さい子の前でアイちゃんが死ぬだの、俺を殺すだの言ったのどこのどいつだよ…?」

「一々、揚げ足盗らないでよ!!」

「揚げ足じゃねぇ、事実だろ!?そもそも『殺す』って簡単に言うくせになんで人質を拘束してない?剣も突き付けてないんだ?」


 俺は続けて畳み掛ける。


「アイちゃんもおかしいだろ?何で普通に三人の仲間みたいに一緒につっ立ってんの?エミルの人物鑑定でも見て同情でもしたのか?俺が来るまでに何を話した?身の上話でもしたのか?」


 俺の言葉にエミルが振り返る。


「アイ、鑑定スキル持ってるってホントなの?」

「…う、うん。持ってる。スキルレベル+3までだけど…。ごめん、エミルの人物鑑定見た。わたしも学生の頃、イジメられてた事あったからさ…」

「やっぱそんな事だろうと思ったよ!!とにかくお前ら…」


 話している二人の前で、更に捲し立て様としたその時、フラムが小さな両手を上げて「あぅ!!あぅあぅ」と言いながら、ぽんぽんと俺の胸を叩く。


「…ん?何だフラム?…え?怒る、だめ?いや、別にパパは怒ってる訳じゃ…何?やさしい、話す、良い?ぁ、あぁ、わ、解ったよ…」


 何故か不思議な事に、この時の俺にはフラムの言葉が解かった。俺はコホンと一つ、咳ばらいをすると改めて落ち着いて話す。


「…えーと。とにかくだ。こんなヌルイ人質ゴッコなんかもう必要ないって事を言いたかったんだよ」


 俺はエミルを見て話を続ける。


「…俺がここまで来たんだ。ここから先は俺とエミル、お前の問題だろ?アイちゃんにはブレーリンに戻って貰うけど良いよな?」

「…え?えぇ、そうね…戻って貰っても良いけど…」


 突然、エミルの言葉の歯切れが悪くなる。アイちゃんも視線を逸らし、挙動不審だ…。


 …何かおかしいな…。そう思っていると、背後から密談が飛んできた。


≪…アンソニーよ、恐らくフードじゃ。フードがアイとあの三人を後ろから見張っておるんじゃ…≫


 俺が振り返ると、ティーちゃん、シーちゃん、そしてクレアが立っていた。皆、リーちゃんの転移で今、到着したようだ。


≪…あぁ、だから動けないのか…≫


 俺は考えた後に、密談を返す。


≪どっちにしろこれからエミルと闘う事になると思う。エミルが負ければ恐らくヤツらが姿を現すはず。遮蔽を解除したと同時に即排除してくれる?≫

≪そーでしゅね。二人が戦っている間にこっちも準備するでしゅ≫

≪…ふむ。送迎屋を叩きのめすくらいなら母上も何も言うまいな…≫

≪アンソニーよ、フードの排除はこっちがやる。エミルと闘う時は気を付けるんじゃ。新スキルを発現させておるからの…≫

≪…解ってるよ。俺も視えてるからね≫


 ティーちゃんはここに来てからすぐに、エミル達を鑑定したのだろう。俺にもこの時、既にエミルのスキルが視えていた。


 この短期間で再びスキルを発現させていたとはね…。エミルはこの世界への適合力がかなり高いのかもしれんな…。


 そうこうしている内に、テンダー卿とロメリックも到着した。人が集まり、再び緊張感が高まる。

テンダー卿とロメリックは、今の状況をクレアに確認していた。


「…ふむ。すぐに開放出来ない事情があるのか。仕方ない。お互い闘って解決するしかなさそうだな。エミル、三人はもっと後ろに下がらせた方がいい…」

「…えぇ、解かった…」


 俺の言葉に、エミルは振り返ると、アイちゃん、チャビー、未依里に下がるよう指示する。そんな中、アイちゃんが子供(フラム)の事を聞いてきた。


「ホワイトさん、今抱っこしてる子って…ホワイトさんの子供?」

「…ん?あぁ、俺の子だけど…何か?」

「まさか子供抱っこしたまま闘う気なの?危なくない…?」


 …あぁ、その事か…。


「心配ご無用!!この子は俺の記憶と細胞を引き継いでいる子だから大丈夫なんだよ!!」


 俺の言葉にエミルが呆れたように話す。


「…アンタ、正気?子供を抱っこしたまま闘うなんて…。子供が死んでも知らないわよ…?」


 エミルの言葉に、テンダー卿、ロメリック共にフラムをクレアに預けるように言う。しかし、戦闘になっても余り動じないフラムの事を知っているうちのメンバーは特に何も言わなかった。


 取り敢えず、クレアに預けようとしてみたが、やはりと言うか俺の服をぎゅっと掴んで離れようとしなかった。


「…な?見たろ?この子は俺から離れないんだよ。だからこのまま闘う。まぁ、前回は俺の勝ちだったから今回はハンデだと思ってくれて良い」


 そう言いながら、俺はフラムが戦闘中に落ちない様に大きな布でしっかりと俺の身体に括りつけておいた。


「…そう、戦闘中に子供が死んで後悔する事になるわよ?」

「…そうはならない。むしろハンデがあって今回も負けたらエミルは赤っ恥も良いトコだな、プププッ…」


 俺が笑っていると、エミルがムキになって返してきた。


「…敗けない。わたしにはまだやらなければならない事があるのよ…」


 この応酬の間に、禅爺、ウィルザー、ブラントも遅れてやってきた。


「…どうなっている?」


 ウィルザーの問いにテンダー卿が答える。


「今から戦闘に入る様です。ホワイト殿の力を計る良い機会かと思います…」

「…ふむ。では見せて貰おう」


 ウィルザーが、ブラントを見る。ブラントは無言で頷いた。


「…じゃ、始めるか…?」


 俺の言葉でエミルは腰に下げていた剣をスラッと抜いた。



 エミルが抜いた剣には無数の掘り込んだ様な線が入っていた。かなり変わったデザインの剣だ。その模様?傷?がどう能力を引き出すのか…。エミルのスキルとは別に、この剣自体にもスキルが付いていた。


「これは教皇様より、直々に下賜された剣。この剣とわたしの能力が融合した時、その真価を発揮する…」


 そう言うとエミルは剣を両手で振り上げる。


「…飛砕剣、その力を我が前に現し、我が能力に呼応せよッッ!!」


 エミルは叫んだ瞬間、剣を思いっきり振り下ろし、その切っ先を地面に叩き付けた。

 

「…発動ッ!!ソードペインッ!!」


 瞬間、砕け散った剣の欠片が、地中へと消えていく。同時にエミルの身体から、範囲が一気に拡大した。

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