炊飯器の少女
昨今、さまざまな家電にAIが搭載されるようになった。
AIには人格に似た個性があって、それぞれ家電を動かす時にいろいろ考えていた。
僕が家電のAIに人格があると気付いたのはたまたまだった。
「Siri!北の部屋の電気つけて!」
「すみません、5分ください」
「なんだってそんなに待たなくちゃいけないのさ!?」
「まだ眠いそうです」
「誰が?」
「北の部屋の電気がです」
Siriは悪びれずに言った。
僕は北の部屋に荷物を取りに入る用事があったので、すっかり頭にきてしまった。
「Siri、今すぐに、だ!」
ドスのきいた声で命令すると、北の部屋の電気は飛び起きてびかっと灯りをともした。
「まったく」
ぶつくさ言いながら荷物を取ってきた。
「シンジさん。炊飯器のタイマーを入れましょうか?」
「そうだな。そろそろお腹がすいてきたしそうしてくれ」
「シンジさん」
「なんだよ」
「おきびむらしを見て欲しいそうです」
「誰が?」
「炊飯器です」
「なんで見なくちゃいけないんだい?」
「炊飯器が見守ってくれなきゃヤダ!と言っています」
「僕はそんなの見守りたくないよ!」
「見守らないとご飯を炊かないそうです」
ボイコットか?!
僕はほとほと困ってしまった。
「いっしょに炊飯しましょ、と言っています」
「ごめんこうむる」
「ご飯が食べれないぞ、と言っています」
「Siri、なんでそんなにいじわるをするのか炊飯器に尋ねてくれ」
「シンジさんを好きだからだそうです」
「僕は人間の女の子にしか興味ないよ」
「ひどい!」
どっかーん!
炊飯器が壊れた。
「新しい炊飯器をすぐに手配してくれ」
「シンジさん……」
家じゅうの家電から白い目で見られているような気がした。