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6.作戦開始

 次の日の朝、目が覚めるとまだそこはショーケースの中だったので、これ幸いと隣で眠っていたお兄ちゃんに話しかけました。


「お兄ちゃん、起きてください。大事な話があります」


「ふぁぁぁ。……また後にしろよ。お兄ちゃん眠い」


「もう、大事な話なんですってば!」


 まだ眠そうにしているお兄ちゃんの耳に軽く噛みつくと、彼はキャンと鳴きました。


「いってぇな、何すんだよぉ……!」


「お兄ちゃん、大変です! ワタクシ達このままだと処分されます!」


「しょぶん?」


「えぇ。動物実験に使われて痛い思いをしたり……もしかしたら殺されてしまうかも」


「え、痛いの嫌だ!」


 痛いという単語に彼が反応したので、ワタクシは事態の深刻さを理解させようと必死で熱弁しました。


「えぇ、処分になったらとてもとても痛いですよ! そしてワタクシもお兄ちゃんも二度と遊んだりご飯を食べたりできなくなります!」


「そんなの嫌だ! 処分は嫌だ!」


 彼は尻尾を逆立てて激しく吠えながら、何度も嫌だと繰り返しました。


「でもこのままだとワタクシもお兄ちゃんも処分なんです」


「処分なのか……」


「はい。でも絶対そんなことさせません。力を合わせて、一緒に生き残るんです!」


「う、うん。でも生き残るってどうしたらいいんだ……?」


 戸惑う彼に、昨夜考えた作戦を説明しました。


「――いいですか、これからお客さんが来たらワタクシはあなたの真似をします」


「まね……?」


「えぇ。お兄ちゃんが前足を上げたらワタクシも前足を上げますし、お兄ちゃんがゴロンと横になればワタクシも合わせてゴロンと横になります」


「うん、一緒に足を上げて、一緒にゴロンだな」


「そして、お兄ちゃんもなるべくワタクシと同じ動きををするように心がけてください」


「いいけど……それがどうかしたのか?」


「ワタクシとお兄ちゃんが同じ仕草をしている様子は、可愛いし珍しいんです」


「そうなのか……?」


「えぇ。だからその光景を見たお客さんは、ワタクシ達を可愛いと思って動画や写真を撮影することでしょう。そうすればネットを通じてたくさんの人にワタクシ達のことが広まるはずです」


「……どういうことだ?」


「ネットに広まれば、たくさんの人が見てくれるんです。そうすればきっとワタクシ達を飼いたいと思う人にも巡り合えます」


「よくわかんないけど、俺たちを飼いたい人なんているのか……?」


 彼が不安そうにつぶやいたので、ワタクシは力強く答えました。


「――えぇ。世の中は広い。きっとワタクシ達を気に入ってくれる人がどこかにいる。でもまだ出会えてないだけなんです!」


「そうか……俺たちを飼ってくれる人がどこかにいるんだな!」


「えぇ、絶対います。だからできることをしましょう!」


 こうして、ワタクシとお兄ちゃんの作戦がスタートしました。


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