10.新しいお家
もともと全9話で完結だったのですが。
ジェルが犬になっている間、本来のチビがどうしていたのかを追加しました。
目の前が急に明るくなったのを感じて俺は目を覚ました。
うん……? ずいぶん長く寝ちまったな。
何かわからない匂いがいっぱい鼻の奥に飛び込んでくる。でも嫌いじゃない。どこかで嗅いだことがあるような懐かしいような匂いだ。
「おい、チビ。起きろ」
俺は目の前の小さな弟の顔をペロペロ舐めて起こした。
「うーん。僕……まだ眠いよぉ……」
「お家だ。きっと飼い主が言ってた新しい俺達のお家だぞ!」
「……え、新しいお家! ――夢じゃなかったんだ!」
チビは目をキラキラさせて起き上がった。
「お兄ちゃん、僕ね……ずっと夢を見てたんだ」
「夢?」
「うん、夢。僕じゃない僕とお兄ちゃんが、たくさん頑張ってる夢。よくわからないけど、夢の中の僕はお兄ちゃんと僕を助けたいってずっと考えてた」
「お兄ちゃん、チビの言うことは難しくてよくわかんねぇよ」
「うん。僕も難しくてうまく説明できないよ。でも夢じゃなかったんだね……ずっと一緒に暮らせるんだね」
チビは優しい匂いのする新しいお家をうれしそうに眺めていた。
――あぁ、これからもずっとずっと俺達は一緒だ。




