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1.犬になったジェル

 ここは日本のとある空間の狭間にあります、アンティークの店「蜃気楼」

 店主はワタクシ、魔術も行使できる天才錬金術師のジェルマン。


 この世には理屈では説明できぬことがたくさんあります。

 今日はそんなワタクシの身に起きた不思議な出来事をお話したいと思います。

 

 その日、ワタクシは店のカウンターに座り、のんびりと紅茶を飲みながらスマホで動画を見ていました。


 画面の向こうは我が家の近所にあるペットショップのショーケースの中で、綺麗な青い瞳のシベリアンハスキーの子犬が二匹、寄り添うように座っています。


挿絵(By みてみん)


 二匹は兄弟だそうで、兄の方は体格が良く、将来大きくなりそうなしっかりした太い足をしていてとても可愛らしい犬です。

 しかし弟の方は小柄で痩せていて毛並みも悪く、しかも後ろ足を少し引きずるような動きをしていました。


「おや、この子は足が悪いんですかね……」


 ワタクシは、この兄弟のことが何となく気になりながらも画面を閉じました。

 

 ――その日の夜。


 いつも通りベッドに入り眠りについたはずなのですが、目を覚ますとそこはなぜかガラスで蓋をされた狭くて白い空間でした。

 地面には淡いピンク色の安っぽいマットが敷かれていて、目の前には大きな灰色の毛の塊がワタクシにぴったりとくっついています。


「ここはいったい……⁉」


 その独り言に気づいたのか目の前の毛の固まりはゆっくりを目を開け、青い瞳でワタクシの顔を覗き込みました。


「どうしたチビ、おなかでもすいたのか……?」


 チビ? ワタクシのことですかね……?

 思わず周囲を見回したその時、ガラスに反射して見えるワタクシの姿が昨日の動画で見た痩せっぽちの子犬であることに気づきました。


「あ……まさか、そんな! これは昨日のあの犬……?」


 でもそのまさかです。足を動かそうとすると後ろ足の片側に上手く力が入りません。


「えぇ……⁉」


 とつぜんのことに戸惑いが隠せないでいると、目の前の子犬は労わるようにペロペロとワタクシの頬を舐めました。


「どうした? 足が痛いのか? なんでもお兄ちゃんに言うんだぞ?」


「え、あ、そういうわけでは……お兄ちゃん……?」


「おう、お兄ちゃんだぞ?」


 その話し方に兄のアレクサンドルを思い出し、試しに兄の名を呼んでみたのですが目の前の子犬は不思議そうな顔をするばかりでした。


「あの、ワタクシやお兄ちゃんの名前は?」


「――名前? オマエのことチビって店の人が呼んでるから、俺もオマエをチビって呼んでるぞ」


「じゃあ、あなたは何と呼ばれてるんですか?」


 ワタクシの疑問に子犬は考えるようにしばし空中を見てから答えました。


「お兄ちゃん、だな」


「そうですか……あぁ、そうか。売り物だからまだ名前が付いてないんですね」


 とりあえず目の前の子犬とワタクシは、昨日の動画で観た子犬の兄弟で間違いないようです。


「まさか、犬になってしまうなんて……」


 状況はわかったけども、さてどうしたものかと考えているうちに意識が途切れ、ワタクシは再び眠りについたのでした。



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