第二十三話 説得
その夜、私は店主を説得した。
「考え直して下さい。今この店を売ってはいけません。いくらお金を積まれようと同じことです。明日、きっちり断ってください」
この話を断らなければならない大きな理由は二つ、一つは竜の肉が嘘ということだ。
もし買収されれば、まず派手おばさんは竜の肉を追求してくるだろう。
そしていずれは嘘がばれる。そうなった時困るのは店主、そして間接的に私なのだ。
理由のもう一つは、他の飲食店との関係だ。彼らは自分の店の客をもっていかれるのだから、この店をよくは思わない。
だから彼らが何かを仕掛けてくることは間違いない。
そうなった時、もし今の状態ならば他の国や地域へ逃げて、そこでまた竜の肉として商売を再開すればよい。
しかし派手おばさんに買収されていた時は容易に逃げることは出来なくなる。
この話を何度もしたが、店主の意思はすでに決まっており、揺らぐことは無かった。
お金に目がくらんだのだ。
「わかりました。ではまず先に依頼達成のサインをください」
「あぁ、そうだな」
店主はペンを走らす。
「それと私のことは黙っていてください。竜の肉は自分で見つけた、そう話してください」
「わかった」
店主は頷く。
でもどうせポロっと吐いちゃうんだろうな。
少しの不安を残し、私は店を出て行った。




