第七話:原始の森
三人称です。
学び舎には6歳から15歳まで入り、最初は読み書きなどの基礎知識などを勉強する。教室には同じくらいの年の子達が集まっていた。
「おはよう〜 みんな」
「おはようカリーナ、ティル」
返事をしたのはカリーナの親友のソフィーである。
「お二人さん仲良くご登場だね」
「あら、おはようイノ」
そんな茶化すような言い方にカリーナはいつもだったら恥ずかしそうにツンとした表情をするが今日は不機嫌な表情で挨拶を返したのでイノは首を傾げた。
「なんかご機嫌ななめだね ティル何かやったの?」
「えっ? 僕何もしてないけど…」
いきなり非難されたティルは何のことやら分からず首を傾げた。そんなティルにイノは問い詰めてきた。
「だいたいカリーナの気分が悪くなる時は君が原因なことが多い。 よく思い出して」
「え〜 そんなこと言われても」
「例えば服のこととか聞かれたんじゃない」
「イノすごいね、どっかで聞いてたの? 確かに行く途中で聞かれたけど」
ティルの驚いた表情にイノは呆れため息をつく。
「あのね、女の子が服のこと聞かれたら褒めて欲しいってサインなんだよ」
「えっ、そうなの?」
全然気付いていないティルにイノはガクリとうなだれた。
「ティルはカリーナになんて言ったの?」
「えっと確かーー」
『ティル、今日の服はどうかな?』
『うん、どうって普通だよ』
今日のカリーナは花柄のワンピースを着ていたので屋敷でもそれは普通だったのでおかしくないことを伝えたつもりだったのだが、
『…普通って、もういいわよ』
そして今に至るわけである、ことの顛末をイノに話した。
「それじゃあ怒るのも無理ないね」
「どうすれば、いいかな」
「怒りが収まるまで触れない方がいいかもね かえって火に油かもしれないから」
「なんて言えばよかったのかな…」
「普通に『似合っているよ』とか『かわいいよ』」でいいんだよ」
「そっか、わかった ありがとう、イノ」
しばらくするとカリーナの機嫌はよくなり、ティルはほっとした。その後教室に先生がやってきてみんなを席に着かせて自己紹介をした。
「みんな席についてね」
教室に先生がやってきて自己紹介をした。
「このクラスの担任を務めます。 私の名前はリーマと申します」
「それでは、簡単な自己紹介をよろしくお願いします」
「は〜い」
皆各々と自分の名前をいい、カリーナの番になると周囲の男の子達が騒いだ。
「カリーナと言います。よろしくお願いします」
「あの子、かわいいな」
「お前知らないのか、あの子は町でも一、二を争うお金もちの娘なんだって」
「へ〜すごいんだね」
カリーナは元々顔立ちが整っているため、より目立つの仕方ない。そしてとうとうティルの番になった。
「名前はティルと言います。よろしくお願いします」
ティルの自己紹介を見ていた子供達がヒソヒソと話した。
「あいつって何の動物なんだ」
「何のにおいもしねえし」
「俺の母ちゃんも人間だけど、父ちゃんは獣人族だから」
「それじゃあ、あいつの親は人間ってことか」
この街は獣人族と人間が共存しているため、獣人族と人間が結ばれて子を儲けることは必然であり、何らおかしいことではない。
けれどティルの両親を知っているカリーナは生徒達の噂話を聞いて首を傾げる。
『そう言えばマリノア様は人間だけど、エルヴィス様は確か…狼の血を引いていたような…』
『だとしたら子供に親の遺伝子が引き継がれるはずなのに、一度も見たことがない』
『耳がついたティルも見てみたいけど、あまり他人の家庭の事情に首を突っ込むものははしたないわよね…』
生徒達の自己紹介は滞りなく終わった。
山の麓には広大な森が密集としており、子供達の遊び場にはまさにうってつけである。獣人族は原始的に言えば元々は森の中に住んでいた。
けれど人間族と友好を深めるうちに間の子が生まれ、子孫はやがて平地に集落を築くようになり町ができた。
町は人間にとっても、獣人族にとっても住みやすい環境となった今日だか、自然の中でしか培えないものがある。それは「本能」というものである。
人間にも備わっているものだが、獣人族はそれは顕著である。生きていく上で自分の身体能力で身を守り、害するものを攻撃する。それを養わせるためにかつて獣人族が住んでいた森「原始の森」と呼ばれるところがある。
学び舎は町の中にあるため、生徒達は街の中では体験できない学習をするために原子の森まで赴き、実際肌で触れてみて自分の身を持つ授業があった。
先生引率の元、ティル達は原始の森にやってきて少し歩くと河原がありそこに立ち止まった。
「今回初めてのみんなは原始の森にきたと思うのですが、ここでは町では体験できないものを勉強したりするところでもあります」
「例えば魚を取るときに武器などを使わずに自分の手で取ったりです」
「では先生がお手本を見せるのでじっくりとみていてください」
先生は耳と尻尾を出し、川面にいる魚をじっと見定める。魚は神経質なためバレてしまうと逃げるのが早い。釣りで取るのではなく、手で取るなんて並大抵の集中力では取れない。
固唾の飲み生徒達が見守る中、先生は腕を振り上げた瞬間はわかったが振り下ろした瞬間は早すぎて追いつけなかった。
バシャっと草むらに叩きつけられたものを見るとそこには魚が2匹打ち上げられていた。




