第九話:ノアとミルカの水着対決
「ああ、あなたもいたのですか?」
ミルカはノアを認識した瞬間、すんとした態度に戻った。その変わりようにノアは苛立ちを抑えられない。
「いたも何もというかぶつかったのは私とあなたなんだけど?」
「…そうでしたか?」
両方とも一歩も譲らない戦いにティルは止めようとしたのだがーー
「ノア、落ち着いて ミルカさんも」
「ティルくん 私は十分に落ち着いています 落ち着いていないのは彼女だけです」
「ふ〜ん、それってミルカの気のせいじゃない」
口を開けばの舌戦の繰り返しでティルは何とか二人の喧嘩を止めようと考える。
「あ、それじゃあ二人でお互いの服を選ぶってどうかな?」
ティルの提案に今にも臨戦態勢な二人の動きが止まった。
「それは面白そうね」
「いいでしょう、どちらかより似合っているのかティルくんに決めて頂きましょう」
(……え?!!)
言い出しっぺは自分ではあるがまずいことを言ってしまったと言い直そうとしても遅く、火に油を注いだ感じに二人は燃え上がった。
「あんまり長く考えても埒が明かないから制限時間は15分にしましょう」
「いいでしょ」
何だか大変なことになってしまったと他人事のように思いながいると、あっという間に15分経過した。
二人はお互いに持った籠を渡し合い試着室に向かった。
「ティルくん、着替え終わりました」
カーテンをあげるとそこには黒の水着をきたミルカが立っていた。引き締まった色白な肢体に黒のビキニは似合っていた。
「すごく似合っていますよ」
ティルはお世辞ではなく、本音で言うと恥ずかしそうにミルカは頬を染めた。
「ティル、私も着たわよ」
ティルは視線をずらすとノアはミルカとは対照的な白い水着を着ていた。
「少し子供っぽいけど、まあ及第点ね」
ノアの満更でもなさそうな表情にティルは苦笑する。
(素直に喜べばいいのに)
「それで、どっちが似合うの?」
ずいっと二人に詰め寄られたティルは声を上げた。
「……えっと、二人も似合っているので引き分けと言うには」
思わぬ答えに二人は驚き、硬直する。
「引き分けね……まあ、どっちも似合うし」
「うん? 何かいった」
「いえ、何にも」
二人は元の服に着替え終わり、ノアはミルカが選んだ水着を買うことにした。ミルカが水着をどうしようかと言う表情をしていたので聞くと、
「海に行く予定とか特にないので」
「それじゃ、今度一緒に行くときに買っておきませんか?」
「え、一緒にですか?」
「あ、いやじゃなければですが」
「いえ、構いません」
「その時は私ももちろん行くからね」
ひょっこりとレジの会計が終わったノアが帰ってきてミルカは口を開く。
「あなたは来なくていいです」
「え〜、聞こえない」
まだ勃発しそうなのでミルカが急に神妙な表情になりティルとノアは訝しむ。
「二人とも明日は気をつけて、調書では学園を通しておりますが、油断は命取りになります」
「はい、気をつけて行ってきます」
「お土産買ってくるわね」
ノアとティルは手を振り別れを告げた。
「まさかミルカから心配されるとは思わなかったわ」
帰りの道にポツリとつぶやいた。
「あはは、言い合うけど心配なんだよ」
それはティルのことを気にしているからじゃないかと思ったがノアはあえて言わなかった。
こうして準備のための1日はゆるりと終わったのだが、それは嵐の前の静けさに過ぎなかったのだった。




