第六話:初めての学び舎に居候
三人称です。
性格は見ての通り、まだ5歳なのに女の子が大好きで将来が末恐ろしい。次にティルに声をかけてきたのは気弱そうな声ですぐに誰だが見当がついた。
「こんばんは、久しぶりだね。 ティル君」
「うん、久しぶりだね、ブラ」
巻き毛の黒髪で、気が弱いがとても優しい少年である。そしてもう一人の少年が声をかけてきた。
「カ、カリーナ」
「オリバーも来てくれたんだ、楽しんでいってね」
「お、おう」
茶髪に青い目が特徴の少年は頬を赤らめながら話している。アンはカリーナのことに気があるのだ。
「オリバーくん、久しぶりだね」
ティルはオリバーに挨拶をしたが、
「お…おう」
素っ気ない態度にティルは少し落ち込む。皆頭の上には獣人族の特徴である耳とお尻には尻尾がついている。カリーナはライオン、ソフィーは猫、イノは鳥、ブラントは熊、オリバーは犬である。
〇〇
そんなティルの様子を見ていたマリノアは安心そうに見つめていた。
「本当にカリーナちゃんがあの子と仲良くなってくれてよかった」
「あの子私と夫が外に出る以外はほとんど家にいるから、友達ができるか心配だったんですけど友達ができてよかったです」
読み書きを勉強するのなら子供の時から始めた方が覚えがよく、上達が早い、子供を持つ親なら学び舎の話は必然だった。
「ふふ、そう言えば来年からティル君は学び舎に入学はされるんですよね」
「はい、そのつもりなのですが、実家は山奥ですし、どうしようかと思って」
「ならここから通うのはどうですか?」
「え…ここからレイヤさんの屋敷からですか」
「はい。 ここには使っていない部屋がいくつもありますし、一人増えたところでそう大差ありません」
「ですが、レイヤさんの娘がどう思うか」
「それもそうですね…」
レイヤは使用人を呼び、カリーナとティルを連れてくるようにお願いした。
「ご歓談中にすみません、カリーナ様、ティル様」
「どうしました?」
使用人に声をかけられたカリーナは返事をする。
「レイヤ様がお話があるということで、ティル様も連れてきて欲しいとのことで」
「僕もですか」
ティルは自分で指を指した。
「はい」
「何だろう…ちょっと、お母様のところに行ってくるね」
「うん、わかった」
「待ってるね」
二人は早歩きで使用人とともにレイヤの元に向かった。
「お母様、お待たせしました」
そこにはレイヤとマリノアがいた。
「カリーナ、あなたにお話があるのだけど」
「はい?」
「来年からあなたを学び舎に入学させるのですが…それにティル君も同じ学び舎に入学させるためにここから通わせたいと思っています」
「えっ、それは、ティルと一緒に住むってことですか?」
肯定した母親にカリーナは驚き、語尾に嬉しさを隠せなかった。ティルはいきなりの話の展開について行けずに首を傾げてマリノアを見た。
「えっと、どうゆうこと?」
「ティル、いきなりで悪いんだけど学び舎のことは少し話したわよね?」
「うん」
「山奥から通うのは難しいからレイヤさんのお宅から学び舎に通って欲しいの」
「カリーナもその学び舎に通うんだよね?」
「うんっ、私ティルと一緒に通いたい」
ティルは突然の申し出に驚いたが、母親からの願いや友人からの好意に甘えることにした。
「それじゃあ、来年からお世話になります」
「こちらこそ、よろしくね ティル君」
話が終わり、カリーナとティルは友人達のところに戻りこのことを話した。
「ただいま〜、みんな」
「早かったね、何の話だったの」
気になった友人達がゾロゾロと二人を囲んだ。
「実はね…ティルが来年から一緒に学び舎に通うことになったのっ」
嬉しそうにカリーナは報告した。
「一緒に?!」
「よかったじゃん」
ブラントは喜び、イノは笑みを浮かべた。
「でもティルの家って山奥にあるよね そこからだと遠すぎない?」
人一倍心配症なソフィーはそのことに気づき指摘した。
「それで、私の家に住むことになったの」
「え〜?! ティル、カリーナと一緒に住むの」
「すごいね〜」
皆が喜び、嬉しそうに声を上げティルを祝福した。この時気づかなかった。
オリバーだけが喜びの声を上げずにティルを睨んでいたことを。
〇〇
そしてティルが入学するときがやってきた。ティルはカリーナの屋敷にお世話にな流ために、家の玄関でエルヴィスとマリノアにお別れを告げた。
「それじゃあ、ティル元気でね」
「休日にはいつでも帰ってきてもいいからね」
名残惜しそうにいうマリノアにティルはギュッと抱きしめて別れを惜しんだ。