第五話:幼なじみとその友人たち
三人称です。
屋敷に帰ると玄関の前で一人の金髪の少女が腕を組み待ち構えていた。
ふわふわの金髪の髪が首元まであり、両サイドにはリボンが飾っている。パッチリとした愛らしい美少女である。
「もう、どこに行ってたの? おめかしして部屋に行ったら誰もいないし」
「カリーナ、ごめんよ〜 こいつがどうしても遊んで欲しいて言われたからしょうがなく」
「…おい」
ドミニクの言い草にエルヴィスは眉間にシワを寄せた。
父の嘘をたやすく見抜いていた娘のカリーナはため息をつきながら迷惑をかけたエルヴィスに謝る。
「どうせお父様が駄々をこねて迷惑をかけたんでしょう。 エルヴィス様、相手をしていただいてありがとうございます」
殊勝な態度を取る年下の女の子にエルヴィスは怒気が鎮まる。
「いや、運動不足の解消になった。 こちらこそ礼をいう」
「それはよかった」
容姿は父親譲りだが性格や話し方は母親に似ている。レイヤの教育の賜物だろうと性格は父親に似なくてエルヴィスは少しほっとした。流石に女の子で「遊び」はしないだろうが昔からやんちゃ気質のドミニクだからその血を受け継いでいるかと思い最初は冷や冷やとしていたものだが、最初にティルと対面した時カリーナが挨拶をしてきたときは驚いたものである。
まあ、比較するものが対象にならないが…。
「カリーナ」
「ティル! こんにちは」
ティルはカリーナに声をかけて挨拶をした。二人は1年前に知り合い幼なじみとなった。
「こんにちは、久しぶりだね」
「そうだね。 1ヶ月ぶりくらいかな」
カリーナが自分の着ている服を見せるようにチラチラとしていたのを見たティルは不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「…別になんでもないわ」
おめかしして褒めてもらいたいカリーナの意図に気づいていないティルに彼女はため息をついた。気持ちを切り替えるようにカリーナは自分の母に話しかける。
「お母様、今日友達を連れてきてもいいですか」
「ええ、いいですよ」
「それじゃあ、宴の準備が終わるまで知らせにいきましょ。 ティル」
「うん」
カリーナはティルの手を取り、元気よく外に出て行った二人をマリノアは手を振って見届けた。娘の不満に気づいていた父のドミニクは憤懣やるせない表情である。
「全くせっかく我が娘がお洒落をしているのに気づかないとはお前に似たんじゃないか?」
「筋肉バカのお前に言われたくない」
エルヴィスの毒舌にカチンときたドミニクを怒気をあらわにした。
「なんだとまたやるか」
「やめておけ。 また同じ目にあうぞ」
「やってみないと分からんだろ」
いつの間にやら一触即発状態となり二人の雰囲気がガラリと変わっていく。普通の獣人族でも縮み上がる殺気にものともせず声をあげた。
「エル君! 「遊ぶ」のはよくても「喧嘩」は絶対ダメだからね」
下から見上げるように妻のマリノアに叱られたエルヴィスは溜飲が下がりひとこと謝った。
「すまない」
「あなたもいい加減にしなさい」
とドミニクはレイヤに窘められる、性格は似ていないが、ば妻には逆らえないという似ている一面があった。
〇〇
夕方、宴の前に続々と集まり、普段は動きやすい服装だが宴という場もあり皆は男性はスーツを来て女性はドレスやなどを着ている。
そして主催のドミニクは体格がいいのもありスーツを着こなし、レイヤはフレアラインのドレスを着るとより上品さが際立つ。
そして普段から山にいる3人は一張羅など持っているはずもなく、レイヤは上げてもいいと言われたが借り受ける。
「ドレスとスーツありがとうございます」
「皆さん、とてもお似合いですよ」
エルヴィスは細身の体型であるが筋肉はあるためスーツが似合い、マリノアは背が低いため脚を長く見せる効果があるベルラインドレスを選んだ。
ティルはベストに首元にはリボンがついており、黒いパンツである。
「似合っているわね」
隣にいたカリーナから言われたのでティルは言い返した。
「カリーナも似合ってるよ」
「そうかな…あ、ありがとう」
「いつもそうだったらいいんだけど」
最後の一言がごくわずかな声だっためティルは聞き取れずに聞き返したが、カリーナは首をふり「何でもない」といった。
その時、二人を呼ぶ声が聞こえたので振り向くと招待した友人たちが来ていた。
「こんばんは、カリーナ、ティル」
「みんな、来てくれてありがとう」
「こっちこそお招きしていただいてありがとう」
最初にお礼を言ったのは黒髪の女の子だ。カリーナとは性格が対照的だがとても仲良しであり親友である。
「いや〜、今日はこんなに可愛いガールがいるからきてよかったよ」
「イノは相変わらずね」
ナンパのような口調で割り込んできたのは、垂れ目が特徴の少年のイノセンシアである。名前が長いのでみんなはイノと呼んでいる。




