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魔法世界の少年ティルの物語 ~魔力ゼロで元魔王な少年は第二の人生を気ままに生きていきます  作者: yume
第一章:かつて魔王と語り継がれた少年の第二の人生の始まり
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第三十話:それはかつてあった都の話・エピソード5

 ポリュデウケスは城の外に出歩いてから気楽に過ごせる場所を見つけ、双子の兄カストールもまた外の世界に興味を持ち始めた。


 頭がいいため勉強する必要がなく、実技も申し分ない。城の中で憂鬱な日々を送るよりは外に行って誰も自分のことを知らないどこかでのんびりしたいとカストールは思っていた。


 ある日のことカストールは少し遠出をしようと念のために変装をして王都を離れることにした。


 王都の外に行くのは私用では初めてであり、人が少なく、緑豊かな小さな村に心惹かれたカストールは足繁く通うようになった。


 田舎ということもあるが、ここでも変装は外せないのは煌めくような金髪だということもあり、人が少ないところではより目立ってしまうのでくすんだ茶髪に農民の格好へと変装した。村の人たちはカストールみたいな者が来て物珍しいのか歓迎された。自分を快く迎えてくれた彼らの心意気に安らぎを覚えて、しだいに住みつくようになった。


 王都と違い最先端な色んな店がないが、自然が豊かな場所のため農家が多くなる。カストールがいる村は普通に人間の種族が住んでおり、ほとんどの人間が農民である。


 カストールは柔らかい土を触る感触は初めてだった。土のひんやりと触り心地が良かったのは今でも覚えている。


 畑を耕し、野菜を作り、麦などを作るために田んぼに稲を植える。カストールも最初は不慣れであったが、手伝いをするうちに村の子供達と教えてもらったりした。


 王都、王城でもずっと過ごしていればこんな経験をすることはなかったかもしれない。まさか城の連中も王族の王子が土を耕しているなどと誰も思わないだろう。


 城の食卓には色んな食材が使われる。カストールは野菜や米、麦などがこんなにも作るのが大変だと思い知らされた。


 一から作るのには時間と根気が必要であると同時にいつも舞踏会で出されるのに夜食などがもったいなく感じた。踊りに来るお嬢様たちはあまり食べることはなくおしゃべりに夢中でほとんどが食べ残されていたのを何度か見たことがある。


 カストールは足を広げ片手にクワを持つ姿はだんだんと様になってきた。お城にいるお嬢様方が見たら卒倒しそうであるが。


 今日も畑の仕事を耕していると村の男性から声をかけられた。男性には二人の子供がいた。男性は働きに行かないといけず、男性の妻は病気で熱が出てしまったらしい。


 そこで村の手伝いなどをしているカストールにお呼びがかかったのである


「トールさん、すまない」


 トールとはカストールからとった偽名である、村の人々から名前を聞かれて適当に答えた。


「妻の看病をしたいが、仕事を休むわけには行かなくてな、家にはお袋がいるんだが、足と腰があまりよくないんだ」


 困った男性にカストールは相槌をうった。


「わかった…それで何をすればいい?」


「妻の風邪の薬とお袋の足と腰の湿布をこの子達と一緒にお使いに行ってもらえませんか?」


「お店はどこのだ?」


 この村には何軒かお店はあるし、薬屋もある。そこかなとカストールは見当をつけるが、


「いいや、この村の少し外れに家があるんだ」


「そんな所に家があるのか?」


「地図もあるから、たどり着くと思うぜ」


 地図をもらったものの、いかにも子供が書いたような落書きにカストールは言葉を失った。


「それじゃあ、お利口でな」


 男性が二人の子供にいい、手を振ると二人は元気よく返事をした。


「うん!」


「は〜い」


「それじゃあ、行くか」


 トコトコと歩いていると女の子の方から話しかけれたカストールは何だと首を傾げる。


「私の名前覚えてる?」


「……ミラ…か?」


「うん、合ってるよ」


「僕もっ、僕の名前は?」


 姉のやっていることを見ていた弟は自分も聞きたくなったのかカストールに質問してきたので答えた。


「カルだろ?」


「っ…うん、そうだよ」


 嬉しそうにカルは喜んだ。名前があっていたことにカストールはほっとした。自分自身、子供と話すことは少なくどう話せばいいかと思っていたが無邪気さに救われた。


 子供と通っていた距離と言っていたからそう遠くないだろうと思っていた考えが当たり、建物が見えてきた。


 自然に囲まれた木の家で温かみがあるログハウスだった。カストールはドアにノックすると家の中から返事が返ってきた。


「は〜い、どちら様」


 穏やかな声が聞こえ、扉から現れたのは茶髪の女性だった。


「あらあら、3人のお客様が来たのね、いらっしゃい」


 カストール達を見て、快く迎えた女性は微笑んだ。


「ここまで来るの喉が乾いたでしょ?」


 カストールは女性のお腹を見て手伝うことにした。


「俺も何か手伝うことはないか」


「…! あら、ありがとう、それは助かるわ」


 カストールはお茶を運び、クッキーなどを準備するとカルとミラは目を輝かせて近づいてきた。


「わ〜、美味しそう」


「クッキーだ」


「いただきま〜す」


「私、シエラおばさんのお菓子大好きだよ」


 シエラ…彼女の名前だろうか。ミラはニコニコと笑うと嬉しそうにシエラは彼女の頭を撫でた。


「ふふ、ありがとう」


 ニコニコと微笑みながらシエラはお腹の中にいる我が子を大事そうに優しくさすっていた。村に帰った後、何となくカストールは気になってミラとカルの祖母にシエラについて話を聞いた。


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