第二十八話:それはかつてあった都の話・エピソード3
それから月日が経ち、双子の王子様たちは年頃になる。
5年前は幼さを残していたが徐々に凛々しくなり、大人と見まごうほどである。カストールは無口、無表情であるが時折見せる優しげな表情がいいとかで、ポリュデウケスはいつも明るく笑顔が素敵なのにかっこいいところがあってギャップにやられるなどそれに加え、剣術や勉学も見事でお嬢様、お姫様たちが放っておくわけがない。
日増しに見合い話が寄せられることが多くなっていた、そんなある日のことだった。双子の兄弟にとっても初めての舞踏会デビューを迎えた。
舞踏会は城のホールで開催されている。いつもの広く閑散としている場所はいろんな種族で溢れかえっていた。それを見たカストールは面倒臭そうにつぶやいた。
「人が多すぎる…」
カストールは性格から人が多いことは苦手で、しかも今日は初披露のため話す機会が多いだろう。舞踏会が始まる前から鬱屈とした気持ちだったがその表情を見た令嬢たちは、
「はあ〜 物憂げな表情も素敵だわ」
「あんな瞳で見つめられたい」
などともてはやされている事は本人は知らない。ポリュデウケスは一人一人丁寧に失礼のない程度に挨拶をして和やかな会話をしている。
立ち話もさておいて、壁に寄りかかっているとどこからかか細い声で声をかけられる。
「あの、カストール様 お時間は空いてますでしょうか?」
目の前にいつの間にかドレスを着た少女が立っており、よく見ると女の子は少し体が震えていた。
話しかけられて目があった瞬間に女の子は口をつぐみ彼女は絞り出すような声で口を開く。
「あの…私と踊っていただけませんか?」
それはなんとも些細な事だったが、きっと彼女にとってとても勇気がいることに気づいた。
「…はい、よろしいですが、あまり踊りは得意ではありませんが」
カストールは手を伸ばした途端、周囲がざわついた。
『えっ、カストール様がお手を』
『あの子ちょっと羨ましいんだけどっ?!』
二人を見ていた女性たちは踊りが終わると我先にと群がって来て、
「あの私も踊っていただけませんか」
「それじゃ、私も…」
「っえ〜と、はい」
カストールは女性の迫力に屈してしまい、舞踏会初日は踊りだけで終わってしまった。寝る前はもうくたくたで目が回り、途中でポリュデウケスが声をかけられなければまだ続いたかと思うとゾッとした。
「はあ〜」
ベットで横になっているとドアにノックする音に返事をする。
「はい」
「兄上、まだ起きてる?」
「ああ、起きてる」
ドアを開けた先にはポリュデウケスが立っていた。
「ふふ、大分お疲れのようだね」
「ああ、魔獣よりも生命力がありそうだった」
カストールは女性たちの興奮している様子を魔獣に例えた。その言葉を聞いたポリュデウケスはブフッと吹き出してしまった。
「兄上、それは女性たちに失礼ですよ」
そう言いながらもツボに入った弟は口元をひくつかせて笑っているのが丸見えである。ベットに座り疲れ切っているカストールを見たポリュデウケスは提案をした。
「どこか息抜きに行きませんか? 街の方でにも」
「街か…そういえばあれ以来街に行ったことがないな」
双子の王子様が住んでいるのが王城でその城塞は囲まれており、街へ行くには高い塀を超えていかなければならない。
5年前魔獣討伐の際には王の許可を得て城塞を抜けて街の外に行ったりしたが、街の中をあまり見る余裕はなかった。
だからと言って外に行くような好奇心もなく、必要なものは執事などに頼めればすぐに事足りていた。
「そうだな、行ってみるか…」
「決まりですね。 それじゃあ明日の昼前に行きましょう」
「ああ、分かった」
その夜は普段慣れないことをした分ぐっすりと眠った。
「おはようございます 昨日は寝れましたか」
「ああ、今はすっきりしている」
「それはよかった」
「それでその格好でいくのか?」
というのもポリュデウケスの格好は金髪から茶色の髪になっており、瞳の色も変わっていたのにカストールはあまり驚いていない様子にポリュデウケスは首を傾げた。
「あまり驚かないのですね」
「いや、気配がお前のものだったから」
「…なるほど」
ポリュデウケスは寝ていてもカストールの感知能力が異常にまで高いことに驚きそして苦笑した。
(普段は隙だらけに見えるのに…全く本当に兄上には敵いませんね)
「ええ、流石に普段の格好でいくと王都中がパニックになり、ゆっくりするところじゃなくなるでしょ」
「確かに」
想像に難くなることにカストールはヒヤリとした。今日は舞踏会の翌日とあって二人の予定は丸一日休みとなっている。
「どこか行きたいところはあるのか」
「そうですね、まずはもう昼前なのでどこか食事をして少しぶらついて帰りましょうか」
「そうだな」
二人は変装をして城塞の警備をすり抜けた双子は王都に向かった。カストールは王都についた途端、あまりの人口密度に驚いた。
視界に入るところはいろんな種族で溢れかえっており、王城よりも人口密度があってカストールは面を喰らった。
『まさかこんなに多いとは…』
今の二人の格好は派手な色を使わず、質素な出で立ちをしているが、容姿はごまかせなかったらしくちらほらと道ゆく女性たちが見ていた。
「ねえ、あの二人カッコよくない」
「声をかけてみれば」
「あんたからすればいいじゃん」
女性たちが騒いでいるのを尻目に二人はどんどん突き進んでいった。そして飲食店を探していると何やら物騒な声を耳にした。
「おいおい、待ってくれよ 姉ちゃんたち」
「一緒に飲みに行こうぜ」
その不快な声がどこから聞こえるのか周囲を見ると大柄な二人が肩を組み、小柄な女性二人を囲んでいたのだ。
明日は第二十九話を投稿します٩( 'ω' )و
緊急事態宣言って要するに家で大人しくしてればいいんですよね(°▽°)仕事以外は別の所に行きたくても、こんなに世界中にウィルスが蔓延していたら空港とか怖くていけないですし、長期戦と思うしかないですね٩( 'ω' )و一人ひとりの自覚と責任が大切ですね(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
それなのに中国にある世界遺産を無料開放したら2万人が殺到したというニュースの映像を見てゾッとしました( ゜д゜)まだ終わっていないのに何を考えているのやら…