序章2:二つの大国と五大精霊
二つの大国はもとより仲が悪かった。そしてそのアースガルズと二ヴルヘイムの両方とも。
それぞれの国や歴史に過去の因縁もあるのはお互い様だ。
争う国もあればそれとは逆に協力し合う国が合ってもなんら不思議はない。
世界の各国の王や代表者は二つの大国の動きを警戒し、抑制と秩序を守るために同盟を組んだ国もある。
というよりも2つの大国の脅威に恐れを抱き、切迫した危機感を募らせていたからだ。
各国のシモン共和国、ラナティス国、ドルネオ国、シンドラ公国、ヘロデ帝国、オルネイ王国、マルシェの国王、女帝、代表者を呼び集め同盟を結びお互いに友好を高め合い、お互いに危険が及んだ時に援助し協力し合うことにした。
シモン共和国が君主、王が存在しない国だが、独特の文化を築き上げてきた。マルドォーク学園やギルドという組織が王がいない大きな役割を果たしている。君主制も無いため他の種族も差別無く過ごせる数少ない拠り所でもある。
ラナティス国は代々女系が統治している国で、女王が君臨している。
ドルネオ国は国家元首が統治している国である。シンドラ公国はシモン共和国と同じ君主制が無い国だが代わりに諸侯が君主になっている国家であり、ヘロデ帝国は皇帝が治めている国でオルネイ王国も国王が治めている。
こうして誰にも知られることはなく、火蓋は切られて落とされ全世界の争奪戦が始まった。
ミズガルズでは当たり前のように誰でも魔法を使うことができる。
それができるのは精霊たち「五大精霊」のお陰である。五大精霊は妖精族の上位種族「エレメンタル」と呼ばており神様のように崇められていて、大気や物質の「地」「水」「風」「火」「木」の五大元素の中に住まう自然の生き物に含まれている。
だから魔法世界に住む住人、種族達はいずれもの加護を受けている。
種族によって属性が分かれている。それだけ「属性=種族」は密接な関係があるといえるだろう。五大精霊は元素ごとに「地」「水」「風」「火」「木」の精霊がいる。
地の精霊はノームと呼ばれ、
種族は大地の性質を持つ巨人族との相性がいい
水の精霊はウンディーネ
種族は水の中に生きる種族との相性がいい
風の精霊はシルフ
エルフとの身体的特徴である俊敏な機動力と相性がいい
火の精霊はサラマンダー
竜人族との相性がいいが風を操る翼もあるから風の精霊との相性もいい。種族がもつ特性などの能力と相性が合っていれば鬼に金棒である。
木の精霊はドリュアス
ニンフ族との相性がいい
そして魔法世界の住人たちは分け隔てなく五大精霊の恩恵を与えられた。
しかし、どんな世界でも矛盾、差別、偏見は起きてしまう。
この世界では当然のように魔力を持つものが当たり前、いわゆるそれが普通なのだ。だが世界のどこかにはやはり魔力が弱いものもいる。
魔力が強いものほど精霊の加護が与えられ愛されたものとして優遇され、魔力が弱いものは精霊に愛されなかったものとしていつしか差別されてしまうようになってしまった。
弱肉強食ーー魔力が強い者ほど地位や権力があり、弱い者は淘汰される。
魔力の持つものほど有利なのは事実だが、それが実際に制御し使えるかはそのものが持つ器量しだい。
魔力が強いものはたまたま精霊たちの機嫌がよかっただけなのかもしれない。
その気まぐれな精霊達はそれぞれ名前があるがどんな姿をしているのかというと姿を見たものは誰もいないらしく、妖精族であっても見たことも無いらしい。
だけど魔力は弱くても悲観することは無いし日常には事欠かない生活能力は十分にあるのだ。
火をつけるのに薪を使わずに発火させることができ、重いものを持つときも物を浮かせるぐらいは容易にできてしまう。
この魔法世界で魔力が弱い者が生きていくのは立場は弱いがさほど難しくはないのだ。
だが、それは魔力が持つものだけの世界に過ぎない。もしもだ、もしもの話をしよう。
村人や町人でも普通に魔力を持っているのに関わらず、魔力自体を「持たない」ものがいたら?
実はこの魔法世界にただ一人だけいる。
その者の名はーーー




