第十七話:ギルド連合の受付・カルアとミルカ
キャラの濃い二人の登場です(´∀`*)
ギルド労働組合連合会
通称はギルド連合と呼ばれており、シモン共和国に数百年前に設立された超巨大組織団体である。所属人員は数万人にも及び、種族はフリーで制限は特に無い。マルドォーク魔法学園にもランクの低い任務などを提供・紹介をしている。
設立された理由は二つの大国の対抗抑止力・防衛のため、また凶悪な犯罪者を捕縛・処理をすることの治安維持もかねていて、他の種族の手では手に負えない事件などの依頼・仲立ちなどを引き受けている。
「ここがギルドです」
「大きいですね」
目の前まできた初めて見る大きな建物にティルは期待に目を輝かせた。
「……中が気に入りますか?」
「はい!」
早く入りたいとティルは勢いよくうなづいた。入るためにここに来たのではないかとティルは思うが、なぜか浮かない顔をするリオに疑問に思う。
「そ、そうですよね」
現に口元を引きつらせている。門をくぐる前までは意気揚々としていたリオだが、急に具合が悪くなったかのように顔色が悪い。ティルはどうしたのかともしかして具合が悪くなったかと心配する。
「どうかしましたか?」
「いえっ、何でもありません い、行きましょう」
『これも先生としたの務めだ……』とブツブツ小言でつぶやているリオが気になったが、ティルは足を進めた。
外観は石畳で作られた中央にも大きな城であるマルドォーク学園のようで、ここは言うならば小さなお城である。門をくぐると床は木で作られていおり、扉をギイっと開けると広間になっていてまばらに人がいる、少し奥に行くと受付に二人で向かおうとした。
そこにはカリーナの家の使用人が来ているような使用人の格好をした女性がいた。フリルのついた白いエプロンを組み合わせたドレスに同じく白いフリルのついたカチューシャをつけていた。
これが制服なのかと別の人のを見るが違って、この人だけだと言うことに気づいた。と言うよりも異様な雰囲気を放っていると言うか、着ている服が筋肉で盛り上がっていてぴっちりとしている。そうものすごく体格のいい女性だ。
「あら? リオちゃんじゃない? 久しぶりね〜」
女性?
女性にしては低い声にティルは首を傾げた。目の前の女性とリオはどうやら知り合いであるらしいが彼は女性が近づくにつれ顔色が悪くなった。
「お、お久しぶりです」
「相変わらず食べたい顔をしているわね」
「ひいっ?!」
遠くからでも分かったが筋骨隆々な肉体は指の先までも筋肉質で着ている服はピチピチで胸板がはちきれそうになっている。女性だと思いきや、立派な喉仏を見て同性だと分かった。くねくねとする動きが独特だとティルは感じる。
そう物静かに観察していると、彼……この場合は彼女だろうか。彼女はこちらに気づいたようである。
「うん? あらん、可愛い子をもう一人連れているわね」
「か、彼は僕の連れなので気にしないでください」
彼女はティルに興味を持ち狙いを定めたかのように目をぎらつかせた。そんな猛獣…彼女にリオが我が身を挺し庇おうとするが、彼の華奢な体は女性の重厚な肉体に成す術なく軽く飛ばされてしまう。
「あなたの連れだから気になるんじゃない、お名前は?」
「僕はティル・レイヴァントと言います」
目の前の人物に臆することなくティルは話した。
「私はカルアというの」
「しっかりとした子ね……親御さんがしっかり教育しているのねーーうん?レイヴァント?」
聞き覚えるのある名前にカルアはどこかうわ言のように呟いた。
「もしかして……あのレイヴァント? 君のお父さんの名前は…」
「エルヴィスですがーー」
「!?」
カルアは何か精神的な大ダメージを受けたようで、その巨体は力を失い膝に床をついた。
「まさか、彼の息子に会うなんて」
「父さんと知り合いなんですか」
「知り合いも何も彼は私の初恋の人よ、お母さんの名前はまさか……マリノアじゃないわよね?!」
「ーーそうですが」
「キイーー」とポケットの中に入っていたハンカチを悔しそうにカルアは食いしばらせたのに動じることもなく、それよりもマリノアとエルヴィスの知り合いに会えたことに喜びを感じていた。
「お母さんとお父さんを知っているんですか?」
「ええ、よく知っているわ」
悔しさを抑えられないカルアはティルに過去を語った。
「あの人と会ったのはもう十五年前よ」
〇〇
私は幼い頃から生まれつき体が弱くて小さくてね、悪い奴らに襲われそうになってしまったの。そこで助けてくれたのが彼エルヴィス・レイヴァントだったの。
それ以来彼のように強くなろうと思ってたら、彼のそばにいて右腕になろうと思っていたらいつの間にかあの女がいたの?!ペットのように彼に付いていたマリノアを何度も羨ましく思ったわ。
「そう、彼の息子なのね 今のうちに唾付けといた方がーー」
舌舐めずりをしゴゴゴと獣が襲い来るようなカルアの姿にティルはまるで、故郷にいる熊のようだと思った。妖精の森に暮らしている3メートルぐらいのモフモフの熊がおり、メアリとセシルと共によく枕がわりにしていた。
ティルの前でリオが忙しなく動いていたが、ペイっと小動物が放り出されるようにいとも呆気なく突破される。
『ベア、元気にしているかな』
と呑気に思い出していたティル、それをみていた観客たちは固唾を呑んでいたとき、もう少しで、ティルに手が届きそうな時に救世主が訪れた。
「ぐおあらあああ?!!」
カルアはお腹に強い衝撃をもろに食らってしまい漢らしい雄叫びを上げながら数メートル飛ばされ、テーブルや椅子にぶつかることなく床に倒される。ティルはその光景に呆気に取られる。
ティル達には見えなかったが横からものすごい速さで入ってきた女の子がいた。
「兄さん、新参者を困らせないで」
「ミルカ、もう痛いじゃない」
カルアは頬を膨らませながら、さっきの攻撃がまるでノーダメージのように起き上がる姿にティルは驚いた。
「これぐらいじゃないと兄さんの暴走を止められないでしょ」
いきなり筋骨粒々なカルアを蹴りでなぎ倒したのは、淡々と話すスレンダーなおかっぱ頭の美少女でどうやら血の繋がりがあるようである。カルアと対照的でフリルなど一切着いていない普通のブラウスにベストを羽織りズボンを履いていた。
「あのご兄弟なんですか」
「ええ、あれとは間違いなく親の血を引いています」
少女は「あれ」と言っているが、一応兄を親しく思っているだろう愛情を感じる。
「昔は兄さんは、美少年と言われていたみたいだけど、今はもう見る影もありませんから」
「そんなにですか?」
「はい、昔はファンクラブがあったくらいですから」
「それはすごいですね」
のほほんとティルは故郷にいるカリーナ達を思い出した。彼女達は容姿端麗で実際人気があってファンクラブが実際にあった。
「信じるのですか? 昔とは見る影もないのに」
「え、そうじゃないんですか?」
「……いえ、ただこうも外見が違っていると他の方々から兄弟と思われないので」
「なるほど…でも、体術を使うってところは似ていますね」
「はい、兄直伝なので…」
今まで表情がないに等しかったが口角がわずかに笑みを浮かべた。彼女は元々感情表現があまりない方なのだろう。妹のメアリに雰囲気や仕草がすごく似ているとティルは感じて勝手に親しみを覚える。
「挨拶が遅れてすみません。 私はギルドの受付のミルカと申します」
「僕はティル・レイヴァントと言います」
ミルカは兄の暴走をリオに謝罪した。
「リオ先生も迷惑をかけて申し訳ありません」
「いえ……」
這う這うの体でリオは何とか立ち上がり、ティルに近寄る。
「ティル君、大丈夫ですか?」
「はい」
「面目ありません、お助けできずに」
「僕はどこも怪我をしていないから大丈夫ですよ」
ティルは安心させるように異常はないと身振り手振りで示した。
「リオ先生はこちらにいらしたのは、そちらの彼のーー」
「あっ、ティルで構いません」
「……ティルさんの案内ですか?」
「はい ティルさんは故郷から出たことが無いので、僕が付き添っているんです」
「なら入学試験をまだ受けていないんですね」
「入学試験?」
入学試験という単語をティルは初めて聞いた。
「入学試験のことは明後日説明しますね、今日はそのまま宿でゆっくりしてください。午前は手続きがあるので、明日の午後から街を案内しますね」
「ティルさん、リオ先生の探索と記憶能力は一級品ですよ。 学園都市で迷子には絶対ならないと思います」
この多くにひしめき合っている学園都市で一本道を間違えれば目的地にたどり着くのも大変そうである。
確かにここに来るのにも中央通りの一本道だったが多くの人とぶつかり合うことものなくスイスイと歩けたのは単に空いていたからではなく、リオが導いてくれたからである。その何気ない能力にティルは驚いた。
「すごいですね、リオ先生」
「いえ、僕なんて……」
すごいことなのにやたら謙遜そしているのが気になったがティルはあえて追求しなかった。
「また、来てねリオちゃ〜ん」
「はい……」
カルアの激しい挨拶にリオは口元を引きつらせて手を振った。ティルはミルカに手を振ると彼女は小さく手を振ってくれた。