第十六話:マルドォーク魔法学園都市
今回は短めです。
門を通過し学園に到着したティルとリオ。
ティルは目の前の光景に彼はただ圧倒して立ちすくんだ。バースの町にあった門よりもはるかに大きな城門がそこにあった。
「うわ〜、なんて大きさっ 門の天辺が見えない、町の門も大きかったですが、こんな大きな門見たことがありません!」
「この城門はこの学園都市の門であり、門から門へと転送された人たちはここに着く仕組みです」
そしてさっきまでいた町とは比べられないぐらい人が混雑していて、はぐれたらまず見つけるのは困難だろうとティルは先を歩くリオと逸れないように気をつける。リオはティルの歩調と合わせゆっくり歩きながら話しかける。
「学園に着いたらまず一番始めにティルさんに見せたいものがあるんです」
「僕にですか?」
「はい。この門をくぐればマルドォーク学園はすぐそこです」
ティルはリオと景色を見晴らせる高台に登った。石造りでできた階段は頑丈に作られており重厚感を感じる。
とうとう階段が無くなりかけた頃、目的地が近いことを知った。その先の景色を見たくて無意識に足が早く動いて高台の手摺りを掴んだ。その景観にティルはただ言葉を失った。
そして呆然と立ち尽くすティルの横にリオが遅れてやって来た。ティルの驚きようにご満悦である。
「ここからの眺めは私のお気に入りなんです」
「ここが…私とティルさんのご両親マリノアさんとエルヴィスさんが学生の時に出会い、通っていた学園、その名もーーーマルドォーク魔法学園です」
そこには絵本でしか見た事がないようなお城があり、見渡すと堅固な城塞で囲まれていた。お城というよりも要塞という方が合っている。そのお城の周りにはお店や人が住む住宅などが建ち並んでいて説明を受けながらティルはリオにについて行った。
「これってどうゆう仕組み何ですか?」
まずティルが驚いたのは城壁の外を窺うと水路が流れていると言うよりも学園都市全体が泉の中に浮かんでいるような光景だったからだ。どんな原理で浮上しているのかと困惑する。
「私も最初見たときは驚きましたがこれは創設当時から変わっていないそうです」
こんな場所もあるものだとティルはただ圧倒される。
「学園都市にはそれぞれの街が東西南北にあります」
「私たちがいるゲートがあるところを南街区【サウス・タウン】と言います」
「そして西街区は【ウエスト・タウン】、東街区【イースト・タウン】、西街区【ウエスト・タウン】があります」
ここに向かうまでの道なりにリオから簡単な説明を受けて時間ができたらゆっくりと回ってみたいと思った。こんなに広いと全部を回るのに一週間くらいかかりそうである。
正確には『マルドォーク魔法学園都市』というのが正解らしい。
これだけの人数となるともはや学園の域を超えている。ティルが通っていた学び舎とは比較にならない。生徒や卒業生を合わせるとおよそ数千人にも及ぶらしくで都市部の方には数百人に及ぶ住人が住んでいるらしい。
「ここは魔法世界でもトップクラスの学び舎で有名な魔法使いを輩出しているんです」
「そして、この魔法世界ミドガルズには国家規模の学園があり、その中でも有名で規模が大きい学校が3カ国の名があげられます」
1カ国目は二つの大国の一つアリストテレス帝国の建立した学院ーーアリストテレス学院
2カ国目はもう一つの大国ラシーヤ連邦の建立した学校ーー軍事士官学校プロエリウム
そして3カ国目はマルドォーク一族が建立した学園我が校であるマルドォーク魔法学園都市
「2つの大国の学園は独立とした国家の為、他国の人間が入学することはできませんが、マルドォークだけは種族との交流を重んじて、多種族の入学を認めているんです」
「へ〜 すごいんですね……!」
ティルは言い終わる直前に目の前にある建物の大きさに驚いた。城と同比較できるぐらいに、明らかに他の建造物の規模と違った。
「高台からも見えましたけど、この建物もすごい大きいですね!」
「これは闘技場です」
年に一度この闘技場で親善・交流目的で「コロセウム」という異種格闘戦が開催され、学校の威信や日頃の鍛錬の成果を見せる絶好の場所でもあります。
「というよりも」と肩をすくめるリオ。
「二つの大国ではコロセウムを行うと争いの火種になりやすいので、消去法でシモン共和国で開催されるのが当然となっているんです。いわばこの学園は中立の立場という意味合いが強いかもしれません」
その時何かに違和感を感じたティルは疑問に思ったことをリオに話した。
「でも、大丈夫なんですか?」
「え?」
「アリストテレス帝国とラシーヤ連邦って巨大な国なんですよね」
「はい、その通りです」
「今まで大きな争いごとは無かったんですか?」
「そうですね……ここ数百年は記録に無かったですが、数千年前は結構大きな戦争があったそうです」
「この国に二つの大国がやってくる時に今まで何も起こらなかったのですか?」
「はい」と先生はティルの心配を払拭するように断言した。
『それじゃあこのシモン共和国には二つの大国には負けないぐらいの戦力があるってことになるんだけどいくら学園がすごくても……どういうことだろう?』
ティルは何でだろうと首を傾げていたのを察したリオはクスリと笑った。
「どうやら、それをものすごく知りたいようですね」
顔に出ていたティルは気恥ずかしくなりながらもそれにうなずいた。
「分かりました。今からその答えをティルさんにお見せします」
先生が向かおうとする行き先をティルは気になりリオに質問した。
「どこに行くんですか?」
「百聞は一見にしかず、聞くよりも見た方が早いですよね。ギルドに行きましょう」