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魔法世界の少年ティルの物語 ~魔力ゼロで元魔王な少年は第二の人生を気ままに生きていきます  作者: yume
第一章:かつて魔王と語り継がれた少年の第二の人生の始まり
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第十五話:友との別れ・新たなる世界への初めの一歩

三人称です。

 ティルはリオと共に道を歩いていき、普段は馬車で遠回りして町まで行き来しているが荷物などを運び込む必要はないので 近道をして町には30分でたどり着いた。


 バースの町には門という場所があるのでそこを目指すらしい。


 ティルは町の中を歩きながら、しばらくは別れになるかもしれないと感傷的になっていた。町には小さい頃親しんだ幼なじみたちがいる。昨日妖精たちに頼んでみんなに知らせ今日には学園へ行くことを伝えた。


 その道中では学園に行くまでの間だがティルはリオ先生からこの魔法世界の常識を簡単に説明してくれた。


「では、改めてですがこれからよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


「先生のことはなんて呼べばいいですか?」


「フィンナンシュは長いのでリオでいいですよ」


「分かりました。リオ先生と呼びます」


「それじゃあ僕はティルさんと呼んで構いませんか?」


「全然いいですよ」


「何か分からないことや困ったことがあったらなんでも言ってください」


「はい!」


「あっ そういえば、ティルさんは魔法世界が九つの世界の一つってご存知ですか?」


「世界の一つ?」


 初めての単語にティルは首を傾げた。


「はい、この魔法世界の他に8つの大きな世界、異世界があると言われているんですが」


「いわれている?」


「はい あるにはあるらしいのですが僕も実際は見た事がないんです」


「へ〜」


「あとは……こんな伝説があるんです」


 かつて世界は一つだった。


 しかしある日を境に九つの世界に分裂した。


 そのうちの一つがこの魔法世界。


 それがこの魔法世界の創成期の始まり。


 そのような御業ができるの者のことを、「魔王」と畏怖と羨望を込めて、そう呼ばれていて、今も伝説として語り継がれる存在である。


「へえ〜 面白いですね」


 ティルは子供の頃寝る前によくマリノアから絵本や物語など読み聞かせられた為慣れていたのでそんな感覚である。


「まあ 魔王とかも実際に見たこと無いので」


 それを語ったリオも眉唾ものだと思っている。


「学園までは後どのくらいかかりますか?」


「そうですね……歩いたら何日もかかりますがというより国に入るには難しいと思います、そんなことをしたら密入国になって強制送還されるのが関の山だと思いますし、下手したら重罪ですから」


「そんなに厳しいんですか?」


「はい。ですから私たちは時間短縮と安全のために門【ゲート】を使っています。山奥にはありませんがこうゆう町や都にいけばあちこちにありますよ」


「ゲート?(どこかで聞いたような)」


「はい その名の通り門のことなのですが」


 そうして歩いているうちにティルたちはにたどり着いた。リオとティルが町中を歩いているうちに門の前に到着した。白い石造りできた門は大きく、何人かその前に順番に並んでいるのが見える。


「これがゲートです」


「あっ、この門みたいなものは何回か見たことあります。 確か前にカリーナに教えてもらったような」


「これをくぐるだけで学園までひとっ飛びすることができるんです」


「えっ!? そんなすぐにですか!?」


 今まで何回も町に来る機会があったのに今まで無頓着だったのはゲートの先に行く機会がなかったからだ。そしてティルが何度か見かけたゲートの両脇には門番みたいな人がいて、門番から何か魔法みたいなものをかけられている。


「門には魔法がかかっていて、門番の魔法がかかっていないものは弾かれてしまう仕組みになっているんです」


「すごいですね」


 ティルはまだ学園についていないのに驚きの連続で圧倒されていた。学園についたらどうなるのか急に不安になった。その心配が顔に出ていたのかリオはティルの手をつないでくれた。


「大丈夫です、私は先生です ティルさんは生徒じゃなくても先生である私が守ります」


 ぎゅっとつないでくれた手の温かさに不安だったティルはほっとした。


『リオ先生 いい先生だな…この人のところで勉強とか教えてもらいたいな』とティルは心の中で彼に対しての少し気持ちが変わった。


 順番を待っていると遠くの方から自分を呼ぶ声がしてして何だろうと振り向いた。


「ティル〜!! まだ行ってないわよね?!」


「ティル君っ」


 自分の名前を大声で叫びながら、突っ込んできたので周りはなんだなんだとざわめいた。


「うう……恥ずかしい」


 そう思いながらも、自分のことで必死にきてくれたことに嬉しくもあった。全速力で走ってきたであろうに、汗一つ書いていないのはさすが獣人族である。そして彼らはティルを見つけた瞬間、走り寄ってきた。一番先頭にいるカリーナがティルに気づいた。

「あっいた! 見つけた」


「よかった まだ門をくぐっていなくて」


「みんなっ きてくれたの」


「全く水臭いんだから」


「カリーナ」


「お見送りくらいしたいです お元気でティル君」


「ソフィー」


「風邪ひかないようにね」


「ブラ君」


「帰りたくなったらいつでも帰ってこいよ」


「イノ」


「ったくお別れ会とかゆっくりしたかったのに」


「はは、ごめんね まあ今度帰ってきたときの楽しみにとっておく」


 そして一人だけいないことにブラントは呟いた。


「オリバー君に会えなくて残念だったね」


 オリバーはまた会えないことにティルは分かっていた。昨日妖精から伝言を預けてそれをティルに伝えていた。


「オリバーから一言もらえただけで十分だよ」


「え、そうなの? なんて」


「『またな』……って」


「またなってたった一言なの?! 何カッコつけてるのよ、あいつは」


 ぐちぐちと言うカリーナの様子にティルは可笑しくて笑みをこぼした。


「人気者はしょうがないね」


 そんなことを言うティルにイノは口元を引きつかせて話した。


「って他人事のように言っているけど……ティル、君も結構人気があったんだからね」


「……え、そうなの? お世辞でも嬉しいよ」


 笑いながらいうティルにイノやカリーナは変わらない友人に自分たちがどれだけ苦労したか思い出した。


『オリバーやイノもいいけど、ティルやブラもいいわよね…庇護欲がそそられるから』


けれど学舎の時はカリーナとソフィーという二人の美少女が近くにいたためティルやブラントに近づく女子はいなかった。近づくようなものなら安全か危険か判断してからの過保護っぷりであった。今度どうなるかはもうそばにはいられないのでそれも心配だった。


 それも気になっていたが、


「それでこの子って何なの?」


 カリーナはティルの隣にいるリオに視線を向けて誰なのか聞かれてティルはヒヤリとした。


「カリーナ、この人はリオ先生って言って学園の先生です」


「えっ、先生?! し、失礼しました」


 慌ててカリーナは謝罪した。ティルもまた初対面の時は子供にしか見えなかったので無理もない。


「いや、いいんですよ 慣れているので、はは」


 と最後の笑いが何だか悲しく聞こえたので聞かないふりをした。何だか気まずい雰囲気になっていることを察したイノは機転を利かせた。


 「リオ先生、ティルをよろしくお願いします」


 「しっかりしてそうで結構ぼ〜としていることが多いので助けてやってください」

 

 「イノ」


 それに見倣いカリーナたちもリオにお辞儀をする。


「私たちからもよろしくお願いします」


「みんな…」


「…はい! 頼りない僕ですが精一杯努力します」


 リオはみんなの誠意に答えて、お辞儀を返した。昔話に花を咲かせていると、ティルたちの番号を呼ばれた。


 門番達が通行人にかけていた魔法をティルたちにかけて何の異常もなければ、通行オッケーだという証拠である。


 ティルとリオにかかってくる魔法はとても幻想的で美しかった。光る鱗粉がティルとリオを包み、とうとうゲートの前まで歩いてリオは高らかに行き先を告げた。


『ゲート! マルドォーク魔法学園まで』


 その時、幼なじみの声が呼ぶ声がしたので何だろうと振り向いた。さっきまでの笑顔が崩れ、涙まじりになっている皆の表情に思わず目頭が熱くなった。


 走馬灯のように幼なじみと出会ったときのことを思い出したり、今でも忘れらない大切な記憶である。溢れそうになる気持ちをグッと堪え、ティルは叫んだ。


「っ……行ってきます!」


「「行ってらっしゃい!!」」


 幼なじみの激励とともに、ティルたちは一歩を踏み出しゲートを通過した。


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