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魔法世界の少年ティルの物語 ~魔力ゼロで元魔王な少年は第二の人生を気ままに生きていきます  作者: yume
第一章:かつて魔王と語り継がれた少年の第二の人生の始まり
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第九話:自己防衛の本能

三人称です。

 それを見たカリーナはとっさに動き足元に落ちていた木の棒で向かっていった。


「カリーナ!!」


「カリーナちゃん」


 カリーナの向こうみずな行動に周りにいたティル達は目を見開き驚愕する。


「早く逃げるわよ」


「うゔ」


 カリーナは倒れていた男の子に手を差し伸べて逃げ出そうとするが目の前に魔獣の巨体が立ちはだかる。


「怖くないんだから怒った時の私のお母様の方がもっと…」


 どうにか一緒に逃げ出そうとするが、恐怖で足元をすくんだカリーナは虚勢をはる。


 ヒポカリウスは見逃すはずもなく大きな翼をバサバサとはためかせ、男の子とカリーナの小さな体は吹き飛ばされてしまう。


「きゃああ?!」


「うわあ?!」


 カリーナの体は地面に叩きつけられるはずだったがいつまで立っても衝撃はこなかった。どうしてなのかと閉じていた目をカリーナは開けるとそこには見知った少年の顔があった。


 それはーー


「っ……オリバー!」


 衝撃が少なかったのはオリバーがカリーナの体を自分の方で受け止めて衝撃を緩和したからだ。


「っカリーナ…大丈夫か」


「うんっ、大丈夫だよ オリバーは」


「俺は大丈夫……」


 その後パタリと頭を強く打ってしまったのか気を失うように眠ったオリバーを見てカリーナは驚く。


「オリバー、ちょっとオリバー! 起きて?!」


 揺さぶるが一向に目を覚さない彼にカリーナは涙がポロリと溢れた。


「いやっ、目を覚まして」


 いつもの冷静さは無くしてしまったカリーナは感情的になり、覆いかぶさる魔獣に転がっていた木の棒を手に持ち威嚇した。


「こっちにこないで?!」


 ヒポカリウスは容赦無くカリーナ目掛けてブレスをはいた。それとともに鳴き声が響き渡りカリーナや気を失ったオリバー、周囲の子供達も飛ばされてしまった。


 極度の恐怖や緊張で気を失い皆が倒れてしまうなか、一人だけ立ち上がったものがいた。


「ぐっ…みんな」


 ティルは風圧が来るときにとっさにしゃがみ込んでいたため、風圧をモロに食らわずにすんだがダメージを食らわなかったわけではない。


 よろける足をふらつかせながら周囲を伺ったティルはみんなの様子に言葉を失った彼は力を失い膝たちとなる。


「…っ」


 魔獣は一人の子供が意識があることに気づき、近寄ってきた。なす術がないティルはただ嘆くしかできない。獣人族のような力もないただの人間よりも無力な自分を。


『僕は何もできないのか…このままみんなーーっ』


「…僕の友達なんだ」


「彼らは最初にできた初めての…」


「だから…」


 その瞬間、意識がふつりと無くなった。


 魔獣は容赦無くティルの体を爪で引き裂こうとしたが、不思議なことがおきた。魔獣はいきなり後方に退き警戒心をあらわにしたのだ。獣人族より身体能力が劣るティルに対してだ。


 獣人族の祖先も本能は生まれつき持っている自己防衛でもある。


 それが働き自分の身が危険だと感じた魔獣だったが当の本人はティルはもう意識がなかった。けれど、()()()()は魔獣を離さずにじっと凝視しいた。


 魔獣はその異様に放つ雰囲気にたまらず飛び去っていき、ティルは先生がくるまで無意識に膝は付いていたが立っていた。


「みんなっ、大丈夫?!」


 遠くから先生の声が聞こえたのからなのか定かではないが直後ティルはふらりと倒れ気を失った。


〇〇


 魔獣から襲われたことを学び舎から緊急の連絡がきた親達は大急ぎでやってきて先生から事情を聞いた男の子達の親は怒り、ゲンコツを食らわせた。


「ごめんなさい」「もうしません」と号泣し、迷惑をかけたカリーナ達にも謝罪をさせた。


「申し訳ありません。うちのバカ息子のせいで危ない目に合わせてしまって」


 男の子達の親は平謝りをし、男の子はベットにいるカリーナに向かい震える声であやまった。


「ごめんなさい…カリーナちゃん」


「うん…もういいよ」


 一人ひとり謝っているとカリーナの母親レイヤがやってきた。


「カリーナっ」


「お母様…」


 勝手なことをして怒られると思ったカリーナは目を瞑ったが予想外な優しい声音だった。


「怒らないわよ…よく頑張ったわね」


 その時頬に手を添えられたカリーナの瞳から涙が溢れていき目頭が熱くなりポロポロと零れた。


「…うん」


 レイヤは優しく娘を抱きしめていると一人の少年から声をかけられた。


「あの、僕のせいなんです」


「うん?」


「僕が森の奥に行きたいって言ったから」


 涙を流した男の子は打たれることを覚悟でギュッと目を瞑っていたが思った衝撃はなく優しく頭を撫でられた、


「君も無事でよかった」


 それから「ごめんなさい」と何度も呟き、男の子は親と一緒に帰って行った。他の生徒達も親がきて連れ帰って行った。


 ティルは翌日目を覚ますと最初に目があったのはマリノアだった。


「っ…ティル! 目を覚ましたのね」


「よかったっ…本当に」


「お…母さん? どうしてここに」


 山奥の家にいるはずの母親がどうして屋敷にいるのだと不思議そうに見上げた。


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