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魔法世界の少年ティルの物語 ~魔力ゼロで元魔王な少年は第二の人生を気ままに生きていきます  作者: yume
第一章:かつて魔王と語り継がれた少年の第二の人生の始まり
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第八話:魔獣

三人称です。

「うわ〜、すごいね先生」


「2匹も釣っている」


「まあ、こんなところですね」


 パチパチと生徒達に喝采されて先生は満悦の笑みを浮かべた。


「先生は魚をどうやって取ったんですか」


「いい質問ね」


「それは耳を研ぎ澄まして川の流れをみて、魚が反応できない速さで捉えるの」


「え〜、そんなのできないよ〜」


「私も最初は全然だったけど、鍛えていくうちに自分の体の使い方がわかっていくわ」


「は〜い」


 それから体験授業を挟みながら、読み書きの勉強をしていくようになった。


「は〜、何だか今日は面白かったね」


「うん…」


 ティルはみんなと一緒にいながらどこか疎外感を感じていた。


『僕には獣人族の血を引いていない……なら僕は自分の身はどう守ればいいんだろう』


 両親に相談することも無く不安に駆られながら次の体験授業に向かった。今回は森を探索することで見て触れて、採取するのが主であった。


「それとこれは何回も授業の前に言っていることがあるわよね さてそれは何だったでしょう〜?」


「奥の森には絶対に行っちゃダメ!」


 一人のクラスの女の子が答えた。


「正解よ。奥地には獣人族の祖先達がいて、気位が高く獣の血を引く獣人族でも寄せ付けないぐらいで近づいたら何をされるか分からないからね〜ふふふ」


 脅かすように先生は言うと生徒達は震えあがり怯えたのを見て返事をした。


「みんなわかったわね〜」


「は〜い」


「そんな危ないところに絶対行かないよね」


「うん」


 先生の言いつけをクラスの子たちが頷いている中それを聞いた男の子数人がニヤリとしたのをティルは見逃さなかった。


 生徒達はグループに別れ、ティル、カリーナ、オリバー、ソフィー、イノ、ブラントというおなじみのメンバーとなった。


「何だかいつもと変わらないわね」


 カリーナはいうが、人見知りがあるソフィーにとっては良かった。


「でもこっちの方が安心します」


「それで自由行動だからどうしようか?」


「ソフィー、そう言えば見つけたい薬草があるって言ってたわよね」


「うん、原始の森しかない貴重な薬草があって」


 ソフィーの家は薬屋で様々な薬草から軟膏を処方したりする。小さい頃から本が好きな彼女は薬草の知識を集めることが大好きだった。


 いつもはチョコチョコと歩く彼女だが今は我先にと歩く姿は町中でのソフィーを知っているティル達部はまるで別人に写った。


「何だか生き生きしているね、ソフィー」


 少し歩いていくとソフィーの声が上がった。


「あ…もしかして これって!」


 普段は大きい声を出さない彼女だが何だろうとティルは窺うと、持ってきた手提げの中から本を取り出し開くと、そこにはいろんな種類の薬草の名前や効能が描かれていた。


「すごいね この本」


「それソフィーの手作りなのよ」


 カリーナはまるで我が事のように自慢げに言う。


「へ〜 そうなんだ すごいね」


 ソフィーはティルにあからさまに褒められたことに照れて、恥ずかしそうに俯いた。


「さてとーー…ソフィーの薬草も見つかったことだし」


 その時ふと視界に横切るものを見たティルは一瞬立ち止まる。


『え?!』


 次に目を見開いた時はもうその姿は無かった。


『あれ…でもいまさっき……いや こんなところにいるはずはないか…』


 少し疲れているのだろうと首を横に振って、気持ちを切り替えた。


 ティルはせっかくの楽しみを奪うようなことをしたくなかった。結局何も言えずにいた。カリーナの声にティルは耳を傾ける。



「ってどうしたの、オリバーとイノ?」


 ティル達がいる方向とは全く別の方向を凝視していたオリバーとイノにカリーナは首を傾げた。


「あっちの方角って確か先生が言っていた奥地だよね」


「うん? 確かにそのはずだけど」


「今男の子が何人かそっちに向かったような…」とイノは口元を引きつかせた。


「それってまずいでしょ! 急いで連れ戻さないと」


 カリーナはイノに叫んだ。


「イノは先生に伝えてっ…私達はその馬鹿たちの後を追うから」


 カリーナを含めティル、オリバー、ブラント、ソフィーは足早に向かった。


「へへん、行くなって言われると行きたくなるよなお前ら」


「そうだよな〜」


 男の子達は自分たちに危険が迫っていることに気づかなかった。男の子の一人が大きな木の下に色鮮やかな羽があるのを発見した。


「おい、あそこにすげえ綺麗な羽があるぞ」


「えっ、どこだ おわ〜すげえ綺麗だな」


「あれ取りに行こうぜ」


「でも近くに何もいないかな」


「大丈夫じゃねえ。 急いで取ってくれば」


 男の子の心配をよそにリーダー格の男の子が足音を消して取りに行き、羽のところまでたどり着いた。


「おわ、めっちゃ軽い」


 羽は大きいものの非常に軽く、子供でも持ち運ぶ事は苦にならなかった。それを持って男の子達のところに持って帰ろうとしたその瞬間だった。


 獣人族の祖先である魔獣ヒポカリウスは足音を立てないぐらいじゃ気づかないはずがなく、近くに来た時点で気づき警戒心を募らせていた。


 気配を殺し、背景と同化し獲物を待つ狩人のように魔獣は絶好の機会を狙い男の子達が自分の領域に入るのを待ち構えていたのだ。


 鳥目のため鳥は夜に空を飛ぶことができないと言われているが、魔獣であれば話は別である。


 魔獣ヒポカリウスは自分の聖域に入ってきた異分子を排除しようとバサリと大きな翼を広げて降下した。男の子はあまりの迫力に口をあんぐりと開ける。


 カリーナ達はようやく男の子達にたどり着き、大声をあげる。


「ちょっと何やっているのあんた達、さっさと逃げなさい!?」


 男の子達は逃げ出そうとするが一人の男の子が転んでしまった。



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