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プロローグ
長編です。
ゆっくりと展開していきます。
気長にお付き合いいただけると嬉しいです。
池に浮かぶ水鳥も眠る、風もない静かな夜。
鏡面のように凪いだ水面に映る丸い月が、まるで空の月と双子星のように共に明るく輝き、当たり前のような顔でキラキラと世界を輝かせている。
冷えた空気のせいなのか景色は夜闇の中に透き通る程クリアで、そしてこれ以上はない程に辺りはシンと黙していた。
透明な夜闇に包まれながらゆっくりと息を吐いていくと、ふわりと空気が白く染まった。
今度は空に浮かぶ月に向かって息を吐く。
ふわり、と。
月が、白い空気の向こうで僅かに揺れた。
今日の月は、特別な月。
特別に大きくて、美しい月。
その無限の力を取りこむために、ぼくはゆっくりと丸い月に手を伸ばす、
空に向かって息を吐いた。
雲一つない空に浮かぶ明るい月が、伸ばした指の先で白く霞んだ。