もふもふ愛好作家今野春 ~アフターストーリー~
「さあて、と。今日のもふもふの予約数は……うんうん。いいね。超平均的」
僕こと今野春は、黒色のもふもふした物体を首から下げながらパソコンで売り上げ状況を確認する。
僕とかませ太郎は今、もふもふの開発に成功し、そして販売をはじめた。キャッチコピーとして「至高のもふもふ。極楽の気持ちよさ」として売り出したところ、なかなか評判もよく、今では徐々にだが赤字もなくなってきている。
ちなみにもふもふの概要については買ってからのお楽しみである。某大手ネットショッピングサイトでも、画像も無しのレビューだけが見れるようになっている。それがまた効果てきめんらしく、これからが楽しみだ。
「じゃ、あとはこれを印刷して……ああ、かませさんに宣伝頼まないとなぁ。僕広告のセンスないし……」
などと言いながら、僕は今週分のデータをまとめる。
まだ事業を立ち上げてから一ヶ月と半分。少しずつ名前も売れてきたし、ここからが勝負どころだ。絶対に炎上は避けなければ。僕の豆腐メンタルがどうにかなってしまう。
「ん? 新着メッセージ?」
手元にあったスマホが振動し、そこには「ふきのとう」と書かれたメッセージアイコンが。
僕は両親指を駆使して六桁のパスワードを解いて内容を確認する。
『事業はうまくいってるっぽいね』
『ええ、それなりに』
ふきのとうさんは、僕の小説家時代の先輩であり、仲良くしてくれた恩人のような存在である。今でもこうして世界一周の旅をしながら気遣ってくれるほどだ。
『そろそろ事業拡大してもいいんじゃないか?』
『いやですよ。細々と一個の商品で勝負するのがうちの方針ですから』
それに、社員など面倒だしな。面接とかあんまりわからないし。今はかませさんと二人で十分だ。
『そうか……。ま、頑張れよ』
『はい。言われずとも、です』
最後のコメントに既読がついたのを確認して、僕はスマホの電源を切る。
ふと時計を見ると、もうすでに午後六時。
「あ、今日ダンスあるじゃん」
僕は急いで趣味であるダンスの支度をする。
やはり、たまには体を動かさないとな。
僕はパソコンの電源を落とした。
……なんか、書いていて今までで一番楽しかったです。むらさき毒きのこ様に感謝を!