六、友情(幽情)
「俺達は一体何をしているんだろうな?」
小夏ちゃんに振り回された疲れからだろう、砂浜に倒れこんだ赤目がぼやく。
小夏ちゃんはすぐに駆けより、赤目を砂で埋め始めていた。秋名ちゃんも真似して赤目に砂をかけ続けている。
私達は海に来ていた。
今年はじめての海である。
赤目と二人ではまず来ないだろう場所なので新鮮ではあるが、それも相まって戸惑いは大きい。
この島では女子高生はどんな遊び方をしているのかと気になってはいたが、何の事はない、普通の海水浴であった。
私と赤目は当たり前だが、水着など持って来ていないので、私はTシャツにジーンズ、赤目は上半身裸に短パンという出で立ちである。
対する柊家の三姉妹は、全員スクール水着だった。
全員である。
秋名ちゃんはもちろんそうだろう、小夏ちゃんも仕方ないかもしれない。
しかし、春子さんまでスクール水着というのはどうだろう……。一応花も盛りの女子高生。少しは派手な水着を着ても良いのでは無いだろうか。
しかも胸だけが年に不相応に大きいせいで、ぱっつんぱっつんだ。おそらく学校指定のものでは対応出来るサイズが無いのだろう。もしかしたら私に魅せつける為にわざと着ているのかもしれない。もちろん冗談だ。
「夏木さーん! こっちに来て泳ぎましょうよー!」
そんな春子さんは海の中を元気に泳ぎまわっている。私もさっきまで泳いでいたのだが、流石に体力の限界だった
「ほらほらほら、こっちこっち!」
家にいる時とは打って変わって積極的な春子さん。それこそ小夏ちゃんのようにグイグイと自分を出してくる。
「ちょっと待って下さ……」
最後まで言い終わらないうちに、再び水の世界に引きずり込まれてしまった。
ガボガボ
正直言って、海は嫌いではない。
この浮遊感が地上の重りを忘れさせ、まるで私がこの世界に居ても良いのだという錯覚にも似た肯定感を与えてくれる。
横を見ると春子さんの笑顔。
海の中で見るとまるで人魚のよう。
海の中に引き摺り込む事を考えると、どちらかと言うとセイレーンか。
やはり綺麗な顔だと思う。
今改めてそう思うのは、今が笑顔だからだろうか。いや、先程からも微笑は浮かべていた。多分、先程までの笑顔とはその根本が違うからだろう。相手のことを思っての笑顔ではなく、自分のための笑顔。それを今、初めて目にしている気がする。
その笑顔を作れたのが私なのだとしたら、少しだけ誇らしい。
「ふふふ」
私の息継ぎに合わせたように、春子さんも水面から顔をだす。
その笑顔に神秘性は感じられない。どこにでも居る普通の年頃の女の子だ。
「楽しいですね!」
「そうですか、それは何より」
「ええ! 本当に! 本当に楽しい!」
心の底からと言う言葉がまさに相応しいだろう。春子さんは今、本当に心の底から楽しいんでいるのだ。
「春子さんは泳ぐのが好きなんですね」
「いいえ、違いますよ。あ、泳ぐのは嫌いじゃありません。だけど、今楽しいのは夏木さんと一緒だからです」
「私と?」
「はい! 誰かと一緒に遊ぶことがこんなに楽しいだなんて知りませんでした!」
キラキラと輝いているのは、きっと水滴だけでは無いだろう。
「そんな大げさな……。別にこの島に友達がいないってわけでは無いんでしょう?」
しかし、その言葉で、太陽のように輝いていた春子さんの笑顔に、雲がかかった。
「いませんよ」
「え?」
「この島に友達なんていません。それどころか、島の外にさえも私の友達なんてものは存在していません」
「そんな事は無いでしょう。こんな性格のいい美少女に、友達がいないはずがありません」
あるいは嫉妬からそのような事もあるかもしれないが、こんな小さな島の交友関係でそんな好き嫌いをしていては、付き合う人間もいなくなるだろう。
「ふふ、褒めてくださって有難う御座います。夏木さんは本当に優しいですね。ですけど、それでも私に友達がいないことには変わりありません」
何故? とは聞けなかった。
大抵の場合、何故友達が居ないのかなんて、本人にはその理由が分からないからだ。それは私が身を持って良く知っている。
「ねぇ、夏木さん」
春子さんの顔が不意に真剣さを取り戻す。
「夏木さん、私とお友達になってくださいませんか?」
冗談、とは思えなかった。
友達とは、友達になってと言ってなるものでは無いだろう。それぐらいの事は私にも分かる。
だけれど、春子さんの顔は真剣そのもので、これが友達のなり方に間違いないと信じて憚らない様子だ。
「やっぱり嫌でしたか?」
そんな顔を見続けることは、そんな痛々しい程に真剣な顔を見続ける事は、私には出来なかった。
だから私は、春子さんの手を取った。
「まさか、こちらからお願いします。私と友達になって下さい」
花が咲いたと思った。
笑顔に衝撃を受けることがあるとは思わなかった。それほどまでに、それは綺麗な笑顔だった。
「有難う御座います! えへへっ! これでずっと友達ですね!」
私にとっても、赤目以来、久しぶりに親しい人間が出来た瞬間だった。
きっとこの時ばかりは、私もぎこちないながらも笑顔を作れていたと信じたい。この瞬間をそのまま額に入れて保存しておきたい。そう思う位には、幸せを感じる瞬間だった。
「さぁ、夏木さん! 夏は始まったばかりですよ! もっと沢山遊びましょう!」
そう言うと、春子さんは再び水面に潜り、魚を追いかけ始める。
夏は始まったばかり、この島にも滞在を始めたばかり。
だけれども、楽しい時間はいつまでもは続かなかった。
翌日すぐに、私は春子さんに友達がいない理由。そして、今この時に、友達になりたがった理由を知ることになる。
午前中いっぱいを海水浴に費やした後、私たちは柊家に戻っていた。
春子さんが昼食を作ってくれるまでの間、私と赤目は小夏ちゃんの夏休みの宿題を見てあげることにした。
その横では疲れてしまったからだろう、秋名ちゃんが小さく寝息を立てている。
その寝姿はあどけない少女そのもので、こうして見ていると、時折見せるあの厳しい表情は、やはり見間違いか何かだったのではないかと思えてくる。
「おいおいマジかよ! 最近の中学生は随分と難しい事を勉強してるんだな!」
秋名ちゃんの問題集を覗いた赤目が驚愕の声を上げた。
「そうなんだよー。こんなに難しい問題を中学生にさせるなんて、きっと文部科学省って言う所は、鬼畜の集まりに違いないね! 私がちゃんと巫女に成れたら、真っ先にお払いに行くよ!」
小夏ちゃんは小夏ちゃんで、随分と過激なことを言う。
しかしまぁ、文部科学省に限らず、世の中は魑魅魍魎がひしめき合っているのが常なので、是非とも小夏ちゃんの天真爛漫さでこの世を浄化してほしいものだ。
「だいたいさー、古文って学んでも役に立つのかな? これとか、意味どころか読むことすらできないんだけれど、赤目さんなら読めるよね?」
そう言って水を向けられた赤目の表情が強張ったのを、私は見逃さなかった。
これ以上放っておくと流石に赤目が可哀想だ。それに、これ以上、身内の恥を晒す訳にはいかない。なので私が代わりに読むことにした。
「えーっと、『衣川 みなれし人の別れには 袂までこそ 波はたちけれ』。なるほど、確かにこれは少し難しいかな。この和歌を詠んだ人の家の近くには、『衣川』という川が流れているんだ。そんな川の様に見慣れた人とお別れすることになってしまって、袂が濡れて波が立つまでに泣いてしまったという意味だよ」
少し前なら、私も答えられなかっただろう。ただ、村上先生の専攻の一つに和歌があったために少しだけ勉強していたのだ。
だから、この訳にも間違いはなかったはずだ。
しかし、私の解を聞いた小夏ちゃんは、一旦キョトンとした後、どうにも納得いかないような表情で考え込んでいた。
「小夏ちゃん、どうかしたのかな?」
私のその問いかけに、小夏ちゃんは妙に間の抜けた声色でこう答えた。
「人とお別れするっていうのは、そんなに悲しいものなのかな?」
「それは?」
いったい、どういう意味だろうか?
「夏木さんは、誰かとお別れするのは悲しい?」
別れ。
私にとって、その言葉が持つ意味は、他の人と少し違う。
私が今までに体験した別れは、そのほとんどが、一度別れたが最後、二度と再び会うことができない類のものだ。
ありたいていに言えば、それは死だ。
私にとって別れとは、死の類義語でしかない。
だから、悲しくないと言えば嘘になる。
それに何より、悲しくあるべきものだろう。
だけれども、
いつからだろうか、
私が、別れを悲しめなくなったのは、一体いつの頃からだっただろうか。
今となってはもう、見当さえ付かない、目星さえ付けることができない。
だから私には、その問に対して、答える資格なんて無いのだろう。
それでも、この少女が同じく道を踏み外さないように、あの頃の気持ちを思い出して、想像を創造して答える。
「うん、悲しいものだよ」
果たして私のその言葉には、ちゃんと熱が篭っていただろうか。重みはあっただろうか。
それを確かめるすべはない。
しかし、それでも分かることはある。
私の思いは伝わらなかった。
「そうなんだ、私には、その気持ちが分からないから」
彼女は、小夏ちゃんは、淡々とそう語る。
分からないという事を、少女はさも分かっているかのように語る。
「それは、小夏ちゃんは、誰かとお別れしても悲しくないっていうこと?」
「うーん、そうじゃなくて、悲しいっていう感情そのものが、私には分からないんだ。人と会うのが嬉しいっていうのはよく分かるの。私は友達がたくさん欲しいから、できれば島の外にも出ていきたいくらい。だけれども、その友達を追うために島を出ていくことを考えるほどには悲しめない、そんな感じかな」
彼女はあっけらかんとそう答える。
なんでもないことの様に、そう答える。
「小さい島だからね。どうしてもこの島から出ていく人は、たびたびいるんだ。そんな時、人は決まって悲しそうな顔をするんだよ」
彼女のクリクリと大きなその目が、ふいに細められる。
「島から出ていく人も、見送る人も、なぜか皆悲しそうな顔をしているんだ。それが私には分からないんだ。島から出ていけば、新しい人や新しい出会いが待っているのに、どうして悲しむんだろう。見送る人もその事を祝ってあげればいいのに、どうして悲しんでいるんだろう。そんなふうにしか思えないんだ」
そう語る彼女は、終始笑顔だった。
きっと、人として当たり前のその感情が分からないことさえ、悲しいと思えないのだろう。
そして、その話を聞いて、私は少しだけ小夏ちゃんの事を理解した。
きっと彼女は、物事の負の面を見ることができないのだ。
人の怒と哀に気づくことができないのだ。
「ねぇ、やっぱり私って変なのかな? どうして私だけ分からないのかな?」
彼女は真剣に私に問う。
ならば、私も真剣に答えねばならなかったのだろう。
しかし、私には、その勇気がなかった。
この純真無垢な少女に、『君はおかしい』と、正しくとも残酷な真実を告げる勇気が、私にはなかった。
だから私は、
「それは、小夏ちゃんが優しいからだよ」
いつも通り、逃げた。向き合わずに、逃げた。
「私が優しい?」
「そうだよ。小夏ちゃんは誰よりも優しくて強いから、どんなことでもポジティブに捉える事が出来るんだ。人のことを本当に思いやっているから、その人が喜ぶ事しか考えられないんだよ」
そんなはずは無い。そんな物は優しさでも、ましてや強さでもない。
ただの欠陥だ。
「そうか、そうだね。そうなんだね。なるほど。それじゃあ、皆が私みたいに優しくなったら、悲しむ人はいなくなるのかな?」
だが、その少女は、私のその答えに、目をキラキラと輝かせる。
「きっと、そうだろうね。だから小夏ちゃんはずっと優しいままでいて、皆にも優しさを分けてあげてね。人の善意というものは、きっと伝わるものだから」
一体どの口がそんな事を言うのか。
彼女にそう語る私の口は、決して責任を取ったりはしない。
あり大抵に言って、聞こえのいい言葉を並べる人間ほど、いざという時にその発言の責任は取らないものだ。
「うん、分かったよ!」
しかし小夏ちゃんは、私のそんな言葉に対して、力強く、芯の通った声で頷いた。
確かに彼女は、優しくて強くはあるのだろう。
ただ、足りないものがあるだけで。
そして、そんな風に優しさを説く私は、誰よりも優しくなかった。
「それじゃあ、お昼からも少しだけ付き合って下さい」
昼食の後、そう言う春子さんに促されるまま、私は再び彼女の車に乗り込んだ。
そう、またしても私は、無免許者の運転する車に乗り込んだのである。
「誰かとドライブなんて久しぶりです」
しかも今度は助手席である。ハッキリ言ってその恐怖は、並の絶叫系アトラクションの比ではない。
ただそれも出発して暫くの間だけだった。
昨日も感じたことだが、彼女の運転はやはり上手い。
それに何より、現在走っているこの場所は、草原の中の一本道で、対向車はおろか、ぶつかりそうな障害物すら無いのだった。
「一体どこまで行くんですか?」
「ふふっ、秘密です」
私のそんな問にも、春子さんは悪戯げな笑みを浮かべるだけで答えようとしない。
まぁいいか。別に急がねばならない用事は何も無い。
ちなみに赤目とは一旦別行動を取ることにした。より正確に言うと、取らざるを得なくなった。昼食を頂いて一息ついた頃には、すでに小夏ちゃんに連行されて何処かへ消えていたからだ。きっと今頃は、小夏ちゃんと一緒に遊んでいる事だろう。遊ばれていると言った方が適切かもしれないが。
あまり舗装されていない小道を走ること数十分。
その間、春子さんは他愛のない話題を次々に私に提供してくれた。
それは昨今のテレビ番組だったり、アイドルのことだったりで、当たり前だが、この島も日本の一部であり、情報インフラはしっかりと整備されているのだと思い知らされた。
同時に、どこか浮世離れしている様に感じていた春子さんが、急激に普通の女の子に見えてきた。しかしそれは失望どころか、私にとっては心地よい親しみやすさを感じさせるのだった。
もっとも、彼女が私に振ってきた、そんな俗な話題に関する知識を私は殆ど持ち合わせておらず、これではどちらが浮世離れしているのか分からなかったのだが。
しかし、会話が成立しないにせよ、私に対して向けてくるその笑顔はキラキラと眩しくて、望めるならいつまでも見ていたいくらいで、一方的に話し続けられても、まったく不快には感じないのだった。
「それじゃあ、ここで休憩しましょうか」
彼女が車を止めたのは、草原を抜けた先にある、山の麓だった。
「ここの湧き水で淹れたお茶が美味しんですよ」
そう言うと春子さんは、簡易的なコンロとキャンピングケトルで近くの湧き水を沸かし始めた。乗っている車にしても、意外と彼女はアウトドア派だ。
しかし、こんなプライベートな時間でも、彼女は相も変わらず、巫女装束に身を包んでいる。もしかしたら、何かしきたりでもあるのだろうか。
お湯が湧くまでの時間が手持ち無沙汰だったので、周囲を見回してみる。
すると、一体の奇妙な像が目に止まった。
「これは?」
自然と口が疑問が口にでる。その像は、それくらいには、興味を駆り立てられる造形をしていた。
表面に苔がむしているので、ちゃんとした形はそもそも分からないが、見たところ、足は馬やカモシカの様な獣のもので胴体は植物、そしてその頭であろう部分には人の顔が据えられていた。私の知識の範囲では、このような生き物に心当たりはない。というか、一度でも見たことがあるのなら、こんな奇っ怪な生き物を忘れるような事は無いだろう。
「ああ、それはこの島の神様を模したものですよ。こういう水場だったり辻だったり、この島の要所要所に安置されているんです」
そう言いながら春子さんは、私に湯気の立つカップを渡してきた。その中身は薄い茶色で、一瞬ほうじ茶かと思ったが、その匂いで紅茶であることがすぐに分かった。
「一緒にクッキーはいかがですか? さっき焼いてきたんですよ」
巫女さんに紅茶とクッキーを勧められるとは夢にも思わなかった。なんともアンバランスである。
しかし、その紅茶もクッキーも味は大変に良いものだった。
「お口にあったようでなによりです」
そう言って、春子さんは微笑む。私は何も言っていないのだが、きっと顔に出ていたのだろう。それになにより否定する要素は何も無い、私はその言葉に薄く微笑みを返すのだった。
「それにしても、こう言ってはなんですが、奇妙な形ですね」
改めて像をしげしげと眺めてみて、そう思う。
「あれ、そうでしたか……。結構上手に焼けたと思ったんですが……」
「あ、いえいえ、違います。この像のことですよ」
どうやら、あらぬ誤解を与えてしまったようだ。
「ああ、なんだ」
良かった、と、彼女は小さく息を吐いた後、彼女は親切にも解説を始めてくれた。
「この神様の名前は、ハヤマ様。お察しの通り、この島と私達の神社の語源となった神様です」
まぁ、神様と聞いた瞬間に、そのような気はしていた。
「そして、このハヤマ様には、決まった姿が無いと言われています」
決まった姿が無い?
「ある時は人の姿をとって市井に紛れ、そしてある時は早馬の姿を持って野山を駆け巡り、そしてまたある時は、木の葉に姿を変えて山に溶け込む。故に早馬、そして葉山と呼ばれているわけです。そしてこの像は、それを表現したものなんです」
なるほど、島と神社でハヤマの当て字が異なっていたことはずっと気にはなっていたが、そんな理由があったのか。
「基本的には、人を守り、巫女にお告げを授け島民を導く守り神です。ただ、一点を除いては」
その言い回しには、何か引っかかりを感じた。
「それはつまり、悪い面もあるということですか」
「まぁ、そうですね。とは言っても、人を祟ったりするわけではなくて、ただの悪戯の様なものではあるんですがね。ハヤマ様はその何者にでも成れる能力を使って、しばしば気に入った人間に成りすますんです」
その話は、
私には心当たりがありすぎた。
その言葉を聞いて脳裏をかすめるのは、私とまったく同じ、あの顔。
「そ、それで、なりすまされた人間はどうなるんですか?」
思わず質問する声も上ずる。
「別に、どうということもありませんよ。文献を読む限りでは、ハヤマ様に真似られた人がどうにかなるという事はありません。むしろ神通力を授けられたりと、恩恵に預かる人もいたみたいですよ」
それはつまり。
「そうです。お察しの通りです。私達、巫女の始まりは、ハヤマ様に真似られた人だと言われています。ハヤマ様に神通力を授けられた巫女とその子孫が、神に与えられた力で統治してきたのがこの島です。だから、ハヤマ様に真似られたなら、むしろ喜ぶべきだというのがこの島での習わしです」
なるほど、
春子さんの話を聞く限りでは、私にとってこの状況はそこまで深刻に考えなくても良いようだ。むしろ場合によっては、超能力を得ることが出来るかもしれない。
そんな風に、一人で胸を撫で下ろしていたところで、
まぁ、もっとも、
そのような前置きで、春子さんが私見を述べた。
「真似られた人が、本当にその後も本人だったかどうかなんて、誰にも、それこそ神様にしか分からない訳ですけれども」
それは、私の背筋をもう一度氷付かせるには、十分なものだった。
少しの居心地の悪さを感じながら、その像の前で暫く休憩した後、私は再び春子さんの運転する車に揺られていた。
そして、空に少しの茜色が交じる頃、次に到着したのは、昨日春子さんと最初に出会った港だった。
「まさか、一日に二度も海に来るとは思いませんでした」
「ふふふ、すみません。ですが、この島には海と山しか無いもので。それに先程の海水浴とは少し趣が異なりますよ」
そう言いながら、春子さんが歩みを進める先にあったものは、小さな船だった。
「さぁ、乗ってください」
え? これに?
私が返事をする前に、春子さんは一人でさっさと船に乗り込んでいた。
きっと彼女は船舶免許も持ってはいないだろう。聞かなくとももう分かる。
普段の私だったら、決してこんな船には乗り込まなかっただろう。
しかし、今の私は、一日中春子さんの運転する車に乗せられたことで感覚が麻痺しており、この船に乗り込むことにもあまり抵抗はなかった。破れかぶれとも言う。
「では、出発しますね」
言うが早いか、春子さんが慣れた手付きで船のエンジンをかける。ドゥルルルンと唸り声を上げた後は、ドッドッドッと小さくビートを刻み始め、そのビートが落ち着いたのを見計らってから、船は陸から徐々に距離を取り始めた。
少し重たい潮風が、荒々しく私の頬を撫でる。視線を横に向けると、春子さんの長く艶やかな髪も風に踊っており、まるで波のようだ。
船を駆る間、春子さんは一言も発しない。しかし、その口元は微かにほころんでおり、この船の行く末には、春子さんの好きなものが待ち受けているのであろうことは、容易に想像することができた。
そして、お互い無言のまま船を進めること十数分。
見る見るうちに葉山島が水平線に消えていく。
そんなに遠くまで来たのかと一瞬思いもしたが、確か水平線までの距離は約五キロ。遠いと言えば遠いが、まだ島の範囲内と言えるだろう。
そして私がそんなことを考えた瞬間、ふいに船は静止した。
何処かに着いたと行くこともない、変わらずの海の真っ只中である。
「今の私には、ここまでしか行くことができません」
春子さんが小さく呟いた。それはシチュエーションからしても私に向けての言葉だったに違いないが、どこか、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
「夏木さん、馬鹿げて聞こえるかもしれませんが、ここが、私の一番好きな場所なんです。私が夏木さんを連れて来たいと思った場所なんです」
彼女は、そう言った。
少しはにかむような笑顔で、何もない、この場所こそが、私の一番好きな場所だと、そう言った。
「辛くて仕方がない時、どうしても耐えられそうも無い時、私はいつも一人でここまで来るんです。海と空しか無い、この世で一番自由な場所。あらゆるしがらみと重責から解放された、私のためだけの世界。私が本当の私でいられるのは、ここだけなんです」
私は彼女の事をよく知らない。次期の巫女頭としての運命が、次期の葉山島の支配者としての責務が、どれほどまでに重いものなのかも、私は知らない。
だけれども、それらが、この少女を押しつぶしそうな程には重いものであることは、彼女のその言葉から容易に想像ができた。
「少し、横になりませんか?」
彼女に促されるまま、私は春子さんと共に、船の上で仰向けになる。
目の前には一面の空。薄く紅色に移ろうその空を、どこへ行くともしれない白い海鳥が横切っていった。
「私は、鳥になりたいなんて大層な事を言うつもりはありません」
ふいに左手に温かいものが触れた。
細くしなやかなそれは、私の指を容易に絡め取る。
誰かと手を繋ぐのは久しぶりなので、少しドキリとする。
しかし私は、あえて彼女の方を見ようとはしなかった。きっと春子さんも私の事を見てなどいないだろう。きっとその視線は、私と同じく空を見上げている。
「ただ、このまま、この世界に溶けてしまいたい」
海と空に溶けて消えてしまいたい。
彼女はそう言った。
誰に向けてでもなく、世界に向けて願いを口にした。
「ねぇ、夏木さん」
そして次は、私に語りかける。
人々の願いを聞くはずの巫女が、私に対して願いを口にする。
「私を、この島から連れ去ってはくれませんか?」
太陽は沈むその瞬間に、一番赤く燃え盛る。
私の目の前を覆う彼女の世界は、今にも燃え落ちそうな程に紅に染まっていた。
そして私は、
彼女のその言葉に、
少女の儚い願いに、
遂に応えることはなかった。
「ふふっ、冗談ですよ。困らせてしまったのなら、申し訳ございません」
彼女はそう言って、薄く笑った。
気が付けば、空は赤から紫へとその色を変えていた。
その色は、まるで燃え尽きた後の灰のようで、すぐに夜の帳が降りる事を知らせていた。
「さぁ、早く帰って夕飯の支度をしないと! 夏木さん、今日は何が食べたいですか?」
そう言う春子さんは、一見いつもの調子に戻っていた。
しかし、それが虚勢を貼っているだけなのは、誰の目にも明らかで、
「何でもいいですよ。春子さんの作るものなら、何でも美味しいでしょうから」
その時の私には、彼女の顔を見ずにそう言うのが精一杯だった。
結局その日、私と赤目が柊家の皆さんから解放されたのは、もう深夜と言ってもよい時間だった。
夕食を頂いた後も花火に誘われたり、スイカを食べたり、ボードゲームを楽しんだりと、全員の気が済むまで散々に付き合わされたのだった。
もっとも、こんな言い方をしてはいるが、私も楽しんでいなかったと言えば嘘になる。むしろこんなにも充実した気分になったのは初めてかもしれない。思い返せば、こんなにもいわゆる『夏休み』というものを楽しんだことはなかった。
相変わらずこの部屋にはいい風が入る。
「今日は、随分と楽しそうだったな」
窓枠に肘をつきながら夜風に当っていると、赤目の声が聞こえてきた。
「うん? そうか?」
「そうかもなにも、今も笑っているじゃねぇか」
おや、私としたことが。どうやら口元が緩んでしまっていたようだ。
「それにしても珍しいじゃねぇか。普段、人と距離を取りたがるお前がこんなにも付き合いが良いなんて。どんな風の吹き回しだよ」
確かに今日の私は、少しどうかしていたのかもしれない。
秋名ちゃんの指摘の通り、親しい人を不幸にしてきた私は、なるべく人とかかわらないようにしてきた。だから、こんなにも誰かと一緒に同じ時間を過ごしのは、本当に久しぶりだ。
それに、
「それに、今日は珍しく、誰も怪我をしなかったな。ただの偶然だとは思うが、お前が誰かと遊び始めると、必ず誰かが怪我をするからな」
そうだ。今日は珍しく、私と関わった人が誰も不幸にならなかった。
こんなことは本当に珍しい。いつもなら不慮の事故で途中で中断するか、そうなる前に自分から切り上げていたので、一日を遊び切るなんて経験は初めてだったかもしれない。
どうして私は、今日一日、そのことに気兼ねすること無く遊び呆けてしまったのか。
思い返してみれば理由は明らかだ。
『今日は誰も傷つけなくて済む』、どうしてだか今日は、そんな確信にも似た思いが私の意識を支配していたのだ。
もしかしたらこれも、巫女の加護に拠るものなのかもしれない。なんて、そんな戯言に囚われるくらいには、今日の私は熱に侵されているようだった。
「もしかしたら、この島が、本当のお前の居場所なのかもしれないな」
ふいに赤目がそんな事を呟く。
この島にずっと住み続ける。そんなこと考えもしなかったが、今日一日を思い返してみると、自然と口角が上がってしまう。この島で私に出来る仕事なんてあるのか分からないけれども、日がな一日釣りをして、たまに春子さんと一緒に遊んで過ごす。そんな日々が魅力的でないと言えば嘘になる。
だが、それでも、
「そんな事は無いよ」
そう、それが叶わない夢であることぐらいは、私も自覚している。
「私が居てもいい場所なんてありはしないよ。私はどこにも居るべきじゃないんだ」
本当ならば、今すぐにでも死ぬべきなのだろう。世のため、人のためを考えるならば、今すぐにでもそうするべきなのだろう。
しかし、そうすることさえも私にはできない。自らケリを付けることさえできない。それほどまでに私は愚かで弱い存在なのだ。
そして私のそんな返答を聞いた赤目は、少し目を伏せる。
「そうか、俺はそうは思わないけれども、お前がそう思うのなら仕方ないな」
だけどよ、
その言葉とともに赤目が私を見据える。
「だけどよ、お前がどこに行こうとも、どこに居られなかろうとも、それでも俺はお前の隣に居るよ」
それが、俺に出来る恩返しだ。
赤目はそう言った。
この男は律儀にも、未だにあのことを忘れようとしない。
あんなものは、ただの偶然でしか無いというのに、この男はずっと私に恩義を感じ続けている。
私としては、もうそんな些事は忘れて、お互いフリーな関係で付き合いたいのだが、赤目は頑としてそれを良しとしない。
しかし、もしそうなったとしたら、私達の関係はどうなるのだろう。
もちろんこのままであり続けられたならと願わずにはいられないが、赤目が一種の義務感から私と共に居てくれているのだとしたら、その時はきっと、赤目は私から離れていくのだろう。
悲しくはあるが仕方ないと思う。それに、それならまだ良い。
最悪なのは、お互いの間にある、その小さな『恩義』という溝が取り払われて、私と赤目の関係が完全に『友達』となってしまった場合のことだ。
今までも私は、何度も赤目を死地に追いやっては来たが、そのたびに赤目はそれを持ち前のタフネスで乗り越えてくれた。だが、私と『友達』になったならばそうはいかない。
今まで私と『友達』になった人間は皆死んだ。
そうでなくとも、取り返しのつかない誤ちを犯してきた。
きっと赤目も、その例外となることはできないだろう。
これは予感ではなくて確信だ。過去の経験から私の本能がそう告げる。
だからきっと私は、このぬるま湯のような安寧に浸り続けたくて、あえて赤目から『恩義』という重荷を取り除こうとしないのだ。
誰が見てもその行いは卑怯であり姑息だ。
だがその謗りを甘受してでもこの関係を続けたいくらいには、今の私と赤目の距離感は心地の良いものなのだった。
だから今日も私は、赤目の好意に甘えるように、
「ああ」
とだけ、小さく返事をした。
これで話は終わり。
赤目の優しさと私の汚さを再確認しただけの会話を終えたところで、私と赤目の間にあった糸のような緊張感がぷつりと切れたのを感じた。
だから私は、それ以上何も言うこともなく、布団に横になり掛け布団を羽織る。
明日は大事な調査も控えているので、そろそろ電気を消して寝てしまおうと思ったその時、
「それはそうとして、少し変な事を聞くけどよ。この島に来てから、お前、二人いないか?」
赤目がまたしても、
大型の爆弾を放ってよこした。
「それは、どういう意味だ?」
ここで変に答えるのは不味い。だから私は簡潔に返事をした。
それに、もしかしたら単純に、この島に着いてから、いつもの私とは違って楽しげにしていることを、そう表現しているだけなのかもしれない。
「いや、自分でも訳の分からない事を言っているのは分かってるんだけどよ、なんだか最近、お前の気配が二人分するんだよ。何か心当たりはないか?」
コイツのこうしたカンの良さは今に始まったことではない。しかし、こんな超常現象にまで反応するとは思わなかった。コイツは本当にただの人間なのだろうか。
私はどうするべきだ。
赤目だけには、素直に話をするべきだろうか。
しかし、赤目に話してしまったなら、コイツをまた厄介事に巻き込むことになるかもしれない。
だが、赤目なら、むしろ喜んで巻き込まえれてくれるかもしれない。それならば、一人で秘密を抱え込むよりも遥かに気が楽になる。
私の脳内が高速で働き、そんな堂々巡りの思考を展開する。
返事をするまでに時間は無い。変な間を置けば、それは肯定しているのと同義になる。
迷った末に私は、
「私が二人いる? そんなことあるわけ無いだろう。お前はたまに素っ頓狂なことを言うよな」
しらを切ることにした。
落ち着いて考えてみれば当然だ。私の問題に赤目を巻き込んで良いはずがない。このまま赤目の優しさに甘え続けたなら、いつの日か私は、この男を破滅させてしまう。
ズルズルと頼り続けたなら、それこそ秋名ちゃんに指摘された通りになってしまう。
だからこれは、一つの良い区切りなのだろう。
「そうか……。やっぱり気のせいだよな。すまん、変な事を聞いて」
そんな私の返事を聞いて、赤目はどこか煮え切らない様子だったが、一応は納得したようだ。
「いや、いつも心配してくれて済まない。そろそろ寝ようか」
「ああ、そうだな」
そんな簡単なやり取りを経て、今度こそお互いに横になる。
私がパチリと電気を消して、この慌ただしかった一日も終わりを迎える。
ようやく静けさを取り戻した私の世界に、それでも最後に一言が投げかけられた。
「別に全てを正直に話してくれなくてもいい。お前が危険に飛び込むようなことも俺は止めはしない。だけど、一人になるのだけは止めてくれ。必ず俺を巻き添えにしてくれ。それだけは約束して欲しい」
暗闇のため、赤目の表情を窺うことはできない。それでも声色から、赤目がいつになく真剣なことは察せられた。
だから、本当は私も真剣に答えるべきだったのだろう。
それでも私は、
「いつも感謝してるよ、赤目。いつもありがとう」
そんな謝辞を述べることによって、明確な返事を避けた。
赤目からの返事はない。
もしかしなくても、今の私の返事は失礼なものだっただろう。
だけれども、赤目に対する感謝の気持ちには偽りはなかった。
返事に誠実さは無くても、感謝は誠実なものだった。
だから、どうか許して欲しい。
赤目に対して、心のなかで謝罪をしながら、私は眠りについた。
その日の夜、私は懐かしい夢を見た。
眠る前に、あんなやり取りをしたからだろう。それは、私と赤目が初めて出会った時のことだった。
別に長い話ではない。だから夢の中の私にとっても、特に感慨深いものではなかったが、一度思い出してみれば思う所が何もないかと言えば、それは嘘になる。
それは、私が入学して暫く経ってからの話だ。赤目は私のことなど、その頃は知りはしなかっただろうが、私はその頃から赤目のことをよく知っていた。と言うより、私達の大学の関係者で、いや、私達の住む街の住民で、赤目の事を知らない人なんていなかっただろう。
何故ならば、その頃、街で起きた暴力事件の殆どに、赤目は関与していたからだ。
誤解のないように先に言っておくが、これは別に赤目が悪かったわけではない。結果として彼は何十人と病院送りにしてしまったが、ただの一度だって、赤目から先に仕掛けたりはしなかった。それだけは私が保証する。
それでも赤目は、常に騒ぎの中心人物だった。
簡潔に言ってしまえば、赤目は常に追われていたのだ。
タチの悪い連中に追われていたのだった。
きっかけは些細なことだ。街で絡まれていた女の子を赤目が助け、いさかいの末に相手を殴り倒してしまった。そしてそれから、赤目はその仲間たちに追われる身となったのだ。
私も運が良い方とは言えないが、この時の赤目はそれに輪を開けて運が悪かった。よりにもよってその連中は、本職でこそ無いものの、街で幅を利かせているギャング崩れだったのだ。便宜的に此処から先は彼らを『チーム』と呼ぶことにする。
それから暫くの間、赤目には安息の時間は無かった。街のどこにいようと彼はチームに追われ続けていた。
すぐに赤目が負けてしまえば、この諍いもまだ小さな騒ぎで済んだのかもしれない。しかし、幸か不幸か、赤目はその持ち前の腕っ節で襲いかかる連中を片っ端から病院送りにしてしまった。
そうなれば相手も黙ってはいない。赤目に差し向けられる人数は次第に増え、騒ぎの規模と周辺の被害も次第に大きくなり、結果として、赤目は何一つ悪い事をしていないのに、周囲から疎まれる存在になっていた。
その頃には大学に通う事もできず、また、住む家も追い出されてしまっていた。だから、このまま放っておけば、いくら赤目でもジリ貧に追い込まれていたのだろう。
だが、そうはならなかった。
先に結果だけを言ってしまえば、この抗争は赤目の勝利で終わった。
そして、その原因となったのが私だ。
だから赤目は、私に恩義を感じ続けているのだ。
だが、別に私は、赤目を助けた訳ではない。結果としてそうなったとしても、少なくとも、助けに入った訳では無かった。
前述の通り、さすがの赤目も追い詰められつつあった頃、最後のダメ押しとして、チームの連中は外部に協力者を募った。
その中の一人が、私だった。
そう、むしろ私は、赤目の敵として雇われたのだ。
私が選定されるまでにも紆余曲折があったのだが、それは今は割愛しよう。とにかく私と赤目の最初の関係は、敵対関係だった。
もちろん別に、私個人としては赤目に恨みがあったわけでも、チームと利害関係があったわけでも無かったので、どちらが勝とうと知ったことではなかった。
ただ、この騒ぎもだんだんと大きくなり、私にとっても鬱陶しく感じ始めていたので、早く終わらせてしまいたい気持ちはあった。どちらが正しいかだとか、悪いかだとかに興味はなかった。とりあえず、なるべく早くに平穏な日々を取り戻したかった。
そして、すでに追い詰められている赤目を潰しまうことが、この騒ぎを終わらせる一番の近道であることには間違いがなかったので、チームに肩入れすることにも抵抗はなかった。
だが、これは私にとっても誤算だったのだが、結果として、赤目と私達がぶつかるよりも早く、この抗争は終了した。
チームの崩壊という形で、この抗争は終結した。
あとで考えてみれば、私にとってはいつものことであった。
私と『仲間』になった連中がただで済むわけがなかったのだ。私が加入してすぐに、チーム内には不和が生まれ、亀裂が走り、内部から崩壊していった。
勝手に、跡形もなく消え去っていった。
指一本触れること無く、崩れ落ちていった。
最初から最後まで、私は何もしていない。
ただ、いつも通りそこにいて、近しい人を不幸にしただけ。
だから私は、赤目に感謝などされてはいけないのだ。
それでも赤目は私に感謝をし続ける。
そして私はそれに甘え続ける。
何度思い出しても下らない、
これが私と赤目の馴れ初めだ。