美菜さん
「おい、歩美、なぁ〜!」
「んっ!どぉした?」
「どぉしたじゃなくって、どぉだよ?可愛くね?」
「あっ、あぁ可愛いって言うか綺麗な人だな」
「いやいや、あれは可愛いでしょ?」
違った、僕とジュンが見ていた人は違う人だった、綺麗な女性と一緒に歩いている3人組の1番奥の人!
1番奥を歩いているのに、1番手前を歩いているかの様な存在感!1人だけ違うオーラを出し!
ルーズなのにルーズでいられないソックスを履いて、大きな声で笑いながら、コーラの1リットルペットボトルを持っていた、500に見えるが1リットルだ!
やっぱりジュンさん、あんたスゲーぜと本気で思った。
そんな時、ちょうど登校して来たカズが声をかけてきた。
カズは高校が地元にあり、家が近いからと言う理由で今の高校を選んだクラスメイトだ、中学の頃は知らないが地元では少しヤンチャな子だったらしい。
多分家が近くなくてもこの高校か、同レベルのもう1校くらいしか、行ける所はなかったと言うのは、1番最初のテストですぐにバレることになる。
そしてカズの家がみんなのたまり場になるのは、この時から決まっていたんだと思う。
そんなカズが僕達が見ている方を見て言ってきた。
「あの女の人はやめときな、どうせ見てるの美菜さんだろ?あの人は俺らの1っこ上の花山さんと付き合ってるから」
「へぇ〜、美菜さんって言うのか」
「おい!だからやめとけって歩美、メチャクチャヤンキーだ、学校も行ってないし、よくそこら辺で暴れてる危ない人だから、自分の女に手出したとか知ったらすぐに目つけられてやられるぞ」
「はいよっ、わかった気をつけるよ」
そうは言ったが、全然心はそう思っていなかった、美菜さんか、やっぱり彼氏はいるよな、でも諦めない、多分諦められない、でもどヤンキーかよ、殴られるのやだなぁ・・・
僕は不良グループにいたが、だからって喧嘩が強いわけでもないし、好きでもない、むしろ嫌いだ
殴っても殴られても痛い、その後心も何か痛くなる。
平和が1番だ、でもまだ何もしてないのに、この時、ボコボコに殴られる事は覚悟した。
はぁ〜、痛いのやだな。
小心者で度胸もない僕、出来るだけトラブル回避がポリシーと言ってもいい僕、そんな僕が初めて自分からトラブルに巻き込まれる覚悟を決めた日。
そしてこの先、この花山と言う男の人が、僕の人生に大きく関わって行くことになるとは、この時の僕はまだ知らない・・・




